Cの作曲家


エルネスト・ショーソン Ernest Chausson (1855-1899)

フランスの作曲家。1855年1月20日パリ生まれ。両親の希望ではじめ法律を学び,22才で弁護士資格を得るも,サロンでファンタン=ラトゥールら若手芸術家たちと交流するようになり,24歳でパリ音楽院へ進学。はじめジュール・マスネーに師事したが,その後セザール・フランクに傾倒。1871年に創設された国民音楽協会の一員として活動した。ワグネリアンから出発。懐旧的な後期ロマン派形式の上に,フランス的エスプリと官能的な叙情性を折衷,フランキストの一員として,印象主義の前提となる穏健で甘美な作風を展開した。多くのフランク門下生同様作品数は多くないが,とりわけ歌曲には優れ,管弦楽と歌曲とを融合させる新しい試みを成功させた『愛と海の詩』などの傑作を残す。1899年6月10日,パリ郊外マント=ラ=ジョリ(Mantes-la-jolie)近郊の別荘地ルメイ(Limay)を,娘と自転車で散策中に事故死(事故の瞬間を誰も見ていないことや,直前の行動が不自然な点から,自殺説もある)。ペール・ラシェーズ墓地に埋葬された。


主要作品

※Barricelli and Weinstein. 1955. Ernest Chausson. Norman. および Gallois, J. 1994. Ernest Chausson. Fayard. を入手しました。
作品表は時間が出来次第,完全版へ改訂します。

歌劇/舞台音楽 ・アルテュス王 le roi Arthus (1886-1895)
・ヴァンサン・ダンディへのフェラール le fervaal de M. Vincent d'Indy (1897)
管弦楽 ・交響詩『ヴィヴィアーヌ』 poème symphonique 'Viviane' (1882-1883)
・森の静けさ solitude dans les bois (1886)
・嵐 la tempête (1888)
・交響曲変ロ長調 symphonie (1889-1990)
・交響詩『祭りの夕べ』 poème symphonique 'soir de fête' (1898)
協奏曲 ・詩曲 poème (1896) {vln, orch/vln, p, 2vln, vla, vc}
室内楽/器楽 ・アンダンテとアレグロ andante et allegro (1881) {cl, p}
・ピアノ三重奏曲 trio (1882) {vln, vc, p}
・鳥たちに les oiseaux (1889) {hrp, fl}
・コンセール concert (1891) {vln, p, 2vln, vla, vc}
・小品 pièces (1897) {vln, p}
・ピアノ四重奏曲 quatuor pour piano et trio à cordes (1897) {p, vln, vla, vc}
・聖体拝領のための晩祷 vêpres pour le Commun des vierges (1897) {org}
・弦楽四重奏曲 quatuor à cordes (1898-1899) {2vln, vla, vc}
ピアノ曲 ・4手のためのソナチヌ sonatine pour piano à quatre mains en sol majeur (1878) {2p}
・2手のためのソナチヌ sonatine pour piano à quatre mains en ré mineur (1878) {2p}
・5つの幻想曲 cinq fantasies (1879) {2p}
・ピアノ・ソナタ sonate pour piano (1880)
・軍隊行進曲 marche militaire (1884)
・風景 paysage (1895)
・いくつかの舞曲 quelques danses (1896)
合唱曲 ・バスク王の寡婦 la Veuve du roi basque (1879)
・古風な詩曲 hylas (1879)
・ジャンヌ・ダルク Jeanne d'Arc (1880)
・エスメラルダ Esmeralda (1880)
・ル・アラブ l'Arabe (1881)
・マリアンヌのカプリース les caprices de Marianne (1882)
・2つの二重唱曲 deux duos (1883)
・エレーヌ Hélène (1883-1886)
・3つのモテット trois motets (1885-1886)
・ヴェーダ讃歌 hymne védique (1886) {choir, orch}
・婚礼の歌 chant nupitial (1887) {choir, p}
・嵐 la tempête (1888)
・3つのモテット trois motets (1888-1891)
・聖チェチリアの伝説 la légende de Ste Cécile (1891)
・タントゥム・エルゴ tantum ergo (1891)
・バラータ ballata (1897)
歌曲 ・リラ les lilas (1877?)
・歌 chanson (1877)
・森の友達 l'ame des bois (1877)
・小径 le petit sentier (1878)
・隣の窓掛け le rideau de ma voisine (1879)
・海鳥 l'albatros (1879)
・7つの歌 sept mélodies (1882)
・我らの愛しきもの nous nous aimerons (1882)
・2つの二重唱曲 deux duos (1883)
・森の結婚式 chanson de noces dans les bois (1884)
・呪われた死者 le mort maudit (1884)
・4つの歌 quatre mélodies (1886/82/83/88)
・祝婚歌 epithalame (1886)
・4つの歌 quatre mélodies (1885/1887)
・隊商 la varavane (1887)
・ミアルカの歌 chansons de Miarka (1888)
・愛と海の詩 poème de l'amour et de la mer (1882-1892) {sop, orch}
・リラの花咲く頃 le temps des Lilas (1886)
・シェークスピアの歌 chansons de Shakespeare (1890-1891)
・温室 serres chaudes (1896/1893)
・3つの歌 trois lieder (1896)
・処女マリアへの朝の祈り "marins dévots à la vierge Marie"(1898)
・クリスマス・ツリーのために pour un arbre de Noël (1898)
・ヴェルレーヌの2つの詩 deux poèmes (1898)
・2つの歌 deux mélodies (1898)
・果てなき歌 chanson perpétuelle (1898) {sop, orch/choir, p, 2vln, vla, vc}


