●4代目カローラのメカニズム

4代目カローラはFR方式を採用した大衆車の決定版として様々なメカニズムが採用された。 特に、シャーシで大きく変わった点は足回りのメカニズムである。 リアサスペンションがそれまでのリーフリジッド式からラテラルロッド付き4リンクリジッド式へ 変更され走行安定性、乗り心地の面で大きく進歩したのである。従来から使われてきたリーフリジッド式は 板バネ自身が車輪の位置決めを行うため、簡素な構造で耐久性も高い。 1960年代には主流であったが1970年代以降、 コイルばねを用いたリンク式サスペンションが増える中でリーフ式を固持するカローラは取り残されていた。 カローラ担当の技術者が欧州へ出張へ行った際、現地の販売店の社長が馬車の博物館を案内した。 そして、販売店社長は「この馬車のサスペンションを見てください、リーフリジッドです。 最新のカローラもこれと同じリーフリジッドです。」と技術者に言ったといわれている。 つまり、それくらいカローラのサスペンションが遅れていると言いたかったのだろう。 特に操縦性を重視する欧州ではその点が問題視されていたのかも知れない。

トヨタは上級車であるコロナにはアッパーリンクを取り付けたリーフ式4リンクという方式のリアサスペンションを 使ったことがあるが、4代目カローラではコイルばねを用いた4リンク式サスペンションを 採用することに決めた。(一気に独立式に走らないところが慎重なところである) いざ4リンク式を採用することに決めたものの、細かい点では意見の食い違いが見られた。 リンクの配置についてチーフエンジニア側はスターレットでやったように、リンクのうち2本をハの字に配置して 横力を受け止める方式を、設計側はリンクは車軸に対してあくまで垂直に配置し横力はラテラルロッドで受けるという オーソドックスな方法を推した。コストや重量面では前者の案の方が有利であるが乗り心地と操縦安定性を両立するには 後者の方が有利である。たかが1本のパーツであるがこれが有るか無いかでコストがだいぶ変わってしまう。 結局、技術側の意見が通りラテラルロッドを用いた4リンクが実現した。またショックアブソーバーの 配置である。商品企画側では使い勝手を良くするため車の前後方向に対して斜めに配置することを主張した。 技術側ではサスペンション本来の機能を考え直立型にすることを主張した。どちらも譲らないので 先行試作車で両タイプを実際に作り比較テストを行ったところ、 斜め方式ではこもり音が大きいうえ悪路ではショックアブソーバの効きが弱くふらつき易いなど その差は歴然であったため、設計の主張どおり直立型が採用されている。 ようやくリアサスは近代的なコイルばねに変えられる事となった。 中でもSR、GT(後期型ではSX)にはリアスタビライザーが採用されバネを 必要以上硬くせずにロールを減らし、よりスポーティな走りが出来るようになった。

ステアリング関係も大きく進化した。1300シリーズにはラックアンドピニオン式ステアリングを新採用した。 これは操作フィーリングの向上および軽量化を実現するためで1500、1600両シリーズには 従来通りのボールナット式ステアリングが採用された。 ラックアンドピニオン式ステアリングの利点はコンパクトで構造が簡素である点と、 操舵フィーリングがシャープになるという点挙げられる。 現在ではほとんどの乗用車が採用しているこのラックアンドピニオン式ステアリングだが、 それまで採用されなかった理由として、道路事情が悪かった時代ではダイレクトでシャープな ラックアンドピニオン式は「ダイレクトすぎて」喜ばれなかったという今では笑い話のような理由が主であった。 ラックアンドピニオン式はヨーロッパでは非常に好まれるものだが、道路事情が改善された日本国内でも採用を望む声も増え、 国産車においてもラックアンドピニオン式ステアリングを採用し、それをセールスポイントとする車種も増えてきた。 4代目カローラにも採用しようとしたものの、カローラのユーザー層ではまだ抵抗感があるとして、 手始めに1300シリーズにのみ採用し、状況を見てから拡大する方策を採った。 ちなみにラックアンドピニオン式ステアリング車のステアリングコラムは従来のメッシュ式に変わり ボール式エネルギ吸収ステアリングが採用された。これは衝撃によってコラム中に圧入された硬球が 圧痕をつけながら移動しその抵抗を利用したものである。 このラックアンドピニオン式のステアリングは好評で、 この後の1981年のMCには1500シリーズにもラックアンドピニオン式ステアリングを拡大採用し、 この次の代の5代目カローラには全車にラックアンドピニオン式ステアリングが採用され ユーザーもラックアンドピニオン式にそれほど抵抗感を感じなくなっていった。 (2T-GEU型はオイルパンのとりまわしの関係で採用できなかった―スポーティなラックアンドピニオン式なのにである) さらに、3A-||型にはラックアンドピニオン式ステアリングに加え、パワーステアリングが採用されたことが新しい。 (パワーステアリング自体は1979年8月に追加された1800シリーズにオプション設定された)

