Rの作曲家



エドムンド・ラッブラ Edmund Rubbra (1901-1986)

イギリスの作曲家。1901年5月23日ノーザンプトン生まれ。8才でピアノを学ぶ。1915年,14才でいったんは鉄道員となるも,シリル・スコットを知って傾倒。1920年にリーディング大学の奨学金を得,私的に師事した。1921年には王立音楽学校へ進学し,グスタフ・ホルストに作曲法,R.O.モリスに対位法を師事。大戦による従軍(1941年)を挟んで,1947年オックスフォード大学の講師に就任。亡くなるまで20年間にわたり教鞭を執ったほか,1961年から1974年までギルドホール音大で作曲法の教授も務めた。作風は,ヴォーン・ウィリアムスらに代表される中庸・穏健な近代イギリス音楽の系譜を基調とするが,構成力はより高く,ラッブラ自身もローマ・カソリック教会の音楽審問官を務めるほど深く教会音楽に傾倒したことから,旋法を用いた書法に特徴がある。このため,宗教音楽・合唱曲は特に優れる。1986年2月14日バッキンガンプシャーにて死去。アメリカの音楽史家ラルフ・スコット・グローヴァー氏の『ラッブラの音楽』(1993年)によって,海外では徐々に再評価されつつある。(関連サイト:Edmund Rubbra ラッブラ協会運営,英語)


主要作品

付帯音楽 ・探索者 the searcher, op. 27 (-)... Velona Pilcherの戦争劇のために
管弦楽曲 ・交響曲第1番 symphony No. 1, op. 44 (1935-1937)
・交響曲第4番 symphony No. 4, op. 53 (1940-1942)
・献辞 a tribute, op. 56 (1942)
・交響曲第10番 chamber symphony: symphony No.10, op. 145 (1975)
・交響曲第11番 symphony No.11, op. 153 (1980)
・ファーナビーの聖なる小品による即興曲 improvisations on virginal pieces by Giles Farnaby, op. 50 (-)
・交響曲第2番 symphony No. 2, op. 45 (-)
・交響曲第3番 symphony No. 3, op. 49 (-)
・交響曲第5番 symphony No. 5, op. 63 (-)
・交響曲第6番 symphony No. 6, op. 80 (-)
・交響曲第7番 symphony No. 7, op. 88 (-)
・交響曲第8番 symphony No. 8, op. 132 (-)
・ sinfonia sacra: symphony No. 9, op. 140 (-) {vos, choir, orch}
・祝典序曲 festival overture, op. 62 (-)
・ overture resurgam, op. 149 (-)
協奏曲 ・協奏的交響曲 sinfonia concertante, op. 38 (1934-1936) {p, orch}
・ソリロクイ soliloquy for solo cello and small orchestra, op. 57 (-) {vc, small-orch}
・ヴィオラ協奏曲イ調 concerto in A, op. 75(-) {vla, orch}
・ピアノ協奏曲ト調 concerto in G, op. 85 (-) {p, orch}
・即興曲 improvisations, op. 89 (-) {vln, orch}
・ヴァイオリン協奏曲 concerto for violin and orchestra, op. 103 (-) {vln, orch}
吹奏楽 ・欧州のファンファーレ fanfare for Europe, op. 142 (-) {6tp}
・吹奏楽のためのカンツォーネ canzona for brass: in honour of St. Cecilia, op. 158 (-) {brass}
・輝ける川による変奏曲 variations on the shining river, op. 101 (-) {brass}
室内楽曲 ・幻想曲 phantasy, op. 16 (1927) {2vln, p}
・深い川 fukagawa (1929) {hrp}
・チェロ・ソナタ cello sonata in G Minor , op. 60 (1946) {vc, p}
・組曲『仏陀』 suite 'The Buddha', op. 64 (1947) {fl, ob, vln, vla, vc}
・ヨアヒムの主題による瞑想曲 meditazioni sopra 'coeurs désolés', op. 67 (1949) {ob, p}
・ピアノ三重奏曲第1番 piano trio No. 1 in one movement, op. 68 (1950) {vln, vc, p}
・ペッツォ・オスティナート pezzo ostinato (1958) {hrp}
・オーボエ・ソナタ sonata for oboe in C, op. 100 (1958) {ob, p}
・ピアノ三重奏曲第2番 piano trio No. 2, op. 138 (196-) {vln, vc, p}
・即興曲 improvisation (1964) {vc}
・ディスコース discourse, op. 127 (1969) {hrp, vc}
・変化 transformation (1972) {hrp}
・イングリッシュ・ホルンとピアノのための二重奏曲 duo for cor Anglais and piano, op. 156 (1980) {e-hrn, p}
・ヴァイオリン・ソナタ第1番 sonata No. 1, op. 11 (-) {vln, p}
・叙情的な楽章 lyric movement, op. 24 (-) {2vln, vla, vc, p}
・4つの易しい小品 four easy pieces, op. 29 (-) {vln, p}
・弦楽四重奏曲第1番 string quartet No. 1 in F Minor, op. 35 (-) {2vln, vla, vc}
・アリアと変奏 air and variations, op. 70 (-) {4rcder (4pipes)}
・弦楽四重奏曲第2番 string quartet No. 2 in E Flat, op. 73 (-) {2vln, vla, vc}
・ノットゥルノ notturno, op. 106 (-) {4rcder /piccolo, fl, ob, cl}
・ギョーム・ド・マショーの主題によるファンタジア fantasia on a theme of Machaut, op. 86 (-) {4rcder, 2vln, vla, vc, hpcd}
・弦楽四重奏曲第3番 string quartet No. 3, op. 112 (-) {2vln, vla, vc}
・初めての練習用小品 first study pieces, op. 118 (-) {rcder, p}
・ソナティナ sonatina, op. 128 (-) {rcd, hpcd}
・ヴァイオリン・ソナタ第3番 sonata No. 3, op. 133 (-) {vln, p}
・難易度の異なる小品 graded pieces, op. 144 (-) {vln, p} ...
ギルドホール音大の試験曲
・弦楽四重奏曲第4番 string quartet No. 4, op. 150 (-) {2vln, vla, vc}
・1つのコードによるファンタジア fantasia on a chord, op. 154 (-) {rcder, hpcd}
器楽曲 ・前奏曲とフーガ prelude and fugue, op. 69 (-) {p}... スコット「ピアノ・ソナタ第1番」の主題を用いて作曲
・9つの教則用小品 nine teaching pieces, op. 74 (-)...
子どもの情操教育を意図して作曲した?
 1) question and answer
 2) pipe tune
 3) hurdy gurdy
 4) slow dance
 5) catch me if you can
 6) peasant dance
 7) cradle song
 8) the donkey
 9) the shining river

