Lの作曲家



ジャン・ラングレ Jean Langlais (1907-1991)

フランスのオルガン奏者,作曲家。1907年2月15日,ブルターニュ地方イーレ・ヴィレーヌのラ・フォンテネーユ生まれ。2歳で視力を失う。国立パリ盲学校(Institution des Jeunes Aveugles)へ進み,音楽教育および和声法をセザール・フランクの弟子アルベール・マオー(Albert Mahaut)に,ヴァイオリンを同じくフランクの弟子レミー・クラヴェールに,オルガンをアンドレ・マルシャル(André Marchal)にそれぞれ師事。次いで1927年に,マルシャルの口利きでパリ音楽院へ進学。マルセル・デュプレのオルガン科で学び,1930年に第一等を獲得したのち,ポール・デュカ,シャルル・トゥルヌミールに作曲法を師事してさらに研鑽を積んだ。1931年に『オルガンの友』誌の即興演奏部門で最優秀賞を獲得し,ピエール・ド・モントルージュ聖堂のオルガニストに就任。1945年には,トゥルミヌールのあとを継いで聖クロチルド教会のオルガニストとなり,80才までその地位を占める。さらに教育者としても活躍。40年に渡って国立盲学校の教授の座にあり,オルガンと作曲法の教鞭を執るとともに,同校付合唱団長に就任。バッハ,パレストリーナなど古典音楽の上演を精力的に行った。作曲家としては中世教会音楽に傾倒。メシアンやデュプレの影響下に作曲。宗教曲,オルガン曲を中心に優れた作品を遺す。1991年5月8日パリにて死去(関連サイト:Site Jean Langlais)。


