簡易型DC-DCコンバータの実験

真空管を使った機器をバッテリー電源で動作させようとすると、高圧のB電源をどのようにして確保するかが問題になります。真空管に必要な電圧になるようにバッテリーを多数直列にするのは、コストがかかるし運用も面倒です。そこで低電圧の直流から高電圧の直流を得る装置が登場するわけですが、この装置をDC-DCコンバータと呼んでいます。(電圧を下げるために使う場合もあります。)

いまどき真空管でポータブルの機器を組むのは趣味のこだわりと相場が決まっていますので、効率・スペース・軽量化を追求する必要はありませんが、コストは重要な要素です。手を動かしたり頭を使ったりしながら自作することが面白いので、高価あるいは稀少な部品を使ったのでは本末転倒、ありあわせのパーツで何ができるかやってみました。

まずは、Harry's Home Brew に掲載されている回路を参考にして取りかかります。

(実験回路その1) 

トランジスタの無安定マルチバイブレータで矩形波を発振させ、コンプリメンタリのトランジスタ・スイッチで単相の矩形波出力を得て、ラダー型の倍圧整流で高電圧を取り出す回路です。この回路は5倍圧になりますが、トランジスタやダイオードでのロスがあるため、無負荷でも出力電圧は入力の5倍にはなりません。入力電圧は5Vから12Vまで対応できますが、安定化していませんので入力電圧によって出力電圧が変化します。この回路定数で発振周波数は約15kHzですが、1000pFと56kΩの時定数を変えれば簡単に周波数を変更できます。

発振用のトランジスタには2SC1815を使っていますが、小信号用のトランジスタなら大抵そのまま使えるでしょう。ただし電流増幅率hfeがアンバランスだと矩形波のデューティが50%からずれてしまいますので、ペア選別するのが望ましいでしょう。出力段にはPc30Wクラスのパワートランジスタを放熱器なしで使っています。30mA以上の負荷電流を取り出す場合は小型の放熱器が必要になります。NPN、PNPのトランジスタはコンプリメンタリ指定のペアではありませんが、飽和領域しか使わないスイッチング素子なので問題は無いようです。整流回路のダイオードはすべて1S1588クラスのスイッチング用のものです。この回路そのものが大電流を取り出せるものではありませんので、このダイオードでも大丈夫でしょう。整流回路のケミコンはありあわせのものを使ったので120uFが入ったりしていますが、すべて10uFでOKでしょう。ただしケミコンの耐圧は最低でもこの回路図に示した程度は欲しいところです。

この回路の難点は、倍率の割にダイオードとケミコンの段数が多いこと、後の段になるほどケミコンの耐圧の高いものが必要になることです。

入力DC電圧に対する出力電圧の変化を測定しました。負荷をつながない場合と、2.4kΩの抵抗を負荷につないだ場合との2通りです。入力電圧を増やすと出力電圧も直線的に上昇することが分かります。出力電圧の上昇分は入力の上昇分の5倍になっています。ただこの直線を入力電圧の低い方に延長しても原点を通りません。入力電圧の1.5V分くらいは無駄になっていることになります。これはトランジスタの飽和電圧(ONになったときにも残っている電圧)と、多数のダイオードの順方向電圧降下の影響です。

次に負荷電流を取り出したときの出力電圧の変化を測定しました。最初の1〜2mAで大きく電圧が下がりますが、それ以降は電圧の降下が緩くなります。10mAの電流増加で1Vの電圧降下がありますので、内部抵抗は約100Ωということになります。

次のグラフは、このユニットに入ってくる電力と出て行く電力を、いくつかの入力電圧について測定したものです。無負荷で、出て行く電力のない場合についても測定しました。赤が無負荷時の入力電力(入力電圧と入力電流の積)、青が2.4kΩの負荷抵抗をつけたときにその抵抗で消費される電力(出力電圧と出力電流の積)、紫はその負荷がつながっているときの入力電力です。入力電圧が上がると、どの電力も増加しているのは当然としても、2.4kΩの負荷では回路の内部で消費している電力の方が大きくて、随分と無駄の多い動作になっていることがわかります。

次のグラフは、入力電圧を9Vに固定しておいて負荷抵抗を色々と変えたときの、出力電流と効率を測定したものです。水色で表示した効率は、入力電力のうちのどれだけが出力の電力として取り出せるかの割合(%)です。出力電流を大きくすると、電圧は下がるけれど効率は良くなることがわかります。しかしそれも60%程度に限界があるようです。今日のスイッチング電源装置の効率は80%くらいあるようなので、それに比べると不満足な性能です。

次のグラフは、その効率の計算に用いた、入力電力と出力電力の測定結果です。黒の線と赤の線の差にあたる電力が回路の内部で無駄に消費されていて、それは出力電流によらず大体一定の大きさであることがわかります。

 

(実験回路その2) 

その1の回路に少し手を加えて二相の矩形波でコッククロフトのラダー整流回路を駆動するように考えてみました。この回路はまだ机上設計だけで実地検証していませんので、あとでまったくのお笑いになるかもしれませんが…。

この回路の良いところは、ダイオードやケミコンの数が電圧の倍数と同じで済むこと、ケミコンの耐圧が低くて済むことです。

 

 

戻る