Gの作曲家



ヘンリク・グレツキ Henryk Mikolaj Górecki (1933 - )

ポーランドの作曲家。1933年12月6日,南ポーランドのチェルニカ(Czernica)生まれ。2才で母を亡くす。1955年から1960年まで,カトワース高校でシマノフスキの弟子ブルスラフ・サベルスキに師事し,のちに同校の教授となる。彼の影響を受けて,土着の民謡や教会音楽に関心を示すようになり,旋法性の高い作風を完成させたが,ほとんどは独学で作曲を学んだと思われる(グローブ社の作曲家辞典には,彼が1961年にパリでオリヴィエ・メシアンに師事したとの記述がある。しかしこれは正確ではなく,実は持ち前の怯懦のため,メシアンとは手紙を交換しただけで会わず終いであった)。1959年に結婚。1960年にポーランド若手作曲家コンクールの優勝を皮切りに,ビエナール・デ・ジュネス(仏1961年),文化芸術省賞(一等1969年,1973年),ユネスコ国際(仏1973年)など欧州では幾つかの賞を受賞していたが,共産主義下のポーランドにあって国際的な知名度からは縁遠かった。彼の名が広く国際的に知られるようになったのは,1992年にドーン・アップショウ(ソプラノ)により録音された『交響曲第三番』(1976)が,イギリスのクラシック系ラジオ放送局で大きな反響を呼び,稀に見 る高セールスを記録してからのことである。(関連ページ:Henryk Mikolaj Górecki ポーランド音楽センター監修)


主要作品

管弦楽曲 ・交響曲第一番 symfonia No. 1 (1959)
・衝突 scontri (1960)
・古風な様式による3つの小品 trzy utwory w dawnym stylu (1963) <strings>
・ choros 1 (1964) <strings>
・古風なポーランド音楽 muzyka staropolska (1969)
・カンティクム・グラドゥーム canticuum graduum (1969)
・交響曲第2番「コペルニカン」 symfonia 'Kopernikowska' (1972) <sop, btn, choir, orch>
・3つの舞曲 trzy tance (1973)
・交響曲第3番「悲歌の交響曲」 symfonia piesni zalosnych (1976) <sop, orch>
・ beatus Vir (1979) <btn, choir, orch>
協奏曲 ・悦びと躍動の歌 piesni o radosci i rytmie (1956/1959) <2p, orch>
・ハープシコード協奏曲 concerto (1980) <hrcd/p, strings>
・協奏曲とカンタータ concerto-cantata (1992) <fl, orch>
室内楽 ・ヴァイオリンとピアノのための変奏曲 variazioni per violino e pianoforte (1956) <vln, p>
・2本のフルートとオーボエ,ヴァイオリンのためのクァルテッティーノ quartettino (1956) <ob, 2fl, vln>
・単楽章のソナティナ sonatina w jednej czesci (1956) <vln, p>
・2台のヴァイオリンのためのソナタ sonata na dwoje skrzypiec (1957) <2vln>
・5つの器楽と弦楽四重奏のための協奏曲 concerto (1957)
・5つの小品 piec utworow (1959) <2p>
・3つのダイアローグ trzy diagramy (1959) <fl>
・ジェネシス第1番 genesis I : elementi per tre archi (1962)
・ジェネシス第2番 genesis II : canti strumentali per 15 esecutori (1962)
・音楽的小品第2番 muzyczka I (1967) <4tp, 4tb, 2p, perc>
・音楽的小品第3番 muzyczka III (1967) <3vla>
・カンタータ cantata (1968) <org>
・音楽的小品第4番『トロンボーン協奏曲』 muzyczka IV : 'oncert puzonowy' (1970) <tb, cl, vc, p>
・3つの小品 trzy male utworki (1977) <vln, p>
・アリア aria (1987) <tba, p, tam, drum>
・黄昏のあとで already it is dusk (1988) <2vln, vla, vc>
・朗唱とアリオーゾ recitatives and ariosos 'lerchenmusik' (1984) <cl, p, vc>
・アンヌ・リル,あなたに捧ぐ dla ciebie, Anne-Lill (1986-1990) <fl, p>
・幻想曲 quasi una fantasia (1991) <2vln, vla, vc>
・レクイエム kleines requiem fur eine Polka (1993) <13inst>
・幻想曲 kleine phantasie (1997) <vln, p>
合唱曲 ・ euntes ibant et flebant (1972) <choir>
・2つの唱歌 dwie piosenki (1972) <4vo>
・アーメン amen (1975) <choir>
・大海 szeroka woda (1979) <choir>
・ミゼレーレ miserere (1981) <choir>
・ wislo moja, wislo szara (1981) <choir>
・3つのゆりかごの歌 kolysanki (1984) <choir>
・ totus tuus (1987) <choir>
歌曲 ・3つの歌 trzy piesni (1956)
・墓碑銘 epitafium (1958) <choir, chamber>
・モノローグ monologhi (1960) <sop, chamber>
・ジェネシス第3番 genesis III : monodramma (1963)<sop, perc>
・アド・マトレム ad matrem / do matki (1971) <sop, choir, orch>
・2つの神聖な歌 dwie piesni sakralne (1971) <btn, orch>
・オ・ドミナ・ノストラ o domina nostra (1985) <sop, org>
・好い夜を dobranoc (1990) <sop, fl, p, perc(3tams) >
ピアノ曲 ・4つの前奏曲 4 preludes (1950)
・ソナタ sonata (1956-1990)


グレツキを聴く


★★★☆
"Drei Stücke im alten Stil / Sinfonie No. 3" (Koch Schwann : CD 311 041 H1)
Karol Teutsch, Wlodzmierz Kamirski (cond) Stefania Woytowicz (sop) Radio-Sinfonie-Orchester Berlin
おそらくはポーランドの生んだ最も知名度の高い現代音楽家のひとりに成長した,グレツキの作品集。この『交響曲第3番』は,第2楽章がUKポピュラー・チャートでなんと6位まで上昇する大ヒットを記録。ラジオ曲でこれが盛んに掛かったことで,一気に火がついたそうです。クラシックやジャズは人気がない,時代に取り残された化石のような教養音楽に成り下がったという自嘲気味の言葉を耳にすることはよくありますが,それは多くの場合,一般大衆の耳に触れる機会そのものを与えられていないからという単純な理由で説明できると小生は思います。本曲の大ヒットはその好個の例でしょう。グレツキの作風は出自が示す通り東欧臭満載で,変化が少なく素朴で農耕部族的な主旋律の反復が全体を支配。マズルカやポロネーズに見られる強いアクを持った作風です。しかし後ろで流れるモーダルな和声は近代的な響き。ポーランドのシンプルで武骨な旋律と,およそ似つかわしくない近代の洒脱な和声とが軋みを上げながら同居し,武骨で飾らない彼のモダニズムを生み出しているのでしょう。アクの強い作風だけに好みは大きく分かれそうですが,あまり煩く好き嫌いを言わない方なら,この作 家も“旧ソ連臭いオネゲル”の体で聴けます。コッホのドイツ録音シリーズは既にシュレーカーの作品集で品質保証済み。演奏良好です。

(2002. 2. 1 uploaded)