主要作品※Labounsky, A. 2000. Jean Langlais. Amadeus. を入手しました。作品表は時間が出来次第,完全版へ改訂します。

管弦楽曲 ・ブルターニュ組曲 suite Bretonnes (1938) {strings}
協奏曲 ・自由な形式の小品 pièce en forme libre (1935) {2vln, vla, vc/org, str-orch}
・協奏的交響曲 symphonie concertante (1936) {vc, orch}
・オルガン協奏曲第2番 deuxième concerto pour orgue et orchestre (1938) {org, orch}
・協奏曲第3番 troisième concerto 'réaction' (1971) {org, strings, timbal}
器楽・室内楽 ・無窮動 mouvement perpétuel (1930) {p}
・ピアノ連弾のための組曲 suite (1934) {2p}
・自由な形式の小品 pièce en forme livre (1935) {2vln, vla, vc/orch}
・線 ligne (1937) {vc}
・アルモリカ風の組曲 suite armoricaine (1938) {p}
・2つの小品 deux pièces (1942) {fl, p}
・協奏組曲 suite concertante (1943) {p, winds, perc}
・3つの舞曲 trois dances (1944) {winds}
・カリヨンの鐘 carillons (1967) {35handbells}
・付曲 cortége (1969) {2org, 4tp, 4tb, timbal}
・トランペットのための小品 pièce pour trompette (1971) {tp (ob/fl), org(p)}
・7つのコラール sept chorals (1972) {tp, org}
・5つの小品 cinq pièces (1974) {fl, p (clavsn/org)}
・二部作 diptyque (1976) {p, org}
・ソナチヌ sonnatine (1976) {tp, org}
・パストラールとロンド pastorale et rondo (1982) {2tp, org}
・小狂詩曲 petite rapsodie (1983) {fl, p}
・小組曲 petite suite (1985) {p}
・9つの小品 neuf pièces (1986) {tp, org (p)}
・動き mouvement (1987) {fl (ob, vln), p}
・裏切り vitrail (1987) {cl, p}
・連なり séquence (1989) {fl}
・練習曲集 études (1989) {4vc}
・式典 ceremony (1989) {6tp, 4tb, 2tba/(3tp, 2tb, tba)}
オルガン曲 ・前奏曲とフーガ prélude et fugue (1927)
・福音詩集 poèmes evangéliques (1932)
・3つのグレゴリオ風パラフレーズ trois paraphrases Grégoriennes (1933-1934)
・テ・デウム humne d' actions de graces -Te deum (1935)
・福音詞 poèmes évangéliques (1936)
・オルガン交響曲第1番 première symphonique (1941)
・9つの小品 neuf pièces (1942)
・2つの捧げもの deux offertoires (1943)
・小組曲 suite brève (1947)
・中世風の組曲 suite médiévale (1947)
・フランス風組曲 suite française (1948)
・聖なる日の祈り incantation pour un Jour Saint (1949)
・フレスコバルディを讃えて hommage à Frescobaldi (1951)
・民謡風の組曲 suite solkloristique (1952)
・ドミニカ・イン・パルミス dominica in palmis (1954)
・オルガン曲集 organ book (1956)
・三部作 triptyque (1956)
・聖トリニテ教会の日課祷 office pour la Sainte Trinité (1957)
・エッセイ essai (1961)
・3つの黙祷 trois méditations sur la Sainte Trinité (1962)
・12の小品 douze petites pièces pour orgue ou harmonium (1962)
・生命の詩 poem of life (1965)
・平和の詩 poem of peace (1966)
・幸福の詩 poem of happiness (1966)
・三重奏曲 sonate en trio (1967)
・リーブル・エクメニーク livre oecuménique (1968)
・2つの小品 deux pièces (1968)
・3つの礼拝間奏曲 three voluntaries (1969)
・3つの嘆願 trois implorations (1970)
・5つのコラール cinq chorals (1971)
・マリアに捧ぐ offrande à Marie (1971)
・アポカリプスの5つの瞑想曲 cinq médinations sur l'Apocalypse (1973)
・バロック組曲 suite baroque (1973)
・8つのブルターニュの歌 huit chants de Bretagne (1974)
・3つのロマネスク風の素描 trois esquisses Romanes (1975)
・3つのゴシック風の素描 trois esquisses Gothiques (1975)
・モザイク第1番 mosaïque I (1976)
・モザイク第2番 mosaïque II (1976)
・オルガン交響曲第2番 deuxième symphonie (1976)
・3つのゴシック風エスキス trois esquisses gothiques (1976) {2org}
・モザイク第3番 mosaïque III (1977)
・グレゴリオ風三部作 triptyque Grégorien (1978)
・プログラッシオン progression (1978)
・3つのノエル trois noëls (1979)
・ある愛の捧げもの offrande à une âme (1979)
・オルガン交響曲第3番 troisième symphonie (1979)
・薔薇型窓 rosace (1980)
・羊飼いたちの歌 chant des bergers - prière des mages (1981)
・太陽 soleils (1983)
・7つの練習曲 sept études de concert pédale solo (1983)
・2つの短い小品 deux pièces brèves (1984)
・8つの前奏曲 huit préludes (1984)
・ミニアチュア第2番 miniature II (1984)
・タリタヤ・クム talitah koum (1985)
・3つの易しい小品 trois pièces faciles (1985)
・バッハ B.A.C.H.(1985)
・アメリカの霊歌を借りて American folk-hymn settings (1985)
・イン・メモリアム in memoriam (1985)
・12の韻詩 douze versets (1986)
・ラモーを讃えて hommage à Rameau (1986)
・アクスプルッシオン expressions (1986)
・2つの古いスコットランド民謡による幻想曲 fantasy on two old Scottish themes (1986)
・ラッパ吹きの曲 trumpet tune (1987)
・クリスマス・カロルの歌を借りて Christmas Carol hymn settings (1988)
・陰影 contrastes (1988)
・死と復活 mort et résurrection (1990)
・月光のスケルツォ moonlight scherzo (1990)
・3つの捧げもの trois offertoires (1990)
・素朴な組曲 suite in simplicitate (1990)
・三重奏曲 trio (1990)
合唱曲 ・タントゥム・エルゴ tantum ergo (1931) {sop, tnr, btn, org}
・クレマン・マロの2つの歌 deux chansons de Clément Marot (1931) {4vo}
・5つのモテット cinq motets (1932-1942) {2vo, org}
・テ・デウム te deum (1934)
・タントゥム・エルゴ tantum ergo (1940) {8vo, org}
・2つの嘆き deux déplorations (1943/1948) {4vo, org}
・イースの国 la ville d'Ys (1947) {4vo (vo), p}
・荘厳ミサ曲 messe solennelle (1949) {4vo, 2org}
・古風な形式によるミサ messe en style ancien (1952) {4vo, org}
・カリタス・クリスティ caritas christi (1953) {4vo, org (orch)}
・聖母交唱ミサ missa salve regina (1954) {choir, org, 3tp, 5tb}
・3つのブルターニュ民謡 trois chansons populaires Bretonnes (1954) {4vo}
・ラウダ・イェルサレム・ドミヌム lauda Jerusalem dominum (1955) {4vo, org}
・聖なる金曜日の神秘曲 mystère du vendredi saint (1956) {choir, 2tp}
・ミサ・ミゼリコルディエ・ドミニ missa miseicordiae domini (1959) {3vo, org}
・祭司と神祇官 sacerdos et pontifex (1959)
・7つの古き民謡のノエル sept noëls populaires anciens (1960) {4vo, org (p)}
・2つのホト:ブルターニュ民謡 deux chansons populaires de haute-Bretonne (1961) {4(6)vo}
・澄んだ泉 a la claire fontaine (1961) {6vo}
・神秘の薔薇 rosa myastica (1978) {choir, org}
歌曲 ・3つの祈り trois prières (1949) {vo, org}
・素朴なミサ missa in simplicitate (1952) {sop, org}
・5つの歌 cinq mélodies (1954) {msp, p}
・3人の祈り手 trois oraisons (1974) {sop, fl, org}
・ヴォカリーズ vocalise (1974) {sop, p}
・ルイ・ブレユを讃えて hommage à Louis Braille (1975) {msp, p}


