Kの作曲家


エイメ・クンツ Aymé Kunc (1877-1958)

フランスの指揮者,作曲家,教育者。1877年1月20日,トゥルーズにて,教会音楽に関する研究で学位を持ちトゥルーズ聖堂に勤める父と,パリ音楽院でルイーズ・ファレンクとセザール・フランクにピアノを学んだ母との間に,12人兄弟の10番目の子として生まれた。幼少期から両親に音楽教育を受け,1894年にトゥルーズ音楽院ピアノ科で一等を得たのち,パリ音楽院へ進学。1894年までにピアノ,ソルフェージュ,和声法科でそれぞれ一等を得た。翌1985年からシャルル・ルネヴ(Charles Lenepveu)に作曲法を師事し,5度に渡ってローマ大賞に応募。1902年にカンタータ『アルシオーヌ』で大賞を獲得した。4年間の遊学生活を経て1907年に帰仏し,アポロ劇場の指揮者に就任したが,1914年にはトゥルーズ音楽院の院長に抜擢され,パリを離れる。その後は,1944年に引退するまでトゥルーズを拠点に活動。リヒャルト・ワグナーの『パルシファル』を初演するなど,指揮者および教育者として活躍した。1949年に仏芸術院委員。1958年2月13日,トゥルーズにて死去。


主要作品

舞台作品 ・アルシオーヌ Alcyone (1902)
・奴隷たち les esclaves (1911)
管弦楽 ・地中海風の素描 esquisses méditeranéenes (1949)
協奏曲 ・幻想曲 fantaisie pour piano et orchestre (1903-1907) {p, orch}
・伝説 légende (1931) {vla, orch}
・詩曲 poème (1943) {vc, orch}
器楽/室内楽 ・五重奏曲 quintette (1895) {p, 2vln, vla, vc}
・交響的幻想曲 fantaisie symphonique (1900) {org}
・交響組曲 suite symphonique (1901) {2vc, p}
・三重奏曲 trio (1901) {vln, vc, p}
・組曲 suite (1903) {fl, vc, p}
・パストラール pastorales (1903) {vln, p}
・弦楽四重奏曲第一番 quatuor à cordes No.1 (1945-1946) {2vln, vla, vc}
・弦楽四重奏曲第二番 quatuor à cordes No.2 (1948-1952) {2vln, vla, vc}
・吹奏五重奏曲第二番 quintette à vent (1949-1954) {fl, ob, hrn, cl, bssn?}
合唱曲 ・アヴェ・ヴェルム ave verum (1899) {choir, org}
・アヴェ・マリア第一番 ave Maria I (1906) {choir, tnr, org}
・詩篇 psalm CXLVII (1903-1907)
・ソルフェージュの鍛錬 la leçon de solfège (1915) {choir, p}
・パストラール風の歌 chanson pastorale (1917) {choir, org}
・カンタータ cantate pour le couronment de dante (1921)
・聖セシーユのミサ messe de Sainte Cécile (1923) {sop, msp, thr, choir, org}
・アヴェ・マリア第二番 ave Maria II (1928) {choir, org}
・翼への讃歌 hymn des ailes (1930)
・この上なく甘美な歌 les plus doux chant (1930) {choir, p}
詳細不明 ・祝祭への序曲 ouverture de fête (1903-1907)
・劇的な組曲 suite dramatique (1903-1907)

※saito氏より,Kuncの読み方について助言を頂きました。チェコ起源の場合,クンツとなるようです。


クンツを聴く


★★★★
"Ave Maria I, II / Messe de Sainte-Cécile / Ave Verum / Fantaisie Symphonique / La Leçon de Solfège / Le plus Doux Chant / Chanson a Quatre Voix" (Solstice : SOCD 164)
Alix Bourbon (dir) Nicole Fournié (sop) Christian Crozes (tnr) Catherine Margulis (msp) Nino Pavlenichvili, Madeleine Thozet (p) Yasuko Uyama-Bouvard (org) Choeur Régional Midi-Pyrénées : Groupe Vocal de Toulouse
今日では全く忘れ去られているエイメ・クンツは1877年トゥルーズに生まれた作曲家。前々年のシュミット,前年のカプレに続いて,1902年に堂々ローマ大賞を獲ったといえば,その実力のほどは伺えるでしょう。しかし,その後1914年にトゥルーズ音楽院の院長に就任してパリを離れ,故郷の風に当たって一生を過ごしたせいか,知名度はローマ大賞仲間からですら大きく水を空けられたままです。CDで聴けることはまずないだろうと思っていたところへ青天の霹靂とばかりに登場したこのCD,勿論世界初録音尽くし。これまた聞いたことのないピレネー地域の合唱隊は土地柄か格落ちな面のちらつく感は禁じ得ませんが,おそらくイニシアチブを掌握していたと思われるオルガンが上手いこと。トゥルーズ音楽院オルガン科の教授だそうで,こういう企画を思いついたのも間違いなくこの人でしょう。日本人らしい学究肌な面が最大限に活かされた素晴らしい企画に,部外者ながら妙に誇らしさを覚えるのは私だけじゃありますまい。作風はフォーレやデュリュフレをモダンに継承した嫡流。甘美な転調技法を駆使した,官能的でいて品位高い筆致と,行間にちらつくラングレの影。見事な作曲センスに脱帽です。近代の合唱曲ファンには,この機会にぜひ再評価をして頂きたい。お薦め作。

★★★☆
"Quatuor à Cordes No.1 en Sol mineur ; No.2 en La mineur" (Suoni e Calari : SC 253262)
Ensemble Ricercata de Paris : Quatuor Gaudeamus
エイメ・クンツは,似たような人生を送ったロパルツやフレムらと同様,パリを離れて野に下る道を選んだため,こんにちでは全く無名の作曲家に転落してしまいました。しかし,もともとはカプレ,シュミットに次いでローマ大賞を獲得し,実力的には充分名匠の一に名前を列することのできる人物です。この盤は解説が面白い。ベートーヴェンが有名な最後の弦楽四重奏曲を書いたのが最晩年だったため,生真面目なフランクはその影に躊躇して晩年までこのジャンルに手出しできず,結果フォレ,サン=サーンス,シュミットらフランク絡みの優等生にとって極めて手を出しにくいジャンルになってしまったという指摘は正鵠を得ているでしょう。実際,クンツがこの2作品に手を染めたのも,既に68才のこと。そのせいでしょうか。特に第1番は,宗教音楽におけるラングレ的なモダニスト振りからは信じられないほどフランク的で懐旧的色彩が濃く,はっきり言って地味です。余談ながらこのCD,レペルトワール誌から推薦盤に選ばれた様子。マイナー盤の宿命か,演奏陣は例の如く聞いたことがありませんけれど,ゴーディエムス四重奏団のほうは,構成員が全員パリ高等音楽院で一等を得た経歴の持ち主なんだとか。パリ楽壇特有のハスキーな音色と細かいヴィブラートで構成されたかなりクセのある音色は好みが分かれそうですし,録音のせいか,少し演奏も不安定な気がしますが,悪くないです(しかし,もう一方の楽団は・・)。

(2002. 12. 1 upload)