Nの作曲家



ヴィーチェスラフ・ノヴァーク Vítezslav Novák (1870-1949)

旧チェコ・スロヴァキアの作曲家。1870年12月5日,南ボヘミアのカメニツ・ナト・リポウ(KamenitzNad Lipou)生まれ。町医者の父はノヴァークが11才の時に他界したため,一家は経済的には苦境を強いられ,南ボヘミアのインジフーフ・フラデツへ移住。彼は現地のギムナジウムに入学し,音楽教育は地元の合唱指導者ヴィレム・ポユマン(Vilem Pojman)のもとで私的に進められた。1889年にチャールズ大学法学科の奨学金を得てプラハ進出の機会を得たが,作曲に関心が移っていた彼はプラハ音楽院へも入学し,ジョセフ・スークにピアノ,カレル・ステッケル(Karel Stecker)に対位法,カレル・ニットル(Karel Knittl)に和声法を学ぶ。次いで1891年にはステッケルの推薦により,アントニン・ドヴォルザークのマスター・クラスで作曲法を師事した。1896年に,モラビア=スロヴァキア国境近くの村ヴェルケ・カルロヴィツェの知人宅で休暇中に同地の民謡に出会って開眼し,以後モラヴィア地方,スロヴァキア地方を歴訪して民謡収集に従事。1900年代以降,チェコの民謡や自然環境に根ざした保守的な旋律美に立脚しつつ,印象主義の影響下に近代的な和声および旋法をとりいれた作品を発表して,20世紀チェコ音楽の推進者としての評価を確立した。1909年にはプラハ音楽院作曲法科の教授に就任。1941年に退任するまで40人以上の弟子を輩出。ナチズムの台頭に直面した1930年代以降は『南ボヘミア組曲』に代表される愛国主義色の濃い作風に転じる。1945年に国民芸術家称号。1949年6月18日,スクテツ(Skutec)の別荘にて死去。(関連ページ: Vitezslav Novak <“Czech Composers”内> 日本語)


主要作品

※Stedron, B. 1967. Vitezslav Novak. Statni Pedagogicke Nakladatelstvi Praga. 入手!したはいいが・・
  た,ただの一語もわからん・・
(-_-;) 更新不能。チェコ語分かる方,お助けくださひ・・

