Hの作曲家



ハワード・ハンソン Howard Hanson (1896-1981)

アメリカの作曲家,教育者,指揮者。スウェーデン系。1896年11月28日ネブラスカ州ワフー(Wahoo)生まれ。ワフーのルーサー・カレッジで学び,次いでニューヨークへ出てニューヨーク音楽芸術院でグーテシウス(Goteschius)に師事。さらにノースイースタン大学でも学び,1915年から一年間助手を務めた。1920年に,『カリフォルニアの森の戯れ』で,アメリカ人としては初めてローマ大賞を獲得してローマに留学。ニューヨーク州ロチェスターのイーストマン校の校長に就任。1924年から1964年の引退まで教鞭を執り,同校をアメリカでも有数の音楽大学にまで成長させるとともに,イーストマン・ロチェスター管弦楽団を率いて指揮者としても活躍した。和声法やアメリカ大衆音楽に関する著書も遺している。作風は出自スカンジナビア系のグリーグやシベリウスが持つ北欧的ロマンティシズムを基調に,アメリカ的な明快さと躍動的なリズム感,近代的な和声感覚に富む。1981年2月26日に死去。


主要作品 ※Perone, J.E. 1993. Howard Hanson: a bio-bibliography. Greenwood Press. 入手。時間出来次第全面改訂。

オペラ ・ザ・メリー・マウント 'The Merry Mount' (1933)
付帯音楽 ・カリフォルニアの森の戯れ California forest play of 1920 (1919)
管弦楽 ・交響的前奏曲 symphonic prelude (1916)
・交響的伝説 symphonic legend (1917)
・交響的狂詩曲 symphonic rhapsody (1919)
・交響的詩曲『夜明け前』 symphonic poem 'before the dawn' (1920)
・交響曲第1番『ノルウェイ風』 symphony No. 1 'Nordic' (1922)
・交響曲第2番『ロマンティック』 symphony No. 2 'romantic' (1930)
・交響曲第3番 symphony No. 3 (1941)
・鎮魂交響曲 symphony No. 4 'the requiem' (1943)
・セレナーデ serenade (1945) {fl, hrp, strings}
・セルゲイ・クーセヴィツキーを偲ぶ哀歌 elegy in memory of Serge Koussevitsky (1951)
・交響曲第5番『神聖交響曲』 symphony No. 5 'sinfonia sacra' (1955)
・哀歌 elegy (1956/1966) {orch / 2vln, vla, vc}
・モザイク mosaics (1958)
・夏の海景 summer seascape (1958)
・ボールド・アイランド組曲 Bold Island suite (1961)
・初めての時 for the first time (1963)
・夏の海景第2番 summer seascape II (1966)
・ディエ・ナタリス dies natalis I (1967)
・交響曲第6番 symphony No. 6 (1967)
・海洋交響曲 symphony No. 7 'sea symphony' (1977) {choir, orch}
・ニンフとサチュロス ballet 'nymphs and satyr' (1979)
・2つの古い賛美歌による律動的変奏曲 rhythmic variations on two ancient hymns (-)
協奏曲 ・交響詩『称揚』 symphonic poem 'exaltation' with piano obbligato (1920) {p, orch}
・オルガン,弦楽とハープのための協奏曲 concerto for organ strings and harp (1921) {org, hrp, strings}
・交響詩『ルクス・エテルナ』 symphonic poem 'lux aeterna' (1923) {vla, orch}
・交響詩『パンと僧侶』 symphonic poem 'Pan and the Priest' (1926) {p, orch}
・オルガン協奏曲 organ concerto (1926) {org, orch}
・セレナード serenade for flute, harp and strings (1946) {fl, hrp, orch}
・ピアノ協奏曲 piano concerto (1948) {p, orch}
・田園 pastorale (1949) {ob, hrp, strings}
・若さの主題による幻想変奏曲 fantasy-variations on a theme of youth (1951) {p, orch}
声楽曲
(管弦楽付帯)
・ウォルト・ウィットマンの3つの歌 three songs from Walt Whitman (1915) {vo, orch}
室内楽 ・五重奏曲 quintet in F minor (1916) {2vln, vla, vc, p}
・室内交響曲 'concerto da camera' (1917) {2vln, vla, vc, p}
・弦楽四重奏曲 string quartet (1923) {2vln, vla, vc}
ピアノ曲 ・官能的な詩曲 poèmes érotiques (1917-1918)
・ピアノ・ソナタ sonata in A minor (1918)
・3つのミニアチュア three miniatures (1918-1919)
・2つのクリスマスの小品 two Yuletide pieces (1919)
・3つの練習曲 three etudes (1920)
・魅惑 enhantment (1935)
合唱曲 ・交響詩『北と西』 symphonic poem 'north and west' with obbligato chorus (1923) {orch, choir}
・古代の英雄ベーオウルフへの悲歌 'the lament for Beowulf' (1925) {choir, orch}
・英雄的な哀歌 'heroic elegy' (1927) {choir, orch}
・太鼓の拍子 'Drum Taps' (1935) {btn, choir, orch}
・ケルビム讃歌 the cherubic hymn (1949) {choir, orch}
・嗚呼素晴らしき御名 how excellent thy name (1952) {vos, p}
・民主主義への讃歌 song of democracy (1957) {choir, orch}
・人間の権利 song of human rights (1963) {choir, orch}
・詩篇第150番 psalm CL (1965) {male-choir}
・詩篇第121番 psalm CXXI (1968) {btn, choir, orch}
・砂漠の川 streams in the desert (1969) {choir, orch}
・神秘の旗手 the mystic trumpeter (1970) {narr, choir, orch}
・ルーメン・イン・クリスト lumen in Christo (1974) {choir, orch}
・新たなる大地,新たなる誓約 new land, new covenant - oratorio (1976)
吹奏楽他 ・センテニアル・マーチ (1967) {winds}
・ディエ・ナタリス第2番 dies natalis II (1972) {winds}
・青年のための6音音階入門 young person's guide to the six-tone scale (1923/1972) {2vln, vla, vc / p, winds, perc}


