Pの作曲家



ウォルター・ピストン Walter Piston (1894-1976)

1894年1月20日メーン州ロックランド生まれ。10才でボストンへ移住。1912年から1916年までマサチューセッツ州一般芸術学校で学ぶ。海兵隊を経て,1919年ハーバード大学へ進学し1924年に卒業。同大学の奨学金で1926年までパリへ留学し,エコール・ノルマルで作曲をポール・デュカに師事するとともにナディア・ブーランジェから私的に教育を受ける。『和声法』(1941),『対位法』(1947年),『編曲法』(1955年)のテキストを執筆し,アメリカ屈指の理論肌として知られるほか,教育者としても活躍。1926年の帰国後は,1960年の退官までハーバード大学で教鞭を執り,レナード・バーンスタイン(指揮者)やエリオット・カーター,ルロイ・アンダーソン(作曲家)らを育成した。作風は,盆弱なアメリカの通俗性とは一線を画す重厚かつ堅牢な新古典様式を基調とし,躍動感に富む。初期のものはアメリカらしい平明な構成を特徴とし,後期のものは無調色をとり入れて晦渋さを増している。自作の交響曲でピューリツァー賞を2度受賞。のちに全米芸術研究アカデミーおよび全米人文科学アカデミー委員にも選ばれた。1976年11月12日マサチューセッツ州ベルモントにて死去。


主要作品※Pollack, H. 1982. Walter Piston. UMI Research Press. を入手しました。作品表は時間が出来次第,完全版へ改訂します。