バレエ音楽 ・無言劇『シニョリーナ・ジョヴェントゥ』 Signorina Gioventu (1928)
・無言劇『ニコチナ』 Nikotina (1929)
・付随音楽『ジジカ』 scenicka hudba ke hre F. Rachlika 'Zizka' (1948)
オペラ/歌劇 ・ズヴィーコフのいたずら小僧 Zvikovsky rarasek (1914)
・カルルシュテイン Karlstein (1915)
・角灯 lucerna (1922)
・祖父の遺産 deduv odkaz (1925)
カンタータ ・カンタータ『嵐』 the storm : boure (1908-1910)
・秋の交響曲 autumn symphony : podzimni symfonie (1934)
・5月の交響曲 May symphony : Majova symfonie (1943)
管弦楽曲 ・セレナード ヘ長調 serenade in F major (1895)
・序曲『マリシャ』 ouverture 'Marysa' (1896)
・交響詩『タトラ山にて』 symphonic poem 'in the Tatras : V Tatrach' (1902)
・永久への憧れ symphonic poem 'eternal longing : O vecne touze' (1904)
・セレナード ニ長調 serenade in D major (1905)
・スロヴァク組曲 'Moravian-Slovak' suite : Slovacka suita (1906)
・トマンと森の精 Toman and the nymph of the woods : Toman a lesni panna (1907)
・序曲『貴婦人ゴディヴァ』 ouverture 'lady Godiva' (1907)
・南ボヘミア組曲 South Bohemian suite : Jihoceska suita (1937)
・交響詩『深遠より』 de profundis (1941)
・聖ヴァーツラフ三部作 St. Wenceslas tryptych : Svatovaclavsky triptych (1941)
協奏曲 ・ピアノ協奏曲 イ短調 piano concerto (1895) {p, orch}
器楽/室内楽 ・ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 sonata for violin and piano (1891) {vln, p}
・ピアノ三重奏曲 ト短調 piano trio in G-minor (1892) {vln, vc, p}
・3つの小品 tri skladby (1893) {vln, p}
・ピアノ四重奏曲 ハ短調 piano quartet in C-minor (1894) {vln, vla, vc, p}
・ピアノ四重奏曲 イ短調 piano quartet in A-minor (1896) {vln, vla, vc, p}
・弦楽四重奏曲 ト長調 string quartet in G-major (1899) {2vln, vla, vc}
・ピアノ三重奏曲 trio in D-minor (1902) {vln, vc, p?}
・弦楽四重奏曲 ニ長調 string quartet in D-major (1905) {2vln, vla, vc}
・弦楽四重奏曲 ト長調 string quartet in G-major (1938) {2vln, vla, vc}
・チェロ・ソナタ sonata for cello and piano (1941) {vc, p}
ピアノ曲 ・バラード ホ短調 ballad in E-minor (1893)
・シューマンの主題による変奏曲集 variace na Schumannovo tema (1893)
・バガテル bagately (1894?)
・想い出 vzpominky (1894)
・舟歌 barcaroly (1896)
・牧歌 eklogy (1896)
・日暮れに za soumraku (1896)
・3つのチェコ舞曲 tri Ceske tance (1897?)
・我が五月 muj Mai (1899)
・英雄的なソナタ sonata eroica (1900)
・冬の夜の歌 pisne zimnich noci (1903)
・2つのワラシュコ舞曲 dva Valasske tance (1904)
・物憂げな愛の歌 melancholicke pisne o lasce (190-)
・トーン・ポエム『パン』 pan (1910)
・エキゾチックな組曲 erotikon (1911)
・6つのソナティナ sest sonatin (1920)
・若さ mladi (1920)
歌曲 ・歌曲集 Pisne : songs (1896?)
・こころの物語 pohadka srdce : story of a heart (1896)
・ジプシーの旋律 ciganske melodie : gypsy melodies (1897)
・モラヴィア民俗詩による歌 pisnicky na slova lidove poezie moravske (1898)
・モラヴィア民俗詩による歌 pisnicky na slova lidove poezie moravske II (1898)
・モラヴィア民俗詩による歌 pisnicky na slova lidove poezie moravske III, (1898)
・物憂げに melancholie : melancholy (1901)
・2つのバラード dve balady na slova J. Nerudy : two ballads (1902)
・ネルダの魂への2つのバラード balada o dusi J. Nerudy, (1902)
・新たなる王国の谷 udoli noveho kralovstvi : new kingdom valley (1903)
・愛についての物憂げな歌 melancholicke pisne o lasce : melancholy songs about love (1906)
・夜想曲 notturna : nocturnes (1908)
・官能的に erotikon (1912)
・春 Jaro : Spring (1918)
・2つのロマンス dve romance na slova J. Nerudy : two romances (1934)
・追悼 in memoriam (1937)
・モラヴィア民俗詩による歌 pisnicky na slova lidove poezie moravske IV (1944)
・モラヴィア民俗詩による歌 pisnicky na slova lidove poezie moravske V (1944)
・モラヴィア民俗詩による2つの民間伝承 dve legendy na slova lidove poezie moravske (1944)
・南ボヘミアのモティーフ jihoceske motivy : South Bohemian motifs (1947)
・4つの子守歌 ctyri ukolebavky : four lullabies (1947)
合唱曲 ・モラヴィア民俗詩による2つのバラード dve balady na slova lidove poezie moravske (1898) {choir}
・モラヴィア民俗詩によるバラード moravske lidove balady (1900) {choir}
・6つの男声合唱曲 sest muzskych sboru : six male choruses (1906) {choir}
・生まれた大地の上で na domaci pude (1911) {choir}
・4つの詩 ctyri basne Otokara Breziny : Four Poems (1912) {choir}
・婚礼衣装 svatebni kosile (1913) {choir}
・強さと反抗 sila a vzdor (1917) {choir}
・3つのチェコの歌 tri ceske zpevy (1918) {choir}
・生活より ze zivota : from life (1932) {choir}
・モラヴィア民謡による12の子守歌 dvanact ukolebavek na slova lidove poezie moravske : twelve lullabies (1932) {choir}
・故郷 domov : home (1941) {choir}
・5つの混声合唱曲 pet smisenych sboru (1942) {choir}
・5月 Maj : May (1942) {choir}
・ズリーンの労働者たちの歌 pisen pracujiciho lidu : working peoples' song (1948) {choir}


ノヴァークを聴く


★★★★☆
"In the Tatra Mountains / Eternal Longing / Slovak Suite" (Virgin : 7243 5 45251 2 4)
Libor Pesek (cond) Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
マルティヌくらいしか知らないチェコ系の作曲家で,大した期待もせずに聴いてみましたが,驚くほど充実した筆致で感服しました。作曲者はドボルザークの弟子。民謡収集に従事する中から自己の作風に開眼したというだけに,底流に脈々と流れるのはロマンティシズム。明瞭な旋律線が基調にありますが,同時に,東欧ものとは思えないほど色彩感豊かな和声と,国民学派寄りの作曲家とは思えないほど,洒脱な作風が特徴。フォーレやデュパルク,ダンディや後期のショーソンなど,ドビュッシー前夜スレスレの仏後期ロマン派音楽に目がない方なら,かなりの程度,溜飲を下げることになろうかと思います。『シェヘラザード』の好演奏が記憶に残るチェコの指揮者ペシェックは,イギリス版プラッソン。決して最上級とはいえないオケから,素晴らしく情感豊かで,丁寧に推敲された響きを生み出しています。

