Rの作曲家



アンリエット・ルニエ Henriette Renié (1875-1956)

フランスの女流ハープ奏者,教育者,作曲家。1875年9月18日パリ生まれ。パリ音楽院へ進学。8才でアルフォンス・アッセルマンに師事し,11才で一等を得て卒業。翌年にはパリ音楽院和声法及び作曲法科への進学を許され,テオドール・デュボワに師事した。彼女は,ドビュッシー『神聖な舞曲と世俗的な舞曲』の初演者であり,彼を初めとする近代の作曲家の作品を多数ハープ用に編曲する傍ら,近代ハープ奏法の開拓者として,ハープのための作品を作曲。1912年には世界で初めてハープ奏者のための国際コンクール『ルニエ賞』を主宰。さらに私財を投じて芸術家育成基金(Petite Caisse des artistes)を創設するなど,近代ハープの普及・啓蒙活動に大きな足跡を残す。後進の育成にも熱心で,弟子にはカルロス・サルツェードやマルセル・グランジャーニ,スーザン・マクドナルドなどが名を連ねている。1956年3月1日パリにて死去。


主要作品

協奏曲 ・ハープ協奏曲ハ短調 concerto pour harpe et orchestre (1901) {hrp, orch}
室内楽 ・ハープ三重奏曲 trio (-) {hrp, vln, vc}
・ハープ六重奏曲 sextuor (-) {hrp, 2vln, 2vla, vc?}
ハープ曲 ・瞑想 contemplation (1898)
・伝説 légende (1901)
・子鬼たちの踊り danse des lutins (1911)
・交響的小品 pièce symphonique (1913)
・幻想的バラード ballade fantastique (1913)
・シャルランヌの松 les pins de Charlannes (-) {2hrp}
・アルバムの頁 feuillets d'album (-)
・バラード第2番 2'e ballade (-)
・6つの小品 six pièces (-)
・6つの易しい小品 six pièces brèves (-)
・祖母の昔語り grand'mère raconte une histoire (-)
・素描 esquisses (-) {hrp}
・ハープの演奏法第一集 méthode de harpe (-)
・ハープの演奏法第二集 méthode de harpe (-)
・完璧な弾き方 complete method (-)
・本の端に au bord du ruisseau (-)

 
ルニエを聴く


★★★★
"Légende / Danse des Lutins / Contemplation / Pièce Symphonique / Trio / Ballade Fantastique" (Harmonia Mundi : HMN 911692)
Xavier de Maistre (hrp) Ingolf Turban (vln) Wen-Sinn Yang (vc)
フランス人として初めてウィーン・フィルのハーピストに抜擢されたクサビエ・ドゥ・メストルは1973年ツーロン生まれ。1998年にアメリカ国際ハープ・コンテストで優勝した新鋭です。輝かしい肩書きに涼しげな風貌,これでドビュッシーやラヴェルなどの大物をやれば簡単に有名人になるところ,敢えて取り組んだのは超マイナーなアンリエット・ルニエの作品集。この硬派な音楽態度。素晴らしいじゃないですか。近代の女性作曲家といえば何と言っても,24才で世を去る薄幸の生涯を送り,しかもローマ大賞を獲るほど才能もあったブーランジェの知名度が突出しています。しかし,1893年生まれのブーランジェに対し,1875年生まれのルニエは一層女性差別の矢面に立ち,道を切り開くことを運命づけられた人物だったといえましょう。本業はハーピストで,実際ハープ奏者としては11才でパリ音楽院一等になるほどの腕前だった彼女。しかし,同時に作曲にも関心を示し,13才で史上最も早い時期のパリ音楽院の和声法科および作曲法科の聴講を許された女性となりました。メストルの柔らかく均整のとれた指が紡ぎ出す作風は師匠アッセルマンの顕著な影響を感じさせる後期ロマン派と印象派の折衷様式。それだけに圧巻は年代の進んだ後年の作品。トゥルニエあたりの影響でしょうか,全音階丸出しの装飾音などに限りない印象派への恋慕の情が溢れます。ハープも高度な共感を見せているだけに,ピッチの悪いヴァイオリンがミソをつけたのは残念。音色の良さで敢えてピッチに目をつぶったと言うことなんでしょうかねえ(笑)。勿体ないです。

( 2001. 10. 16 )