Bの作曲家



マルク・ベルトミュー Marc Berthomieu (1906-1991)

フランスの作曲家,詩人,劇作家。パリ音楽院へ進み,アンドレ・ジェダルジュに対位法,ノエル・ガロンにフーガ,ポール・ヴィダルおよびアンリ・ビュセールに作曲法,シャルル・シルヴェールに和声法を師事。1962年にパリ十五区区立音楽院を設立するなど,生涯の大半を教育活動に従事。1973年にSACEMのディディエ・モープレー賞を受賞,さらに1977年にはSACD(劇作家演劇音楽家協会)のモーリス・イヴァン賞を受賞。その他,ローマ賞,フランス学士院賞,レオ・ドゥリーブ賞,エルネスト・レイエル賞(1969、歌劇ケーニュスマルクで)を受ける。文筆家としても活動し,1981年にはジャン・コクトー賞を受けた。フランス古典音楽に立脚した簡素な旋律美と,印象派の影響下にある瀟洒な和声感覚を特徴とする。近年,僅かに器楽作品が再評価されつつあるものの,その存在はほぼ忘れられたままであり,再評価が待たれる。


 主要作品

歌劇 ・ケーニュスマルク koenigsmark (1969)
・恋の駆け引き marivaudage (-)
・ロヴェールとアンテール Rovère et Antèle (-)
室内楽 ・叙唱とスケルツォ recit et scherzo (1970) {bssn, p}
・音楽の詞華集 florilège musical (1973) {tp/vln/hrn/tb/vla/vc/b/fl/ob/cl/bssn, p}
・5つのニュアンス cinq nuances (-) {fl, hrp}
・舞踏曲 gaillarde (-) {vc, p}
・4つの小品 quatre pièces (-) {cl, p}
・三部作 triptyque (-) {hrp}
・アルカディエ arcadie (-) {4fl}
・組曲 suite (-) {vc, p}
・アンダンテとリゴードン andante et rigaudon (-) {ob, p}
・猫 chats (-) {3fl}
・3つの主題 trois thèmes (-) {fl, p (hrp)}
・4つの小品 quatre miniatures (-) {3fl}
・7つのヴォーカリーズ sept vocalises (-) {fl}
・平穏に apaisement (-) {vc, p}
・アリア aria en la majeur (-) {vc, p}
・バガテル bagatelle (-) {fl, p}
・宝石細工 camées (-) {vc, p}
・喜びのカンティレーナ cantilène d'été (-) {vc, p}
・2つの小さな小品 deux pièces breves (-) {vc, p}
・2つのレクレーション deux recreations (-) {fl, p}
・寄港地 escales (-) {fl, p}
・戦争の狭間 interlude martial (-) {tb, p}
・ラ・サングリア la sangria (-) {2g}
・音楽の想い pensées musicales (-) {vln, p}
・踊る小組曲 petit suite à danse (-) {4fl}
・戦時の小組曲 petit suite martial (-) {tb, p}
・探求 poursuite (-) {vc, p}
・伝言 message (-) {2fl}
・4つの動き quatre mouvements (-) {fl, vc, p}
・サラバンド sarabande (-) {vc, p}
・太陽と歓喜 soleil et joie (-) {vc, p}
・ロマンティックな組曲 suite romantique (-) {fl, p}
・3つの素描 trois esquisses (-) {4sax}
・小組曲 suite brèves (-) {4sax}
・エオリア旋法の組曲 suite eolienne (-) {4fl}
・魂の小ヴァイオリン petit violon dans l'âme (-) {vln, p}
・朝顔 volubilis (-) {sax, p}
・渦巻き volutes (-) {fl, p}
ピアノ曲 ・グァパ guapa (-)
・ハンガリー狂詩曲 rapsodie Hongroise (-)
・気まぐれな驢馬 l'âne capricieux (-)
・前奏曲 prélude de Folet (-)
歌曲 ・パリの庭 jardins de Paris (-1979?) {btn, 2hrp, vla, 2fl, bssn, accordion, vc, p}
・シャルル・オルモンの7つの歌 sept poèmes de Charles Oulmont (1946-1963) {vo, p}
・言葉と物 le mot et la chose (1946-1963) {vo, p}
・エッフェル塔 la tour Eiffel (1946-1963) {vo, p}
・芸術家 l'artiste (1946-1963) {vo, p}
・我が愛すべき故人たち mes amours mortes (1946-1963) {vo, p}
・愛すべき娘を彼に il faut avoir aimé (1946-1963) {vo, p}
・この恋の甘さ c'est un amour si doux (1946-1963) {vo, p}
・黙想 recueillement (1946-1963) {vo, p}
・愛されぬ貴方 vous n'aimez pas (1946-1963) {vo, p}
・馴染みの夢 mon rêve familier (1946-1963) {vo, p}
・もし私がロンサールならば si j'étais Ronsard (1946-1963) {vo, p}
・もし私がドルレアンならば si j'étais Charles d'Orléans (1946-1963) {vo, p}
・海辺の丘 coline marinte (-) {vo, p}
・哺乳瓶 robert (-) {vo, p}
・蝸牛のロンド ronde des escargots (-) {choir}


