Gの作曲家



ウジェーヌ・グーセンス Eugène Goossens (1893-1962)

イギリスの指揮者,ヴァイオリン奏者,作曲家。ベルギー系。本名アインズレー・ユージン・グーセンス(Aynsley Eugene Goossens)。英読みでも表記される。父方が2代続いた歌劇指揮者であり,戦争を生き抜いた4人の兄弟が,のちに皆楽器奏者になったほど音楽的に恵まれた家庭環境に育ち,リバプール,さらに8才でブルージェに出てフランシス・クサビエに師事したのち,1907年に王立音楽学校の奨学金を獲得。ロンドンに出てまずヴァイオリンを学び,次いで1910年からチャールズ・スタンフォードに師事して作曲法を学んだ。ラングリー=マックル弦楽四重奏団やエンリー・ウッド・クイーンズ・ホール管弦楽団でヴァイオリン奏者として活動後,1916年にトーマス・ビーチャムに見いだされて助演指揮者に就任。さらにコヴェント・ガーデン付の指揮者,ロチェスター管弦楽団の音楽監督(1925年〜1931年),シンシナティ交響楽団の主任指揮者(1931〜1946年),次いでシドニー交響楽団の主席指揮者などを歴任し,ストラヴィンスキーやラヴェル,ドビュッシーのスペシャリストとして国際的に活躍した。1950年代以降の晩年は豪州に渡り,ニュー・サウス・ウェールズ音楽院長,シドニー音楽院長も勤める。フランス印象主義の手法に大きな影響を受け,フランス的感覚に富んだ作品を遺す。1962年6月13日,ロンドン北部の病院で死去。


主要作品 
Goossens, E. 1951. Overture and beginners. Methuen and Company.を入手しました。作品表は時間がとれ次第増補します。

舞台作品 ・ユーディット Judith (prem.1929)
・マニャーラのドン・ファン Don Juan de Mañara (1930-1934)
管弦楽曲 ・ミニアチュール・ファンタジー miniature fantasy for string orchestra (1911) {strings}
・中国民謡の主題による変奏曲 variations on a Chinese theme (1911-1912)
・交響詩【ペルセウス】 Perseus (1912)
・永遠のリズム the eternal rhythm (1913)
・カレイドスコープ kaleidoscope (1917/1933)
・タム・オーシャンテ tam o'shanter (1919)
・コンチェルティーノ concertino (1927) {strings}
・ギリシャ舞踏曲 three Greek dances (1927) {small-orch}
・交響曲第1番 symphony no. 1 (1940)
・カウボーイの幻想 cowboy fantasy (1942)...
映画音楽
・田園詩曲 pastorale (1942) {strings}
・交響曲第2番 symphony no. 2 (1944)
・海の商人のためのファンファーレ fanfare for the marchant marine (1944) {orch, gong, perc}
・勝利のファンファーレ victory (Jubilee) Fanfare and God Save the Queen (1945)
・戴冠ファンファーレ coronation fanfare (1953)
・ディヴェルティスメント divertissement (1959-60)
協奏曲 ・叙情的詩曲 lyric poem (1919) {vln, orch}
・9人の吹奏楽のための幻想曲 fantasy for nine winds (1924)
・オーボエ協奏曲 oboe Concerto (1927) {ob, orch}
・3つの絵画 three pictures (1935) {fl, strings, perc/fl, p}
・幻想協奏曲 phantasy concerto (1944) {p, orch}
・演奏会用小品 concert piece (1958) {2hrp, ob(e-hrn), orch}
室内楽曲 ・4つの素描 four sketches (1914) {fl, vln, p}
・組曲 suite (1914) {fl, vln, hrp}
・休日の5つの印象 five impressions of a holiday (1914) {fl (vln), vc, p}
・幻想六重奏曲 phantasy sextet (1923) {2vln, 2vla, 2vc}
・2つのバラード deux ballades (1924) {hrp}
・弦楽八重奏のためのコンチェルティーノ concertino for string octet (1928) {4vln, 2vla, 2vc}
・田園詩曲と道化芝居 pastorale et arlequinade (1924) {fl (vln), ob, p}
ピアノ曲 ・演奏会用練習曲 concert study (1914)
・カレイドスコープ kaleidoscope (1917-1918)
・自然の詩 the nature poems (1919)
・船の前奏曲 three ships preludes (1924)
・ドビュッシー礼讃 the Debussy homage (1937)
・4つの奇想曲 four conceits (-)
・2つの習作 two studies (-)
・2つの小品 two pieces (-)
・カプリッチョ capriccio (-)
合唱曲 ・アポカリプス the apocalypse (1953) {sop, al, tnr, btn, choir, orch}


