Rの作曲家



ヴィットリオ・リエティ Vittorio Rieti (1898-1994)

1898年1月28日,エジプトのアレクサンドリアに生まれる。16才のときミラン(Milan)へ移住し,ブゾーニ大学へ入学。1917年にトルコの地域経済に関する研究で博士号を得たが,間もなく作曲家への転向を決意。1925年にバレエ『バラバウ(Barabau)』の音楽を手がけたのを皮切りに,作曲の道へと進んだ。彼は自ら「世界市民」を標榜する旅行好きで,各国を歴訪。1917年にイタリアへ渡ってレスピーギ,カゼッラに師事するとともに,ウィーンでシェーンベルク,ベルク,ウェーベルンと,ロンドンでランバート,ウォルトンらと交流。フランスとの関わりも深く,1925年にパリへ移住。特にストラヴィンスキーや六人組とは深い親交を持ち,彼らの影響のもと堅牢な新古典主義に根ざした作風を得意とし,ディアギレフへも作品を提供した。1939年,戦禍を避けてニューヨークへと移住し,1944年に帰化。その後は主に教育者として活動。1948年にはナディア・ブーランジェの後を受けてクイーンズ・カレッジ及びシカゴ音楽大学で教鞭を執った。1994年ニューヨークにて没。


主要作品

舞台作品 ・バラバウ barabau (1925)
・夢遊病の女(夜の影) la sonnambla (1941)
管弦楽曲 ・交響曲第三番 『シンフォニエッタ』 symphony No.3 'sinfonietta' (1932)
・組曲『泉』 suite 'la fontaine' (1942)
・交響曲第四番 『三部の交響曲』 symphony No.4 'sinfonia tripartita' (1944)
協奏曲 ・セレナータ serenata per violino concertante e piccola orchestra (1931) <vln, small-orch>
・チェロ協奏曲第二番 cello concerto No.2 (1953) <vc, orch>
・ハープシコード協奏曲 concerto per clavicembalo e orchestra (1952-1955) <hpcd, orch>
・ピアノ協奏曲第三番 piano conceto No.3 (1955) <p, orch>
室内楽 ・弦楽四重奏曲第一番ヘ長調 string quartet No.1 (1920) <2vln, vla, vc>
・マドリガル madrigal en quatre parties (1927) <fl, ob, cl, bssn, hrn, tp, p, 2vln, vla, vc, b>
・狂想曲 capriccio (1941) <vln, p>
・パルティータ partita (1945) <2vln, vla, vc, fl, ob, p, hpcd>
・弦楽四重奏曲第三番 string quartet No.3 (1951) <2vln, vla, vc>
・木管五重奏曲 woodwind quintet (1957) <fl, ob, cl, bssn, hrn>
・弦楽四重奏曲第四番 string quartet No.4 (1960) <2vln, vla, vc>
・コンチェルティーノ concertino for 5 instruments (1963) <fl, vla, vc, hrp, hpcd>
・5声のソナタ sonata à 5 (1966) <fl, ob, cl, bssn, p>
・パストラールとフゲッタ pastorale e fughetta (1966) <fl, vla, p>
・版画 incisioni (1967) <5winds>
・木版彫刻 silografie (1967) <fl, ob, cl, hrn, bssn>
・双生児のための六重奏曲 sestetto pro gemini (1975) <vln, vla, vc, fl, ob, p>
ピアノ曲 ・6つの小品 6 pezzi brevi (1932)
・二番街のワルツ Second Avenue waltz (1942) <2p>
・田園組曲 suite champêtre (1948) <2p>
・中世風の変奏曲 medieval variations (1962)
・コラール,変奏と終曲 chorale, variazioni e finale (1969) <2p>
歌曲 ・5つのエリザベス朝の歌 five Elizabethan songs
・4つのロレンスの歌 four D. H. Lawrence songs
・マックス・ジャコブの4つの詩 quatre poèmes de Max Jacob
・4つのイタリアの歌 quattro lyriche Italiane
・2つのワルツの間奏歌 two songs between two waltzes

 
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★★★★
"Chamber Works : Serenata per Violino Concertante e Piccola Orchestra / Concerto per Clavicembalo e Orchestra / Partita per Flauto, Oboe, Quartetto di Corde e Clavicembalo" (CRI : CD 601)
Samuel Baron (cond, fl) Melvin Strauss (cond) Janet Parker (vln) Sylvia Marlowe (hpcd) Ronald Roseman (ob) Charles Libove, Anahid Ajemian (vln) Harry Zaratzian (vla) Charles McCraken (vc) Longy Artists Ensemble

リエティは(最新版ではどうなってるか知りませんが)三省堂の作曲家辞典にも「イタリア出身」と書かれているくらい知名度薄(ほんとはエジプト出身です)。しかも作曲を志したのは20才を過ぎてからと,いわゆる音楽エリートとはまさしく対極にあった人です。しかし,思い立ったら国境を越えてどんどん出掛けていく持ち前のバイタリティと図々しさ(笑)で,ついにはディアギレフまで巻き込んで自分の世界の一部にしてしまった。そんな破天荒かつハチャメチャな生きざまが示すとおり,この人の作品は愉しい!とにかく愉しいです。作風はバロック音楽に立脚した擬古典様式ですが,全然堅苦しくない!しかめつらしいバロック風の音楽が,彼の手に掛かると大変身。「ずんたっ,ずんたっ」という躍動感溢れるリズムに乗って,近代的な和声と多調でコラージュされたそれは,ダンシングベイビーみたいにコミカルです。明らかにこれは六人組やストラヴィンスキーの影響でしょうねえ。演奏陣はタングルウッド音楽センターの監督を中心とするアメリカ勢。後年彼がたどり着いた自由の国で,そのお調子者的才能がこうして水を得たのでしょう。こういう音楽も馬鹿にしないでちゃんと評価する,アメリカの懐の深さの一端をかいま見せるCDです。演奏はやや垢抜けしませんが,却って原曲の持つコミカルさが増幅されいい感じです。

(2002. 11. 17)