トランスミッションはマニュアルは4速マニュアルを基本に5速マニュアル、 オートマチックは4K-U型には従来と同様に2速オートマチックが設定され、新開発された3A-U型には登場当初は マニュアルのみの設定であったが3速オートマチックが追加されている。 4代目カローラでは燃費を良くするために5速マニュアル車の最終減速比を3.909に高めた。 (このギア比は従来型の4速マニュアル車に使われていたものである。) 4速マニュアル車は従来どおりの3.909が継承されたが、 最終減速比を従来よりも高めた3.727というタイプも設定された。(スタンダードにのみ標準、他はOP) 車重が軽くなったので、駆動力の余剰分を燃費と高速時にエンジン回転数を下げることに回している。 (2T-GEU型を搭載したモデルは4.100が採用され、オプションでLSDつきと、4.300の低い最終減速比も選べる) マニュアル車ではシフトレバー取り出し口が100ミリ後方に移され、垂直近くまでシフトレバーが来るようになった。 マイナーチェンジでは4K-||型にも3速オートマチックと5速マニュアルが追加された。 同時に最終減速比がエンジンパワーの向上に合わせて更に高められた。 エンジンパワーが増えたことで余力が生まれ、ギア比を高めることが可能となったのである。 4K-||型車の4速マニュアル車ではオプションだった3.727が標準となり、 5速マニュアル車にも3.727が組み合わされた。5速マニュアル車の中でも廉価グレードには 更に燃費を意識した特別な最終減速比が用意され3.583という値を持っている。 3A-||型車には全て3.727が適用されたが、ここでも廉価グレード用の5速マニュアル には3.417という異常なほど高い最終減速比が与えられた。このころ、各社で燃費を意識するようになり どのメーカーでも燃費用スペシャルの最終減速比を与えたモデルが低燃費を誇っていた。 つまり、カタログ燃費を優先するあまり、必要以上に最終減速比を高め、1速を 2速並みの 最終ギア比にしてさらに細身のタイヤを履かせ装備を削り軽量化して良い燃費を稼ぐのである。 広告では上級グレードの写真で魅力を伝え、燃費のデータではそういった燃費スペシャル車のデータを登場させ 経済性をアピールするのである。こうした手法は80年代前半には数多く見られたが、現代でも 一部のコンパクトカーや軽自動車でこのトリックを利用している例がある。 1982年に追加設定されたディーゼルエンジン車には、専用の5速マニュアルとクラス初の4速オートマチックが採用された。 5速マニュアルは、静粛性を重視し低速トルク型のエンジンに対応した新しいトランスミッションが開発され、更にクラッチは 3段ねじり特性を与えられた高級なクラッチが採用されている。これはディーゼルエンジンのトルク変動による振動を吸収させるための 工夫であるが、このほかにもクラッチマスターシリンダーにも防振ゴムを入れるなどNV性能に神経を使った。 また、オートマチックの方もODを加えることで静粛性を高め、燃費効果にも期待したための採用した。 カローラに4速オートマチックを与えることは贅沢ではないかという意見が社内からも出たが、 わざわざ干渉するエアコンの配管を避けさせ、トランスミッションの設計に変更を加え、 工作機械にも変更を加えるというという力の入り様である。 こうしてディーゼルエンジンにはクラス初の4速オートマチックが採用されたが、 時を同じくして輸出モデルに設定があった3T-C型1800ccエンジンにも同じ4速オートマチックが組み合わされた。

ブレーキも強化された。全グレードのフロントブレーキにサーボ付きディスクブレーキが採用されたほか DOHCエンジン搭載車には初のリアディスクブレーキが採用され、より一層の制動性能が与えられている。 また、燃費を向上させるため4K-U型に電動ファンを組み合わせた。従来のファンとは違い必要なときだけ 回すことが出来るのでロスが少ない。しかし電気モーターを使う以上、与えられた能力以上の仕事は出来ない。 しかし余裕を持たせると、その分電気系統を強化しなければならず、その分重くなれば 燃費的にも逆効果である。世界中の条件を考えたが、日本の真夏の渋滞路という条件が世界で 一番厳しい条件であるとわかり、それにあわせて容量を決めたという。 この他、計器類に目に優しい透過照明を採用したり、エンジンを切っても表示する置針式メータなども採用された。 また2ドアセダンにのみテンションリデューサつきELR式シートベルトが採用されていることが新しい。

1981年の後期型ではシートに無段階調整機構やランバーサポートが追加され機能が充実した。 またハードトップ、クーペ、リフトバックでは後席からの乗降性を向上させるため新たにドアハンドルを 後ろにもう一個追加するという改良を加えている。 この他当時流行したムーンルーフが設定された。 サンルーフ/ムーンルーフは1980年にリフトバックに追加されたオプションであったが、今回クーペ拡大採用 されたほか、サンルーフが廃止されムーンルーフ+サンシェードという構成になった。 1982年2月にはカーコンピュータの一種であるナビコンのオプションが設定された。ナビコンとはクーペの レビンのアペックス仕様のみに設定されたオプション装備でごく原始的なカーナビゲーションシステムの一種である。 この当時、ハイテクを応用したドライブコンピュータという装備が流行しておりナビコンも この流行を追いかけたものである。 ナビコンには、常に絶対方位を示す、出発地から目的地までの東西方向距離、および南北方向距離を 入力することで目的地の方位と現在位置から目的地への直線距離を示す、目的地への道のりを入力することで 到着予想時刻を示すという主に3つの機能がある。現代のカーナビのようにGPS(グローバルポジショニングシステム) を用いておらず、屋根に設置された地磁気センサで方位を測定している。この地磁気センサは環境に左右されやすく 誤差が生じることもあるという。

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空力に真剣取り組んだ4代目カローラ