グーセンスを聴く


★★★★☆
"Four Sketches / Three Pictures / Five Impressions of a Holiday / Suite / Pastorale et Arlequinade" (Chandos : CHAN 10259)
London Chamber Music Group: Susan Milan (fl) David Theodore (ob) Jan Peter Schmolck (vln) John Heley (vc) Christina Rhys (hrp) Ian Brown (p)
指揮者としてしか有名じゃないグーセンスにまで,ぼちぼち光の当たる情報化社会ってすばらし〜っ!思わず快哉の一枚が出ました。比較的初期に書かれた『4つの素描』,『祭日の印象』,『組曲』や,後年の『田園詩曲・・』に聴けるのは,ドビュッシー『ソナタ』や,イケイケじゃないときのケックランの器楽曲,ダマーズ室内楽の風情。柔和でアルカイックな印象派〜擬古典音楽が堪らない人なら,目尻が下がって仕方ない内容。いっぽうで後年,無調趣味へ走って晦渋になる作曲者の思惑は,ジョリヴェ『リノスの歌』風の音選びで警戒感をそそる『3つの音画』へ聴くことができます。しかし,フランス大好きなフルート・メインの編成+「印象」「素描」に仏語標題な命名・・からもお察しいただけるとおり,前衛手法はあくまでもアクセント程度に抑えられている。編成が小さい分,管弦楽に漂う大味な感じもほとんどありませんし,個人的にはグーセンス作品集としては最もお薦めしやすい一枚になっているのではないかと思います。残る問題は演奏ですか。名前からも明らかな通り,顔触れはロンドン界隈のオケ団員の混成メンバー。元ロイヤル・フィル首席にして王立音大研究員のフルートと,BBCウェールズ管の元首席を,アカデミー室内の弦部二名,ジェミニ・アンサンブルのハープが補佐。何れも「元」な方々だけに,細かい事を言えばフルートの音色はややくたびれており,ヴァイオリンは軽い音色ながらリズム感が硬いなど,難が見え隠れするも,充分許容範囲。さらに,イアン・ブラウンのピアノが助演男優賞なみの貢献を見せ,空中分解しかねないアンサンブルを見事に支えて一体感を保持。この人,伴奏に回ると実に巧いですねえ。ナッシュ・アンサンブルの一員として,ランバートの協奏曲でも巧い伴奏してましたっけ。少しペダルを多く踏むようになりましたが,なおイギリス最強の伴奏者じゃないでしょうか。

★★★★☆
"Symphony No. 1 / Oboe Concerto / Tam O'shanter / Concert Piece" (ABC : 462- 014-2)
Vernon Handley (cond) West Austoralian Symphony Orchestra
記憶が確かなら本盤は,オーストラリアのNHKことABC放送局が,かつて三枚に渡って制作し,世に問うたグーセンス管弦楽作品集のひとつ。タクトを振っているヴァーノン・ハンドレーといえば,今ではシャンドスを代表する指揮者となっており,アルスター管やロンドン・フィルハーモニックなど,英国を代表するオケを駆って大活躍。イギリスものの顔になっている感があります。しかし,彼は一方でオーストラリアでも長年に渡って活躍。この辺りの経緯が,ちょうど作曲者であり指揮者のグーセンスとダブっているわけですねえ。似た経歴を持つグーセンス集という発想も,そこから来たのでしょう。グーセンスは近代ものが滅法得意な指揮者だったそうで,コヴェント・ガーデン付の初演ではストラヴィンスキーやラヴェルなどを採りあげていたそうです。このため彼の作品も,曲毎に印象主義色の強いもの,バーバルなもの,無調などがカメレオンのように現れます。ここでは初期の『オーボエ協奏曲』が印象主義度顕著でお薦め度大。『コンサートの小品』は,第1楽章冒頭こそデュティーユ彷彿の十二音階風旋律でゲンナリしましたが,二楽章以降が素晴らしい。ハープとオーボエの協奏により,アルカイックな趣溢れる旋律を,久石譲を思わせる陶酔感溢れる和声が優しく包む夢心地の世界です。ちょっと構成が大味なのは残念ですけど,無問題無問題。余り録音を見たことがないオケの実力も素晴らしいもので,管弦楽編成で一枚探すなら,文句なしに決定盤といえましょう。

