DIY microphone

DPA4060の性能に大きな不満があるわけではないのですが、作ってみるのも面白いかも、ということで情報収集してみました。マイクカプセルは、PanasonicブランドのECMが有名です(Panasonic ECMのカタログ)


パナソニックのマイクカプセルについて

有名なのは、WM-60Aと、WM-61Aです(いずれも無指向性)。61Aのほうが高感度、ローノイズです。WM-60Aは、国内で入手可能、WM-61Aは、ここから購入できます(送料が2000円かかる。また、5000円以下の買い物では、1000円の手数料を取られる)。

追記
WM-60Aは生産終了したようです。WM-61Aのデータシートは、こちら(pdf)です。


製作・参考記事

MicDIYers
MicDIYers掲示板(archives)★(古いほうの掲示板)
micbuilders★(こっちが新しい方)
カプセル改造(Linkwitz mod)
接続のバリエーション
diymic
diymic2


Linkwitz mod

さて、普通にプラグインパワーで動作するものを作るのでは自作虫が収まりませんので、改造版を作ります。なお、改造版でない通常のプラグインパワー方式でも十分に音は良く、お薦めです。
改造版(Linkwitz mod ification)とは、Siegfried Linkwitz氏考案のカプセルの改造です。カプセルの改造は他の流儀もあるようですが、これが最も著名なものと思われます。改造効果は、Linkwitz氏によると、主に(中から大音量での)歪みの低減です。さほど困難な改造ではありませんが、MicDIYersのforumにこのmodについての情報が大量にありますので、とりあえず情報を収集しておきます。

2-wire / 3-wire

2-wire、3-wireと2通りの配線方法がありますが、回路的には同一で、2-wireのほうが簡便です。私も2-wireの方で作りました。図については、上のカプセル改造のリンクを参照。

材料

(1)カプセル
カプセルを破壊する恐れがありますし、またカプセルの左右で著しく感度が違う場合の保険のためにも、いくつか多めに購入しておくのがよいでしょう。
(2)細いシールド線
DPAやサンケンが使用しているようなケブラーで補強された細く柔らかく強靭なシールド線が入手できればベストですが、それが無理としても、細いシールド線が必要になります。オーディオ製品に付属でついているようなRCAケーブルでも、マイクの取り回し(身に付ける場合)と、カプセルへの配線を考えると、まだ太いと思います。私は試作ではモガミの細いシールド線を使用しましたが(2526; 630mΩ/m,150pF/m)、特に推奨するわけではありません。手持ちだったいう理由です。DPA406xシリーズ用の延長コードを買う手もありますが高価です。(へピームーン取扱い; DAO60xx; 3.5m:5400円; 10m:6900円; 20m:8800円)。とはいえ、身に付けるのでなければ、少しぐらい太くても強引に半田付けすることも可能です。(*)

(*)その後、細いマイクケーブルをパーツ店で購入しました。80円/mでした。線間容量は10mで約1700pF(実測)でした。特に頑丈ではありませんが、普通に使う分には問題なさそうです。

(3)細い半田
普通に工作で使う半田ではちょっと太くて、小さいカプセルに半田付けするにはやや難しくなります。融点も(あれば)低いものがよいでしょう。なお、カプセルにもともとついている半田は、普通のものより融点が低い感じです。
(4)抵抗,コンデンサ
電解コンデンサに小容量のフィルムをパラってもいいんですが、リークが問題になる場合もあります。フィルムはコストというより、サイズが問題ですが、ルビコンの無誘導巻きなどは、フィルムコンの中では、容量のわりに小型で(耐圧が35Vと低い)、音もさらっときめ細かく変にキツイ音がしない感じでおすすめです(かなり細かい話ですが)。抵抗はお好きなものを。
(5)導電性エポキシ
通常のエポキシ接着剤も必要ですが(カプセルへの配線を固定するため)、導電性エポキシもあったほうがいいでしょう。カプセルを金属の筒などに接着&シールドするのに使います。が、高い...。