ショーソンを聴く


★★★★☆
"Poème de l'amour et de la Mer (Chausson) Shéhérazade / Cinq Mélodies Populaires Grécques / Deux Mélodies Hebraïques (Ravel) L'invitation au Voyage / Phydilé (Duparc) L'Année en Vain Chasse l'Année (Debussy)" (Seraphim : TOCE-1589)
Georges Prêtre, Jean-Pierre Jacquillat (cond) Victoria de Los Angeles (sop) Orchestre de la Société des Concerts du Conservatorie : Orchestre des Concerts Lamoureux
これはいわゆる古典的銘盤というヤツです。実際この盤のアンへレスの出来は素晴らしく良く,柔和で艶があり,開放的で,甘くなおかつ品格豊か。匂い立つようなフランス的な演奏で,フランスものの管弦楽付き歌曲集となると,やはり真っ先に挙げたくなる作品です。これですっかりアンへレスを過大評価した私はその後,随分彼女の堕盤を買わされてしまいました。『愛と海の詩』はショーソンの代表作。ラヴェルにも負けないほど甘美で,穏健なロマン派の美を追究した傑作です。ショーソンのほうは指揮がジャキャ,オケがラムルー管で,このコンビでカントルーブの『オーベルニュの歌』も録音しています。

★★★★
"Symphonie / Soir de Fête / The Tempest" (Chandos : CHAN 8369)
José Serebrier (cond) Orchestre Symphonique de la RTBF
ブリュッセル放送交響楽団の演奏によるショーソン作品集。マルコ盤などを聴くと大した実力でもないような気がするオケですが,これが意外にも好演奏。それもそのはず,このCDは密かにそのビロードのような弦の響きと,ロシアとポーランドの混血セレブリエール氏による,大変丁寧で均整のとれた指揮によって,ショーソン・マニアの間では隠れた好内容盤として知られたCDのひとつです(ちなみにセレブリエールさんは,自身も作曲をなさる方で,ちょこちょこと録音も出ているようです)。収録作品は,作曲者が事故であっけなく世を去る直前に書かれた晩年のものが中心。印象派の耳には,やはりどうしても形式的で古臭い感が拭えませんが,それでもクロマチックなハーモニーに裏打ちされたフランク門下らしい穏健なロマン派書法と,匂い立つような甘美な叙情が漂います。1899年6月10日,自転車にさえ乗らなかったら,きっとさらに近代的な書法にも習熟して,素晴らしく典雅な名品を作ったでしょうに。ただただ残念としか言いようがありません。