 ベルトミューを聴く


★★★☆
Jardins de Paris / Sept Poèmes de Charles Oulmont (Maguelone : MAG 111.101)
Gabriel Baquier (btn) Lily Laskine, Marielle Nordmann (hrp) Jean Leber (vln) Bruno Pasquier (vla) Roger Bourdin, Pierre-Yves Artaud (fl) Maurice Allard (bssn) Etienne Lorin (accordéon) René Benedetti (vc) Marc Berthomieu, Olivia Garnier (p)
管見の限り,唯一CDになったベルトミューの作品集。ラヴェル『博物誌』の素晴らしい名唱が印象に残る名手バキエが全面に渡って独唱を担当。超豪華な室内楽アンサンブルを従えた前半『パリの庭』および単品の小品歌曲が1979年,オリヴィア・ガルニエのピアノ伴奏で独唱を聞かせている後半『7つの歌曲』ほかが1996年の録音です。古典音楽に傾倒したベルトミューだけに,ハープが入る『パリの庭』が一番の聴きもの。演奏は少し粗いですが,素朴な旋律美と,控えめながら適度に近代的な和声とが,のどかに溶け合った瀟洒な世界。春のうららかな日射しに包まれて微睡むハイジのお爺さんのような,微笑ましいバキエの歌声も良いです。ただ,ピアノ伴奏が中心の後半戦は,作曲者の古典趣味が悪い意味で色濃く出た作風で,ドイツ・リート風。教条的かつプレ・モダンな印象は拭えません。バキエも1996年の録音では声の衰えが著しく,それが残念です。(付記:本CDの入手に際してはmyaさんのご助力を頂きました。有り難うございます)

★★★★
"Interlude - Französische Musik für Flöl;te, Violine und Harfe :
Suite / Deux Ballades (Goossens) : Deux Préludes Romantiques / Promenade à l'Automne (Tournier) : Two Dances (Moyse) : Cinq Nuances / Triptyque (Berthomieu) : Entr'acte / Deux Interludes (Ibert)" (Thorofon : CTH 2194)

Hans-Jörg Wegner (fl) Marcus Honegger (vln) Ellen Wegner (hrp)

小生が知られざる作曲家ベルトミューに出くわしたCDがこれ。ハノーヴァー音楽院出のウェルナー夫妻と,シュレスヴィヒ・ホルスタイン室内楽アンサンブルの首席奏者オネゲル氏の演奏によるフランス作品集。モロ,独セントリックな顔触れのどこからこんな企画が生まれたのかと思ってしまいますが,ハープのウェグナー女史はシャンタル・マチウの弟子で,いわばトゥルニエの孫弟子にあたるわけです。イニシアチブは彼女がとったのでしょう。演奏は意外なほど瀟洒で,レベルもそれなりに好い。ベルトミュー,モイーズはいずれも,作曲家としては恐ろしくマイナーですが,曲のほうは充実。印象主義の影響を顕著に感じさせつつも,フォーレの書法を範にしたと思われる,大変穏健で瀟洒な後期ロマン派室内楽となっています。

(2002. 8. 6)