ハンソンを聴く


★★★★★
"Symphony No.1 'Nordic' / Elegy in Memory of Serge Koussevitsky / Symphony No.2 'Romantic' " (Delos : D/CD3073)
Gerard Schwarz (cond) The Seattle Symphony
アメリカものの精力的な発掘紹介で定評のあるシュワルツの周到な演奏で聴けるハンソン作品の決定盤です。アメリカの実力者といえばウォルター・ピストンの名がすぐに想い出されますが,この御仁もピストン同様海外留学組。アメリカものにありがちな安っぽいディズニー臭の臭い消しには,やはり海外に出ることが必要なのでしょう。ところで,彼は弟子の作曲家ウォルター・ハートレイの質問に答えて,自分の作風に影響を与えた作曲家としてバッハ,パレストリーナ,レスピーギ,シベリウスの名前を挙げたとか。バロック音楽のバッハ,北欧的ロマンティシズムを持つシベリウスと,近代的な和声感覚を持つレスピーギというバランス感覚は,そのまま彼の作風そのものを上手く表しております。ホルストの『惑星』やジョン・ウィリアムスの『スター・ウォーズ』に通じる明快で劇的なモダニズムを持ちながら,ジョンゲンを思わせる堅牢な構築力が品位を失わない。久々にアメリカもので優れた実力者の作品を聴いた気がいたしました。甲種推薦盤。

