Dの作曲家



ジャン=ミシェル・ダマーズ Jean-Michel Damase (1928-2013)

フランスの作曲家,ピアニスト,教育者。1928年1月28日ボルドー生まれ。ハーピストを母に持つ恵まれた環境で育つ。パリ音楽院へ進学し,ピアノをアルフレッド・コルトー,作曲をアンリ・ビュセール,和声および対位法をマルセル・デュプレに師事。1943年にピアノ科で,1947年に作曲法科で一等賞を得て卒業するなど神童ぶりを発揮した。1947年にはカンタータ【そして美女は目覚めた】で,ローマ大賞を獲得。その後はピアニストとして活躍する傍ら,室内楽や器楽作品を中心に数多くの作品を残している。ブレーズやメシアンなど,前衛的な音楽が大勢を占めた20世紀前半のフランス楽壇にあって,タイユフェールやベルトミュー同様,近代フランス音楽の伝統に立脚した簡素なロマン派様式をとり,印象主義の影響下にフランス音楽ならではの旋律美を持った瀟洒な作風を展開。こうした懐旧的な作風のためか,作曲家としては過小評価の極みのような存在に甘んじており,特に再評価が待たれる作曲家の一人と言えよう。教育者としても精力的に活動し,パリ音楽院の副学長も務める。2013年4月21日死去。(関連サイト:ダマーズ非公式ウェブ・サイト


