Lの作曲家



コンスタント・ランバート Constant Lambert (1905-1951)

イギリスの指揮者,作曲家。本名はレナード・コンスタン・ランバート。1905年8月23日,ロンドン近郊フルアム生まれ(父はオーストラリア人画家,母はロシア系)。幼少期からエルジー・ホールに就いてピアノを学ぶ。最初に音楽教育を受けた基督医院学校時代に片方の聴力を失うなどの困難を抱えながら,王立音楽学校でハーバート・フライヤーにピアノ,マルコム・サージェントに指揮法,レイフ・ヴォーン=ウィリアムスおよびジョージ・ダイソンに作曲法を師事。イギリスの音楽家で初めてディアギレフのロシア・バレエ団に『ロメオとジュリエット』を書くなど,バレエ音楽で成功。作曲家としては,デューク・エリントンへの傾倒が示す通り,ジャズに接近。英国人作家として初めてジャズの語法を採り入れて,躍動感に富んだ平明な作品を執筆している。指揮者としても著名で,1930年から1947年までサドラーズ=ウェルズ・バレエ団(Sadler's Wells Ballet=のちの王立バレエ団)付属管弦楽団の初代音楽監督を務め,ブリスの『チェックメイト』,『アダム・ゼロ』,『ゴーバルズの奇跡』,ウォルトンの『審判』,『ファサード』などをいずれも初演した。酒類の過剰摂取がもとで糖尿病を患い,1951年8月21日,『ティレジアス』の初演の直後,ロンドンにて急死。


主要作品

歌劇・バレエ ・バレエ【ロメオとジュリエット】 Romeo and Juliet (1923-1925) {fl, picc, ob, 2cl, bssn, 2hrn, 2tp, tb, 2perc, strings}
・バレエ【ポモーナ】 Pomona (1926) {fl, picc, ob, 2cl, bssn, 2hrn, 2tp, tbn, timp, strings}
・バレエ【星占い】 horoscope (1938) {3fl, 2ob, 2cl, 2bssn, 4hrn, 3tp, 3tb, tba, timp, perc, hrp, strings}
・ティレジアス Tiresias (1950-1951) {3wind, brass, p, vc, b, perc}
映画音楽 ・商船隊員 merchant seamen (1940)
・アンナ=カレーニナ Anna Karenina (1947)
管弦楽曲 ・緑の炎 green fire (1923) ...自筆譜は紛失か
・賞を掛けた戦い prize fight (1923-1924) {orch}
・アダムとイヴ Adam and Eve (1924-1925) ...
断片のみ。管弦楽と思われるが詳細不明。
・序曲【バード・アクターズ】 bird-actors (1925) {2fl, ob, cl, bssn, 2hrn, 2tp, tb, 2perc, strings}
・田園 champêtre (1926) {chamber}
・管弦楽のための音楽 music for orchestra (1927) {2fl, picc, 2ob, e-hrn, 3cl, 2bssn, d-bssn, 4hrn, 3tp, 3tb, tba, timp, strings, perc}
・ジュー・シュス jew jüss (1929) ...
バレエ音楽として構想か。スコアは紛失。
・付帯音楽【サロメ】 Salomé (1931)
・英雄的な捧げもの aubade héroïque (1942) {2fl, ob, ca, 2cl, 2bssn, 2hrn, 2tp, hrp, perc, strings}
・ペストの王 king pest: rondo burlesco (-)
協奏曲 ・ピアノ協奏曲 piano concerto (1924) {p, 2tp, ttimp, strings}
・ピアノと9つの器楽のための協奏曲 concerto for piano and nine players (1930-1931) {p, fl, 3cl, tp, tb, vc, b, perc}
室内楽曲 ・マイ・ベア・スクウォッシュ・ユーオール・フラット my bear squash-you-all-flat (1923-1924) {fl, cl, bssn, tp, tb, p, 2perc}
・ハムレット Hamlet (1944) {fl, 2tp, perc}
ピアノ曲 ・序曲 overture (1925) {2p} ...バード・アクターズからの編曲か
・組曲 suite in three movements (1925)
・田園詩曲 pastorale (1926)
・哀歌調のブルース elegiac blues (1927)
・ピアノ・ソナタ sonata for piano (1928-1929)
・エレジー elegy (1938)
・白鍵のための3つの黒い小品 trois pièces nègres pour les touches blanches (1949) {2p} ...白鍵だけで書かれているのが名の由来
・テーマ tema (-)
・アラ・マルシア Alla Marcia (-)
合唱曲 ・リオ・グランデ The Rio Grande (1927) {p, 2tp, tcor, 3tb, tba, timp, 5perc, strings, choir}
・夏の最後の意志と遺言 summer's last will and testament (1932-1935)
 {3fl, 3ob, 3cl, 3bssn, 4hrn, 3tp, 3cor, 3tb, tba, timp, perc, hrp, strings}
歌曲 ・サチェヴェレル・シットウェルの2つの詩 two songs on poems by Sitwell (1923) {sop, fl, hrp}
・リー・ポーの8つの詩 eight poems of Li-Po (1926-1929) {narr, fl, ob, cl, 2vln, vla, vc, b}
・悲しみの歌 dirge from cymbeline (-1940) {vo(tnr /btn), m-choir, strings}
典拠 Shead, R. 1973. Constant Lambert. London: Simon Publishers.