★★★★★
"Le Charme / Sérénade Italienne / Le Colibri / Les Papillons / Les Heures / Cantique à Épouse / Serres Chaudes / Poème de l'Amour et de la Mer" (Calliope : CAL 6860)
Bruno Laplante (btn) Janine Lechance (p)
ブルノ・ラプラントは,1938年モントリオール近郊ボーアルノワに生まれたカナダの名バリトン歌手。1964年にケベック音楽院歌唱科で一等,1960年代半ばに渡欧してミュンヘンのゴーチェ音楽院で学び,パリではピエール・ベルナックに師事。1967年に第一回カナダ若手歌唱コンクールに優勝者して,国際舞台へ。1977年にドイツ国営放送がドビュッシーの『アッシャー家の崩壊』を初演した際には,歌唱を担当。同年に自身の録音したフランス歌曲集でアカデミー・ディスク大賞を獲りました。本盤はこの時の録音からショーソンのものを抜粋して編集したもの。絶頂期の録音だけに,スゼーを思わせるビロード・タッチの発声法と,滑らかな張りのある歌声は大変に見事。あまり有名人の録音でまとまった音源をお見かけしないショーソンの歌曲集としては,おそらくトップ・クラスの出来と言って宜しいでしょう。室内楽などを聴くと,教条的な面が色濃く出てくるショーソンも,さすがにお家芸な歌曲では曲想柔和。後ろにフォレを拝み,シューベルトを前に省みながら,両者の中間点を取っていく作風は,フォレほどつらつらとした変幻自在さはないものの,保守的な確信を帯びながら適度にフェロモンを放つ,良家のお転婆娘的な優美さと典雅さを備えている。羽毛布団のように軽く柔らかい転調技法で柔肌を包み,全体をクリーミーに攪拌。シューベルトの素地へ洒落たムードの溶け込んだ瀟洒な作風に頬緩みます。強いて言えば,幾ら甘い声とはいえ,男声のラプラントがご令嬢を演じるさまをどう聴くかということですが・・。聴き手によっては少々違和感を感じるかも知れません。むろん『愛と海の詩』は名品ですが,個人的にはより後年の『温室』にも趣を感じました。和声,転調技法とも繊細。この人は後になればなるほど高雅ですね。もっと長生きしていれば,きっとフォレ並みの達観へ到達できたでしょうに。惜しいなあ・・。

★★★★☆
Artistes Repertoires - Oistrakh, Munch :
"La Mer / Prelude a l'apres-midi d'un Faune / Images / Nocturnes /Printemps (Debussy) Symphonie / Poeme* (Chausson)"
(BMG : 74321 845 912 LC 00316)
Charles Munch (cond) David Oistrakh* (vln) Boston Symphony Orchestra
フランスの名指揮者ミュンシュは,晩年にボストン交響楽団を率いて,最後の至芸を発揮します。彼がボストン響と残したラヴェルとドビュッシー(特にラヴェル)は,長い彼の芸歴の中でも特筆すべき名演であるだけでなく,数多あるラヴェルやドビュッシー録音でも最上の一角に食い込む出来映えを示したものです。この盤はRCAがドビュッシーを集大成したもので,メインもドビュッシーなのですが,カップリングにショーソンの代表曲が入っているのが聴きもの。ヴァイオリンのオイトスラフも旧ソ連の生んだ巨匠で,超豪華メンバーで聴けるのが美点です。なにぶん『交響曲』は1880年代の作品なので,1890年以降の作品と比べると些か古臭い感は否めませんが,ワーグナー的でありながら,演奏のそこここに漂う甘美でクロマティックな旋律美はフランスものならでは。圧巻は『詩曲』でしょうか。最晩年の熟達した書法が,後期ロマン派の美の極を示し,1962年録音と言うことで集音も数段良く,スラヴ風の解釈と抜群の音圧で鳴るオイトスラフの演奏が絶品です。

★★★★☆
"Concert / Pièce en Ut majeur" (Harmonia Mundi : HMA 1951135)
Régis Pasquier (vln) Jean-Claude Pennetier (p) : Roland Daugareil, Geneviève Simonot (vln) Bruno Pasquier (vla) Roland Pidoux (vc)
あまり一枚のCDでまとめて聴く機会の少ないショーソンの室内楽作品集です。兄弟息のあったところを聴かせるパスキエがヴァイオリンを取り,ドビュッシーの名演があるペヌティエのピアノ。シュミット器楽作品の演奏が光るお仲間が脇を固めた『コンセール』は六重奏。フランキストらしい主題の反復・展開が行われる懐旧的な佳品。ユニゾン多めのマッシブな書法で情熱的に書かれています。と,ここまで書いてすぐに思い出すのがフォーレの室内楽。そしてまたこのジャンルに,一見似ているショーソンとフォーレの端的な違いも現れているように思いました。ショーソンのそれはあくまで推敲された職人の手仕事。どこか常にフランクのイデアを踏襲することが頭の片隅にあり,何を書いてもどこか奔放になりきれないショーソンには,自ら意志(アニメ)を持った艶気が譜面の間を自由に泳いでいくような,フォーレの作品から立ち上る閃きは感じられない。『愛と海の詩』などを聴くと,その素晴らしく官能的な曲想に惚れ惚れしますが,やはり基本的にショーソンはフォーレと違ってフランキストの模範生であり,理知的な秀才肌だったんでしょう。名手揃いの演奏は共感に溢れ,かなりレベルが高いです。旋律重視のロマン派イディオムを踏襲しているぶん印象派の色彩感は乏しいですが,後年の作品と言うこともあって充実した曲想。フォーレ好きの向きには新たな発見があるかも知れません。

