春日の出力トランスの実験

2000.11.06 T.Ogawa

東栄の出力トランスの特性を測定したので、秋葉原の(私の考える)トランス御三家の2番目として春日のトランスにも登場していただきましょう。ちなみに御三家のもう一つはノグチトランスですが、それはまた改めて紹介しましょう。なお名前を挙げた順番は単に話の成り行きで決まったもので、店の規模とか質とかで順位をつけたわけではありませんので念の為。

さて、今回のテスト対象は春日のOPT−41−357です。これは店頭で850円で販売されている真空管用の出力トランスで、1次側に3kΩ、5kΩ、7kΩのタップ、2次側に4Ω、8Ωのタップが用意されています。コアの大きさは東栄の600円トランスの積厚を3〜4mm薄くしたくらいで、価格が高いのに小さくなって割高な気もします。T600の取りつけ穴にはそのままフィットしそうです。以前に同じ春日の54B−57という1850円のトランスを使って5763の超三アンプおよび5687のシングルアンプを作ったのですが、結構な音で鳴ってくれたため、こちらの方にも期待を持って入手したものです。

 

その1 抵抗、インダクタンス

まず巻線の直流抵抗とインダクタンスを測定しました。やはりハンディタイプのマルチメータでの測定です。

1次巻線 直流抵抗

0−3kΩタップ

232Ω

 

0−5kΩタップ

316Ω

 

0−7kΩタップ

380Ω

1次巻線 インダクタンス

0−3kΩタップ

2.3H

 

0−5kΩタップ

4.1H

 

0−7kΩタップ

5.9H

2次巻線 直流抵抗

0−4Ωタップ

0.4Ω

 

0−8Ωタップ

0.7Ω

2次巻線 インダクタンス

0−4Ωタップ

4.7mH

 

0−8Ωタップ

9.3mH

東栄の600円トランスと比較すると、2次巻線の直流抵抗が低い(70%)ことが分かります。また1次、2次ともにインピーダンスの割にはインダクタンスが小さめと思われます。インダクタンス測定中にコアを指で押さえると簡単に測定値が数%変動しますが、コアにギャップが入っていて圧力でギャップの寸法が変わるからでしょうか。インダクタンスを大きく取れないのもギャップがあるからかもしれません。

 

その2 周波数特性

東栄の時と同様の測定方法です。1次側の3kΩ、5kΩ、7kΩの各タップを使用した場合について、2次側は8Ωタップに8Ωのダミーロード(抵抗)を接続して測定しています。なおインピーダンスが高いので1次側の駆動電圧は300mVにしました。

これを見る限り、驚くほどフラットで、50kHzでも3dB以下の低下です。低域もほとんど低下はありません。また1次側のタップによる違いもほとんど無いようです。

 

その3 インピーダンス特性

インピーダンス測定回路も東栄の場合と同様ですが、電流を検出する抵抗は3.3kΩに変更して、抵抗の端子間電圧が常に33mVになるようにレベルを設定しました。10uAのAC電流を流したときの電圧を測定してインピーダンスを求めることになります。

1次側の3kΩ、5kΩ、7kΩの各タップを使用した場合について、2次側は8Ωタップに8Ωのダミーロード(抵抗)を接続して測定しています。この場合も、1次側のタップによる違いはほとんど無いようです。

1kHzあたりでは大体スペック通りのインピーダンスになっています。300Hz近辺から下の周波数ではインピーダンスが低下しています。これは1次巻線のインダクタンスが小さいためで、150Hzより下ではほとんどリアクタンス分だけになっています。トランスとしての変換効率はどうなのか、ちょっと心配な特性です。逆に高域のインピーダンス上昇は軽微です。コアの材質や線の巻き方が優れているのでしょうか。

複数個の直列・並列接続でうまく低域の特性を補うことができれば良いアンプができそうです。

 

その4 1850円トランスも測っちゃいました

最初に書いたとおり54B−57という出力トランスはアンプに組み込んだ状態ですが、ちょっと配線をはずして測定してみました。比較のために上記の41−357の測定値の一部もいっしょに示しています。

   

54B−57

41−357(参考)

1次巻線 直流抵抗

0−5kΩタップ

253Ω

316Ω

 

0−7kΩタップ

302Ω

380Ω

1次巻線 インダクタンス

0−5kΩタップ

5.5H

4.1H

 

0−7kΩタップ

7.8H

5.9H

2次巻線 直流抵抗

0−4Ωタップ

0.5Ω

0.4Ω

 

0−8Ωタップ

0.7Ω

0.7Ω

  0−16Ωタップ 1.0Ω

なし

2次巻線 インダクタンス 0−4Ωタップ 5.7mH

4.7mH

  0−8Ωタップ 12mH

9.3mH

  0−16Ωタップ 25.6mH

なし

直流抵抗やインダクタンスを見ると、54B−57は41−357と同じ設計手法で単純にサイズアップしたような印象を受けます。ちょっと太目の線を同じ巻数で巻いて行くと、コアが大きくなった分インダクタンスがちょっと増えるけれど、抵抗はちょっと減るんじゃないかという素人考えです。まあ、抵抗が少なくてコアが大きいのだから、トランスとしての損失はかなり少なくなっていることが期待できます。

 

周波数特性は感心するくらいフラットです。

 

インピーダンス特性を見ると、54B−57は20kHz以上の高域でのインピーダンス上昇がありません。サイズが大きいだけでこのようになるとも思えないので、コアの材質が違うか巻き方が異なるものと思われます。逆に低い周波数では、参考のために850円のトランス41−357のデータも黄色で表示していますが、これと比べて54B−57の方が少しだけ低域よりになっているとはいえ、やはりインダクタンスの不足は否めないようです。

結論として54B−57は高域特性が良くて扱えるパワーも大きいので1850円の価値はあるけれど、たっぷりとした低音を狙うならちょっと役不足というところでしょうか。

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