・序奏,アリアとフーガ introduction, aria and fugue, op. 104 (-) {fl, hpcd (p)}
・8つの習作 eight studies, op. 131 (-) {p}
・様々な編成のための習作 various studies, op. 139 (-)
・ハイドンの名によるインヴェンション invention on the name of Haydn, op. 160 (-)
合唱・歌曲
(工事中)
・ロザ・ムンディ rosa mundi (1921) {sop, hrp}
・ドルミ・イェズ dormi Jesu (1922) {choir}
・神秘 the mystery (1922) {sop}
・ジェスキン Jesukin (1922) {sop, hrp}
・ orpheus with his lute (1923) {sop, hrp}
・聖母の揺り籠 the virgin's Cradle Hymn (1924) {choir}
・乙女への讃歌 a hymn to the virgin (1925) {sop, hrp}
・4つの中世ラテンの詩 four mediaeval latin lyrics (? -1934) {btn, orch}
・5つのモテット five motets (1934) {choir}
・ magnificat and nunc dimittis (1947?) {choir}
・聖ドミニクを讃えるミサ missa in Honorem Sancti Dominici (1948) {choir}
・魂の歌 song of the soul (1952-1953) {choir, orch}
・フェスティバル・グローリア festival gloria (1957) {choir, sop, btn}
・真福八端 the beatitudes (1960?) {choir}
・シオンを讃えよ lauda Sion (1960) {choir}
・ジェイド・マウンテンズ jade mountains (1962) {sop, hrp}
・インスケイプ inscape (1964) {mix-choir, strings, hrp}
・魂の創造者 veni, creator spiritus (1965-1966) {2choir, brass}
・アドヴェント・カンタータ advent cantata: natum Maria virgine (1968-) {btn, choir, orch}
・アヴィラの聖テレサ顕彰のミサ mass in honour of St.Teresa of Avila (1981) {choir}
・詩編第122番 psalm 122 (1984) {choir}
・世俗声楽形式のミサ missa cantuariesis (-) {choir}
・4つのカロル four carols (-) {choir}
・5つのマドリガル five madrigals (-) {choir}
・2つのマドリガル two madrigals (-) {choir}
典拠 Grover, R.S. 1993. The music of Edmund Rubbra. UK: Scolar Press.
(※作品の多くに作曲年がないのは,原著の目録が作品番号のみだからです・・)


