Lの作曲家


ジャック・ルゲルネイ Jacques Leguerney (1906-1964)

フランスの作曲家,本名ジャック・アルフレッド・ジョルジュ・エミール(Alfred Georges Emile)・ルゲルネイ。1906年11月19日,ル・アーヴル生まれ。1913年に家族とともにパリへと移る。元々は哲学を専攻したが,1925年に学士号を得たのち,銀行員として勤務。その傍ら,1926年からエコール・ノルマルへ進学し,マルセル・サミュエル=ルソーに和声法を学び,次いでナディア・ブーランジェに対位法を師事。しかし一年後には楽壇を嫌ってこれを辞し,その後は生涯独学を貫いた。ナディアは,1927年にエコール・ノルマル定期演奏会で作品を採り上げるなど,彼の才能を高く評価していた。しかし,1932年に父が他界し,家系を支えるため10年間,家業を継ぐことを強いられるなど,彼自身は作曲活動に恵まれなかった。作品の多くは歌曲で,第2次大戦により家業を閉じてから,本業の傍ら本格的な作曲活動へと戻ったのち,ジェラール・スゼー,ピエール・ベルナックらのために多数の作品を遺している。印象主義,六人組,後期ロマン派,ドイツ・リートなどからそれぞれに距離を置いた折衷的な作風を特徴とするが,録音は現在まで殆どなされておらず,その存在はほぼ忘れ去られている。


主要作品

舞台作品 ・アンディミオン Endymion (1948) {1act} ...A.Doderet台本
・夜のヴィーナス La Vénus noire (1963) {2act} ...
Devillez, Leguerney台本
室内楽曲 ・ソナチヌ ト長調 Sonatine en sol majeur (1944) {vln, p}
・弦楽四重奏曲 ニ短調 Quatuor à cordes en ré mineur (1947) {2vln, vla, vc}
・幻想曲 fantaisie (-) {p}
歌曲 ・3つの歌 Trois mélodies (1930-47) {msp, p}
・七星詩派の詩曲集 第1編 Poèmes de la pléiade 1er recueil (1943) {sop, p}
・七星詩派の詩曲集 第2編 Poèmes de la pléiade 2ème recueil (1943)
・七星詩派の詩曲集 第3編 Poèmes de la pléiade 3ème recueil (1943)
・トゥレの詩による2つの歌 Deux mélodies sur les poèmes de Paul-Jean Toulet (1943) {sop, p}
・七星詩派の詩曲集 第4編 Poèmes de la pléiade 4ème recueil (1943-44) {msp, p}
・兆し Signes (1943) {sop, btn, p} ...
Tombeau詩
・七星詩派の詩曲集 第5編 Poèmes de la pléiade 5ème recueil (1944-45) {sop, p} ... Ronsard, P.Desportes詩
・七星詩派の詩曲集 第7編 Poèmes de la pléiade 7ème recueil (1942-54) {sop, p}
・七星詩派の詩曲集 第8編 Poèmes de la pléiade 8ème recueil (1944-45) {sop, p}
・ギョーム・アポリネルの詩による2つの歌 Deux mélodies sur les poèmes d'Apollinaire (1945) {sop, p}
・その深き闇 De l'abime profond (1954) {sop, btn, p}
・カム・アウェイ Come away (1964) {btn, p} ...
Shakespeare詩
・P.J.トゥレの12の詩 12 mélodies sur des poèmes de P.J.Toulet (-)
・5つの七星詩派の詩曲集:新編 Cinq nouvelles mélodies sur des poèmes de la pléiade (-)
・フランソワ・マイナールの7つの詩 Sept mélodies sur des poèmes de François Maynard (-)
・夜 La nuit (-) ...
Saint-Amand詩
・孤独 La solitude (-) ...
T.de Viau詩
・風景 Le paysage (-) ...
J.Racine詩


ルゲルネイを聴く


★★★★☆
"28 Mélodies :
Poèmes de la Pléiade 1er, 4ème, 5ème, 7ème, 8ème Recueil / Duo / Deux Mélodies sur les Poèmes de Paul-Jean Toulet / Deux Mélodies sur les Poèmes d'Apollinaire / Trois Mélodies" (Claves : CD 50-9618)

Danielle Borst (sop) Brigitte Balleys (msp) Philippe Huttenlocher (btn) Mary Dibbern (p)
管見の限り殆ど唯一,ルゲルネイを発掘した珍盤です(Maguelone盤も有りとの情報を頂きました)。嬉しいことにこの盤,演唱は滅法好い。近代物の歌曲には滅法巧さを発揮するB.バレーズ以下豪華キャストであれば,宜なるかなといったところでしょう。彼は楽壇を嫌い,ナディア・ブーランジェのクラスも「無意味だ」と一年で辞めてしまうような反アカデミズムの作曲家で,その点でもサティ同様,近現代の音楽的潮流からは半ば逸脱してしまった人でした。ドイツ・リートと仏後期ロマン派の折衷的な表現に,六人組の持つ通俗性と,印象派の持つ茫洋感を,各々少しだけ上乗せしたような作風は地味で,悪く言えば昼行灯的なのでしょうが,近代ものの裏街道を散策なさる方には,秘曲として充分楽しんで頂けようかと思います。


(2001. 10. 1 upload)