●イージードライブを実現したハイマチック―フルタイム4WD車追加

カローラにフルタイム4WDが採用されたのは1987年の10月である。 様々なハイテク技術が実用化され始めた1980年代の後半、フルタイム4WDという技術も 実用化され始めた。他社でも大衆車クラスの車種にフルタイム4WD車が追加される中、 カローラにも初のフルタイム4WDが搭載されることとなった。 トヨタのプレスリリースにはこう書かれている。『拡大する4WD車市場に向けて、 あらゆる条件で優れた走行性を発揮するフルタイム4WD車をカローラの新しいシリーズとして開発しました。 この新型カローラフルタイム4WDはセンターデファレンシャル機構の採用により、従来のパートタイ ム4WD車のような2WD⇔4WDの切替え操作を必要とせず、駆動力を4輪に分配することから生 まれる4WDならではの優れた走行性能を常時発揮させることを可能としています。 また、今回は、日本初の湿式多板クラッチ式センターデフ差動制限機構をもった"ハイマチックフルタイ ム4WD"の高性能な走りを、あらゆるドライバーの方々に楽しんでいただけるクルマといたしました。』

4WDは2WDと比較して、エンジンパワーを有効に4つの車輪に分配できるために、 高速直進性、加速性、コーナリング性、走破性、脱出性、登坂性に優れている。 そのため、トヨタでもランドクルーザーのような本格的4WDから、 スプリンターカリブのようなRVまで様々な4WD車が作られてきた。 しかし、従来のパートタイム方式による4WD車では使いづらい面があり、その事が4WDの魅力をスポイル していたのも事実である。 従来のパートタイム4WDとは、「通常走行時は2WDで走るが、オフロードを走るときは4WDに切り替えて走る」 という使い方が基本であった。なぜ通常走行時に4WDで走れないのかというと、パートタイム式4WDでは 前後のタイヤの回転数が等しくなるようになっており、旋回時には前後のタイヤ間に回転差が生じる。 オフロードでは路面の摩擦係数が低いために無視できるが、路面状態の良いオンロードではそれが 大きな抵抗となり、タイヤの回転差によって抵抗が生まれ、カーブを曲がるとブレーキをかけたようになる タイトコーナーブレーキング現象が発生する。 このために、パートタイム4WD車はオンロードにおいては完全に2WDで走るように指定されていた。

今回採り上げるフルタイム4WDとは、4WDと2WDを切り替えることなく常時4WDで走ることのできるシステムである。 パートタイム4WDの欠点であるタイトコーナーブレーキング現象を解消するには、 前後の回転差を無くしてやればよい。そこで左右の回転差を吸収するために使われてきたデファレンシャルギア (デフ)を前後間にも取り付けることで、前後の回転差を吸収させることにした。 これが、センターデフ方式のフルタイム4WDである。つまり、前と後と中央の3つのデフを持つことで 常に4輪に駆動力を伝達しつつ回転差の生じる旋回時においてもスムーズな走行を可能としているのである。 つまり、ドライバーは面倒な4WDと2WDの切り替え操作から開放された上に、 従来のパートタイム4WDでは得られなかった雨の日の高速道路などでも高い安定性を確保することができた。 しかし、このセンターデフ式フルタイム4WDにも弱点が無いわけではなかった。 滑りやすい路面での発進時、脱輪したときの脱出時、1輪だけがスタックした場合は、 デフの機構上、他の3輪には駆動力が伝わらないため、 脱出することができない。(パートタイム式はセンターでデフが無いため、脱出できる) このような非常時にはデフの働きを抑えるセンターデフ差動制限機構が必要となる。 センターデフの差動を制限することでデフの働きを止め、前後に等しく回転を伝えるように すれば、スタックした際にも他の3輪に駆動力が伝わり脱出することができる。

カローラに採用されたセンターデフ差動制限装置は、変速機の種類によって方式が違う。 MT車には、センターデフ機能を機械的にロックさせるデフロックが採用されている。 必要時だけインパネ内のデフロックスイッチをONにして差動を制限し、通常時はOFFにしておく。 ONにしたままではタイトコーナーブレーキング現象が発生するからである。 AT車には「ハイマチック」と呼ばれる日本初の湿式多板クラッチ式作動制限機構が採用された。 ハイマチックは前後輪の回転差動を油圧多板クラッチによって制限し、前後輪のトルク配分を行う機構である。

ハイマチック車にはオートバイのように湿式多板クラッチがあり、作動油(ATF)に圧力をかけて 油力の有無、強弱によってセンタデフの差動油圧を最適にコントロールしている。 このため、通常走行時にはコントロールスイッチをAUTOにしておけば常に最適の状態にトルク配分を行う。 コントロールスイッチをOFFにするのは牽引時、テンパータイヤ使用時、点検時など、ごく稀な状況のみに限られる。 油圧を最適に制御するために、常にスロットル開度、車速、シフト位置を検出している。 例えば発進時にはスリップしないように、センタデフクラッチの結合力を制御して確実な発進を可能とし、 大きくハンドルを切った際にはセンタデフクラッチの結合力を弱めてタイトコーナーブレーキング減少を緩和する。 また、高速走行時には、センタデフクラッチを完全フリーの状態にすることでセンタデフの性能をフルに 利用する。そして、極低μ路でスタックした場合にシフト位置がDレンジの時、 スロットル開度が小さいと差動油圧が低いから差動を制限する力が弱いのでスタックからの脱出は困難だが、 スロットル開度を大きくすれば差動油圧も高くなり差動制限力も大きくなるため、タイヤの空転を抑えて脱出ができる。 つまりタイヤがスリップしたなと感じたらアクセルペダルをさらに踏み込めば良いという事になる。 LレンジかRレンジを選択すれば、予め差動油圧を高めるセッティングになっているために、 より低いスロットル開度からでも差動油圧が得られ、走破性脱出性を高めている。 AT車用として開発されたハイマチックは、アクセルを踏むだけでセンタデフの差動制限を行うなど、 テクニックのいらないイージードライブに主眼が置かれており、より一層フルタイム4WDを身近なものにした。

高性能なフルタイム4WD車は価格が高くなる傾向があるが、カローラフルタイム4WDでは 上級車種であるコロナ、カリーナにも同様のシステムを同じエンジンで採用することでスケールメリットを 最大限利用したほか、デファレンシャルギアつき5リンク式リアサスペンション、ガソリンタンク を5代目カローラ時代にFR方式で残されたレビン用を流用することでコスト上昇を抑えた。

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