ラッブラを聴く


★★★★☆
"Symphony No.1 / A Tribute / Sinfonia Concertante" (Chandos : CHAN 9538)
Richard Hickox (cond) Howard Shelley (p) BBC National Orchestra of Wales
ラッブラの緻密な構成力と控えめながら精妙な和声感覚を味わうのに,目下最も好個のCDはこれです。「協奏的交響曲」は,彼にとって初めて出版された大編成作品。明瞭なリズムと強力な推進力を有する「サルタレラ」が聴きものです。また「献辞」は,ヴォーン=ウィリアムスの70歳の誕生日を祝し,3人の作曲家に嘱託された三部作のひとつ。ちなみにあとの2つはコンスタン・ランバートの「オーバード」とパトリック・ハドリーの「或る春の朝に」の2つで,前者はハイペリオンから,後者もシャンドスから復刻されました。ヒコックスはロンドン交響楽団とも数多い共演歴がある英国圏随一の指揮者の一人。しかし,何故か彼の名演奏はいつもロンドン市立とか,国立ウェールズ管など,ちょっぴり辺境の方に集中。なぜなんでしょう?この盤などはまさにそれ。ヒコックスの面目躍如たる秀演です。

★★★★
"Symphony No. 4 / Symphony No.10 / Symphony No.11" (Chandos : CHAN 9401)
Richard Hickox (cond) BBC National Orchestra of Wales
イギリスの作曲家の中でも,ラッブラはいまだ殆ど省みられることはなく,最も過小評価の極みにある作曲家の一人です。イギリス近代の知られざる作曲家の発掘紹介に奔走するシャンドスと,指揮者リチャード・ヒコックスとによってなされたこの連続録音が,おそらく彼に本格的なスポット・ライトを当てた最初の企画ではないでしょうか。実際,このCDにおいても,「交響曲第11番」が世界初録音となっております。とはいえ,ホルストやシベリウスあたりの影響を感じさせつつ。民謡を思わせる旋律を巧みに織り交ぜる穏健な作風に変わりはありません。印象主義的な聴き方からすると,和声的に慎み深い彼はやや物足りないかも知れません。しかし,イギリスものとしては珍しいほど構築的で品位があり,しかも叙情的な彼の作品,ぜひ一度は耳にしていただきたいものです。

★★★★
"The Secred Muse :
Magnificat and Nunc Dimittis in A flat / Tenebrae First Nocturn / Tenebrae Second Nocturn / Tenebrae Third Nocturn / Salutation / Missa in Honorem Sancti Dominici / Festival Gloria" (Gloriæ Dei Cantores : GDCD 024)

Elizabeth C. Patterson (cond) James E. Jordan, Jr.(org) Gloriæ Dei Cantores
グロリアエ・デイ・カントールは,マサチューセッツ州ケープ・ゴッドに本拠を置く合唱団。人種を超えた宗教的慈愛と平和の普及を目途として活動中のようです。通常は聖歌集などの寄せ集めを録音しているようですが,これは大変に珍しい発掘もの。合唱団がレーベルを運営するだけあって,中央で活動してもおかしくない高水準の実力です。ラッブラは意外に宗教音楽との関わりの深い作曲家で,ローマ・カソリック教会の音楽審問官に任命されたこともあり,合唱曲は生涯にわたって作曲しています。それだけに,この合唱曲は彼のいわば本質を鮮やかに切り取った企画でもあり,事実その内容は,重厚な宗教的様式美と品格に溢れた,まさしく名品と申せましょう。

