Gの作曲家


イダ・ゴトコフスキー Ida Gotkovsky (1933 - )

フランスの作曲家,教育者。ロシア系。1933年,フランス北部の港町カレーの音楽的な家庭に生まれる。9歳で教会オルガニストを務めるなど早くから才能を発揮。フランス国立高等音楽院へ進んでナディア・ブーランジェに師事し,数部門で一等を得て卒業した。吹奏楽を中心に作品多数。リリー・ブーランジェ賞,ブルメンタール賞,パドルー賞第一等,パリ市メダル,ディオンヌ=レ=ベン賞,米ゴールデン・ローズ賞,SACEM(作詞家作曲家楽譜出版社協会:日本の著作権協会にあたる)賞など豊富な受賞歴を誇る。現在は,各種音楽コンクールの審査委員長,フランス文化省を始め国内外の委嘱作の作曲活動の傍ら,フランス国立高等音楽院教授として楽典の教鞭を執っている。形式は比較的簡明であるが和声感には優れ,伝統的な書法に立脚した作風を特徴とする。大規模作品を中心に師ナディアの妹,リリー・ブーランジェの影響が見られる(関連ページ: Ida Gotkovsky 英語文も有)。


主要作品

舞台作品 ・マカールの夢 le rêve de makar (1964)
・これより何も rien ne va plus (1968)
・サーカス le cirque (1972)
管弦楽曲 ・管弦楽のためのスケルツォ scherzo (1956)
・弦楽とパーカッションのための交響曲 symphonie pour cordes et percussion (1957) {strings, perc}
・遊戯 jeu (1957)
・エスカペイド escapades (1958)
・軽業師 jongleries (1959)
・綱渡り芸人 funambules (1960)
・管弦楽のための協奏曲 concerto pour orchestre (1970)
・色彩的な音楽 musique en couleurs (1970)
・交響的詩曲 poème symphonique (1973)
・悲壮的な変奏曲 variations pathetiques (1983)
・春の交響曲 symphonie de printemps (1984)
・コラール choral (1989)
・黄金交響曲 golden symphonie (1991)
・音楽的色彩 couleurs en musique (1992)
・黄金と輝き or et lumière (1992)
・乙女の若さを讃える交響曲 symphonie a la jeunesse (1993)
協奏曲 ・トランペット協奏曲 concerto pour trompette (1960) {tp, orch}
・サクソフォン協奏曲 concerto pour saxophone (1966) {sax, orch}
・クラリネット協奏曲 concerto pour clarinette (1968) {cl, orch}
・2台のヴァイオリンのための協奏曲 concerto pour deux violons (1971) {2vln, orch}
・バスーンのための協奏的変奏曲 variations concertantes pour basson (1972-1973) {bssn, orch}
・トランペット協奏曲第2番 second concerto pour trompette (1974) {tp, orch}
・ピアノ協奏曲 concerto pour piano (1975) {p, orch}
・トロンボーン協奏曲 concerto pour trombone (1978) {tb, orch}
・チェロ協奏曲 concerto pour violoncelle (1977-1980) {vc, orch}
・クラリネットのための叙情協奏曲 concerto lyrique pour clarinette (1982) {cl, orch}
・ホルン協奏曲 concerto pour cor (1984) {hrn, orch}
器楽/室内楽曲 ・相貌 caracteres (1970) {vln, p}
・ロシアの踊り danse russe (1957) {vln, p}
・ヴァイオリン・ソナタ sonate (1976) {vln, p}
・輝き brillance (1974) {sax, p}
・組曲 suite pour dix instruments (1959)
・ピアノ変奏曲 variation (1956) {p}
・ dasvidania (1962) {accordion}
・風 eolienne (1970) {fl (sax/cl), hrp (p)}
・前奏曲集 préludes (1970) {p}
・カプリッチョ capriccio (1981) {vln, p}
・弦楽四重奏曲 quatuor à cordes (1955) {2vln, vla, vc}
・ノルウェイの印象 images de norvege (1977) {cl, p}
・吹奏三重奏曲 trio d'anches (1954)
・三重奏曲 trio pour violon, clarinette et piano (1984) {vln, cl, p}
・サクソフォーン四重奏曲 quatuor de saxophones (1983) {4sax}
・叙情的な祈祷 incantations lyriques (1983) {vla, p}
・クラリネット独奏のためのソナタ sonate pour clarinette seul (1984) {cl}
・五重奏曲 quintette de cuivres (1993)
・クラリネット四重奏曲 quatuor de clarinettes (1998) {4cl}
・閃光 incandescence (2012) {ts, p}
・春の変奏曲 variations de printemps (2013) {cl, p}
吹奏楽曲 ・交響曲 symphonie pour quatre-vingts instruments à vent (1960) {winds}
・大オーケストラのための協奏曲 concerto pour grand orchestre (1974)
・炎の詩 poème de feu (1978)
・サックスと大オーケストラのための協奏曲 concerto pour saxophone et grand orchestre (1980) {sax, orch}
・オルガンと交響吹奏楽のための交響曲 symphonie pour orgue et orchestre d' harmonie (1982) {org, orch}
・儀礼的な舞曲 danses rituelles (1988)
・輝かしい交響曲 brillante symphonie (1988-1989)
・森の唄 le chant de la forêt (1989) {choir, winds}
歌曲 ・歌集 mélodies (1956)
・歌唱曲 lied (1970-1985) {bass, tb, p}
・ボードレール礼賛 hommage à Baudelaire (1982)
・オラトリオ【ジャンヌ・ダルク】 oratorio: Jeanne D'Arc (2012) {sop, recit, orch}
試験課題曲
(作曲年不詳)
・コラール choral (1970-1985) {winds}
・フルートのためのメロディ mélodie (1970-1985) {fl, p}
・舟歌 barcarolle (1970-1985) {ob, p}
・シャンソン chanson (1970-1985) {cl, p}
・アレグロ・ジョコーソ allegro giococso (1970-1985) {bssn, p}
・リトゥルネロ ritournelle (1970-1985) {tp, p}
・ロマンス romance (1970-1985) {tb, p}
・バラダン baladins (1970-1985) {tuba, p}
合唱曲 ・混声合唱曲 choeur pour voix mixtes (1954) {choir}
・冬の夜の夢 le songe d'une nuit d'hiver (1989) {choir, winds}
・オリンピック・オラトリオ oratorio olympique (1992) {choir, orch}
・ジャン・フォンテーヌ礼賛 hommage à Jean de la Fontaine (1995) {child-choir, mix-choir, orchestre}


