Mの作曲家



ジョルジュ・ミゴ Georges Migot (1891-1976)

フランスの作曲家,画家,彫刻家。本名ジョルジュ・アルベール・ミゴ(Georges Elbert Migot)。1891年2月27日パリ生まれ。1909年にパリ音楽院へ進学し,シャルル・ヴィドールに作曲法を,ヴァンサン・ダンディに管弦楽法を,モーリス・エマニュエルに音楽史を師事。また,オルガンをウジェヌ・ジグ,アレクサンドル・ギルマンに師事。1918年から1920年の間に,三度に渡って作曲法科の一等を得た。その後,1921年にブリュメンタール財団賞(le prix Blumenthal pour l'ensemble de son oeuvre)も獲得している。当初はフォーレの影響下に後期ロマン派の作風をとったが,1920年代以降は中世多声様式に傾倒。六人組を始めとする新古典主義的傾向に反発して自ら『一人組』を名乗り,体位法的な書法を用いて作曲し,1953年に作曲した『レクイエム』では,リズムや調性にとらわれない自由な旋律線に基づく語法へと到達した。1948年にパリ音楽院付属の楽器博物館(Conservateur du Musée des instruments anciens du Conservatoire de Paris)の館長に就任。1976年1月5日パリ近郊のルヴァロワ(Levallois)にて死去。


主要作品

舞台作品 ・羽衣 hagoromo: symphonie chorégraphique et lyrique (1922)
・室内歌劇【恋の夜うぐいす】 le rossignol en amour (1924)
・美女と野獣 la belle et la bête (1938)
・妖精たちの物語 contes de fées (1938)
・劇的オラトリオ【ルイ王】 Saint Louis, roi de France (1970)
・合唱喜劇【エジプトのミイラ】 les mommies d'Egypte (1972)
管弦楽 ・熱帯雨林 la jungle (1928) {org, orch}
・アグレスティド les agrestides (1965-1966)
・交響曲第7番 7ème symphonie (-) {chamber}
・クロドリアの宇宙のための音楽 musique pour l'univers Claudelien (-)
吹奏楽 ・教会交響曲 sinfonia da chiesa (1955) {85winds}
・交響曲第8番 8ème symphonie (-) {10winds}
室内楽 ・三重奏曲 trio pour violon, alto, et piano (1918-1919) {vln, vla, p}
・フランス風喜遊曲第一巻 le premier livre de divertissements français (1925) {fl, cl, hrp}
・小前奏曲集 les petits préludes (1927) {fl, vln}
・対話第2巻 deuxième dialogue (1929) {vc, p}
・三部の組曲 suite de trois pièces (1931) {fl}
・3つの小品 trois pièces (1932) {vc, p}
・三部の三重奏組曲 trio ou suite à trois (1935) {vln, vc, p}
・オルガン曲集第一巻 premier livre d'orgue (1938) {org}
・組曲第2番 deuxième suite 'Eva et le serpent' (1945) {fl}
・ソナチヌ sonatine (1955) {sop-recorder, p}
・2台のチェロのための組曲 suite pour deux violoncelles (1963)
・ピアノを付帯した大三重奏曲 le grand trio avec piano (-) {vln, vla, vc, p}
・前奏曲集 préludes (-) {2g}
・舞踏ソナタ sonata à danser (-) {vln, p}
・ラ・マルーブ la malouve (-) {ob, p}
ピアノ曲 ・王道十二宮 le zodiaque (1931-1932)
歌・合唱曲 ・日本についての7つの小さな印象 sept petites images du Japon (1917) {choir, orch}
・石碑 les stèles (1924) {choir, celesta, b, tam, bell, hrp}
・山岳党員への連梼 le sermon sur la Montagne (1936) {5vo, choir, org, strings}
・受難 la passion (1941-1942) {btn, choir, orch}
・オラトリオ【受胎告知】 l'annonciation (1946)
・オクサールのサンジェルマン Saint Germain d'Auxerre (1947) {4vo, 3choir}
・オラトリオ【墓の下の掛金】 la mise au tombeau (1949)
・レクイエム requiem (1953) {choir}
・オラトリオ【復活】 la résurrection (1953)
・主キリストの降誕祭 la nativité de Notre Seigneur (1954-1955)
・35の編曲された詩篇集 les 35 psaumes nouvellement harmonises (1961) {choir, org}
・救世主 De Christo (1971-1972) {btn, choir, fl, org}
・ブルニョンの17つの詩 les 17 poèmes de Brugnon, sur des textes de Tristan Klingsor, magnifique hommage à la voix (-)
・古代の降誕祭頌歌集 noëls anciens (-) {choir}
・詩篇第19番 psaume XIX (-)
・小さな伝道者 le petit evangéliaire (-)
・イン・メモリアム in memoriam (-)...
ミヨー,メシアンと共作。
その他 ・3つのダンテ風の夜想曲 trois nocturnes dantesques (-)