主要作品

舞台作品 ・そして美女は目覚めた et la belle se réveilla (1947) {choir, orch}
・ダイアモンド食い ? (1950)
・氷上の淑女 lady on ice (1953) {orch}
・砂漠の王子 le prince du désert (1955) {orch}
・鳩 colombe (1958) {act, orch}
・優しきエレオノア La tendre Eléonore (1958) {act, orch}
・縁日の婚礼 la noce foraine (1961) {orch}
・神秘のウジェーヌ Eugène le mystérieux (1963) {act, orch}
・ファウストの朝 le matin de Faust (1966) {act, orch}
・若さへの賛歌 hymne pour la jeunesse (1967) {choir, orch}
・シルク・ラプソディ silk rhapsodie (1968) {orch}
・〜の夫人 Madame de... (1970) {act, orch}
・ユーリディス Euridice (1971) {act, orch}
・相続人 l' héritière (1974) {act, orch}
・石蹴り遊び marelles (1997) {vo(2, 3 vo) or choir, p}
・喜劇【オシュラータの婚礼】 Ochelata's Wedding (2002)
映画音楽 ・あの娘の父 père de mademoiselle (1953) {orch}
・ターム・オブ・トライアル term of trial (1962) {orch}
管弦楽 ・3つの間奏曲 trois interludes (-) {orch}
・サラバンド sarabande (1950) {strings}
・交響曲 symphonie (1952) {orch}
・3つのコーラル trois chorals (1953) {strings}
・スケルツォ scherzo (1956) {fl, strings / fl, p}
・知の落とし穴 piège de lumière -suite de ballet-(1959) {timp, perc, hrp, p, strings}
・協奏曲 concert (1984) {perc, hrp(hpcd), strings}
協奏曲 ・狂詩曲 rhapsodie (1948) {ob, strings}
・春の狂詩曲 rhapsodie de printemps (1948?) {p, orch}
・ピアノ協奏曲第1番 concerto No.1 (1949) {p, orch}
・演奏会用作品 concertstuck (1950) {sax, chamber-orch}
・ハープ協奏曲第1番 concerto No.1 (1951) {hrp, orch}
・コンチェルティーノ concertino (1951) {hrp, strings}
・ヴァイオリン協奏曲 concerto (1956) {vln, orch}
・セレナード sérénade (1956) {fl, strings}
・スケルツォ scherzo (1957) {fl, strings}
・ピアノ協奏曲第2番 concerto No.2 (1962) {p, orch}
・ラモーの主題による変奏 variations sur un thème de Rameau (1966) {hpcd, strings}
・ハープ協奏曲第2番 concerto No.2 (1970) {hrp, orch}
・ダブル・コンチェルト double concerto (1974) {fl, hrp, strings}
・バラード ballade (1975) {g, strings}
・協奏的組曲 suite concertante (1978) {ob, strings}
・コントラバス協奏曲 concerto (1980) {b, orch}
・狂詩曲 rhapsodie (1987) {hrn, orch}
・ヴィオラ,ハープと弦楽オーケストラのための協奏曲 concerto (1990) {vln, hrp, strings}
・協奏曲 concert (1991) {tp, strings}
・コンチェルティーノ concertino (1991) {p, strings}
・フルート協奏曲 concerto (1993) {fl, chamber-orch}
・ハ調の組曲 suite en ut (1994) {hrn, chamber-orch}
・モーツァルトの主題による変奏 (1994) {2p, orch}
・ホルン協奏曲 concerto (1994){hrn, orch}
・闊達な狂詩曲 rhapsodie juvénile (1994) {g, strings}
・コンチェルティーノ Concertino (1994?) {hrp, orch}
器楽/室内楽 ・三重奏曲 trio op.1(1946) {fl, hrp, vc}
・五重奏曲 quintette (1948) {fl, vln, vla, vc, hrp}
・4つの様相 quatre façettes (1948) {fl, g}
・アリア aria (1949) {vc, p}
・演奏会用ソナタ sonate en concert (1950? 1952?) {fl, vc, p}
・サラバンド sarabande (1950) {vln, p}
・協奏的練習曲 étude de concert (1951) {hrp}
・子守歌 berceuse (1951) {hrn, p}
・木管五重奏のための17の変奏曲 dix-sept variations pour quintette á vent (1951) {fl, ob, cl, bssn, hrn}
・三重奏曲 trio (1962) {fl, ob, p}
・フルートとハープのためのソナタ sonate (1964) {fl, hrp}
・三重奏曲 trio (1965) {vln, vla, vc}
・ソナチヌ sonatine (1966) {2hrp (2p)}
・四重奏曲 quatour (1968) {p, vln, vc, vc}
・花飾り guirlande (1971) {hpcd}
・壊れたマズルカ mazurka casse (1973) {accordion}
・リトルネロ ritournelles (1973) {hrp (p)}
・フルート・ソナタ sonate pour flûte et piano (1975) {fl (vln), p}
・賛歌 hymne (1975) {cor (tp), p}
・捧げもの aubade (1976) {hrp}
・囃(はや)し歌 (1976) compine {cl, p}
・サクソフォーン四重奏曲 quatuor de saxophones (1978) {4sax}
・30の練習曲 30 études (1978) {hrp}
