Gの作曲家




フィリップ・ゴベール Philippe Gaubert (1879-1941)

フランスの演奏家,指揮者,教育者,作曲家。1879年7月3日カオール(Cahors)生まれ。パウル・タファネルにフルートを学び,1894年に一等を獲得。次いで和声法をラオール・プーニョ(Raoul Pugno),作曲法をシャルル・ルネヴ(Charles Lenepveu)に師事。1905年にローマ大賞第2位を獲得し,パリ音楽院で指揮法の教鞭を執る。1894年に入団したパリ音楽院付属管弦楽団,およびオペラ座の主席フルート奏者(1931年には後者の音楽監督)として活躍しながら指揮を執り,パリ音楽院では1904年からは助演指揮者として,次いでアンドレ・メサージェの引退後,1919年から1938年には主席指揮者として活躍。オペラ座では同じ時期に指揮者として活躍し,ルーセルの『バッカスとアリアーヌ』,フォーレの『マスクとベルガマスク』などの初演を手がけた。また1919年からはパリ音楽院フルート科教授も務めている。1941年7月8日パリで死去。世界的に通用した初めてのフルート奏者とも言われ,マルセル・モイーズら多くの弟子を輩出。弟子の多くがアメリカに移住,ボストン,フィラデルフィア,ニュー・ヨーク,シカゴ交響楽団の主席フルート奏者となったことでも知られている。


主要作品

管弦楽曲 フランス風ディキシーランド・ジャズ French dixieland (-) {tp, tamb, orch}
・交響的絵画【海の歌】 les chants de la mer: trois tableaux symphoniques (-) {orch}
室内楽曲 ・ギリシャ風喜遊曲 divertissement Grec (1909) {2fl, hrp /2fl, orch}
・タランテラ舞曲 tarentelle (1903) {fl, ob, p}
・3つの水彩画 trois aquarelles pour flûte, violoncelle et piano (1915) {fl, vc, p}
・ロマンティックな小品 pièce Romantique flûte, violoncelle et piano (1926) {fl, vc, p}
・バラード ballade (-) {vla, p}
・ロマネスク風の詩曲 poème romanesque (-) {vc, p}
・5つの前奏曲 cinq prèludes (-) {vln, p}
・ハープのためのサラバンド sarabande (-) {hrp}
・2つの小品 deux pièces (-) {cl, p}
・4つの素描 quatre esquisses (-) {vln, p}
・3つの小品 trois pièces (-) {vc, p}
・田園間奏曲 intermède chanpêtre (-) {as (ob), p}
・交響的小品 morceau symphonique (-) {t-tb, p}
・カンタービレとスケルツェット cantabile et scherzetto (-) {cor, p}
フルート曲 ・夜想曲とアレグロ・スケルツァンド nocturne et allegro scherzando pour flûte and harpe (1906) {fl, p}
・子守歌 berceuse (1907) {fl, p}
・マドリガル madrigal pour flûte et piano (1908) {fl, p}
・ロマンス romance (1908) {fl, p}
・水上にて sur l'eau (1910) {fl, p}
・幻想曲 fantaisie (1912){fl, p}
・2つのエスキス deux esquisses (1914) {fl, p}
・シシリエンヌ Sicilienne (1914?) {fl, p}
・フルート・ソナタ sonate pour flûte et piano, No. 1 (1917) {fl, p}
・組曲 suite (1921) {fl, p}
・フルート・ソナタ sonate pour flûte et piano, No. 2 (1924) {fl, p}
・バラード ballade (1927) {fl, p}
・フルート・ソナタ sonate pour flûte et piano, No. 3 (1933) {fl, p}
・ソナティナ・クァジ・ファンタジア sonatina quasi fantasia (1937) {fl, p}
・2つの素描 deux esquisses (-) {fl, p}
・夜想曲とアレグロ・スケルツァンド nocturne et allegro scherzando (-) {fl, p}
・日々の鍛錬のための練習曲 grandes exercises journalier de mécanisme (-) {fl /sax}...
タファネルらと共作
ピアノ曲 ・パヴァーヌ pavane (-) {p}
声楽曲 ・異教徒の夜 soir païen (1908) {fl, vo, p}
・古風なメダル médaillons antiques (1916) {fl, vo, p}
・森 la forêt (1920) {fl, vo, p}
・10の詩曲 dix poèmes (-) {vo, p}
・3つの新奇なバラード trois nouvelles ballades (-) {vo, p}
・4つのフランスのバラード quatre ballades française (-) {vo, p}
・6つの歌 six mélodies (-) {vo, p}


ゴベールを聴く


★★★★
"Complete Works for Flute 1 :
Madrigal / Trois Aquarelles / Divertissement Grec / Soir Païen / Tarentelle / Pièce Romantique / Médailles Antiques / Suite" (Naxos : 8.557305)