ラングレを聴く


★★★★★
"Messe Solennelle / Cinq Motets / Missa in Simplicitate / Trois Prières / Venite et Audite / Missa Misericordiae Domini" (Syrius : SYR 141327)
Jean Sourisse (dir) Julie Hassler (sop) Vincent Warnier (org) Ensemble Vocal Jean Sourisse
現在入手可能なラングレの作品集で,間違いなくそのクオリティで頂点に立つのはこのCDです。もともと彼は作曲家である以前にオルガニスト。デュリュフレやデュプレ,メシアンらと並び,中世教会音楽の旋法性と,近現代の和声感覚を巧みに配合した作風を得意にしていました。畢竟,宗教作品(合唱曲)は,彼の持ち味が最も良い形で現れるお薦めジャンルです。さらにこの盤,人選が良い。指揮を務めるジャン・スリーゼは,ミシェル・ピクマル,ベルナール・テテュと並ぶ,現代フランス宗教音楽界の御三家ともいうべき存在。エラートに残したフォレの『小ミサ曲』は名演でした。充分に訓練の行き届いた合唱隊は細部に至るまで肌理が良く揃い,女声ソリストはボーイ・ソプラノかと見紛う清明な美声。名曲『5つのモテット』,『3つの祈り』を始めとする楽曲は,時に狂気を帯びながら,どこまでも深い神秘をたたえる。願ってもない配役を迎えたこの盤こそ,ラングレを聴くのに好個の傑作です。まず一枚ならぜひこれを。マルタンに匹敵する深遠な内省に満ちた,孤高の宗教芸術の粋を心ゆくまで堪能してください。