★★★★
"The Mystic Trumpeter* / Dies Natalis / Lumen in Christo / Lux Aeterna" (Delos : DE 3160)
Gerard Schwarz (cond) James Earl Jones (narr)* Seattle Symphony & Chorale
3曲の世界初録音を含む,シュワルツ/シアトル響のハンソン作品集の第5弾は,宗教的題材に基づいた合唱付帯の作品集。既に第4弾までは交響曲全集となっていますが,この第5弾はそこにも収められていませんので,お求めになる価値はあるでしょう。唯一,初録音ではない『ディエ・ナタリス』は,さもありなんの充実作。『E.T.』や『スターウォーズ』でお馴染みジョン・ウィリアムスからその通俗性を削り落として緊密さと重厚さを加え,純音楽的に仕立て直したような,充実の色彩感と構成力はローマ大賞受賞者の面目躍如たるものです。一方,初録音の3作品は,ナレーターと合唱が付帯され,古代神話映画を見ているように勇壮で劇的な『神秘の旗手』,『レクイエム』を思わせる重厚な管弦付帯の合唱曲『ルーメン・イン・クリスト』,そして『ルクス・エテルナ』からなりますが,分けても管弦楽作品『エテルナ』が出色。ブーランジェの『古い仏教徒の祈り』の沈鬱さとホルストの『土星』を思わせる響きを持ち,それがハンソンのディズニー臭を完璧にうち消して,厳粛な佇まいを浮き立たせている。初録なのが信じられない名品と思います。ヴァイオリン,ヴィオラの不安定なソロや粗い合唱隊など,細部を見ると垢抜けない面もありますけれど,演奏も一定の高水準を保っていると思います。

★★★★
"Mosaics / Piano Concerto in G Major / Symphony No. 5 / Symphony No.7" (Delos : DE 3130)
Gerard Schwarz (cond) Carol Rosenberger (piano) Seattle Symphony and Chorus
これも,シアトル交響楽団と仲良く頑張るシュワルツが完成させた5枚からなるハンソン管弦楽作品集のひとつ。1948年に書かれた『ピアノ協奏曲』には,ミヨーのコンチェルトの影響がちらつきます。そしてまた,この曲の調性(ト長調)はラヴェルが晩年にアメリカ公演を成功させたピアノ協奏曲と同じ調性。この辺りにハンソンの嗜好が端的に現れていると見るのは,あながち邪推ではないでしょう。速いパッセージを駆使した技巧的な作風も,尊敬する二者の煌びやかなコンチェルトに続こうとしたものでしょう。ピアノに分厚いコード打ちと速いスタッカート・リズムを取らせる独奏部のアレンジは『若さの主題による幻想変奏曲』同様,この人のピアノあしらいの拙さを再確認させるもの。しかしながら,他の作品は佳品揃い。アメリカ版ジョンゲンと呼びたくなるような,かっちりとした新古典様式とジョン・ウィリアムスそこのけの極彩色の和声が縦横無尽。オーケストラの水準は相変わらず安定感がありますし,個人的には『第1番・二番』に次いでお薦め度の高い選集だと思います。

★★★★☆
"Orchestral Works vol. 1 : Symphony No.1 / Merry Mount Suite / Pan and the Priest / Rhythmic Variations on Two Ancient Hymns" (Naxos : 8.559072)
Kenneth Schermerborn (cond) Nashville Symphony Orchestra
廉価の王様ナクソスから出たハンソン作品集。後半は出回っているCDではこの盤くらいでしか聴けない録音であり貴重。これから連続録音をしてくれるらしく楽しみです。ジョンゲン譲りの色彩感と,師匠譲りのロマン趣味,アメリカものらしい平明さ。しかし決して通俗的になりすぎないバランス感覚。このCDの未聴曲でもそれは変わりませんでした。『交響曲第1番』は,既にシュワルツの極上演奏があり,さすがにオケの色彩感の濃さでは少しばかり見劣りしてしまいますが,このCDの演奏もかなり良い。指揮のシャーマーホーンは1983年からナッシュビル管の音楽監督だそうで,それ以前もミルウォーキー管を率いるなど,米国内のオケを渡り歩いている御仁。中央のオケに比べると楽器が安物だからか,響きが少しざらついており遠達性も低めで,決して超一流とはいえないオケから,その伸びやかな推敲でかなりの秀演を引き出しています。現代の録音技術で,問題の響きも,注意して聴かない限り気にならないほどのレベル。じゅうぶんお買い得盤の一を占める内容と申せましょう。