ランバートを聴く


★★★★★
"Concerto for Piano and Nine Players / Eight Poems of Li-Po / Sonata for Piano / My Bear Squash-You-All-Flat" (Hyperion : CDA 66754)
Lionel Friend (cond) Ian Brown (p) Philip Langridge (tnr) Nigel Hawthorne (narr) The Nash Ensemble
ランバートは,イギリスの作曲家でいえば,ウォルトンの路線に最も近い作曲家で,フランス印象主義やストラヴィンスキーの大胆な躍動感を取り込み,分かり易く通俗的ながら,躍動感と色彩感に富んだ作風を展開した人です。時にそれが安っぽいところがあるのが玉に瑕といえましょうが,それが適度な範囲に収まったときには,理解不能なスノビズムなど微塵もない,大変魅力的な作品を作ります。現在入手可能な彼の作品中で,その魅力が最もいい形で堪能できるのは,蓋しこのCDでしょう。『協奏曲』はその白眉ともいうべきもので,多彩なリズムを駆使し,彼の持ち味のよく出た,実に軽妙かつ痛快な作品。リズム面で明らかにジャズの影響が伺えるこの作品,昨今注目されているカプースチンの試みを,既に数十年前に完成させていた彼の面目躍如たる一曲といえましょう。演奏の出来も素晴らしい。

★★★★☆
"The Rio Grande / Aubade Héroïque / Summer's Last Will and Testament" (Hyperion : CDA 66565)
David Lloyd-Jones (cond) Sally Burgess (msp) William Shimell (btn) Jack Gibbons (p) The Chorus of Opera North : The Reeds Festival Chorus : English Nothern Philharmonia
上記盤と並ぶ,ランバートの決定版ともいうべきCD。ランバートはバレエ音楽の作曲家として最初に成功を収めました。また,自身もバレエ音楽の指揮者として活動していたほど,バレエ音楽には造詣が深く,果たして『リオ・グランデ』はそんな彼の至芸が詰まった躍動感と生気に富んだ小傑作です。冒頭からどかーんとフル・オーケストラと分厚いコーラスが炸裂するさまは,どこかフローラン・シュミットの『詩編』を思わせるところがあり,勢いでぐいぐい聴けてしまいます。

★★★★
"Marchant Seamen / Piano Concerto / Pomona / Prize Fight" (ASV : CD WHL 2122)
Barry Wordsworth (cond) David Owen-Norris (p) Royal Philharmonic Orchestra
ほとんど全ての曲が世界初録音という,大変嬉しいCD。ランバートはブリスやウォルトンの熱狂的な支持者だったようですが,果たしてここに採りあげられた作品も,そんなお仲間たちと同様に平明な英国流バーバリズムがよく出た,リズムの強い作品です。ただ,その割に本家ストラヴィンスキーなどのそれに比べるとリズムの変化に乏しく,アクセントが強い分,起伏に乏しく聞こえてしまう感は否めません。ワーズワースの指揮は,ブリスの『色彩交響曲』でもそうでしたが,やや芯が抜け推進力に欠けるところがあります。しかし,名門オケを従え,全体に演奏は良好です。

★★★
"Three English Ballet Suites :
Horoscope (Lambert) / Façade (Walton) / Checkmate (Bliss)" (Hyperion : CDA 66436)

David Lloyd-Jones (cond) English Northern Philharmonia
ランバート,ブリス,ウォルトン。いや,よくも選んだものです。この3人はイギリス楽壇の中では特に通俗的な傾向の強い御仁。このCDはそうした彼らの悪い面がモロに出てしまった作品です。ウォルトンはともかく,ブリスの『チェックメイト』は,好いときの彼と比べると発想は貧弱だし,構成は安っぽいし,ゲンナリすること請け合い。そこへ輪を掛けるのがランバート。好いときの彼は,バーバルな緊張感を巧みに使って,躍動感溢れる作風を展開しますが,ここではそれが裏目に。幼稚園のお遊戯か,でなけりゃ良い子のためのクラシック入門。何ともチンケなその仕上がりは,子供受けを狙った低俗なチャカポコ物にしか聞こえない駄作と言わねばなりません。

(first uploaded date unclear / 2005. 4. 13 USW, amendment of works list)