★★★★
"Cinq Pièces pour Flûte et Orgue / Diptyque pour Piano et Orgue / Deux Pièces pour Flûte et Piano / Trois Oraisons pour Soprano, Flûte et Orgue / Vocalise pour Soprano et Piano / Petite Rapsodie pour Flûte et Piano / Printemps pour Orgue / Finale pour Deux Orgues / Pièce pour Flûte et Orgue" (Classico : CLSSCD 428)
Bent Larsen (fl) Peter Langberg (org) Sverre Larsen (p) Dorte Elsebet Larsen (sop) Kirsten Langberg (org)
なぜか理由は分からぬものの,デンマークの面々によるラングレ室内楽選です。既にSolsticeから類似の企画盤が出てはいますが,大半がフルート作品を多く含むこの盤に固有の録音。有り難い企画であることには変わりありません。企画の中心を担ったと思しきベント・ラーセン(フルート)と,オルガンのペーテル・ラングベルイが演奏する楽器が示す通り,ここに採り上げられた作品はフルートのために書かれたものが中心。仏近代作曲家の多くが残した作品リストを眺めるとお分かりのように,もともとフルートという楽器は音色そのものが柔和で,フランス的な音楽に好く合うことから好んで用いられる楽器。この特性によって,居並ぶラングレ作品集中でも晦渋度は最も低い部類に属します。その一方,思索性や叙情性は高い部類に属している。北欧人の故かローカルな方々だからか,仏人にみられる感情移入はまるで乏しく,淡泊に過ぎる演奏も劣悪ではありませんし,個人的にはシリウスの合唱曲に次いでお薦め度の高い選集ではないかと思います。欲を述べるなら,解説書があまりに貧弱。聴いたこともない演奏陣が何もので,どういう経緯からこの企画を思い立ったのかは分からぬままですし,他に見たことのない作品群の作曲年代すら記されていないのは,このマイナー作家の解題としてはあまりに親切さを欠いていると言われても仕方ないでしょう。

★★★★
"Intégrale de l'oeuvre pour Trompette et Orgue :
Sept Chorals / Sonatine / Neuf Pièces / Pièce pour Trompette" (BNL : 112845)

Pascal Vigneron (tp) Jean-Paul Imbert (org)
これは大変に珍しい,トランペットのための作品全集。とはいえ,伴奏はやはりオルガンです。内容は玉石混淆。彼が讃美して止まなかったメシアンや,師匠デュプレを彷彿させる,イカニモ現代的な激情性を持つアヤシイ作品も多々収められている一方,「9つの小品」の緩楽章などでは,彼ならではの思索的な音世界が十全に展開されています。全て世界初録音。最近でこそ部分的に対抗馬がポツポツでてきたとはいえ,いまだ作品集としては対抗盤皆無。珍しさでも群を抜いた作品集といえるのでは。耳慣れない顔触れの演奏者2人も,技巧確かで好い演奏を聴かせています。強いて言えば,録音が若干悪いのは残念。オルガンの排気音が大き過ぎて,デリケートな細部の表現が良く聴き取れないような集音は困りますし,録音場所が大きなホールだったのか,マイクの録音レベルが高すぎる。周囲の空気音を拾ってしまい,ヒスノイズが多くなってしまった。初めての方は,珍しいからと無理してこれをお探しになるより,入手平易で良演も揃った合唱曲やオルガン作品から聴いていただく方が良いんじゃないでしょうか。

★★★★
"Deuxième Concerto pour Orgue et Orchestre / Chant de Paix / Pasticcio / Cantique / Canzone / Pièce en Forme Libre / Incantation pour un Jour Saint" (Koch Schwann : 3-1529-2 H1)
Marie-Louise Langlais (org) Murray Stewart (cond) The Lonon Pro Arte Orchestra
没後10周年を経て,徐々に録音も増加しつつあるラングレ。しかしながら,根がオルガニストだったからでしょうか。管弦楽ないし管弦楽を付帯したオルガン作品については,なぜかほとんどCDになったことがありませんでした。彼の妻であり,優れたオルガン奏者でもあるマリー=ルイーズ・ラングレ女史が監修を担当している点でも見逃せないこのCDは,そんな状況下にあって貴重な例外を提供してくれた得難い選集。管見の限りでは,管弦楽入りの作品が聴ける唯一の録音です。独奏曲も併録されていますけれど,聴きものはむしろ協奏曲のほう。官能的な弦の響きを充分に生かし,全編に横溢する敬虔で神秘的な音宇宙は紛れもなく彼のもの。非凡な和声感覚を存分に味わうことができ,やはりこの人はただ者じゃなかったと感心させられました。数少ないラングレ作品集として,ご紹介せずにはいられない貴重な録音といえましょう。余談ながら,その後第2集も出た模様です。

