Bの作曲家



フランク・ブリッジ Frank Bridge (1879-1941)

イギリスの作曲家,ヴィオラ奏者,指揮者。1879年2月26日,サセックス州ブライトンに生まれる。家庭は裕福とは言えなかったものの,劇場オーケストラの指揮者だった父からヴァイオリンの手ほどきを受け,12才でヨーク音楽学校へ進んでヴァイオリンを学んだ。1899年に奨学金を得て王立音楽学校へ進み,ヴァイオリンを学んだのち,チャールズ・スタンフォードから4年間に渡って作曲法を師事。当初ヴァイオリン奏者を目指したものの,程なくヴィオラ奏者に転向。1906年にヨアヒム四重奏団に加入し,次いでボローニャ四重奏団の一員として活躍。指揮者としては早くから評価され,1910年から1911年に掛けてはサヴォイ劇場で,1913年にはコヴェント・ガーデンでそれぞれ指揮者。また,1923年にアメリカの財閥クーリッジ夫人(Elizabeth Sprague Coolidge)に招かれて渡米し,ボストン,クリーブランド,デトロイト,ニューヨークで自作公演も行っている。優秀な教師でもあったが,弟子はベンジャミン・ブリテンただ一人しか取らなかった。ロマン派様式を基調にした穏健な書法を基調にしつつも,無調・多調・印象主義など近代音楽の書法を雑多にとりこんだ折衷的作風を得意とし,イギリス国内では人気が高い。1941年1月10日,イーストボーンにて死去。(関連ページ:Frank Bridge Website 英語


主要作品

舞台作品 ・歌劇【クリスマスのバラ】 the christmas rose (1929/1932) {3stage}
管弦楽曲 ・ダンス・ラプソディ dance rhapsody (1908)
・交響組曲 『海』 symphonic suite 'the sea' (1910-1911)
・ダンス・ポエム dance poem (1913)
・交響詩 『夏』 symphonic poem 'summer' (1914)
・狂詩曲 『春の訪れ』 rhapsody 'enter spring' (1927)
・河岸にしなだれる柳 there is a willow grows aslant a brook (1928) {small-orch}
・レプス序曲 Rebus overture (1940)
協奏曲 ・子守歌 berceuse for violin and orchestra (1902) {vln, orch}
弦楽合奏曲 ・弦楽オーケストラのための組曲 suite for string orchestra (1908)
・悲曲 lamento (1915)
・ロジャー=ドゥ=カヴァリー卿 Sir Roger de Coverley - Christmas dance (1922)
協奏曲 ・弔辞−悲劇的協奏曲 oration - concerto elegiaco (1930) {vc, orch}
・狂詩曲 『幻影』 rhapsody 'phantasm' (1931) {p, orch}
合唱曲 ・祈り a prayer for chorus and orchestra (1916) {choir, orch}
室内楽曲 ・3つのノヴェレッテ three novelletten (1904) {2vln, vla, vc}
・ヴァイオリン・ソナタ sonata for violin (1904) {vln, p}
・ピアノ五重奏曲 piano quintet (1905) {p, 2vln, vla, vc}
・幻想弦楽四重奏曲 phantasy string quartet (1905) {2vln, vla, vc}
・3つの牧歌 three idylls (1906) {2vln, vla, vc}
・9つのミニチュア集 miniatures, three sets (1906-1907) {vln, vc, p}
・ピアノ三重奏曲 piano trio (1907) {p, vln, vc?}
・メロディ mélodie (1911) {vc, p}
・チェロ・ソナタ sonata for cello and piano (1913-1917) {vc, p}
・弦楽四重奏曲第二番 string quartet no. 2 (1905) {2vln, vla, vc}
・横町のサリー,熟したさくらんぼ Sally in our alley, cherry ripe (1916) {2vln, vla, vc}
・弦楽六重奏曲 string sextet (1923) {2vln, 2vla, 2vc}
・弦楽四重奏曲第三番 string quartet no. 3 (1926) {2vln, vla, vc}
・狂詩曲 rhapsody (1928) {2vln, vla}
・ピアノ三重奏曲第二番 piano trio no. 2 (1929) {p, vln, vc?}
・ヴァイオリン・ソナタ sonata for violin and piano (1932) {vln, p}
・ディベルティメント divertimenti (1934-1938) {fl, ob, cl, bssn}
・弦楽四重奏曲第四番 string quartet no. 4 (1937) {2vln, vla, vc}
・ディヴェルティメント divertimenti (1940) {4winds}
ピアノ曲 ・3つのスケッチ three sketches (1906)
・4つの個性的な小品 four characteristic pieces (1915)
・3つの叙情詩 three lyrics (1921-1924)
・ピアノ・ソナタ piano sonata (1925)