★★★★
"Symphony No.1 / Symphony No.2 / Song of Democracy" (Mercury : 432 008-2)
Howard Hanson (cond) Eastman-Rochester Orchestra : Eastman School of Music Chorus
アメリカ人ながらブーランジェに師事し,ローマ大賞を獲ったハンソンは指揮者としても高名で,自ら校長となったイーストマン大ロチェスター校の楽団を率い,少なからぬ録音を残しています。本盤は,1950年代の終わりに吹き込まれた自作自演盤。シュワルツの名録音が印象に残る『1番』と『2番』に,他では録音をまずお見かけしない『民主主義の歌』を併録しています。当時最先端だった自社の録音機材を駆使して,圧倒的に生々しい音で音像を記録した【リヴィング・プレゼンス】シリーズの一枚とあって,集音は怖ろしく奥行きがあり,解像度も圧倒的。半世紀前とは思えないほど生々しく,びっくりします。シュワルツの重厚で品位高い指揮があるため,つい聴き比べてしまうことになるわけですが,これはびっくりしますよ。この盤くらい聴き比べの妙味を味わえるCDもそうないんじゃなかろうか。ジョンゲン系の煌びやかな和声を持ちながらも,シュワルツ盤では確かに重厚で新古典的な格調高さに富んでいたこの曲が,作曲者の手にかかると,忽ち白黒時代の西部劇音楽になってしまう。特に顕著なのが『交響曲第2番』終章ですか。間に緩やかな弦の箸休めを挟む溌剌としたこの作品,重厚な歌劇場の響きが高らかにクラシックの品位を主張するシュワルツに対するハンソンは,ほとんど鼓笛隊リズムのマーチ音楽。続くГ任發海侶晃は全く変わらず。元々作曲者がイメージしていたのは,溌剌と分かりやすい軽音楽的な乗りだったのかと,ただただ呆気にとられてしまいました。同じ譜面を読んでいながら,この違い。伝記的書誌学的傍証までも駆使し,書かれた音符からたったひとつの真正を見出そうとするのが,クラシックにおける巨大な規範。しかし,こんな録音を前にすると【オーセンティシティ】って何だろ・・と思わざるを得ませんですねえ・・。良くも悪くも明快でさっぱりとした,分かりやすい指揮。シュワルツが重すぎるという方にお薦めです。

★★★★☆
"Symphony No.3 / Elegy / The Lament for Beowulf" (Mercury : 434 302-2)
Howard Hanson (cond) Eastman School of Music Chorus : Eastman-Rochester Orchestra
コロムビア放送から依託されて書かれた『交響曲第3番』は,ロマンティックな旋律を持ちながらも,かっちりと組み上げられた構成美が品位を失なわない佳品。極彩色の和声感を得意にしたハンソンにしては珍しく色彩もやや控えめに処方され,どこかしらもうひとつの特色である新古典趣味が色濃く漂う作品です。批評家受けは必ずしも良くはなかったんだそうですが,クーセヴィツキーはこの作品に賛辞を惜しまず,自ら指揮するコンサートで数度演奏。録音もしているとか。時流に流されず,好いものを正しく評価する彼の慧眼の賜といえましょう。実際クーセヴィツキーはハンソンのみならず,遠く欧州の多くの近代作曲家も積極的に取りあげた素晴らしい指揮者でした。後に,彼が亡くなった時,その死を悼んだハンソンが,『エレジー』を書いたのも頷けます。『ベーオウルフの悲曲』は,英雄ベーオウルフの死をテーマとする8世紀の詩に着想した作品。シュワルツ以外まとまった録音の僅少なハンソン交響曲にあって,作曲者の自作自演で聴けるマーキュリーのこのシリーズ,録音も高品位で二度美味しい。余計なエフェクトなく,豊かな膨らみと分厚い音場感を持ち,これが50年前の録音とはおよそ信じがたい秀抜さです。