★★★★☆
Jean Langlais "Hymne d'Actions de Graces / Mors et Resurrectio / La Nativite / Pasticcio / Legende de Saint Nicolas / Plainte / Chant Heroïque / Chant de Paix / De Profundis / mon Ame Cherche une Fin Paisible / Kyrie / Imploration pour la Croyance" (Solstice : SOCD 01)
Jean Langlais (organ)
このCDは下にご紹介する室内楽曲集,および本盤と対をなす自作自演のオルガン作品集と合わせて,3枚からなるラングレ自作自演集となっており,作曲・演奏者の没後10周年を記念して昨2001年に企画された,Solsticeの目玉企画とも言うべきCDです。第2集同様,このCDも特筆すべき第一の魅力は,作曲者の演奏の素晴らしさ。オルガンは,ハンマーを叩く構造のピアノほど打鍵のタッチの差は出ないんじゃないかと思うのですが,一体どう弾いたらこれだけ立体的なテクスチュアに富んだ演奏になるんでしょうかねえ。全編に渡って,彫りが深く表情豊かな鳴りの妙技にただもう吃驚。微妙な打鍵圧力の掛け分けと,滞空時間変化だけでこれだけの奥行き感と立体感を出しているのですから,ある意味ピアニストより凄いかも知れない。きっと,余程オルガンを「鳴らす」ことのできる名手だったのでしょうねえ。中世趣味が,近現代の緊密な和声法の中で妖しく復活を遂げた彼の曲想はどこまでも神秘的な響きに溢れ,静かな狂気となって踊る。申すまでもなく見事です。

★★★★☆
"Langlais joue à Notre-Dame de Paris, Vol. 2 :
Huit Chants de Bretagne / Trois Esquisses Gothiques / Offrande a Une Ame" (Solstice : SOCD 165)

Jean Langlais (organ)
ラングレの自作自演を収めたCDは2枚あり,これは上記に紹介している自作自演集の第2弾。いずれの作品も,形のうえでは中世教会音楽的な構築美を基調に据えながら,巧妙精緻な旋法や冒険的な対位法を縦横無尽に駆使。崩壊一歩手前の緊密な和声をいかんなく散りばめて,狂気の美しさを現前します。デュプレの崩れっぷりとトゥルヌミールの呪術性を踏襲しながらも,メシアンのように崩壊するのではなく,あくまで神秘主義的なベクトルで押しとどめる。ここまで深遠な内省性を持った作品を書ける人は,スイスのマルタンくらいじゃないでしょうかねえ(即興も少なからずあるでしょうし)。まさしくワン・アンド・オンリーそのものです。全て作者自身による,世界初録音。オルガンなのに,まるでピアノの如く起伏に富んだ運指に瞠目するばかりの本盤は,幸運なことに録音状態も良いです。お薦め盤。ちなみに,もう一枚の自作自演盤は奥さんのマリー・ルイーズ・ラングレ女史の演奏盤に収められているものが複数あるということで,一枚だけ買うならこちらが良いかも。

★★★★
"Suite Armoricaine / Pièce pour Trompette et Piano / Mouvement Perpetuel / Cinq Mélodies / Hommage à L.Braille / Suite pour Piano à 4 Mains / Vitrail / Diptyque" (Solstice : SOCD 180)
Jean Langlais, Marie-Louise Langlais (org) Janine Collard (msp) Alain Raës, Sylvie Mallet (p) Claude Faucomprez (cl) David Guerrier (tp)
ラングレが夫婦で関与した自作自演集の3枚目は,ピアノ曲と室内楽作品を集めた選集です。冒頭から単純な和声の反復のうえで,みるみる黒雲のように呪術的な旋法ワールドを展開するラングレの世界。第一集や二集と比べて,ピアノや室内楽など,バラエティに富んだジャンルの曲を愉しめる意味では,お薦め度の高い一枚でしょう。ただ,ハンマーで弦を叩いて音を出す特性上,ピアノの音はオルガンや合唱団のように持続できません。そのためかオルガン作品に比べると全体に輪郭は明瞭。好みの問題なのかも知れませんが,個人的にはこの輪郭線の強さが,ややラングレ作品の持つ神秘主義的な深みをうち消してしまうように思えて,引っかかりを感じたのも確かです(掉尾の「ディプティーク」の深さをお聴きください!)。やはり彼の本分は教会の中にありでしょう。メゾ・ソプラノは少々難を示すものの,演奏陣はいずれも凄腕揃い。相変わらず技巧的確なアラン・ラエズのピアノは勿論,ラッパが異様に上手いので吃驚しました。2000年のモーリス・アンドレ国際コンクールの優勝者だそうです。次世代を担う大器の予感。録音も良いです。

