ヤマハ・YZF-R125

 長所:雰囲気満点
 短所:時と場所と人を選ぶ

 今回試乗したYZF-R125は2012年にフランスで生産されたEU向けモデル5D79である。逆輸入車のため、原付二種ステッカーが貼ってない。一見すると125とは思えない立派な車格だ。2014年モデルからフロント倒立フォークに変更されて一段とアグレッシブになっている。

 85kgの負荷をかけて上体を伏せないで (伏せても伏せなくてもほとんど体勢は変わらないっていうか伏せた方がむしろ楽なんですけど) 平地でアクセルを全開にするとデジタルメーターは次の速度を示した。100mで70km/h(3速)、200mで86km/h(4速)、300mで94km/h(以下5速)、400mで102km/h、500mで106km/h、600mで109km/h、700mで110km/h、1,500mで113km/h(6速)と加速していく。ギアごとの平地最高速は1速=39km/h、2速=55km/h、3速=77km/h、4速=93km/h、5速=110 km/h、6速=121km/hだった。進行距離ごとの到達速度は  CBR125R(JC50)にかなわないが、6速に入れてもまだ少しずつ速度が伸びていくのが印象的だった。無風時に上体を完全に伏せれば130km/hに届きそうな気がする。速度計の誤差は調べてないが、スピード感が異常に高いのも印象的だった。その着座姿勢から視線が路面に向きやすいのと、エンジンがとても賑やかだからだと思う。

 アイドリング時は約1,500回転。ノッキング耐性は意外と強く、発進したのちスロットルを完全に戻してクラッチレバーも握らずにどれだけ粘るか試したところ、2速までは1,500回転で耐え、3速は2,000回転、4速以降は半クラッチを要する。このときの速度計は1速5km/h、2速10km/h、3速15km/hで、多少カタカタ言うが3速までは半クラッチにしなくてもそこから再加速できる。

 動き出してからの低中速トルクも意外と強く、CBR125R(JC50)だと峠道の登りで2速では回しすぎ、3速では力不足という状況になるが、YZF-R125だと3速でもジワジワとチカラがこみ上げてくる。峠道は4速を軸として、上りは2〜4速、平地は3〜5速、下りは4〜5速を使うことが多かった。各段で下から上まで守備範囲が広く、繋ぎの良いギア配置で好感が持てる。これなら乗車姿勢だけを変更したFZ125 FAZERなるものに、そのまま使えるだろう。というかそれがMT-125なのか?

 加速音はいかにも単気筒で、低回転域は耕耘機のような安っぽさが、中回転〜高回転域は荒々しさが目立つ。音叉マークが付いているが、色気のある音色ではない。音と乗車姿勢に騙されてやたらと速度感があるが、速度数値や景色はあまり進まない。音は大きいけれど振動についてはミラーが小刻みに震えるくらいでタンクやシート、ステップにはほとんど伝わってこなかった。フロントに柔軟性を持ちつつも全体的に車体はカッチリしている。

 比較対象区間304.7kmを走って距離計が示したのは309.5km。+1.6%の誤差があるとするならばその区間の平均燃費48.0km/Lになった。この低燃費タンク容量前傾姿勢では一日に二度給油することは滅多にないだろう。あまり給油頻度が少ないとハイオク指定なのを忘れてしまいそうだ。

 スーパースポーツらしく極低速域ではハンドルが軽いのだが、前傾姿勢で体重が万遍なく車体にのっているせいか、ライダー本人がじっとしていれば意外なほど低速域での安定性も高かった。しかし、すりぬけには注意が必要である。ハンドルの切れ角が少なく小回りが非常に苦手で、スクーター>オフ車>ネイキッド車などと比べるとハンドルがハンドルとしてほぼ機能しないと考えた方がいい。ハンドルよりもタンクに抱き付くように跨り、ステップ荷重とアクセルワークで向きを変えていくようなイメージである。車体を倒せない極低速域では、向きを変えるに大きな旋回軌跡を必要とする。クルマとクルマの間をジグザグ縫っていくようなすりぬけは難しく、クルマの脇を直進で抜けていくすりぬけがメインとなる。ステップが高い位置にあり、ハンドル幅も狭いので、左側縁石寄りの直進すりぬけなら結構強い。体幹が弱く一本橋などのバランス走行が苦手な方は無理をしないように。