ミゴを聴く


★★★★
"Trio Ou Suite à Trois pour Violon, Violoncelle et Piano / Trio pour Violon, Alto et Piano" (Accord : 205742)
Nathanaëlle Marie (vln) Françoise Renard (vla) Clara Strauss (vc) Ursula von Lerber (p)
近年まですっかり忘れられ,ほとんど全く無名のフランスの作曲家だったジョルジュ・ミゴ。そのピアノ三重奏曲2編を併録し,世にアピールしたのが本CDでした。知る限り,ミゴの作品だけで一枚のCDを作ったのは,これが初めてではなかったかと思います。また本盤は,最近になってArionから『受難曲』が出るまで,まとまった形でミゴを紹介した殆ど唯一のCDでした。作曲者は後年,中世ポリフォニー様式の音楽に没頭し,完全に線的な様式だけに立脚した作品を書いたとされますが,本盤に聴ける彼の曲想は,一聴ロマン派のスタイルに依拠。ただ,輪郭は複数の声部がフォレの室内楽風に絡み合う一見優美なロマン派礼讃趣味でありながら,その声部は情緒不安定気味。ときに師匠世代の,時にゲンダイオンガク風のグロテスクさを帯びながら,各声部が執拗に絡み合って,師匠世代の気品は見事に削がれている。二つの相容れない美意識が薄味感を生み,現代に取り残された江戸の文士めいた,アナクロニズムが漂う。内面で古典に美を見出しながら,習った書法は近現代だった。ここに,魂と頭脳が別な時代に置かれてしまった彼の溜息が聞けるのかも知れない。あまり耳慣れない演奏者陣は,パリ音楽院でジェラール・プレに学び,1989年に一等を得たヴァイオリンと,ブルノ・パスキエに学び,同じく1993年に室内楽・ヴィオラ科一等のヴィオラ,フィリプ・ミュレールに師事し14才でロヨム音楽コンペ優勝のチェロ,シベリウス・アカデミー一等のピアノで構成。ややピッチ緩く,線も細いながら好演奏を展開します。

★★★★
Georges Migot "Premier Livre d'Orgue / Le Tombeau de Nicolas de Grigny" (Arion : ARN 55435)
Yvonne Monceau (orgue)
六人だの三人だのと徒党を組む周囲を後目に,「おれ一人組」と寂しく自己主張したミゴさん。音楽家でもありつつ彫刻や美術もやり,作風は仏近代史の中で劇団ひとり状態。器用なんだけど立ち位置が見えにくく,それを払拭するほど強烈な個性や魅力を放っているとも思えない彼の録音が,今ひとつ増加していかないのは,ある意味悲しい必然なのかも知れません。一瞬「おおっ新録音?」と見紛う本盤も,実際は1980年に世界初録音された音盤の再発が正体。奏者のイヴォンヌ・モンソー女史はストラスブル音楽院を出たのちロケレン国際オルガン・コンクールで入賞。1982年に博士号を得たのち,ストラスブルの欧州文化研究所で哲学と楽典をご研究なさっている人物。あんまりミゴと関係なさそうな彼女を焚きつけたのは恐らく,博士論文を指導した(ご存じミゴ研究の第一人者)マルク・オネゲルだったのでしょう。正直,何度聴いても今ひとつピンと来ないミゴの印象は,本盤を聴いても払拭できず終い。形式的には擬古典的な(多声様式風の)教会音楽のそれを重度に踏襲しつつも,従旋律が妙な具合に絡まっていたり,移調センスが奇妙だったり,時々ぎょっとするほどサイケな音階爆弾が落ちてきたりと,そういう小技で自己主張。聴く人が聴けば面白いのかも知れませんけれど,何となく小技ばかりで,それを貫く彼らしいキャラが良く分からないんですよねえ。「曲が良ければ,そんなもの重要ではない」とのご意見もあるでしょう。でも正直,なぞってる音楽が中世音楽なもんで,生真面目な課長補佐みたいで一本調子。そんなに魅力的ですかねえ・・?う〜ん申し訳ない。きっとあっしのような四畳半旗本退屈男にゃ一生理解でけんような高邁なお考えでもあるんでしょう。理解不能だ,めんご。

★★★★
"Première Sonate pour Violoncelle et Piano (Ropartz) Sonate (Debussy) Trois Pièces / Deuxième Dialogue (Migot)" (Integral Classic : INT 221.105)
Jean-Marie Trotereau (vc) Jeffrey Grice (p)
本盤は,ジョルジュ・ミゴというエラクマイナーなところを突く選曲が心憎い好事家盤。ロパルツのソナタは1904年の作。器楽作品では初期のものにあたり,まだ書法の基調はフランクにありますが,凝った移調センスや伴奏ピアノのアルペジオのそこここにポスト・フランキズムの萌芽を見てとることのできる佳品。こちらはクレティアンの秀演があるだけに,興味の大半は初めて耳にするミゴということになりましょう。ポスト・ロマン派とジムノペディのサティを足して二で割ったような,不思議な風合い。同じ旋法使いでも,ユニゾンまたはアルペジオ主体の伴奏で和声感希薄なミゴのそれは,即物主義的な視線がちらつき,とにかく薄味でカサカサしている。エキセントリックな個性が様々なベクトルに伸びていった近代の中で,どの方向にも偏倚しようとしなかったこの人なりの美学なのかも知れません。既にチェロを弾くトロトロー氏はシベリウス三重奏団のメンバー。トゥルーズとパリ音楽院で学んだのち,1985年にはオーベルニュ管弦楽団のソリストに選ばれた人物。さすがに,コピーやクレティアンに比べると幾分音が痩せているようですが,ピッチは正確で,抑揚豊かな情感表現も秀逸の部類に入るのではないでしょうか。そんな良いことずくめの本盤,残念なのは録音が貧相なことですか。どこか教室サイズのお部屋で演奏したのを,そのまま2トラック録音したような感じ。それならそれで,もう少しリッチに録ることは出来ると思うんですが,チェリストが動くのを考慮してか,やや離れた位置から集音している。そのせいで楽器と距離感が大きくなり,部屋の残響に原音が埋もれてしまい,定位が怪しくなってます。さらに,マスター音源がテープなのか細部に音の摩滅が。実際,吹き込みに関する記述は皆無。お金が無かったんでしょうかねえ?