・リトルネロ ritournelles (1979) {4cl}
・変奏曲「朝に」 variations de petit matin (1980) {fl, hrp}
・四重奏のための組曲 suite pour quatre (1981) {2ob, bssn, hpcd}
・三重奏曲 trio (1983) {tp, tb, p}
・クラリネット・ソナタ sonate pour clarinette et harp (1984) {cl, hrp}
・プロローグ prologue (1985) {tp, p}
・4つの喜遊曲 4 divertissements (1986) {fl, hrp}
・海画 marine (1987) {b, p}
・4つの喜遊曲 quatre divertissements (1988) {fl, p}
・変奏曲 thème varié (1987) {sax, p}
・変奏 variations (1987) {fl, p}
・秋 automne (1987) {bs(b-tba), p}
・田園組曲 suite pastorale (1988) {fl}
・ケルティック・ハープのための小品 pièces pour 1, 2 et 3 harpes celtiques -ou grandes harpes- (1988) {3hrp}
・クラリネットのための小品 pièces pour 1, 2 et 3 clarinettes (1988) {3cl}
・トランペットのための小品 pièces pour 1, 2 et 3 trompettes (1989) {3tp}
・四重奏曲 quatuor (1989) {4fl}
・トッカータ,パッサカリアとフィナーレ toccata, passacaille et final (1989) {2p}
・フルートのための小品 pièces pour 1, 2 et 3 flutes (1989) {3fl}
・コントラバスのための小品 pièces pour 1, 2 et 3 contrebasses (1989) {3b}
・見本 échantillions (1990) {p, perc}
・三重奏曲 trio (1990) {ob, hrn, p}
・ノート・ア・ノート note à note (1990) {as, p}
・アズール azur (1990) {as, p}
・バカンス vacances (1990) {as, p}
・四重奏曲 quatuor (1991? 1992?) {fl, ob, cl, p}
・12の前奏曲 12 préludes (1991) {hrp}
・フランス風の形式による15の練習曲 15 études dans le style français (1992) {cl}
・パヴァーヌの変奏 pavane variée (1992) {hrn (vc), p}
・練習曲集 études (1993) {tp}
・4つのパストラール quatre pastorales (1993) {org}
・3つの黙祷 trois prières sans paroles (1993) {tp, org}
・前奏曲、哀歌と終曲 prélude, elegie et final (1993) {b-tb (tba), p}
・主題と変奏 thème et variations (1994) {hrp}
・5つの小さな対話 cinq petits dialogues (1995) {marimba, hrp (p)}
・フルートのための50の習作 50 easy and progressive studies (1996) {fl}
・シシリアーノの変奏 Sicilienne variée (1996) {hrp}
・12の前奏曲 12 préludes (1996) {hrp}
・アダージョ adage (1996) {tp, hrp}
・ホルン・ソナタ sonate pour cor et piano (1996) {hrn, p}
・2本のフルートとピアノのための三重奏曲 trio pour deux flûtes et harpe (1997) {fl, p}
・アリオーソ arioso (1997) {vc, p}
・25の技巧的な習作 25 technical studies (1997) {fl}
・24の大練習曲 24 grandes études (1997) {fl}
・20のメロディックな習作 20 melodic studies (1997) {fl}
・25の練習曲 25études (1997?) {fl}
・フルートとハープのためのソナタ第2番 2e sonate pour flûte et harpe (1998) {fl, hrp}
・アスペクツ 5 aspects (1998) {hrn, p}
・ル・デ・ロレンツォ L de Lorenzo (2001) {fl}
・タンゴ tango (2002) {hrp}
・チェロとハープのためのソナタ sonate pour violoncelle et harpe (2002) {vc, hrp}
・サクソフォン・アンサンブルとピアノのための三重奏曲 trio (2002) {ss, bs, p}
・デュエッティーノ duettino (2003) {fl, p}
・冬の物語 conte d'hiver (-) {fl (ob), p}
ピアノ曲 ・ピアノ・ソナタ sonate pour piano (1953)
・主題と変奏 thème et variations (1956)
・記念祭の祝辞 compliment d'annivérsaire (1964) {2p}
・幻影 apparition (1968)
・虫 l'insecte (1972) {p (hrp)}
・散歩道 promenade (1972) {p (hrp)}
・ドロミニアーナ drominiana (1976) {2p}
・8つの練習曲 huit études (1997)
・トッカータ toccatine (1985)
・ソナチヌ sonatine (1991)
・序奏とアレグロ introduction et allegro (1992)
声楽曲 ・なくした真珠 la perle égarée (1948) {vo, p}
・シャルル・ドルレアンの3つの詩 trois chansons de Charles d'Orléans (1950) {vo, orch}
・愛しき人 mon âme (1954) {vo, p}
・シャルル・ドルレアンの5つのロンデル cinq rondels de Charles d'Orléans (1958) {choir}
・ト調を歌う際の12の教え douze leçons à chanter en clé de sol (1967) {vo, p}
・2つの詩 deux poèmes (1971) {btn, p}
・シャルル・ボードレールの手紙 une lettre de Charles Baudelaire (1965) {tnr, orch}