あったほうがよい工具

テスター、半田こては当然として、その他の工具。
(1)ルーペつきこて台
このmodでは、元はカプセルケースに接続されていたGnd端子を、カプセルから絶縁することになります(ここ(以下「上図」と略)の"cut trace"を参照)。これはかなり細かい作業で、ルーペで確認しながら行ったほうが無難です。さらに、上図のの部分は、相当小さいので、ルーペなしではんだ付けするのはちょっとやっかいです。なお、半田付けの際、エレクトレットを過熱しないためにも、重量の軽いエレクトレットを固定するためにも、このこて台には金属バサミがついているものがよいと思います。
(2)温度調整コテ(?)
果たして必要かどうかはわかりませんが、今後も電子工作をしたいという変な方は、購入しておいても損はないでしょう。私は何を血迷ったか、Wellerなんぞを買ってしまいましたが、もっと安い物でもいいと思います(多分)。これもエレクトレットへの過熱を防ぐためです。なお、コテ先は細いのがよいのかどうかはよくわかりません。細いコテは温度変化が激しいので、意外に使うのが難しいです。瞬間沸騰型のような強力な温度調整コテを持っていれば話は別ですが、普通のサイズのコテ先でいいと思います。
(3)ピンセット
細かい作業をするときの必須工具です。

製作編1 〜 カプセル改造

まずカプセルを改造しなければなりません。
Linkwitz氏の方法では、上図に直接半田付けするわけではなく、カプセルを保護している薄いアルミカバーを切り取って、下に隠れている銅帯部分に半田付けすることになります。上図の部分も銅帯ですが、このような構造になっています(アルミを全て取り除いた写真; 実際にはこの写真のようにカプセルの側壁のアルミまで取り除くわけではありません)。



カプセル配線について
Conductive Silver Pen(コンダクティブペン)を使うと、細かいハンダ付けが不要になります(但し信頼性は劣る)。国内では、RSコンポーネンツ等で入手できます(RSの場合;サービス用品/消耗品 > 接着剤 > 導電トレース作成用)。が、これも高価です。私は信頼性の点もあり、使っていません。
その他の工夫(#434)

カプセルケース
カプセルを何らかの金属製の筒に収めることになりますが、筒を導電性エポキシで固定する前に、カプセルの正面(黒い布が貼っている部分)にマスキングテープを貼っておいたほうがいいかもしれません。導電性エポキシは、泥みたいな物ですが、カプセルと筒を接着する際に、変に漏れたりしてカプセル正面が汚れる場合があるので(つーか、一回それでちょっと失敗した^^;)、マスキングテープを貼っておくといいでしょう。テープは、黒い布がはげるような強力なものはダメです。Linkwitz氏によると、この布は共振を抑える働きをしているそうですが、意外に繊細で、いじると元の特性に戻すのは困難だということです。

バッテリーボックス
このmodでは、バッテリーボックスを省略することはできません(*)。つまり、プラクインパワーでの駆動は無理です(当然のことだが、駆動が無理なだけであって、プラグインパワーのMic Inに接続するのは何の問題もない)。
2-wireの場合、バッテリーの極性に注意してください。シールド側が+という変則的な構成です(詳しく知りたい方は、MicDIYersのforumを参照)。

(*)と書きましたが、プラグインパワーに差し込んでも音は出ます。

感度
Linkwitz modは、内部のFETの動作をソースフォロアーに変えるものですが、出力電圧(感度)の低下はごくわずかで済むようです(但し2.2k負荷のソース接地に対して)。
実測データによると、WM-61A(12.2mV/Pa; -38dB/Pa),60AT(5.2mV/Pa; -46dB/Pa)とのことです(#816, #866; メーカースペックは、WM-61A(-35±4dB/Pa), 60AT(-44±3dB/Pa))。なお、内部のFETは2SK123との説が有力(?)です。

トラブル例
・シールドをきっちり行ってもハムが取れない場合、カプセルが壊れているとのこと(#881,Darren Nemeth/Giant Squid Audio Lab)
・電源のon-offをマイクのプラグの抜き差しで行う場合、プラグを抜いていても、出力コンデンサのリーケージによるものと思われる電池の放電が生じる場合がある(出力Cに電解を使う場合の注意点)。

試作品の写真
試作とはいえもう少し綺麗に作れよと言われそうですが、すぐに音を聞きたくて〜。カプセルのハウジングはきちんと考える必要があります。

バッテリーボックス部分。ありあわせの材料です(試作1号機)。


試作2号機。



録音部屋にサンプルをアップしています。

改良

試作品(1号機)を暫く使用しましたが、改善すべき点をいくつか。試作でなく一発で決めたい方は参考にしてください。

バッテリーボックスの入出力端子の場所
そもそもバッテリーボックスをアルミなどの金属箱にきっちり納めるかどうかの問題がありますが、いずれにせよ、入出力端子の相対的な位置関係を決めておく必要があります。仮に、ボックスを直方体とすると、
一つは、入出力を同一平面上にマウントする(あるいは端子を出す)方法、もう一つは、入出力を各々反対側にマウントする(サイコロでいえば、1-6の関係)方法があります。
ケースが巨大化した場合は、前者が有利です。この場合、入出力を各々反対側にマウントすると、鞄に放り込むときに不便です。
問題は、ケースが小型の場合や、上の試作品(1号機)のように、9Vバッテリーボックスの背面にパーツを並べたりする場合です。どちらでも良さそうですが、ポケットにバッテリーボックスを格納する場合を考えると、やはり入出力を同一平面上にマウントするのが便利だと思います(試作2号機を参照)。

