Cの作曲家



ギュスターヴ・シャルパンティエ Gustave Charpentier (1860-1956)

フランスの作曲家。1860年6月25日ロレーヌ地方ナンシー近郊のデューズ(Dieuse)生まれ。普仏戦争の戦禍を避けてトゥールコアンに移住。15才当時,彼の地の製粉所の労働者として働いているときに,雇い主から初めてヴァイオリンを学ぶ。彼の才能を見込んだ雇用主の援助で1879年にリール音楽院のヴァイオリン科に進学し,次いで1881年にパリ音楽院へ進む。当初はヴァイオリン科に進んだが,持ち前のボヘミア気質から教官と衝突し,いったん退学。しかし1885年には再入学して,ジュール・マスネに作曲法を師事した。1887年にカンタータ『ディドン』でローマ大賞受賞。1890年までのイタリア留学中に作曲した『イタリアの印象』が評価されて人気を確立。その後はマスネと同様に絵画主義ロマン派音楽を継承し,平易なオペラや舞台音楽の作曲家として人気を博した。しかし,作品数は極端に少ない。後年は評価され,1900年に騎士章(=レジオン・ドヌール5等勲章),1922年に将校(同3等賞),1950年には総官にも選ばれたほか,1912年にはマスネーの後任として仏学士院会員にも選任されているが,第二次大戦後の晩年は隠遁生活を送った。1956年2月18日パリにて死去。


主要作品

舞台作品 ・歌劇【ルイーズ】 Louise (1889-1896) {sop, tnr, choir, orch}
・歌劇【ジュリアン】 Julien (1913) {vo, choir, orch} ...
「詩人の生涯」を元に作曲
・歌劇【下町の恋人】 l'amour au faubourg (1913)
・抒情劇【オルフェー】 orphée (1931)
管弦楽 ・交響組曲【イタリアの印象】 impressions d'Italie, suite (1889-1890)
・交響詩【ミュンヘン】 poème symphonique 'Munich' (1911) ...
未出版
・泡沫の人生 la vie féerique (1913) {vln, orch}
合唱曲
管弦付帯
・抒情的音画【ディドン】 didon (1887)
・歌の詩 poèmes chantées (1894) {vo, p (orch)}
・劇的交響曲【詩人の生涯】 la vie du poète (1888-1889) {vo, choir, orch}
・ワトーへのセレナーデ sérénade à Watteau (1896) {vo, choir, orch}
・載冠式 la couronnement de la muse (1897) {vo, choir, orch}
・讃歌 le chant d'apothéose (1902) {sop, tnr, btn, choir, orch}
歌曲 ・小さなコマドリ la petite frileuse (1885) ....J.L. Guez詩
・カプリの少女 a une fille de Capri (1888) ...
L. Puech詩
・祈り prière (1888) ...
E. Blemont詩
・ミュレ a mules (1890) {btn, f-vo, orch}...
J. Mery詩。「イタリアの印象」第三曲がモチーフ。管弦楽編曲版あり。
・秋の歌 chanson d'automne (1890) ...
Verlaine詩
・ひび割れた鐘 la cloche fêlée (1890) ...
C. Baudelaire詩
・道の歌 la chanson du chemin (1893) {sop, tnr, 2f-vo, p (orch)} ...
C. Mauclair詩
・木馬 les chevaux de bois (1893) {vo, p /sop(tnr), f-vo, orch} ...Verlaine詩
・悲嘆 complainte (1893) ...C. Mauclair詩
・エキゾチックな芳香 parfum exotique, (1893) {vo, p /tnr(sop), f-vo, orch} ...C. Baudelaire詩
・三人の魔女 les trois sorcieres (1893) ...
C. Mauclair詩
・寓話 allegorie (1894) {vo, p /sop(tnr), f-vo, orch} ...
G. Vanor詩
・偽りの印象 impressions fausses (1894/1895) {btn, 2m-vo, p (orch) /vo, p} ...
Verlaine詩
・悪の華 les fleurs du mal (1895) ...
Baudelaire詩
・フランス民謡集 chansons populaires (1913) ...
編曲作品


シャルパンティエを聴く


★★★
"Louise"(Nimbus : NI 7829)
Ninon Vallin (sop) Georges Thill (tnr) Eugène Bigot (cond) Les Choeurs Raugel et Orchestreet al.

パリ音楽院の教授職にあり,優秀な教育者として数多くの門下を輩出したマスネの弟子には,のちにラヴェルの師匠にもなったフォーレのような才気闊達な人もいましたが,一方で師匠の後を追って保守的なロマン派オペラ作家の道を進むことになった人も多かったようです。1956年まで生きていながら,ピエルネのように印象派へ手を染めた形跡もないシャルパンティエは,その中にあっても特に忠実な僕なのでは。『ルイーズ』は,師匠の後を追ってそのまま無名の海へと流れ去っていったこの作曲家の作品中で,ほとんど唯一録音機会のある演目。しかし,中身は典型的なロマン派オペラ。やはり,機能和声に立つ音楽と,それに立脚しない近代以降の音楽とは,決定的に異質なものだと思わずにはいられない作品です。少なくともこの作品,印象主義の色を好む人にはイタリア・オペラなどの如く退屈に響くことでしょう。仏ディスク大賞を受賞したこのCD,録音悪いながら演奏(唄)そのものは良いです。

★★★☆
"Impressions d'Italie (Charpentier) Suite No.4 'Scènes Pittoresques' / Suite No.7 'Scènes Alsaciennes' (Massenet)" (Decca-Universal : UCCD-7130)
Albert Wolff (cond) André Boutard (cl) Robert Gortier (vc) Paris Conservatoire Orchestra
マスネーに師事したロマン派作家シャルパンティエの数少ない管弦楽作品の中でも,『イタリアの印象』は最も知名度高。とはいえお目に掛かることは滅多にありません。『絵のような風景』や『アルザスの風景』という標題から,印象主義を連想してしまいますが,内容は保守的なロマン派音楽。シャルパンティエの『イタリアの印象』も同様。調性は安定し,和声は機能的です。しかしながら,シャルパンティエはさすがに20世紀の作曲家。「ラバに乗って」と題され,いかにも異郷趣味が出てきそうな第3楽章以降に入ると,保守的な形式の随所に民謡起源なフレーズが巧みに挿入され,穏健なモダニストの面目躍如たる書法を堪能できます。モントゥーと同世代の指揮者ウォルフはシュミットの管弦楽作品も録音している名匠で,ここでも繊細な指揮を披露。パリ音楽院管の演奏もきめが細かく,秀逸の部類に入るものだと思います。

(2002. 11. 6 uploaded)