バレエ音楽 ・バレエ【不思議な笛吹き】 the incredible flutist (1938) ...組曲版1940年
交響曲 ・交響曲第1番 symphony No.1 (1937)
・交響曲第2番 symphony No.2 (1943-44)
・交響曲第3番 symphony No.3 (1947)
・交響曲第4番 symphony No.4 (1950)
・交響曲第5番 symphony No.5 (1954)
・交響曲第6番 symphony No.6 (1955)
・交響曲第7番 symphony No.7 (1960)
・交響曲第8番 symphony No.8 (1965)
管弦楽曲 ・管弦楽のための小品 piece (1925) ...未出版
・管弦楽的な小品 symphonic piece (1927) ...未出版
・管弦楽のための組曲 第1番 suite for orchestra No.1 (1929)
・管弦楽のための協奏曲 concerto for orchestra (1933)
・前奏とフーガ prelude and fugue (1934)
・シンフォニエッタ sinfonietta (1941) {chamber}
・戦うフランスのためのファンファーレ fanfare for the fighting French (1942) {brass, perc}
・祝勝曲によるフーガ Fugue on a victory tune (1944) ...未出版
・グーセンスの主題による変奏曲 variation on a theme by Eugene Goossens (1944) ...第1曲は 'Jubilee variations'
・管弦楽のための組曲 第2番 suite No.2 (1947)
・トッカータ toccata for orchestra (1948)
・タンブリッジ・フェア Tunbridge Fair: intermezzo (1950) {symphonic band}
・セレナータ serenata (1956)
・ニュー・イングランドの3つの情景 three New England sketches (1959)
・交響的前奏曲 symphonic prelude (1961)
・リンカーン・センター・フェスティヴァルのための序曲 Lincoln Center festival overture (1962)
・エドワルド・ヒルの主題による変奏曲 variations on a theme by Edward Burlingame Hill (1963)
・パイン・ツリー・ファンタジー pine tree fantasy (1965)
・リチェルカーレ ricercare (1967)
・式典ファンファーレ ceremonial fanfare (1969) {4tp, 6hrn, 3tb, tba, timp, perc}
・バイセンテニアル・ファンファーレ bicentennial fanfare (1975)
協奏曲 ・ピアノ協奏曲 concerto for piano and orchestra (1936) {p, chamber}
・小協奏曲 concertino (1937) {p, chamber}
・ヴァイオリン協奏曲第1番 violin concerto No.1 (1939) {vln, orch}
・前奏とアレグロ prelude and allegro (1943) {org, strings}
・イングリッシュ・ホルン,ハープと弦楽のための幻想曲 fantasy (1954) {e-hrn, hrp, strings}
・ヴィオラ協奏曲 viola concerto (1957) {vla, orch}
・2台ピアノと管弦楽のための協奏曲 concerto for two pianos and orchestra (1959) {2p, orch}
・ヴァイオリン協奏曲第2番 violin concerto No.2 (1960) {vln, orch}
・カプリッチョ capriccio for harp and string orchestra (1963) {hrp, strings}
・変奏曲 variations for cello and orchestra (1966) {vc, orch}
・クラリネット協奏曲 concerto for clarinet and orchestra (1967) {cl, orch}
・ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア fantasia for violin and orchestra (1970) {vln, orch}
・フルート協奏曲 concerto for flute et orchestra (1971) {fl, orch}
・弦楽四重奏,吹奏楽とパーカッションのための協奏曲 concerto (1976) {2vln, vla, vc, winds, perc}
室内楽曲 ・3つの小品 three pieces (1925) {fl, cl, bssn}
・メヌエット minuetto in stile vecchio (1927) {2vln, vla, vc} ...
未出版,破棄
・フルート・ソナタ flute sonata (1930) {fl, p}
・オーボエとピアノのための組曲 suite for oboe and piano (1931) {ob, p}
・弦楽四重奏曲第1番 string quartet No.1 (1933) {2vln, vla, vc}
・ピアノ三重奏曲第1番 piano trio No.1 (1935) {vln, vc, p}
・弦楽四重奏曲第2番 string quartet No.2 (1935) {2vln, vla, vc}
・ヴァイオリン・ソナタ sonata for violin and piano (1939) {vln, p}
・バッハの名による半音階技法の習作 chromatic study on the name of Bach (1940) {org}...12音技法をシェーンベルクに学んで作曲
・間奏曲 interlude (1942) {vla, p}
・フルートと弦楽四重奏のための五重奏曲 quintet for flute and string quartet (1942) {fl, 2vln, vla, vc}
・パルティータ partita (1944) {vln, vla, org}
・ソナティナ sonatina (1945) {vln, hpcd}
・喜遊曲 divertimento (1946) {fl, ob, cl, bssn, 2vln, vla, vc, b}
・弦楽四重奏曲第3番 string quartet No.3 (1947) {2vln, vla, vc}
・弦楽二重奏曲 duo for viola and cello (1949) {vla, vc}
・ピアノ五重奏曲 piano quintet (1949) {2vln, vla, vc, p}
・弦楽四重奏曲第4番 string quartet No.4 (1951) {2vln, vla, vc}
・吹奏五重奏曲 quintet for wind instruments (1956) {fl, ob, cl, bssn, hrn}
・弦楽四重奏曲第5番 string quartet No.5 (1962) {2vln, vla, vc}
・ピアノ四重奏曲 piano quartet (1964) {vln, vla, vc, p}
・弦楽六重奏曲 string sextet (1964) {2vln, 2vla, 2vc?}
・ピアノ三重奏曲第2番 piano trio No.2 (1966) {vln, vc, p}
・贈り物 souvenir (1967) {fl, vla, hrp}
・幻想曲 fantasia (1970) {vln, p (orch)}
・チェロとピアノのための二重奏曲 duo for cello and piano (1972) {vc, p}
・3つの対位法 three counterpoints (1973) {vln, vla, vc}
・変奏曲集 variations (-) {vc, p}
・二重奏曲 duo for cello and piano (-) {vc, p}
・吹奏六重奏曲 sextet for wind instruments (-)
・フーガ fugue...sur un sujet de Fenaroli (-) {2vln, vla, vc} ...
未出版,年月記載無し
ピアノ曲 ・ピアノ・ソナタ sonata for piano (1926) ...未出版(破棄?)
・小協奏曲 concertino (1937) {2p}
・パッサカリア passacaglia (1943)
・即興曲 improvisation (1945)
・「ハッピー・バースデイ」による変奏曲 variation on Happy Birthday (1970) ...
未出版
合唱曲 ・謝肉祭の歌 carnival song (1938) {tnr, 2btn, brass} ...L.de Medici原詩
・行進曲 march (1940)
・ダヴィデの詩篇と祈り psalm and prayer of David (1958) {sop, alto, tnr, bass, fl, cl, bssn, vln, vla, vc, b}
・詩篇 o sing unto the lord a new Song: psaume XCVI (-)
・詩篇 bow down thine ear, o lord psaume XXCVI (-)