ダマーズを聴く


★★★★★
"Flute and Harp Music :
Trio / Quintette / Sonate / Variations de Petit Matin" (ASV: CD DCA 898)

Anna Noakes (fl) Gillian Tingay (hrp) Richard Friedman (vln) Jane Atkins (vla) Ferenc Szucs (vc)

フルートとハープの作品を多く残したダマーズは,ほとんどそれらの楽器を演奏ないし愛好する人の間だけで知られている作曲家。当然ながらCDも数が少なく,器楽奏者が録音するオムニバス企画中の軽めの箸休めとして,断片的にとりあげられることが殆どです。このASV盤は,下記ピアノ曲集が出るまで,唯一ダマーズの作品にまとまった形でスポットを当てた,貴重な音盤だったもの。聞いたことのないお名前のソリストに購買意欲も減退しますが,聴いてびっくり幸運に感謝。演奏は驚くほどの良演。それも道理,のちにグラモフォン誌の批評家賞にも選ばれた優秀盤でした。ダマーズの作品は,アルカイックなロマン派の美意識を,程良く近代の薫陶を得た色彩的な和声の中で,秘めやかに華開かせた穏健な佳品揃い。華麗な転調を駆使した典雅な曲想は,良いときのタイユフェールやイベールをさらに純化したかのように美しい。前衛という名の袋小路の中で,急速に音楽が力を失ってしまった現状を鑑みるにつけ,あくまで拡張の範囲でモダニズムを推進しているこうした作曲家が,新奇性の無さゆえに埋もれてしまうのは惜しい限り。こうしたCDを機に,彼が限られたファン以外にも広く聴かれるようになるのを願って止みません。

★★★★★
"Piano Music : Introduction et Allegro / Thème et variations / Sonate / Apparition / Huit Etudes / Sonatine" (Somm : SOMMCD 034)
Nicholas Unwin (piano)
パリ音楽院の副院長まで務めたダマーズ御大。にも拘わらず,前衛まっしぐらの時代のなか,ひとり穏健な作風を堅持した潔さが災いし,作曲家としてはロクな評価を貰っていません。手に入る作品集と来たらASV盤だけ。何て不条理なんだ!と憤りを感じていましたら・・とうとうイギリス人に先越されてしまいました。相変わらず擬古典的な形式に則りながら,典雅さを壊さぬ範囲で近代語法の花を開かせる音楽性。曲によってはメシアン臭いヤバ気なものもありますけど,その場合もちゃんと要所に瀟洒な和音の飴が。ASV盤が大丈夫なあなたなら,ほぼ予定調和的にKOされること請け合いでしょう。ソリストは1962年ケンブリッジ生まれ。王立音楽学校へ進学してジョン・バーストウ,フィリプ・フォークに師事し,在学中にチャペル・ゴールド・メダルおよびシリル・スミス・リサイタル賞を受賞したほか,エピナル国際コンクールでルーセル賞,王立海外リーグなるコンペでイーグルスター賞,ショット社賞を受賞するなど,プロ転向後も豊富な受賞歴をお持ちの方。彼はホアキン・ニンの作品集も録音しているスペイン現代音楽好きで,ここでもヘルベルト・ヘンクに通じる硬質なタッチと,明晰なテクニックを利し,いかにも現代もの好きらしいかっちりとしたピアニズムを展開。ハープが念頭にあったと思われる壮麗なグリサンドの『序奏とアレグロ』なんかを聴くに,本来は柔和な曲想であろうダマーズの演奏としてはやや異質なのも確かですが,冷徹に音符構造を見据えるような弾きっぷりには一貫性があり,演奏そのものはかなり良いのではないでしょうか。ダマーズさん良かったですね。たった2枚ですけど,どちらも見事な奏じゃないですか。