★★★★★
"South Bohemian Suite / Lady Godiva / De Profundis" (Ultraphon : 11 1873-2 011)
Jaroslav Vogel (cond) Brno State Philharmonic Orchestra
どんなクラシック・ファンでも知っている『新世界』の作曲者ドヴォルザークの弟子であり,彼の遺志を継いで近代チェコ音楽の推進者となって多くの後進を育成したノヴァークの,あまり多いとは言えない作品集のひとつです。同じくドヴォルザークの弟子として有名な人物としては再評価著しいスークがおり,知名度の点から行くと,ノヴァークは随分割を食っている感がありますが,その作品はチェコ人とは思えないほど精妙で色彩感溢れ,近代ファンには見逃せない内容を誇るものです。彼の作品として有名なのは,『タトラ山にて』や『永久への憧れ』など,比較的初期のもの。それ以降のものとなると,極端にCDが減ってしまいます。しかし,ロマンティックな旋律美を持つ穏健な初期作品に比べ,後年の作品は書法がより緊密。白眉は『南ボヘミア組曲』です。ドビュッシーの影響を随所に感じさせる和声感覚とオネゲル彷彿の重厚な構成美,東欧の作曲家ならではの悲哀の籠もった旋律が全編に横溢し,感涙必至。イギリスの作曲家は印象派にケルト臭を上乗せしてオリジナリティを生み出しました。それとはまたひと味違う書法で,東欧圏ならではの持ち味を自己主張できるところまで到達した,素晴らしい作品です。演奏するブルノ州立管は決して有名なオケではありませんが,演奏は極めてデリケートに推敲され,作品への深い共感に溢れたヴォーゲルの指揮ともどもまさしく絶品。こういうCDこそ印象派ファンに再評価を求めたい。甲種推薦です。

★★★★☆
"Nikotina / Toman and the Wood Nymph" (Supraphon : SU 3050-2 031)
Frantisek Jírlek (cond) Brno Madrigal Singers : Brno State Philharmonic Orchestra
こちらは『トマンと森の精』に,合唱隊が付く舞台作品の『ニコチナ』をカップリングした作品集。この2作品も,比較的知名度がましな代表曲『タトラの山にて』より書法の上では大きく前進。ドビュッシーの語法(全音階や旋法)の効果的な援用により,下手なフランスものより余程フランス的な色彩感に富み,舞台作品らしく躍動感も横溢。さらにはロマンティックな官能美溢れるノヴァークならではの職人芸を堪能することができます。前者は50分,後者も24分を超える長尺の作品ですが,全く中だるみしない充実した曲構成に驚くばかりです。指揮者のズィーレクは,プラハ音楽院で実際にノヴァークに師事した経験をもつ,この企画には打ってつけの人材。ヤナーチェク・オペラの音楽監督として活躍し,チェコ・フィルやプラハ歌劇場の客演も豊富で,1978年から亡くなるまでブルノ州立管弦楽団の音楽監督を務めていた実力者。手兵ブルノ州立管を率い,ここでも安定感溢れる円熟の至芸を披露しています。

★★★★
"Korsar. Overture / Serenade F / Marysa" (MDG : 601 1159-2)
Romely Pfund (cond) Bergische Symphoniker
チェコ近代の作曲家ノヴァークは,師匠ドヴォルザークや,ドヴォルザーク門下の出世頭ヨゼフ・スークらの間に落ち込んで,過小評価も甚だしい人物のひとり。その熟達した作曲センスに比べCDも多くはありません。こちらは1892年から1898年に書かれた,初期の3作品を収めたものです。この当時の彼は,まだドヴォルザークにそっくり。いかにも東欧の作家らしい,マイナー調の悲壮感ある節回しに,チャイコフスキーを土臭くしたような愛国主義的ロマンティシズムが加わったような作風です。フランス的な優雅さからはかなり距離がありますし,初期作品だけに形式感そのものは国民楽派のそれと大差ない懐旧的なもの。随所にドヴォルザーク〜ブラームス系の臭いが充満しています。それでも,東欧の民謡などの素材を,近代的な和声で再現前しようとする工夫は随所に。古くさい制約の中で精一杯形式を拡張し,和声の組み合わせから新鮮な響きを得ようと苦心しているのは良く分かります。フランキスト全般が大丈夫な方なら,さほど抵抗はないんじゃないでしょうか。演奏するは,ゾーリンゲン市立管弦楽団とレムシェイド響が合体して1995年に創設されたばかりの新進楽団。ライン地方のいち楽団というわりには演奏もレベルが高く,安心して聴けます。

(2002. 4. 26 uploaded)