Eの作曲家



ハンス・アイスラー Hanns Eisler (1898-1962)

ドイツの作曲家。ただしユダヤ系。1898年7月6日ライプツィヒで,哲学者ルドルフとマリー・イーダの間に生まれる。1901年に一家はウィーンへ移住。1908年から1915年までウィーン第2ギムナジウムへ進学。姉や兄に影響され,社会主義運動と関わるようになった。1916年に従軍し,1918年に負傷して帰還。翌年新ウィーン音楽院へ進んでカール・ヴァイグルに師事するとともに,アルノルト・シェーンベルクへ私的に師事し,4年に渡って学んだ。1925年にベルリンへ移住し,1930年にベルトルド・ブレヒト(マルクス主義の文学者・脚本家)と知遇を得て,共産主義色を打ち出した舞台作品を発表した。その後1933年にはドイツを離れ,1938年から10年間アメリカへ移住,多くの映画音楽を作曲。このため,一般には映画音楽の作曲者として知られている。大戦後1948年にウィーンへ,次いで1950年にはドイツへ帰国。ベルリンの芸術アカデミーで作曲法の教鞭を執った。1962年9月6日にベルリンにて死去。彼は,音楽を政治とは無関係なものとして扱ってきたブルジョア美学と対峙する創作態度をとったことで知られ,ウェーベルン,ベルク(新ウィーン楽派)に次ぐ無調・十二音技法の体現者であったが,生涯をコミュニストとして過ごし,東欧圏に居を構えたため,その作品はいまだ過小評価されたままである。(関連ページ:ハンス・アイスラー協会 英・独語)


主要作品

※ Blake, D. 1995. Hans Eisler: a miscellany. Harwood.及び
Betz, A. 1976. Hans Eisler political musician. Cambridge Univ.Press.入手。作品表改訂予定但余暇時間。

合唱曲/歌曲
舞台音楽等
・ moritz meyer oder 150 mark (1927)
・時の流れ tempo der zeit (1929)
・母 die mutter (1931)
・同志カスパー kamerad Kaspar (1931)
・レーニン・レクイエム Lenin requiem (1935-1937) {sop, btn, choir, orch}
・揚々たる航海 glückliche fahrt (1946) {sop, orch}
・懼れる者 höllenangst (1948)
・世紀の狭間 mitte des jahrhunderts (1950) {sop, choir, orch}
・役割図式 das vorbild (1951-1952) {alto, orch}
・クーヤン・ブラークの絨毯職人 die teppichweber von Kujan-Bulak (1958) {sop, orch}
・戦争への招待 kriegsfibel (1957) {sop, tnr, btn, choir, orch}
・真摯な歌 ernste gesänge (1961-1962) {btn, orch}
・幻想曲 rhapsodie (1949-1962?) {sop, orch}
・前奏曲と歌 vorspiel und gesang (1962) {sop, tnr, btn, orch}
映画音楽 ・自由の歌 das lied vom liben (1931)
・小径にて(?) kuhle wampe (1931) {orch}
・忘れられた村 the forgotten village (1941)
・処刑人もまた死ぬ hangmen also die (1943)
・パリのスキャンダル a scandal in Paris (1945)
・浜辺の女 the woman in the beach (1946)
管弦楽曲 ・組曲第一番 suite Nr.1 (1930)
・小交響曲 kleine sinfonie (1931)
・組曲第二番 suite Nr.2 'niemandsland' (1931)
・組曲第三番 suite Nr.3 'kuhle wampe' (1931)
・組曲第四番 suite Nr.4 'die jugend hat das wort' (1932)
・ドイツ交響曲 deutsche symphonie (1935-1950)
・主題と変奏 thema mit variationen (1938)
・5つの交響的小品 fünf orchesterstücke (1938)
・室内交響曲 kammer-symphonie (1940)
・冬の闘争 winterschlacht-suite (1956)
・嵐 sturm-suite für orchester (-)
協奏曲 ・ヴァイオリン独奏とスケルツォ scherzo mit solovioline (1938)
器楽 ・ヴァイオリンとピアノのためのソナタ sonaten für violine und klavier No.1 (1923) {vln, p}
・ピアノのための小品 klavierstücke (1923) {p}
・ピアノ・ソナタ第2番 klaviersonaten No.2 (1924) {p}
・フルート,オーボエとハープのためのソナタ sonaten für flute, oboe und harp (1935) {fl, ob, hrp}
・3つのフーガ 3 fugues (1946) {p}
歌曲 ・ zeitungsausschnitte (1926) {vo, p}
・兵士のバラード ballade vom soldaten (1928) {vo, p?}
・アナクレオン風の断章 anakreontische fragmente (1943) {vo, p?}

※資料不足のため不完全・不正確です。予めご了承ください。


アイスラーを聴く


★★★☆
"Orchesterwerke 1 :
Suite Nr.1 / Suite Nr.2 'Niemandsland' / Suite Nr.3 'Kuhle Wampe' / Suite Nr.4 'Die Jugend hat das Wort' / Thema mit Variationen / Kammer-Symphonie" (Berlin Classics : 0092282BC)

Max Pommer, Heinz Bögner (cond) Gerhard Erber (p) Volker Bräutigam (org) Leipziger Kammermusikvereinigung des Gewandhausorchesters : Rundfunk-Sinfonie-Orchester Berlin
アイスラーは,バルトークやストラヴィンスキーに通じる,躍動的なリズム感と無多調的傾向を,ワーグナー以降の正統派ドイツ音楽の中に採り込みつつ,新時代のドイツ音楽を模索した作曲家の一人。しかし,そうした進歩的な作風を展開した作曲家の多くが,ヒトラーによって迫害されてしまいました。このCDは彼の主要作品を一挙CD化したベルリン・クラシックスのシリーズの一枚。世界最古の楽団,ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ほか顔ぶれも素晴らしく,ドイツ版フランセとでも呼びたくなるような彼の,おどろおどろしくもコミカルな世界が広がります。