★★★★★
"Quatuor pour Flûte, Haubois, Clarinette et Piano / Sonate en Concert / Trio pour Deux Flûtes et Piano / Trio pour Flûte, Haubois et Piano" (Pierre Verany : PV705041)
Jean-Michel Damase (p) Gérard Bourgogne, Masako Kudo (fl) Arnaud Leroy (cl) Jacques Tys (ob)
CDが少ないと文句ばかり言ってきたダマーズも,気が付けば3,4枚の選択肢が揃ってる。もうフェルーやフレムと同格です(誰ですかどんぐりの背比べとか抜かしているのは)。こうなると作品集が一枚だけのボザが可哀相ですけど,これは未来の愉しみにせよって事なんでしょう。ダマーズの評価が室内楽に集中しているのは明らかで,本盤も良い証左。軽やかなリズムと主旋律を,穏健なモダニストらしい瀟洒な和声と,洒落た転調技法で味付け。仙人然とした透明感のケックラン,シンプルな擬古典書法にシニカルな翳りのプーランク,同じく擬古典書法ながらプーランクよりぐっと形式感強く明朗な色調のボザ。3人をパレットに並べ,簡素な主旋律はプーランクへ類同しつつも,ボザの明るい色調で翳りとシニスムを相殺。ケックランの無垢な佇まいを僅かに添えて,六人組に顕著な毒々しさを程良く打ち消す。悪く言えばどの曲も手堅さばかりで冒険がないんですけど,逆に言えば外れを書かない人。中庸のなかに,オーソドックスなモダニズムを追い求める作曲者のバランス感覚が光ります。本盤のもうひとつの売りは,作曲者の伴奏で聴けることでしょう。さすがに速いパッセージでは音符の消滅もありますけど,70代半ばのご高齢を考えるに,これだけ技巧的な伴奏譜でかくも瑞々しい演奏,驚異的なのでは。フルートはミシェル・デポスト,アラン・マリオンの弟子で,オーボエのティス共々パリ高等音大プルミエ・プリ。クラリネットはパリ木管四重奏団の創設メンバーで,東京国際4位。フルートを核に演奏も高水準です。ところで,第二フルートの工藤さんだけ,ライナーで一言も触れられてないんですけど,これって何で?可哀相じゃありません?

★★★★☆
"Alleluias..(Constant) Semaine Sainte à Cuzco (Tomasi) Arioso Barocco (Jolivet) Non Motietur in Æternum (Sauguet) Processional (Jansen) La Statue Retrouvée (Satie) Trois Prières sans Paroles (Damase) Sonata for Trumpet and Organ (Hakim)" (BIS : BIS-CD-1109)
Håkan Hardenberger (tp) Simon Preston (org)
ダマーズの3編を標題に頂き『沈黙の祈り』と題された本盤は,デンマークのアールフス教会なる寺院の大オルガンを使って吹き込まれた,仏近現代作曲家(それもかなり危険水域)が残したラッパとオルガンのための宗教小品集。1961年,スウェーデンはマルメ生まれの中堅,ハルデンベルガー氏に,オックスフォード教会のオルガニストを務めるプレストン氏という,仏ものをやるにはやや異色の顔合わせながら,演奏は硬質な緊張感があり,派手な跳躍にも高水準に反応するラッパの技巧もまた確か。演奏は見事であると思います。コンスタン,ジョリヴェと来た時点で,聴き手はある程度の覚悟を強いられるでしょうが,実際ここに収録された作品はどれも先鋭度高め。トマジはいつもの南仏的開放感とは異質の,ラングレ的神秘旋法ワールドを展開しますし,コンスタンは前半こそラングレ止まりながら,途中から俄かに雷雲立ち込め,自慢の狂乱者ワールドが出現するという具合。とはいえ,どれも作品は高度な旋法表現を基調に書かれ,晦渋ながらいわゆる前衛のイメージとは異質。むしろラングレ路線の神秘主義に立って,深い心象世界にどこまでも降りていくような,冷徹な表情を持つ作品群。グギョゲギョと炸裂して狂気を爆発させるアヴァンギャルド路線とは,ある意味正反対の美学に立脚している。滅多に聴けないソーゲ,やっぱり風刺擬古典的なサティ,そこにジャズの加わるハキム,個人的には白眉の出来と思われる叙情性豊かなダマーズなど,近代の耳で許容できる飴もちゃんと転がっており,オアナやデュティーユまで愉しむ方なら,充分満足できると思います。