ピストンを聴く


★★★★
"The Incredible Walter Piston :
The Incredible Flutist / Fantasy for English Horn, Harp and Strings / Suite for Orchestra / Concerto for String Quartet, Wind Instruments and Percussion / Psalm and Prayer of David" (Delos: DE 3126)

Gerard Schwarz (conductor) Seattle Symphony & Choir : Julliard String Quartet
日本でこそ知名度の低いピストンですが,海の向こうのアメリカでは,音楽を志す者は皆お世話になる高名なテキストの著者として,高い評価を得ている作曲家です。以下に続く3枚はシアトル交響楽団で活躍中のジェラルド・シュワルツが残したピストンの管弦楽作品の連続録音シリーズで,決定版と言っても良い演奏です。この『不思議な笛吹き』は,元々ハンス・ウィーナー(Hans Wiener)という人に委託されバレエ音楽として作曲されたものですが,翌々年にはこの組曲版に編曲され,フリッツ・ライナー指揮のピッツバーグ交響楽団によって初演されています。ピストンとしては親しみやすい作品でしょうが,聴きものはむしろカップリングの『幻想曲』。後年の彼の特徴である近代的な書法を駆使して,妖しく静謐な美を奏でるこの作品は,オーボエのための作品としては20世紀に遺された作品の中でもトップ・クラスの秀作といえましょう。

★★★☆
"Symphony No.2 / Symphony No. 6 / Sinfonietta" (Delos: DE 3074)
Gerard Schwarz (conductor) Seattle Symphony : New York Chamber Symphony
ここに収められた2つの交響曲は,既に『不思議な笛吹き』で高い評価を得たピストンの名声が確立されたころのもの。『交響曲第2番』は,1944年度の全米批評家賞を受賞し,アメリカにおける彼の評価を確立した,記念すべき作品となりました。こののちピストンは『交響曲第3番』と『第7番』で,2度にわたってピューリッツアー賞を受賞するなど,その名声はいよいよ不動のものとなっていきます。演奏するは,ピストンの最も良き紹介者として,積極的な録音に奔走したジェラルド・シュワルツとシアトル響。彼らは,ピストンと同じく新古典主義を堅持して,いわば金閣銀閣的な関係にあった作曲家ハワード・ハンソンの交響曲全集も完成するなど,アメリカのオケの中では最も母国の遺産に優しいコンビ。通常,マイナー作家に優しい楽団の性能もまずまず高水準をキープしており,有り難い限りです。本盤,彼らが残した三部作のなかでは演奏内容はあまり上出来とはいえないものと思われますが,それでも現時点で彼の交響曲をまとめて入手できる,希少な音源であることには些かも変わりありません。

★★★★☆
"Symphony No.4 / Capriccio for Harp and String Orchestra / Serenata for Orchestra / Three New England Sketches" (Delos: DE 3106)
Gerard Schwarz (conductor) Theresa Elder Wunrow (hrp) Seattle Symphony : New York Chamber Symphony
ミネソタ大学の開学100周年記念祝典のために委託された交響曲第4番を含むこの盤は,ピストンの入門編として一枚を・・と言われるたびに,小生が必ず挙げる作品です。新古典主義に根ざした重厚な様式美,アメリカものらしいメジャー中心の明るい色調,変拍子を駆使した躍動的なリズムが遺憾なく全編に横溢した『交響曲第4番』は,まさしくピストンの真骨頂。ストラヴィンスキーやミヨーなど,海を渡ったフランス人から最も良いものを吸収したその音楽は,聴き易くありながら,皮相的な響きは微塵もない,大変優れた作品。演奏内容に関しても,この盤はシュワルツとシアトル響の三部作の中でも群を抜く秀演で,ピストンの魅力を余すところなく堪能できます。{※その後,本盤だけがナクソス化されました!(・・・まさかこのページを参考にしてくださいました?)これからは1000円で聴けます。ともかく,ナクソス万歳!}

★★★★
"The Louisville Orchestra First Edition Series :
Symphony No. 5 / Symphony No. 7 / Symphony No. 8" (Albany: AR 011)

