●FFとFRシリーズに二極化した5代目カローラ


カローラが生産累計1000万台を迎えた2ヵ月後の1983年5月、5代目カローラが登場した。 バリエーションは従来の車形を継承しつつ、新型エンジンの搭載や異なる駆動方式の採用などで おのおのに性格にフィットし、ユーザーの嗜好に合わせた車種構成とした。 セダン・レビン・ワゴン(70系を継続販売)・5ドアの4種であるが、 その内容は少しずつ異なる。 「ジャストサイズの経済的なファミリーカー」というテーマを与えられたのは、 従来からのカローラの本流である4ドアセダンと新たにセダンをベースとしてハッチをつけた5ドアセダンである。 5ドアは以前のリフトバックのフルモデルチェンジ版で4代目カローラの3ドアから5ドアとなり、 名称もリフトバックから5ドアへ改称された。小型ファミリーカーの世界的なトレンドであるFFを 採用し、クラストップレベルの経済性と居住性を確保している。 2ドア、3ドア車は「高性能な新世代スペシャリティカー」をテーマとした。 従来のクーペを3ドア、ハードトップを2ドア車が受け持ち、サブネーム「レビン」を名乗った。 レビンはスペシャリティモデルとしてのスポーティな運動性能を確保するため、FR方式を踏襲し、 スポーツ性や走りの良さを残した。(実は他の理由もあるのだが)

このモデルチェンジでカローラもついにFRからFFに転換する事となった。 4代目カローラが販売されていた頃、欧州ではFFハッチバックが台頭し、 古くからの大衆モデルでも次々にFF化されていった。 国内でもその流れが波及し、大衆車クラスが次々とFF化されていった。 4代目カローラはこの変革期を、経済性を出来るだけ高めたFR車としてモデルライフを全うしたが、 開発責任者の揚妻氏は5代目カローラはFF化しようと社内を説得してカローラをFF化することにこぎつけている。 新しいカローラセダンのボディスタイルは、一気に理想を追い、 FFの合理主義を強く表現したデザインとなった。 従来型ではウエッジシェイプを抵抗のないように手直ししたが、5代目カローラでは 更にウエッジシェイプを強調し、『スポーティ・ハンサム』と呼んでいた。 セダンは明快なノッチバックスタイルとし、軽快感、扱いやすさを表現している。 そのなかでも4代目のウエッジシェイプを強調する意味でボンネットやフロントガラスの傾斜を強め、 高く水平なトランクリッドが採用されている。(トランク容量は12%拡大し、 トランクリッドもバンパー直後まで開口部が拡げられた)5ドアは空力特性を重視し斬新なスタイルと機能を備えた車として 若年層に訴求するスタイルを目指した。従来型同様に空力を重視し、セミコンシールドワイパーの採用や ガラス段差を減少させ、ホイールデザインに至るまで空力を配慮した。ちなみにCD値はメーカーのデータでは4ドアが0.40、 5ドアは0.35という。レビン系は従来のサッシュレスドアからスタイリッシュで空力的に有利なプレスドアを採用した。 セダンと同じようなデザインテーマながら、FRらしい伸びやかなフォルムとなっている。リアビューも3ドアは ハッチ後端をつまんだスポイラー風の造形となり空気抵抗低減を意識した。また2ドアもトランクリッドを 水平にし、揚力の増加を防止している。(ソアラ風に見えるデザインであった) CD値は3ドアが0.35、2ドアは0.38と従来型より向上した。


インテリアデザインも従来型同様にセダン系とレビン系では大きく違う。 セダン系は2トーンの内装色を採用し、インパネの質感も大きく向上している。 ソフトパッドの面積が増え、内装色も3種類。メーターパネルのバイザーは小型化され、 従来組み込まれていたラジオはセンターパネル下部へ追いやられてしまった。 インパネ上部に配置すると、使いやすいが、心理的圧迫感を与える。とくにFFらしい 開放感を与えるためにラジオの位置を動かしたのではないだろうか。 センターパネル上部には空調パネルがあるが、本来使用頻度の高いオーディオは センターパネル上部に置くべきではないかというのが、人間工学的には正しいと思われるが この場所は一般的にスペース要件が厳しく、奥行きのあるオーディオユニットをおく事は、 小型車には辛いという事情があったようだ。FFになって室内が広くなったメリットを最大限に感じさせ、 尚且つ、若々しい内装デザインが異例に採用されている。 内装スペースも大きく拡大され、ユーティリティを大きく進歩した。 室内長、室内幅、室内高はそれぞれ1810mm、1380mm、1160mmとなり、従来型よりそれぞれ100mm、40mm、30mm大きくなった。 これにより室内の広さは従来型の2.27m3から2.45m3となり、約1割増加した。 フルフラットシートの採用、シートスライド量の増加(+30mm)、シートスライドピッチの細分化(20mm→15mm)や リクライニングピッチの細分化(3°20′→2°)、 3ウェイトランク等が採用されてよりファミリーカーらしいルーミーな室内が得られた。 レビン系にはセダンよりコントラスト(対比)の強い2トーン内装色を採用しており、 GT系グレードでも明るいヴィヴィッドな2トーンカラーとなったのが新しい。 スポーツは黒一色という公式から脱却を図ることができた。 またインパネのつくりも従来型ではインパネ上面をトレイ形状にしていたが、ここを面一化した。 このことで一体感が出された。このほか成形ドアトリムやラウンジ型リアシートが採用され、 室内全体で同じイメージを共有している。 シート類の改良はレビン系にも施され、上級グレードには本格スポーツシートが採用されている。 メーター類は簡略化され、電圧計が廃止され警告灯になった。 一方ではエレクトロニクス技術の発達に伴って液晶、LEDを利用した エレクトロニックディスプレイメーターが最上級仕様に標準装備されている。 このほか、当時の流行に沿った形でヘッドライトやワイパーのスイッチをダイヤル式に改めている。

メカニズムも一新されている。FF系に搭載された新エンジンは 1300の2A-LU型、1600の4A-ELU型である。他に従来型用エンジンを横置き化した1500の3A-LU型、 1800ディーゼルの1C-L型さ搭載されている。 FR系には名機と呼ばれた1600DOHCの2T-GEU型を引き継ぎ、新たに4A-GEU型が開発された。 1500の3A-||型は継続採用された。 また、サスペンションも大きく改良された。FF系はプラットホームを一新したしたため、 前後サス共にマクファーソン式ストラット4輪独立懸架となり、特にリアサスは、ばね下重量 を大きく低減している。FR系では従来型のサスペンションを流用したので基本的に大きな変更はない。

二種類の駆動方式を採用したカローラであったが、FRを残して爆発的人気を得、今なお国産小型スポーツの花形として 愛されたレビン系とは対照的に、FF化を機に若返りを図ったセダン系は苦戦を強いられた。 結果的にはレビン系に助けられて累計販売台数では大きな損失にはならなかったが、 この一件でカローラは若返りに対して一層の抵抗感を持つようになっていった。

5代目カローラ目次
トップページ
5代目カローラの広告