ブリッジを聴く


★★★★
"Sinfonia Concertante (Walton) / Piano Concerto (Ireland) / Phantasm for Piano and Orchestra (Bridge)" (Conifer : 74321 15007 2)
Vernon Handley (cond) Kathryn Stott (p) Royal Philharmonic Orchestra

作品ごとに作風を変え,今ひとつ本質の掴みにくいカメレオン,それがブリッジという作曲家。しかし,そんな作曲家でも名前が残っているのは,雑然としていながらも,書法そのものはテンションが高く,単なる器用貧乏と看過できないところにあります。カップリングの素晴らしいこの盤に収まった『幻影』は,ハイ・テンションなブリッジの作風を堪能できる一枚。無調よりのザワザワした演奏は,第2次対戦から太平洋戦争へと向かう不穏な時代の空気をそのまま体現しているようにも聞こえます。発売から10年以上経っているので入手は難しいかも知れませんが,演奏もカップリングも好いので,一聴の価値はあります。

★★★★☆
"Concertino for String Octet / Phantasy Sextet (Goosens) : String Sextet (Bridge)" (Chandos : CHAN 9472)
Academy of St. Martin-in-the-Fields Chamber Ensemble

玉石混淆な演奏をするアカデミー室内弦楽アンサンブルの,これは演奏良質盤。小生の購入目的は(ブリッジのページにも拘わらず恐縮ながら)カップリングのグーセンスのほうで,実際この盤の美点はグーセンスのほうにあると思うのですが,ブリッジの演奏盤を取り上げてみて,どうもカップリング盤が多いと感じるのは小生だけ?知名度から言えばバックス・クラスにも拘わらず,折半物がこれだけ多いというのは,考えようによっては彼の作品が単体では売れないと思われていることの裏返しではないかと小生には思われるのですが如何?彼の作風は雑多だと再三申し上げていますが,そうした些か日和見主義的なところが,固定客の付きにくい要因になっているとすれば,彼が一枚看板で売れないことも一面納得させられてしまうような気がいたします。『弦楽六重奏曲』はロマン派様式の佳作です。

★★★☆
"Elegiac Variations / Cello Sonata (Donald F. Tovey) : Cello Sonata / Melodie / Scherzo (F. Bridge)" (Marco Polo : 8.223637)
Rebecca Rust (vc) David Apter (p)
どちらも知名度がパッとしない近代イギリス無名作家のチェロ作品のカップリング盤。子供だましのような通俗作品を書く表情と,テンションの高い無調よりの作品を書く表情を持つカメレオン作家ブリッジですが,ここでもそのカメレオン振りが。その辺りのアヤシイ傾向は『スケルツォ』あたりに出てきます。しかし,1913年〜1917年に書かれた『チェロ・ソナタ』と,『メロディ』は比較的初期の作品だからか奇を衒わず,拡張された後期ロマン派的書法の中にカラフルな和声とリリカルな歌心を表出させた,大変美しい作品。この小傑作を聴けたからまあエエか,と無理に納得しましょうか。余談ながら,チェロという楽器は弾くのに体力のいる楽器なのだそうで。女流チェリストの本盤はその点線が細く力感不足が否めないものの,演奏は丁寧で良いと思います。