★★★★
"Symphony No. 2 / Concertino for Strings / Fantasy for Winds" (ABC : 8.770013)
Vernon Handley (cond) Sydney Symphony Orchestra
イギリス近代の作曲家について書かれた伝記を読んでいると,思わぬところで端書きを書いていたりして,その博学に驚かされるヴァーノン・ハンドレー。イギリス近代ものを指揮させると,ヒコックスと並んで抜群に安定しているこの老翁が,グーセンスゆかりのシドニー交響楽団を率いて録音した本盤は,3枚からなるグーセンス作品集の掉尾を飾る形で世に出たものです。ハンドレーはBBCフィル,アルスター交響楽団など,イギリスのオーケストラを率いた録音が沢山あるので,イギリスでの活動ばかりが目立ちますけれど,元々はメルボルン交響楽団と西オーストラリア交響楽団の常任指揮者を歴任するなど,豪州の楽壇とも関わりが深く,言うなればカンガルーの袋で大きくなった指揮者です。おそらくは最晩年の作曲者とも,シドニー近辺で少なからぬ交流があったのではないでしょうか。後年の作品を中心に選曲された本盤は,書法のうえでも彼の作品の中では晦渋な部類。調性感は希薄になり,いわゆるゲンダイオンガクに最も接近しています。一般の方は,まず『交響曲第1番』を先に聴かれるほうが良いのではないでしょうか。余談ながら本盤に収録されている『コンチェルティーノ』は,下に紹介するオクテット編成の室内楽版がオリジナル。あまり聴く機会のないシドニー交響楽団の演奏は良好です。あまり録音見ませんよねえ。せっかくの腕なんだし,もう少し近代作家を色々録音してくれればいいのになあ。

★★★★☆
"Concertino for String Octet / Phantasy Sextet (Goossens) String Sextet (Bridge)" (Chandos : CHAN 9472)
Academy of St. Martin-in-the-Fields Chamber Ensemble
ネヴィル・マリナーの手兵としてお馴染み「アカデミー室内管弦楽団」の構成員たちによって編成されたアカデミー室内器楽アンサンブルは,イギリス近代物を中心に,シャンドスへ集中的に録音をしている団体。そういえばこのレーベルに,世界初録音を含むバックスの室内楽作品集もありました。こういう奇特な演奏家諸兄がいなければ,まず一般人はお目にかかれないグーセンス,過小評価の極みで可哀想の一言です。収録された『コンチェルティーノ』と『幻想六重奏曲』は,いずれも新古典趣味に立脚した構築的な書法が印象的。かっちりとした拍動とリフ主体の旋律に則った重厚な対位法書法で書かれ,色彩感に富んでいながらも,あくまでもどっしり腰の据わった形式感で聴かせる作風です。推進力の強さという点では,どこかオネゲルの『パシフィック231』やスティーヴ・ライヒなどに普く存在する,反復主義的手法を思わせるところがあります。嬉しいことに本盤,演奏も良い。くだんのバックスの室内楽作品集では演奏にやや一体感が乏しく,散漫な印象を受けたアカデミー室内も,どういうわけか本盤では頑張りました。アーティキュレーションも揃ってます。或いは曲が新古典風だったから,細部を揃えやすかったですか?

★★★★
"Interlude - Französische Musik für Flöl;te, Violine und Harfe :
Suite / Deux Ballades (Goossens) : Deux Préludes Romantiques / Promenade à l'Automne (Tournier) : Two Dances (Moyse) : Cinq Nuances / Triptyque (Berthomieu) : Entr'acte / Deux Interludes (Ibert)" (Thorofon : CTH 2194)

Hans-Jörg Wegner (fl) Marcus Honegger (vln) Ellen Wegner (hrp)
ブルグウェルデル生まれ,ハノーヴァー音楽院で教育を受けたウェルナー夫妻と,シュレスヴィヒ・ホルスタイン室内楽アンサンブルの首席奏者というヴァイオリンのオネゲル氏の演奏によるフランス作品集。モロ,ドイツ・ドメスティックな顔触れのどこからこんな企画が生まれたのかと思ってしまいますが,ハープのウェグナー女史はシャンタル・マチウの弟子で,いわばトゥルニエの孫弟子にあたるわけです。イニシアチブは彼女がとったのでしょう。意外なほど瀟洒な演奏で,無名揃いの割にはレベルもそれなりに好く,何より選曲が素晴らしい。ベルトミュー,モイーズなんて,この盤がなけりゃ聴くことすら叶わない。それだけでもう貴重盤でしょう。グーセンスの作品は1924年に書かれたもの。比較的初期の作品だけに,典雅な擬古典趣味に立脚しながらカラフルな和声を散りばめる穏健な書法が美しい。

(2001.6.25 uploaded)