★★★★
"Sonate (Debussy) Trio (Chausson) Sonate (Emmanuel)" (K617 : K617135)
Marc Coppey (vc) Eric Le Sage (p) Trio Wanderer
ストラスブール出身のチェリストはパリ音楽院でフィリップ・ミュラーに師事し一等を得た人物。女性的で甘美な音色が魅力です。ルサージュの伴奏も円やかで,全体に色気と艶めかしさに富んだ演奏。そんな女性的な演奏に,時には荒々しく時にリズミカルなドビュッシーはやはりさほど相性が宜しくなかった様子。音色の美しさこそ特筆すべき水準ではあるものの,些か芯の抜けたものになっており,好みが分かれるところでしょう。冒頭からピアノの低域ユニゾンがショーソン臭さを醸し出す『三重奏曲』は作品番号3の初期作品。旋律は気の抜けたベートーベンみたいにぎこちなく,上記の後年作品のようなのびやかな自由さもさほど感じられない。まだまだ発展途上な印象を拭えません。従ってここでの聴きものはカップリングのエマニュエルでしょう。1887年の作ですから,ドビュッシーはまだ『牧神』すら書いていなかった。フランキストを超えた斬新な和声感覚と,旋法性を利した高雅な筆致。紛れもなく当時,最も先進的な作品だったのは間違いないでしょう。しかしギローのもとにいたドビュッシーは才能を伸ばしてもらい,歴史に名を残した。一方ドゥリーブスに潰されたエマニュエルは,(ドビュッシーに先んじていたにも拘わらず)半ば忘れ去られてしまった。やっぱ良い師匠に就くって大事よね?と痛感させずにはおきません(笑)

★★★★
"French Songs : Amour d'antan / Le Charme / Le Temps des Lilas / Les Papillons / Le Colibri / La Caravane (Chausson) Fêtes Galantes Series 1, 2 / Chansons de Bilities (Debussy) Histoires Naturelles (Ravel)" (Arabesque : Z 6673)
Jan DeGaetani (msp) Gilbert Kalish (p)
私はショーソンの熱心なファンではありませんので,或いはいい歌唱のまとまった歌曲集は沢山あるのかも知れませんけれど,これは私の持っている数少ないショーソン歌曲集。北米大陸で活動中らしいドゲターニ女史とカリッシュ氏のコンビ。入門編ともいうべき選曲で,主立った彼の代表作を聴けます。豊富な録音があり,名演も枚挙に暇がないラヴェルやドビュッシーに比して,今ひとつまとまった歌曲集の少ないショーソンをたくさん演唱してくれて嬉しい限り。あまり名前を聞いたことがないソプラノ歌手は少し声質に棘があるのは気になりますが,技術そのものはまずまず良く,さすがに歌曲に関してはシャンソン来の伝統があるだけに,楽曲も少し庶民的なフォーレみたいで良いです。問題はカリッシュのピアノ。ゆっくり目に歌う女史に合わせようと考えたのはいいんですが,間を置くことを怖れてかペダルを踏みすぎていて,残響が汚くなってしまったのが残念です。

★★★★☆
"Baigneuses au Soleil / Extraits de 'Cerdaña' / Les Naiade et le Faune Indiscret (De Séverac) / Jeunes Filles (Ropartz) / Quelques Danses (Chausson)" (Erato : B18D-39029)
Jean Doyen (piano)
フランスの名ピアニスト,ジャン・ドワイヨンは,何といってもフォーレの連続録音が有名です。しかし,それ以外にも彼は近代もの,特にフォーレ周辺の後期ロマン派的な作曲家のピアノ曲を,思いの外沢山録音しております。こちらはまさにそうしたドワイヨンの面目躍如たる一枚。近年,チッコリーニの3枚組でちょっとだけ有名になったセヴラックのピアノ曲は彼が初演者ということもあって,お世辞にもあまり好いとは言えない同盤の演奏に比して遙かに秀逸。ゴツゴツとテクスチュアに富んだ打鍵で,演奏は表情豊か。ピアノ曲の録音が極端に少ない中,ドワイヨンほどの名手がショーソンを録音してくれたと言うことに感謝するばかりです。

(2001. 9.16 upload)