ゴトコフスキーを聴く


★★★★
"Concerto for Symphonic Band / Concerto for Saxophone and Symphonic Band / Poème du Feu" (René Gailly : CD 87 037)
Norbert Nozy (cond) Jean Leclercq (as) The Royal Symphonic Band of the Belgian Guides
マーストリヒト音楽院で教鞭を執る傍ら,1985年からベルギー王立吹奏管弦楽団の音楽監督を務めるノルベール・ノジーによって手がけられた,ゴトコフスキー初の本格的な連続録音です。ノジーはサックス吹きでもあり,このレーベルにエルネスト・アルフテルの吹奏楽編曲作品集も残しているマイナー漁り愛好家。ゴトコフスキーなどというおよそマイナーな作家に注目するのも,近現代音楽に造詣が深い彼一流の趣味のなせる技でしょう。数枚出た作品集で,目下最もゴトコフスキーの魅力が味わえるのは恐らくこのCD。ストラヴィンスキーを思わせる野趣に富んだリズムと,無調趣味の入った分厚い和声がゴトコフスキーの持ち味で,師匠ナディア・ブーランジェの妹にして悲運の天才作曲家,リリー・ブーランジェの管弦楽書法に影響を受けているように思いました。リズムがバーバルな割にはやや大味なので,個人的には緩楽章のほうが魅力的だと思います。

★★★☆
"Hommage à Jean de la Fontaine / Oratorio Olympique" (René Gailly : CD 87 132)
Norbert Nozy (cond) The Royal Symphonic Band of the Belgian Guides : Ex Tempore : Les Pastoureaux
こちらもノルベール・ノジー(指揮)ベルギー吹奏交響楽団が録音した一連の作品集から。吹奏楽を従えた合唱作品を二つ収めたCDです。エマニュエルやトマジにも,同じように民謡の旋律を採譜したような合唱曲がありますが,『ジャン・フォンテーヌ讃』もまさにそうした傾向が強い作品。このため,彼女最大の持ち味である精妙な和声感覚も,部分的に顔を出しますが余り強くは感じられません。強いて言えば,聴きものはカップリングの『オリンピック・オラトリオ』か。1992年のアルベールビル冬季五輪の祝典曲として委嘱された作品です。強い旋法性をみせながら,やはりどこか具象的なリズムが彼女らしい。中盤に,どことなく東洋趣味の漂う雅楽的なハーモニーが出てきます。う〜ん,この人の作品。和声のセンスは抜群なんですが,どこか今ひとつ大味なんだよなあ。強いて似た傾向の作曲家を捜すなら,同じく和声感覚が良くてリズムが少々単純なソーゲ辺りかも。

★★★☆
"Concerto pour Clarinette et Orchestre / Concerto Lyrique" (René Gailly : CD87 143)
Christian Debauve (cl) Norbert Nozy (cond) The Royal Symphonic Band of the Belgian Guides
イダ・ゴトコフスキーはナディア・ブーランジェに師事したフランスの女流作曲家。数年前に,ルネ・ガイーは最近,事実上の債務整理状態に陥ってしまったそうなので,ひょっとするとこのCDもじき入手困難になるかも知れません。しかし,この作曲家なんかは,ルネ・ガイーのおかげで日の目を見たようなところが多分にありますし,コピーガードまで入れて(自分の商品が焼かれるのを怖れると言うことは売り物に自信がない証拠です。そんなら売るなよ・・)エイ●ックスみたいなゴミが馬鹿売れする一方で,こういう小さくてもクラシックへの愛が感じられるレーベルが消えてしまうのは残念としか言いようがありませんなあ。このCDは4枚からなるゴトコフスキ作品集の一つで,クラリネットのために書かれた2作品を収録していますが,彼女の基本的な作風は大きな変化なし。和声面では時折,はっとするような閃きに満ちた瞬間がそこここに潜んでいる反面,それらの瞬間瞬間を紡ぎ合わせて,ひとつの曲の流れとして推進するためのエンジンともいうべきリズム面が大味なため,せっかくの和声感覚が生かし切れていない。好みの問題なのかも知れませんが,勿体ないという気がしてなりませんな〜・・。演奏は悪くなく,ソリストが達者です。

(2002. 4. 26 upload)