★★★★
"Symphony No. 3 / Fantasy Variations on a Theme of Youth / Symphony No. 6" (Delos : DE 3092)
Gerard Schwarz (cond) Carol Rosenberger (p) Seattle Symphony : New York Chamber Symphony
シュワルツ指揮のハンソン管弦楽作品集は,既に4枚組ボックス・セットになって発売されておりますので,大都市圏では全集に乗り換える方が続出。そのためか,バラ盤が安価で出回っているようです。こちらは交響曲3番と6番の組み合わせ。作者指揮盤と競合する3番はハンソンとしては珍しく,和声よりも旋律を強調し,オネゲル的な重厚さと,マイナー調の悲劇的な主題を併せ持った重厚長大型の作品でしたが,いっぽう6番は3分前後の6楽章からなり,簡素な民謡風の旋律で3番とは好対照をなします。作者の指揮に比べ,シュワルツの演奏は流麗で,流れるような流麗さと色彩感を強調した演奏となっております。珍しい『若さの主題による幻想的な変奏曲』は,ピアノの入った作品ですが,充実した管弦楽に比して,管弦楽の和声をなぞる簡素なコンピングと,朴訥な旋律線だけで書かれたピアノ・パートの存在意義が今ひとつ希薄な前半部に苦笑を禁じ得ません。彼の小編成作品はあまりお見かけしませんし,案外シンフォニストである彼の弱点を示したものかも知れませんが,今回に限ってはむしろ,ピアノを伴奏に,管弦楽をソロに見立て,逆ピアノ協奏曲を狙ったものと好意的に解釈 しておきます。

★★★★☆
"Symphony No.4 / Serenade / The Lament for Beowulf / Pastorale / Suite from 'Merry Mont' " (Delos : DE 3105)
Gerard Schwarz (cond) Seattle Symphony Orchestra : Seattle Symphony Chorale : New York Chamber Symphony
シアトル交響楽団で頑張るシュワルツは,近代アメリカの作曲家を次々採りあげては,デロスに録音。結局,作者の自作自演以来久々に,ハンソン交響曲全集を完成させてしまいました。本盤所収の『第4番』は,明るい色調を持つハンソンとしては珍しく,厳かで哀しげなマイナー調の作品。どこかオネゲルの『3つのレ』を思わせる重厚な響きを持ち,しかもハンソンならではの極彩色の和声感覚と,緊密な対位法は十全に展開。ハンソンはちょっと軽くって・・という方にも,大いに溜飲を下げて聴けることでしょう。本盤にはこの他にも,よりロマン派と印象派に接近しつつ緊密な対位法を駆使した『セレナーデ』や,無調への大胆な接近を試みた『パストラール』など,どれもハンソンとしては書法の緊密なものが多く,作曲者としての力量を推し量るのには好適な一枚になっているのでは。なかんずく『パストラール』は,この5年後にピストンが同じオーボエのために書くことになる『幻想曲』と酷似した,緊密な書きっぷりで溜飲を下げる。近代アメリカを代表する両雄の,思わざる関係を示唆する作品とも解釈できそうです。

★★★☆
Howard Hanson "Piano Music" (Naxos : 8.559067)
Thomas Labé (piano)
ハンソンの作品集はほとんどが管弦楽でしたので,これは珍しいピアノ作品集と言わなくてはなりません。書法は一聴,典型的な18世紀後半のロマン派音楽。このためリストやシューマン,グリーグやラフマニノフの影が部分部分に顔を出す朴訥で明瞭な形式と明確なリズムを持った,具象性の強い作風が作品のベースです。ただ,唯一違うのはこれでもかと和音で旋律をデコレーションしていくバタ臭い和声法。このため曲想は簡素でグリーグ的でありながら,それをリストばりのヴィルトゥオージシティで表現するという奇妙な状況に陥っているように思われます。やはり彼は基本的にシンフォニストなのでしょう。その「暖簾に腕押し」,あるいは「隙間恐怖症的」な作風は,時に旋律と二歩になり,お互いに相克しあってしまうように見受けられる。このため,調性感の明瞭な朴訥ロマン派作品を好むファンでも,若干好みが分かれるところがあろうかと思います。小生的には,やはり器楽作品は彼の本領ではなかったという気がしました。ピアノは技量確かで上手いです。

(2002. 3. 18 uploaded)