Fendwick Smith (fl) Sally Pinkas (p) Jayne West (sop) Andrew Pearce (vc) Jacques Zoon (fl) Ann Hobson Pilot (hrp) John Ferrillo (ob) Malcolm Lowe (vln)
最近の値崩れ状況下で,もはやその嚆矢を作ったナクソスの,価格破壊屋としての使命はほぼ終わったような気がします。それでも,ナクソスは今なお,大手が手を出しにくい新人・マイナー作家を平気で採り上げ薄利多売するベンチャー企業としては,立派に現役。先端を走り,我々を魅了するレーベルであり続けています。2003年に出た2巻からなる本ゴベール作品集も良い例。シャンドス盤を除いて,ほとんどシカトされていたゴベールも,これできっと浮かばれることでしょう。ボストンを拠点にするスミス氏とピンカス女史を軸に,ボストン響の首席奏者クラスがごっそり集まって制作した本盤,ナクソスとしてはかなりレベルの高い演奏で,願ったり叶ったり。遙か彼方に,ジャケットにも見える古き良き時代の典雅な神話世界へ想いを馳せるかのような,具象的で穏健なロマン派旋律に,ドビュッシー経由の近代の意匠が(転調・前半音階・旋法表現などの形を借りて)甘美に絡む。正直,この作家を随分昔に聴いたときには,こんなに風雅な音楽だとは思えませんでした。反省です。第1集も2集も,雰囲気は同じような感じに進みますので,あとは演奏ですか。第2集で触れた通り,正直出ずっぱりのフルート奏者の力量には,少々残念な点がちらつきます。「まずどちらか一枚試したい」と仰る方は,この第1集のほうからになさるのが良いでしょう(手練れが複数絡むので目立たなくなる:笑)。

★★★★
"Complete Works for Flute 2 :
Sonata for Flute and Piano / Second Sonata / Third Sonata / Sonatine Quasi Fantasia" (Naxos : 8.557306)

Fendwick Smith (fl) Sally Pinkas (p)
ゴベールの,フルート全集を謳ったナクソスの連続録音。まだ数点未収録があるということは,第三集も作る気でしょうか。本盤はその2枚目で,出ずっぱりのスミス氏と,ピアノのピンカス女史の2人による,フルート独奏曲を集めた選集です。スミス氏は1978年にボストン交響楽団へ入団し,ニューイングランド音楽院やタングルウッド音楽センターでフルートを教えている人物。1984年からはボストン室内楽協会の会員をなさり,毎年ジョーダン・ホール(ニューイングランド音学院の持っている音楽堂)で開催している彼のリサイタルは,もう四半世紀以上続いている名物企画なんだそうです。伴奏者のピンカスさんはダートマス大学音楽科の教授。タングルウッドの夏の音楽祭やボストン・ポップスとの競演歴があるので,そこで両者が知り合い,この企画に繋がったのでしょう。こちらもロマン派の流儀を受け継ぎ,あくまで具象的なメロディを大切にした穏健な主旋律を,巧みな転調技法,経過音的に処方される前半音階,近代的な和声を駆使して装飾。初期の甘美なドビュッシーの作品群を思わせる音世界を展開する。ソリストも曲に良く同調しており,感情表出も自然で好感が持てます。ただ,やっぱり気になるのがフルートですか。息が漏れすぎているせいかハスキーなうえ,当然アメリカ流儀ということは音も湿っています。また,お年のせいなのか,音符が詰まったり,音圧が上がったりすると,音色のはしばしに棘が出てくるのが気になります。残響の多い録音のせいもあるのでしょうが,ちょっと勿体なかったですねえ。

★★★★
"Oeuvres pour Flûte :
Sonate pour Flûte et Piano, No. 1 / Sonate pour Flûte et Piano, No. 2 / Sonate pour Flûte et Piano, No.3 / Fantaisie / Sonatina"
(Accord : 242302)

Loïc Poulain (fl) Noël Lee (p)
ゴベールは作曲家というよりはフルート奏者。オペラや管弦楽作品も少なからず書いたようですが,有名なのはフルート曲だけ。その辺りハーピストには特別な存在のトゥルニエに通じるところがあります。そして,これもトゥルニエと同じで,フルート奏者にとって特別な存在らしい彼は,どのフルート奏者もオムニバスでは採りあげるのですが,一方で彼の作品集をとなると極端に録音が少ないのが実状。その中でもこの盤は演奏者が実力者揃いで秀抜な作品です。ドビュッシーの『シリンクス』など,もともとフルートはフランスのお家芸的楽器。その特性を利して,フォーレ,イベールなどを思わせる,やや簡素で保守的なロマン派様式の主旋律に,印象主義の影響を感じさせる全半音階を駆使した肉付けが絶妙に絡む。いずれも佳作揃い。ドビュッシーやイベールなどに比べると書法は穏健で,ちょっと垢抜けしないところがあり,ロパルツなどに近いといえるかも知れません。上述の通り,その後全集も出たりしましたが,肝心のフルート奏者の出来には若干至らないところもありますので,フルートを嗜む方などには,今もって第2集よりも本盤のお薦め度のほうが上でしょう。