★★★★★
"Orchesterwerke 2 :
Klein Sinfonie / Fünf Orchesterstücke / Scherzo mit Solovioline / Rhapsodie -2.teil / Winterschlacht / Vorspiel und Gesang" (Berlin Classics : 0092332BC)

Max Pommer, Heinz Bögner, Günther Herbig, Adolf Fritz Guhl (cond) Eberhard Palm (vln) Ekkehard Schall (narr) Elisabeth Breul (sop) Günter Neumann (tnr) Günther Leib (btn) Leipziger Kammermusikvereinigung des Gewandhausorchesters : Rundfunk-Sinfonie-Orchester Berlin Berliner Sinfonie-Orchester
アイスラーの作品は本国ではかなり高く評価されていて,ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管,ライプツィヒ放送管,ベルリン放送交響による録音が相当量残されています。CD化されたそれらの録音は一流オケらしく見事な演奏ばかりですが,その中でもこの盤はアイスラーの神髄を味わうのにまずお薦めしたい一枚。フランス音楽好きには毛嫌いされてしまいそうなドイツ音楽,しかし,ワーグナーを脱却するのではなく,拡張継承する中から近代化を推し進めた,もう一つのモダニズムの美の極致があります。蓋しアイスラーの最高作『幻想曲』は是非お聴きいただきたい。

★★★★
"Vokalsinfonik :
Lenin-Requiem / Glückliche Fahrt / Mitte des Jahrhunderts / Das Vorbild / Ernste Gesänge / Die Teppichweber von Kujan-Bulak / Bilder aus der 'Kriegsfibel' " (Berlin Classics : 0092342BC)

Adolf Fritz Guhl, Günther Herbig, Dietrich Knothe (cond) Roswitha Trexler (sop) Hermann Hähnel (btn) Elisabeth Breul (sop) Carola Nossek (sop) Annelies Burmeister (alto) Joachim Vogt (tnr) Günther Bayer (btn) Rundfunk-Sinfonie-Orchester Berlin : Sinfonie-Orchester Berlin : Männerchor der Berliner Singakademie
ワーグナーの代表作が大規模なオペラや歌劇であったように,ドイツ音楽の真骨頂が良く発揮されるのは合唱曲や歌劇などの大規模編成作品。スイスの作曲家マルタンが,どうしてドイツ音楽に憧憬を抱いたのか,印象派ファンでも頷けてしまう重厚で大仰な作品がずらりと並びます。管弦楽作品より,アイスラーの醍醐味のよく出たドイツ近代音楽となっていると思います。色彩的よりは無調的な近代化で,保守的で様式もかっちりとしているこれらの作品は,印象主義とは正反対の音楽ですが,好みの問題を分けて聴けば,大変優れた作品であると思います。

★★★★
"Drei Männerchöre / Vier Stücke für gemischten Chor / Zwei Männerchöre / Auf den Straßen zu singen / Zwei Männerchöre / Zwei Stücke für Männerchor / Zwei Stücke für gemischten Chor / Zwei Männerchöre / Bankenlied / Keiner oder alle / Freedom Song / Song of Light / Dictator's Song / Einheitsfrontlied" (Berlin Classics : 0092362BC)
Dietrich Knothe (cond) Ekkehard Wagner (tnr) Hermann Hähnel (btn) Inge Kochan, Harry Heinze (p) Großes Rundfunkorchester Berlin / Berliner Singakademie / Männerchor des Rundfunkchores Leipzig
これもベルリン・クラシックスが一挙に送り出したアイスラー大選集の一枚で,合唱曲を中心にCD化したもの。全てアイスラーゆかりのライプツィヒやベルリンの楽団を起用し,レベルの高い演奏・歌唱。宗教音楽は基本的にバロック以前にルーツがあるため,ロマン派臭も薄れるとなれば,きっと好いだろうと思って購入しましたが,残念ながらちょっと期待外れ。和声や様式はドイツ・リートのそれを踏襲し,斬新さは不足がち。演奏は好いので,それ系統のファンの方にはお薦めできますが,仏近代ファンにはちょっと・・

★★★☆
"A Composer's Portrait :
Storm Suite / Movements for Nonet / Journey Sonata / Five Pieces for Orchestra" (Pilz : 44 2076-2)

Herbert Kegel, Adolf Fritz Guhl (cond) Gustav Schmahl (vln) Herbert Kaliga (p) Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
最近では,専ら駅売り御用達のアヤシイ廉価版レーベルとしてのみ知られるピルツ。しかし,舐めちゃいけません。こういう企画をする気概もちゃんとある,なかなか硬派な表情も併せ持った会社です。本盤は,ライプツィヒ放送が自社音源をもとに編纂したシリーズ企画「作曲家の肖像」のひとつとして発売されたCD。シリーズを監修したのは,同放送局で音楽部長を務めるギュンター・ポーレンツ氏が行っている模様。博識な彼らしく,シェーンベルクの弟子であるアイスラー,という側面に焦点を当てた選曲になりました。そのためか,内容は専門書が光を当てる「新ウィーン楽派の旗手」としてのアイスラー。無調の匂いがプンプンし,ヒトラーが頽廃音楽と呼んだきな臭い実験性が鼻を突きます。これからドイツ近代に走ってみようかという方には,ちょっとお薦めしかねる内容。アイスラー好きの方にのみご紹介。