Robert Whitney, Jorge Mester (conductor) The Louisville Orchestra
ルイヴィル交響楽団は1948年に設立されたオーケストラ。当時ルイヴィル市長だったチャールス・ファーンズリー(Charles Farnsley)が大のクラシック好きで創設にも深く携わったという経緯からして,元々かなりシュミに走ったオケということができますが,設立後まもなくから,当時存命の作曲家ばかりに作品を委託しては片っ端から録音し,続々と音源化して商売にするという,その名も「ファースト・エディション(初版)シリーズ」で,一躍知る人ぞ知る楽団となりました。まだオーケストラが録音を商売にするというのが珍しい時代に,これは画期的な事でした。お蔭でピストンの交響曲が3つまでも,このCD一枚でフォローできる事になったのですから,感謝しなくてはなりますまい。やや知名度の低いオケとは言え,演奏は意外なほどしっかりとしており,安心して聴く事が出来ます。

★★★★☆
"Naxos American Classics :
Violin Concerto No. 1 / Violin Concerto No. 2 / Fantasia for Violin and Orchestra" (Naxos : 8.559003)

James Buswell (vln) Theodore Kuchar (conductor) National Symphony Orchestra of Ukraine
ひと昔前なら,廉価の帝王華僑の星ナクソスのCDを推薦盤に挙げようものなら失笑を買ったものですが,ここ数年ナクソスが採用する演奏陣のレベルは飛躍的に高くなり,人選も実に巧くなりました。協奏曲ものでは代表作といえるヴァイオリンのための2作品を収録したこの盤は,進境著しい昨今のナクソスの飛躍ぶりを端的にあらわす秀逸盤です。アメリカのヴァイオリン弾きバスウェルは恥ずかしながら初めて聴きましたが技巧的にも確かですし,何よりウクライナ国立交響楽団が拾いもの。この楽団は先にカリンニコフの交響曲集を録音し,この知られざる作家を一躍有名人にすると同時に,自らもモスクワ響並みの知名度を獲得したばかり。ここでの演奏も,下手なマルコお抱え楽団より遙かに高性能の演奏を披露します。廉価版にこれだけの演奏をされては,通常価格盤は到底太刀打ちできますまい。

★★★★
"Naxos American Classics - Chamber Music :
Quintet for Flute and String Quartet / String Sextet / Piano Quartet / Piano Quintet" (Naxos: 8.559071)

James Buswell, Michele Walsh, Dimity Hall, Anthony Gault (vln) Theodore Kuchar, Randolph Kelly (vla) Judith Glyde, Carol Ou (vc) Michael Gurt, Ian Munro (p) Olga Shylayeva (fl)
「アメリカのクラシック音楽シリーズ」を銘打ってピストンの連続録音を進めているナクソスから,室内楽作品を集めたCDが出ました。ピストンの室内楽といえば,下にも紹介するポートランド弦楽四重奏団による連続録音が一足早く世に出ましたが,もともとレーベルがマイナーなこともあって入手困難。それだけに,どこでも買えるナクソスから室内楽の録音が出たというのは,それだけで嬉しいニュースです。ここに収められたものは後年の作品が中心で,無調的傾向顕著。初めて聴く方は,「ピストンて誰?という方に」と帯に書いたナクソスの謳い文句には乗らない方が無難でしょう。しかし,どうもピストン好きと思しきバスウェル以下が披露する演奏は,やはりというべきか,熱の籠もった秀演。ピストンがお好きな方であれば溜飲を下げていただけるのではないでしょうか。

★★★★
"Sonata pour Piano / Quintet for Pianoforte and String Quartet / Improvisation / Passacaglia" (Northeastern: NR 232 CD)
Leonard Hokanson (p) The Portland String Quartet
ピストンには5つの弦楽四重奏曲と,フルートとピアノとをそれぞれ加えた五重奏曲が2つありますが,それらを全て録音しているのがこのポートランド弦楽四重奏団です。この四重奏団,日本では余り知名度はないかも知れませんけれど,ピストンとは因縁浅からぬ仲。作曲者は晩年,このポートランド弦楽四重奏団を自らの作品の最も良き解題者と考えていたらしく,実際遺作となった『弦楽四重奏,ハープとパーカッションのための協奏曲』も,このポートランド四重奏団のために書かれたものでした。小生は貧乏人なので,彼らの録音で手元に持っているのはこの盤だけですが,それでも,躍動的でファナティックな音場を熱っぽく謳い上げたこの盤の出来には瞠目するところ大です。