 バイクを降りてもハンドルが切れないことに驚く。狭い駐輪場だと何回も切り返さないとバイクが出せない。車重こそ軽いが、二まわり大きなネイキッドを取り回すくらいの寸法的余裕が必要である。

 サスペンション。フロントサスは路面追従性も衝撃吸収性もとても良いが、制動時の沈み込みが前傾姿勢を更に強くする。“ちょい乗り”時の不快要素のひとつである。リアサスは硬さ調整できないのが意外だが、加速時の踏ん張りが良く、捻じれ剛性が非常に高い。リアタイヤからリアサス〜フレーム〜ライダーまで一体感が強く、リアタイヤが滑ると自分の体まで一瞬にして横にスライドする。これがスクーターだと、リアタイヤが滑っても若干は足回りが撓るし、上体を動かして反射行動はとれるのだが、YZF-R125だと本人と一体化しすぎて反応することすら難しいのだろうか。

 短制動は乾燥路面でもWET路面でも傾向は似ている。リア単独では乾燥路面でも簡単に滑り出す。WET路面ではスリップ音もなくすぐに滑り出す。制動時は普通のスポーツバイクよりもかなり重心が前に移動しているのが良く分かる。フロント単独では、、、、、、すいません。転倒を警戒してフロントが滑り出すまで、またはジャックナイフするまでは試してません。ただ、フロントサスが目一杯沈み込むまでは持ち応えてくれそうだった。前後同時にかければ停止距離はもっと短かったが、リアは滑りやすいので添える程度で十分だ。
 標準装着されていたタイヤはミシュラン・パイロットスポーティだった。オーナーズマニュアルによればピレリ・スポーツデモンも標準指定されている。F:100/80-17 R:130/70-17はCBR125(JC50)と同じサイズである。 路面に凍結防止の縦溝が掘ってある“くだん”のトンネルでは滑りはしなかったが、すごい緊張した。

 “暗黒の峠道”区間は路面状態の良くないタイトコーナーが続く。誠にお恥ずかしい話だが、この区間で (調子に乗って) ハングオンした際に前輪が滑ってしまった。と同時に砂利を踏んだ後輪がかなり豪快に滑ってくれたおかげで奇跡的に転倒を免れることになった(汗)。この時はイン側のステップから足を外すのが精一杯で体重移動などする暇はなかった。 (そんな自分の操縦技術を棚に上げてこんな事を言うのも恐縮だが、) このタイヤはスーパースポーツに履かせるシロモノではないと思う。同じ体重の人間がハングオンした場合、R1やR6などよりも車重が軽いぶん重心が相対的に高いのに、スロットルを捻って湧き出るトルクは逆に小さい。ならばよりハイグリップなタイヤを履いてなければ同様に寝かせることができない。リアが砂利で滑るのは仕方ないとして、何も踏んでないフロントがこんなに簡単に滑り出してくれるようでは、一体何をするためのバイクなのか (と、ヘタクソがボヤいております)。

 ジャンル上、本来なら最高の性能を発揮してもらいたいところだが、砂利を恐れて寝かせられないYZF-R125と、ブレーキそっちのけでスパスパ曲がっていけるトリシティ125のどっちがこの区間のスーパースポーツなのかと考えさせられる結果となった。YZF-R125は路面状態の良いクローズドコース専用商品なのだろうか。