スイッチ類
スイッチ類はないに越したことはありません。特に軽いパチパチスイッチだと、ポケットや鞄の中で勝手に切り替わる恐れがあります。
バッテリーボックスのon-offは、省略できます。というのは、回路図を見れば分かるとおり、マイクを挿していない状態では、電池の消耗はないからです。試作品でもこの方法を採用しています。この方法を採る場合には、マイクとバッテリーボックスの接続は、RCAではなく、ステレオミニか、あるいはフォン、XLRが良いでしょう。RCAだといちいち2本分挿さないといけないのでイザというときに面倒です。
ローカットフィルターをつけるとすると、スイッチの使用は避けがたく見えますが、頻繁にローカットを使わない方は、ローカットケーブルで行うという方法も考えられます。ローカットケーブルとは、勝手に考えた名前ですが、バッテリーボックスの出力コンデンサと直列に入るコンデンサ(場合によってはGNDに落とす抵抗も)を含んだケーブルです。いちいちケーブルを交換する手間はありますが、たまにしか使わないならばこういう方法もあるということです(この場合、コンデンサ放電用のRはケーブル側に内蔵させる必要がある; またミニプラグを入出力に使う場合、使えるCのサイズが限定されるのも注意)。

ローカットフィルターの設計
マイク入力にパナ改を接続する場合のローカットフィルターを設計します。まず、ソニーのポータブルDATの入力インピーダンス(Zin)ですが、D8、D100共に4.7kΩのようです。カプセル内FETの出力能力に多少不安もあるので、この4.7kΩとパラに入るコンデンサ放電用のRは大きめに設定して100kΩ、100k//4.7k=約4.5kΩとして定数を計算します。
カットオフ周波数の設定ですが、回路的に簡単な6dB/octとする場合、他の製品例を参照すると、80Hz〜160Hzあたりでしょうか。160Hzというと随分と高めに感じるかもしれませんが、6dB/octだとそれほど極端に低域はカットされません。

なお、試作2号機は、別の方法を採りました。これは、容量の違うコンデンサをぶら下げた出力端子をローカットの段階数だけ並べるという方法で、上の2号機では、3種のローカットを用意しました(この場合、コンデンサ放電用のRを小さくすると、ハイカットになるので注意)。この方法だと、ローカットの段階を変更する場合に、いちいちケーブルを抜き差しする必要はあるものの、スイッチが勝手に切り替わったりする恐れがありません。スイッチに四角いタイプのもの(パチパチスイッチではないタイプ)を使えば、勝手に切り替わる恐れは少なくなりますが、自作では穴あけが面倒です。
ちなみに、試作2号機では、ローカットは、およそ35Hz, 50Hz, 75Hzの3種に設定しました。6dB/octなので効きとしては弱いですが、おそらくこれで大きな問題は生じないであろうと思っています。

"head related" recording
modとは関係ないですが、とりあえずここで紹介しておきます。
まず、自分の耳を使ったバイノーラル録音(リアルヘッド)において左右のマイクのマッチングはそれほど重要ではないという意見があります(#500)。というのは、左右のマイクのばらつきより、自分の頭の形や、耳たぶの形の非対称性のほうがずっと影響が大きいという理由です。
なお、Linkwitz氏は、スピーカーでの聴取を前提として、"head related" recordingと名づける方法を推奨しています(#502)。これは、普通のバイノーラル録音をスピーカーで再生すると、2回のpinnae effectsによって音が変質することを防ぐための方法で、頭の形によるdiffractionを最大限に利用する録音方法です(耳たぶの近くに設置/あるいは、直径17cmの固い球体(=頭の代わり)の両側にマイクを設置)。


追記

現用のバッテリーボックスとTCD-D8。


箱を導電性プラスチックケースにしました。加工が容易です。パーツを若干変えました。 なお、セッティングはデジカメ用の安い三脚を利用すると楽です。



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