Jの作曲家



モーリス・ジョベール Maurice Jaubert (1900-1940)

フランスの作曲家,詩人。1900年1月3日,ニース生まれ。1915年に首席,1916年に次席を得てリセー・マセーナ(Lycée Masséna)を卒業。次いでニース芸術学校でグロ(Groz)に和声法,対位法およびピアノを学び,1916年にピアノ競技会で一等メダルを獲得して卒業した。母親フランソワが弁護士だった関係から,彼も弁護士資格を得るべくソルボンヌ大学法学部に進学。1919年に学位を得て当時史上最年少の弁護士となり,ニースへ帰郷。1921年に徴兵され,アルジェリア戦線に従軍した。1922年に復員してから,作曲活動に専念することを決意。翌年ニースを離れて本格的な作曲活動に入る。1925年にプレイエラ(Pleyela)社の音楽監督となり,史上初めての映画音楽『驚愕の魔術師』を作曲。独自の音楽挿入技法を開拓してトーキー時代の黎明期にあった映画音楽の分野に大きな革新をもたらした。また1931年から1935年にはパテ=ナタン(Pathe-Nathan)スタジオの音楽監督にも就任し,ロンドンのGPOフィルムを担当している。『アタラント号』,『霧の波止場』,『陽は昇る』など50を超える作品を手掛け,仏映画史の黄金期を代表する映画音楽家として名を馳せた。1939年に大尉として再び従軍。1940年6月19日,アズレイユ(Azerailles)で従軍中に銃弾を受け瀕死の状態に陥り,そのままバカラ病院で世を去る。停戦命令が発布される僅かに数時間前のことであった。


主要作品

資料不足により一部に事実誤認の怖れがあります。有識者のご助言をお待ちしております。

映画音楽 ・銀幕の音楽 Musique d'écran (1927)
・巴里祭 Quatorze juillet (1932)
・ああ無情 Les miserables (1933)
・新学期,操行ゼロ Zero de conduite (1933)
・装へる夜 L'homme a l'Hispano (1933)
・最後の億万長者 le dernier milliardaire (1934)
・アタラント号 L'Atalante (1934)
・我らの仲間 La bell equipe (1936)
・舞踏会の手帖 Un carnet de bal (1937)
・霧の波止場 Quai des brumes (1938)
・陽は昇る Le jour se lève (1939)
舞台作品 ・驚異の魔術師 Le magicien prodigieux (1925) ... P.Calderón de la Barca台本,映画の付帯音楽
・歌劇【コントラバンド】 Contrebande (1927) {2act: chamber} ...
Neveux台本
・3つのセレナーデ Trois sérénades (1928)
・テッサ Tessa (1934) ...
J. Giraudoux台本,映画の付帯音楽
・(不詳) La guerre de Troie n'aura pas lieu (1935) ...
Giraudoux台本,映画の付帯音楽
・黒人街 Quartier negre (1936) ...
G. Simenon,映画の付帯音楽
管弦楽曲 ・ある一日 Le jour, poeme choregraphique (1931) ... 声楽曲がオリジナルか?
・フランス組曲 Suite Française, op.36a (1932)
・間奏曲 Les intermèdes, op.55 (1936) {strings}
・フランドル風のコンセール Concert flamand, op.58a (1936)
協奏曲 ・然るべきソナタ(邦訳不詳) sonata a due, op.56 (1936) {vln, vc, strings}
・ヴァイオリン協奏曲 violons d'ingres (1939) {vln, orch}
声楽曲 ・哀歌集 Les complaintes (1931)
・大潮 L' eau vive (1931)
・テッサの歌 Chansons de Tessa (1934)
・バラード Le ballade (1934)
・降誕祭 Nativité (1934) {vo, choir, orch}
・パスカル時代へのカンタータ Cantate pour le temps Paschal, op.47 (1935) {sop, tnr, bass, choir, orch}
・嗚呼みまかりし我が兄弟 O mes frères perdus (1936) {m-choir, p, orch}
・ジャンヌ・ダルク Jeanne d'Arc, op.61 (1937) {sop, orch} ...
C. Peguy詩,映画音楽のために作曲か
・地誌 Géographies, op.66 (1937) {choir, orch}
・サスピア Saspir (1939) {sop, hrp, p, strings}
・戦いの時代への3つの詩篇 Trois psaumes pour le temps de guerre (1939) {f-choir, hrp, p}
詳細不明 ・アルバムの一頁 Feuillet d'album (1923)
・捧げもの Offertoire pour la messe de l'assomption (1923)
・未だ見ぬアルカサールへ A l'alcazar neuf (1923)
・組曲 Suite en La (1924)
・4つのロマンス Quatre romances de Touiet (1924)
・サハラの歌 Les chants Sahariens (1924)
・罪人たち Les pêcheurs (1925)
・エルペノール Elpénor (1927)



ジョベールを聴く


★★★
"Ave Maria / Petites Voix / Ave Verum (Poulenc) : Exercices de Style / Alcools (Chailley) : Quatrain du Vent / Le Pont d'Avignon (Geoffray) / 3 Psaumes (Jaubert) / 6 Fables (Duruflé)" (Solstice : SOCD 113)
Claude Carrot (dir) Bénédicte Harlé, Marina Tchebourkina (p) Marie Saint-Bonnet (hrp) Ensemble Vocal Ars Musicae
タイトルそのまま。仏近現代の合唱曲を集めた作品集です。プーランク以外はまず他では聴いたことのない無名作家ばかりですが,その中にモーリス・ジョベールの名前を見つけて欣喜雀躍。この盤については幾つも言いたいことがございますよ。まず,録音が悪い!覗き穴から盗聴しているかのようなくぐもった音場は,モノラル録音かと錯覚したくらいで,気分はナチス政権下でこっそりラジヲを聴くユダヤ人。プーランクでそう思った次の瞬間,無名作家から繰り出される無調音楽が耳に襲いかかり,こりゃもうヒトラーならずとも「頽廃音楽!」と絶叫すること疑いなし。そんな中,少しだけ福音をくださったのはジョベール。映画音楽畑の人で,音楽教育も中央で受けてはいない彼の作風は,都会の作曲家に比べるとどこか煮え切らない薄味なもの。映画音楽で成功した人らしく書法は素朴で六人組的。しかし,シュミットのイディオムの影響も見受けられます。オーリックやタイユフェール程度には評価されていいような気もしますが,たった3曲では評価しようにも無理。さらなるCDの登場を熱望。

(2002. 5 24)