 とにかくシートが高くて、後席は更に一段高いので、大きく回し蹴りして乗降することになる。足着きもかなり厳しいので、保険のためサイドスタンド(エンジン自動停止)を使用して乗降することをお勧めしたい。170僂覆せ笋着座すると両足ともにつま先が接地する程度である。強い前傾姿勢で15分も乗っていると上半身を支える手が痺れはじめる。次の赤信号がこれほど待ち遠しい125も初めてだ。手をかばって腕も肩も背筋も連鎖的に疲労箇所が増えていき、丸一日乗っていると頭痛薬が必要になるほど体が凝ってしまった。筋肉痛が癒えるまで私は3日間も要した。慣れるまでは本当に大変だと思う。
 グリップ良くてもクッションそっちのけのぺったんこシートにもかかわらず、おしりはあまり疲れなかった。125DUKEのように足着き時に内股に干渉する形状でもない。ニーグリップがしっかり決まる。
 後席は乗降も大変だが、タンデムストラップに手を通すのも大変だ。座面は運転席より更にぺったんこ。法規上タンデムが許されるからといって、ここに人様を乗せる気がしない。

 標準状態で荷物を積載するにはゴムネットを使用し、後席の下を回り込ませて荷物ごとフックするか、前半分のフックをリアステップまで伸ばすしかないが、後席の面積が狭くていずれも荷物が安定しない。コーナリング中に荷崩れして荷物を落とすこと数回。社外キャリアで武装しないとツーリングは厳しい。メットホルダーもない。収納はシート下に工具と書類が入る程度である。

 メーターはアナログ回転計を中心としてデジタルメーターが左脇に備わる。トリップメーター=区間距離は2つ記録できる。燃料計は満タンにして6個の目盛りが5個になるのに走った距離が130km、4個になるのに更に110km。航続距離が充分すぎて正確性は気にならない。

 操作性は良好。スロットルは軽くて、レバーも遠すぎない。前後ともブレーキの構えがし易い。
 ウインカースイッチはシグナスXなどのスクーターと異なり、他社同様のプッシュキャンセルスイッチが一体となったタイプで扱いやすい。ホーンスイッチも親指が届きやすいように下に付いていて、前後ブレーキ(右手足)とホーン(左手)の同時操作ができる。当たり前のことなんだけどどっかの大手はスイッチの位置を変えやがって、、、。
 左右にポジションランプを従えたヘッドライトは光量55WのH7ハロゲンバルブを使用していてソコソコ明るいが、単灯なのと、ロービームは右側に、ハイビームは左側に若干ながら配光が偏っている。ロービームは5〜10mくらい先を中心に照射し、ハイビームはより上方を照らす。暗黒の峠道では主にハイビームにしたが、霧が濃いところでは光が霧に拡散して眩しいのと、ハイビームパイロットランプそれ自体の眩しさもあるので、時折ロービームに切り替えた。右のロービームと左のハイビームをスイッチで切り替えるほか、パッシングスイッチで先行車を煽ったり、対向車に道を譲ることができる。このパッシングスイッチは押している間だけ、左のハイビームが点灯する。つまりハイビーム時にパッシングスイッチを押しても何も変化しないが、ロービーム時に押し続ければ左右両方が点灯して一時的にクルマ並みの照射力を得ることが出来る。いっそのことパッシング時だけでなくハイビーム時も双灯して欲しいが、バッテリー負荷が大きいのだろうか?

 テール/ストップランプは横一直線に細いLED。点灯面積が狭いので被視認性が心配だったが、特に危険な状況には遭遇しなかった。

 通勤程度の短時間なら苦にならないが、長時間乗っていると自分がバイクのために労働している気がしてきた。バイクとの主従関係が逆転しているのではないかと。公道で遊ぶならポジションが楽なKTM・125DUKEヤマハ・MT-125をお勧めしたいし、スーパースポーツしたいなら車重にもパワーにも甘えることができるYZF-R25YZF-R6あたりの方がラクじゃないかと思う。それでもスタイリシュなYZF-R125が欲しいという貴方は心も体も若い証拠だ。

2014.10.6 記述
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