★★☆
"Missa Salve Regina / Rosa Mystica / La Nativité / Messe Solennelle / Hymne d'Actions de Grâces (Te Deum)" (Hyperion : CDA 66270)
David Hill (cond) James o'Dnell, Andrew Lumsden (org) English Chamber Orchestra Brass Ensemble : Westminster Cathedral Choir
おそらく,ラングレの作品に初めて大きな光を当てCD化したハイペリオンの卓見には頭が下がります。その英断だけでも,本盤は価値ある作品といえるかも知れません。しかし,演奏も含めてお薦めできるかどうかは別問題。この盤の演奏はいただけません。まず録音。もちろん合唱隊と大オルガンに,ブラスが付くという大所帯を綺麗に収めることが難しいのは分かりますが,オルガンがモノラルにしか聞こえないような定位は困ります。さらに輪を掛けて許し難いのが,ウエストミンスター聖堂合唱団!とにかく出来がヒドイ。これがプロかと思わずには聴けない,不揃いなアーティキュレーション,粗っぽく不揃いな音高,コントロールの不安定さには溜息しか出ません。選曲そのものは素晴らしく,これでもし演奏さえ良かったなら,もっと早くにラングレの再評価が進んだであろうと考えるに,口惜しいことこの上ない。ラングレの宗教曲集はこの盤の他に上記シリウス盤もあり,演奏内容からすると圧倒的にシリウス盤が上。不幸な行き違いをなくすためにも,ぜひ上記のシリウス盤からお聴きいただくようお薦めします。

★★★☆
"Salve Regina / Choral I, III, IV pour Trompette et Orgue / O Salutaris / Ave Mundi Gloria / Tantum Ergo / Tu es Petrus / Deploration / Psaume Solennel No. 3" (Solstice : SOCD 14)
Patrick Giraud, Jean Revert (dir) Pierre Cochereau, Georges Bessonnet, Jacques Marichal (org) Roger Delmotte (tp) Maîtrises de Notre-Dame de Paris, de Ste-Marie d'Antony et de la Résurrection d'Asnières : Ensemble de Cuivres Roger Delmotte : Quatuor de Trombones de Paris
Solsticeは,オネゲルやシュミットのピアノ作品集なども出すいっぽう,宗教曲に賭けては相当にマニアックなところまで掘り進む好事家御用達なフランスのレーベル。小さいながらも男気のあるそのカラーは大手にない意志を感じます。とくにラングレの再発掘には意欲的で,彼が世を去った1991年以降,精力的にラングレ作品を発掘中。この盤もそのお陰で日の目を見たもので,録音僅少のトランペット作品に,ハイペリオンの駄盤しか演奏の見あたらない『サルヴェ・レジーナ』が入るという嬉しい内容です。演奏にはムラがあり,レベルの高い器楽演奏陣に比して,合唱団がレベル低めなのが残念。ただ,既にシリウス盤をお持ちの方なら,それ以外の所でも充分愉しみが残されている。小生的には傑作と思われる『3つの祈り』には,ノートルダム聖堂少年合唱団を起用。子どもの声でもあり,音程は不安定なものの,フォーレにおけるコルボ盤的存在価値を有する内容。また,3曲抜粋とはいえ,トランペットのためのコラールは演奏内容,録音ともに秀逸。極めて内省的な響きと解釈に溜飲が下がります。《2枚目以降としてなら》という条件を付けても良ければ,充分面白い盤ではないかと思います。

