Gの作曲家


ポール・ジルソン Paul Gilson (1865-1942)

ベルギーの批評家,作曲家。1865年6月15日,ブリュッセルで生まれ,ルイスブレク(Ruisbroek)で育った。16才で帰郷し,1886年から三年間,ブリュッセル音楽院でF. ゲベール(F.A. Gevaert)にフーガと作曲法を学んだ他は生涯独学。1890年に『シナイ山』でベルギー・ローマ大賞を獲得し,1901年に音楽視学官。1899年からブリュッセル音楽院,1906年からアントワープ音楽院で和声法の教鞭を執る。その傍ら,1924年から1940年まで『ベルギー音楽批評(La Revue Musicale Belge)』誌で批評家としても活躍。1925年には彼の弟子や賛同者の集まり(Synthésisten)がマウリツ・シェーメイカー(Maurits Schoemaker)の提唱で組成され,そこにはマルセル・ポートを始め,テオ・ビョンカー(Theo Bjoncker),フランシス・ドゥ・ブルギニョン(Francis de Bourgignon),ジュール・ストレンス(Jules Strens),ルネ・ベルニエ(René Bernier)らが名を連ねた。作曲家としては交響詩『海』で評価を確立。ロシア国民楽派を基調にしつつ,印象主義との折衷的表現をとった作品を遺す。1942年4月3日,シャールビーク(Shaarbeek)にて死去(関連ページ: ポール・ジルソン協会)。


主要作品

歌劇 ・歌劇【悪魔】 le demon: drame lyrique (1890) {2acts}
・歌劇【海の民】 gens de mer (Zeevolk): drame lyrique (1895) {2acts}
・バレエ【捕虜】 la captive (1896-1900)
・神話劇【ゾネージン妃】 princesse rayon de soleil (Prinses Zonneschijn): legende feerique (1903) {4acts}
・音楽劇【冒険者たち】 les aventuriers (Rooversliefde): drame musical (1910) {1act}
・無言舞踏【2つのボッスス】 les deux bossus: ballet pantomime (1910-1921) {1act}
管弦楽曲 ・海 la mer (1890)
・狂詩曲 rapsodie (1890) {strings}
・スコットランド風の歌 mélodies Ecossaises (1892) {strings}
・アルヴァル alvar (1893)
・交響的序曲第一番 symfonische ouverture (1900)
・交響的変奏曲 symfonische variaties (1903)
・交響的序曲第三番 symfonische ouverture No.3 (1903-1904)
・交響的ワルツ第二番 tweede symfonische wals (1923)
・パラフレーズ parafrazen (1929)
・イカロスの伝説 le mas d'Icare (1934)...
Carlo Queeckersの映画音楽として作曲か
協奏曲 ・サクソフォーン協奏曲第1番 eerste saxofoonconcerto (1902) {sax, orch}
吹奏楽 ・第一降臨節 le retour au pays (1885)
・「エレシウス」序曲 Eleusinis overture (1881-1882)
・狂詩曲第2番 tweede rapsodie (1906)
・40年 quarantenaire (1914)
・荘重な間奏曲 interlude solenelle (1925)
・メーデル moeder (pub.1948) {vo, brass}
室内楽 ・ロマンティックな小品 romantische werkjes (1934-1936) {brass, p}
・アリア aria di timpani con 6 variazioni (1940)
ピアノ曲 ・田舎風の小組曲 petite suite rustique (1901)
・祝典二部作 vier tweeluiken (pub.2001)
歌曲・合唱曲 ・6つの歌 six mélodies (1889-1890) {vo, p}
・オラトリオ【フランチェスカ・ダ・リミニ】 Francesca da Rimini (1892/1895) {vos, orch}

・カンタータ【シナイ山】 Sinaï (1900) {vos, orch}


ジルソンを聴く


★★★
"La Mer / Mélodies Ecossaises / Alvar, Prelude / Symphonic Overture No. 3" (Marco Polo : 8.223809)
Frédéric Devreese (cond) Moscow Symphony Orchestra

フランス近代楽壇に君臨した大ボス,セザール・フランクはベルギー人。言語はフランス語。今世紀初頭のベルギー楽壇は,フランス音楽のお膝元として,ルクーやジョンゲンら優れた作家を数多く送り出しました。ポール・ジルソンもそうした一人。文化的首都への憧憬はさぞ強かったのでしょう。ドビュッシーに先んじて標題を掲げた『海』の曲想などは,それを端的に表します。ただし,ドビュッシー以前にそれをやったということは,本家ほど濃密な印象派ではありようがないということをも物語るという皮肉。作品の様式はロシア国民学派音楽の影響も顕著。そのため,形式は具象的で洒脱さに欠け,些か中途半端な印象が拭えません。リムスキー・コルサコフ辺りもお好きなら,この作家は聴けるでしょうが,純然たる印象主義以降の音楽が好みの向きには,仕掛けが見え透いていて,ちょうど気障な割には垢抜けない田舎紳士のよう。食い足りないこと請け合いです。印象派外苑C級グルメ愛好家にのみ推薦。


(2002. 5. 30 upload)