★★★★
"Eclogue (G. Finzi) : Sir Roger de Coverley / An Irish Melody (F. Bridge) : An English Suite (H. Parry) : There is a Willow Grows aslant a Brook / Two Entr'actes / Two Old English Songs (F. Bridge)" (Nimbus : NI 5366)
William Boughton (cond) Martin Jones (p) English String Orchestra

英国弦楽オーケストラの創設者,ボートンが,手兵を率いて3人のマイナー系英国近代作曲家をとりあげたコンピもの。ブリッジはカメレオン的なところのある作曲家だと申しましたが,この作品集にもそうした傾向があります。『ロジャー=ドゥ・カヴァリー卿』は多調,『河岸にしなだれる柳』は無調的傾向,さらに『2つの間奏曲』では旋法・民謡的要素が多分に見られ,ともに印象主義的な茫洋感と色彩感が見受けられます。日本でもうひとつこの作曲家の人気があがらないのは,こういう雑多な作風がともすれば器用貧乏に感じられるからでしょう。このCDは主な弦楽のための小品を集めた徳用CD。『ロジャー=ドゥ・カヴァリー卿』など意外な佳作で,演奏良質盤です。

★★★★
"Piano Trio No. 2 (Bridge) Piano Trio in B flat (Bax)" (Chandos : CHAN 8495)
The Borodin Trio
近代イギリスに於ける怪人二十面相ことフランク・ブリッジとのカップリングによる,バックスのピアノ三重奏曲。1928年に書かれたブリッジの三重奏は,後期スクリャービン的旋法性にどっぷり浸かった,呪術的かつ陰鬱な作品。『幻影』などに聴ける,先鋭的な純音楽家としての彼の美意識が色濃く出たイレギュラーなリズムと無調寸止めの分散和音は,大戦間の不穏な空気を色濃く反映しているかのようです。いっぽう1945年に書かれたバックスの三重奏は,調性記号が示されていることからお分かりの通り,いたって穏健なモダニズムに満ちた佳品。ケルト情緒を,荘重でアタックが強いピアノの和声や旋法込みの旋律にちらつかせつつ,英国のポスト・ロマンティストらしいノーブルな叙情性とダイナミックなリズムを彩り良く絡めたバックスらしい筆致。この人はやはり小編成の曲で魅力を発揮するタイプだな〜と頬が緩むのを禁じ得ませんでした。演奏するボロディン・トリオは,読んで字の如く全員ソ連出身。モスクワ音楽院で邂逅したピアノとヴァイオリンのご夫婦に,1970年のプラハ国際優勝者のチェロが相乗りする強力トリオで,1976年の亡命後西側で高い評価を得たそうな。ちょっとヴァイオリンに年齢を感じるところはあれ,ピッチも一応は正確,程良くメリハリが利いた好演でいらっしゃると思います。

★★★★☆
English Tone Poems "Irish Landscape (Bax) The Banks of Green Willow / Two English Idylls (Butterworth) Two Pieces (Moeran) There is a Willow grows aslant a Brook" (EMI : TOCE-6420)
Jeffrey Tate (cond) English Chamber Orchestra
これはEMIから出た,近代イギリスのトーン・ポエム(交響詩)を集めた作品集。バックス以外は現在でもなお過小評価の極みにある作曲家ばかりです。旋法・多調を利して巧みな対位法を駆使するモーランの個性がやはり抜きんでているような気がしますが,ここでは,バターワースの作品に注目していただきたい。彼は若くして戦死してしまったため作品は僅少で,管弦楽はここに収められたもの以外に僅か1曲だけ。それ以外のジャンルを含めても,この他に歌曲・合唱曲が数点ほど残されているのみ。夭折が無名に拍車を掛けているだけに作風は穏健で,いかにもこの時代のイギリスの作曲家らしい,牧歌的なロマンティシズムが満ちあふれた佳品ばかりです。演奏は作品への共感に溢れ,弦部は伸びやかで演奏も好い。これからイギリスものでもという方には,こういうCDなど良いかも知れません。

(2001.6.26 uploaded)