★★★★
"Suite Breve / Suite Française / Suite Medievale / Folkloric Suite / Incantation pour Un Jour Saint" (Solstice : SOCD 86)
François-Henri Houbart (org)
パリの聖マドレーヌ教会でオルガンを弾いている(らしい)フランソワ=アンリ・ウバルさん。彼はEMIのフォーレ録音などにもちょくちょく顔を出している人物で,フォレやトゥルヌミール,ヴィエルヌなどを精力的に録音。この手の近代ものを演奏をさせると上手いです。本盤はそんな彼の面目躍如ともいうべきラングレのオルガン独奏曲集。収められた作品は,ほぼ1940年代後半から1950年代前半までの,ラングレが脂の乗りきった時期のもの。ラングレーならではの神秘的・宇宙的な音場が縦横無尽に展開されます。既に作曲者の素晴らしい演奏がある演目。ウバルの演奏は,作曲者自身のそれと比べると淡泊ながら,端正で良くまとまっている。自作自演がある以上,どうしても分が悪くなる感は否めませんが,それを承知で巨大な壁に挑んだ心意気に喝采です。曲をアナリーゼなさりたい方には,まとまった形で貴重な比較の材料を提供してくれた得難い一枚といえるのでは。しかし,こうして並べてみると,Solsticeから出たラングレの作品は,自作自演も含めると凄い数ですね。このレーベルが大挙して彼の録音を出しまくるまで,ラングレなんてまず余所で聴く機会はなかった作曲家です。これだけラングレのためにカタログを割いてくれるのは,一体どうしてなんでしょう・・?

★★★☆
"Litanies à la Vierge Noire / Ave Maria (Poulenc) Ave Maria (M.Godard) Hymne à la Sainte Vierge (Pierné) Salve Regina (Lacombe) Ntr.Dame de la Joie (M-M.Lévy) 3 Antiennes à la Sainte Vierge (Büsser) 5 Motets (Langlais) Magnificat (Calmel)" (Calliope : CAL 9301)
Régine Théodoresco (cond) Carine Clément (org) Calliope, Choeur de Femmes
まず物好きでない限り録音しない,シュミットのような辺境に目配りを利かせる好き者合唱団。伊達ではなかったようで,こんな前科を残していました。プーランクを除くほぼ全員が,聞いたことがないか,聞いたことはあるけど合唱曲は聴いたことがない面々ばっか。・・即刻オタ向け確定です(自虐)。ピエルネ,ビュセール,ラコンブ,レヴィと,いずれも,生真面目な課長補佐のように凡庸。ラコンブとレヴィは近現代の書法ながら,前者は不協和音がクロマチックに上下向する,お化け屋敷みたいに薄気味悪い小品。後者は曲構成にまとまりがない。そうそう簡単にヒット作なんて出ませんかと大いに落胆しました。昼行灯どもが冴えない顔で窓際に居並ぶなか,閃きを見せたのがゴダールとカルメルですか。ゴダールといえばバンジャマンが有名。しかしこちらはマルセルで,1920年生まれの別人。簡素な曲形式を素地に,デュリフレを思わせる程良く抑えの効いたモダニズムを利して,敬虔な響きを得た佳品。初耳のカルメルは,ラングレ手前を徘徊する過渡期の筆致。どこで解決するのかと耳を引っ張りながらひたすら奇妙に転調。保守的な形式の枠は外れることなく巧妙に起承転結を作り上げ,耳を愉しませようとする。思惑先行気味ながら,面白い曲を書く人だと思います。本盤のもう一つの収穫は合唱隊。正直シュミットを聴く限り,この合唱団の技量は二流以下との印象が拭えなかったんですけど,シュミットの場合はやはり曲の方が難しいんでしょう。アーティキュレーションも声質も,《不揃いの林檎たち》の面持ちながら,本盤の彼女たちの音高は随分揃い,聴くに堪えるレベルに達しておられると思います。彼女らのラングレは,シリウス盤に比べかなりテンポが遅め。静謐さを強調しようと考えたのでしょうか。あまり効果的とは思えませんが・・。それでもウエストミンスター盤は明瞭に凌駕する出来なのでは。

(2001.6.18 upload)