★★★★
"Song of the Soul / Four Mediaeval Latin Lyrics / Inscape / Veni, Creator Spiritus / Advent Cantata" (Chandos : CHAN 9847)
Richard Hickox (cond) Stephen Varcoe (btn) Academy of St. Martin in the Fields Chorus / City of London Sinfonia
ラッブラは,今世紀イギリスを代表する宗教音楽の権威でしたが,彼の作品が評価されるようになったのはごく最近のことで,1993年に出版された『ラッブラの音楽』がきっかけでした。おそらくは彼が教育者・研究者として高名であったため,音楽家と言うよりは象牙の塔にこもった専門家というイメージが先行していたからでしょう。もともと作曲家としても大変実力のある人なので当然といえば当然ですが,その後,再評価の気運は急速に高まりつつあるようです。その先鞭を付けたのがシャンドスによるヒコックスの管弦楽作品集。イギリス1の名門だけに,自国の才能の復活に使命感を覚えているのかも知れません。そのシャンドスから,今度は宗教作品集が登場。とうとう彼の本分,宝の山に手が入ってきたのは嬉しい限り。神秘的で荘厳,隠れた大家ラッブラの魅力がめくるめく溢れ出します。細かいアラはありますが,演奏もまずまず高水準。名匠ヒコックスらしい,伸びやかな叙情をたたえた指揮がわけても素晴らしい。

★★★★
"Five Motets / Four Carols / Missa á 3 / Lauda Sion / Five Madrigals / Two Madrigals / Mass in Honour of St. Teresa of Avila" (ASV : CD DCA 1093)
Judy Martin (dir) Voces Sacrae
ヴォーチェ・サクレという合唱団,まるで聞いたことがありませんがオックスフォード大学出版会の助成を受けてイギリス国内で活動中,指揮者のジュディ・マーティンはオルガンも嗜む方のようで,クイーンズ大学,オックスフォード大学合唱団のオルガニスト,指揮者として活動中のようです。彼の作品をご存じない方。聴きたいけれどグロリア・ディ・カントール盤なんて手に入らないという方。これを迷うことなくお求めなさい。名門合唱団に比べりゃ細かいアラだってありましょうが,それを補って余りあるラッブラの和声感覚の素晴らしさときたら!彼の宗教音楽,それも無伴奏の作品がいかに図抜けて素晴らしいか,この盤で充分分かろうというものです。ぜひ我が国でも,この機会にラッブラ再評価の機運を盛り立てましょう!・・・と言ってるのはあっしだけ?(涙)近代ファンの皆さん!一度で好いから,騙されたと思って聴いてみてくださいな。

★★★★
"Piano Trio in One Movement / Meditazioni Sopra / Phantasy / Sonata for Oboe and Piano / Suite 'The Buddha' / Piano Trio / Duo for Cor Anglais and Piano" (Dutton : CDLX 7106)
Endymion Ensemble
エンディミオン・アンサンブルは1979年結成と歴史は浅い楽団ですが,演奏は意外にも外連味がなく,かなり好いです。ただ,肝心のラッブラの作品が,近代ものとしては少々難あり。『イングリッシュ・ホルンとピアノのための二重奏』は,旋法的書法と近代的な和声感覚を持った作品ながら,少々大味ですし,『一楽章のピアノ三重奏曲』,『瞑想曲』はややブラームス臭が抜けず,古臭い。印象主義ファンとしてはやや物足りません。そんな中聴きものは『幻想曲』と『オーボエ・ソナタ』でしょうか。前者は初期作品で,まだ未熟なところもありますが,いずれも色彩的な和声感覚と重厚なロマン派の書法で巧みに書かれ,ラッブラの非凡な才能を遺憾なく発揮した小傑作と思います。

★★★★
"A Hymn to the Virgin / Rosa Mundi / Fukagawa / Pezzo Ostinato / The Mystery / Jesukin / Orpheus with his Lute / Transformations / The Jade Mountain / Improvisation / Discourse : Nocturne (Lennox Berkeley) : Prelude (Howells)" (ASV : CD DCA 1036)
Tracey Chadwell (sop) Danielle Perrett (hrp) Timothy Gill (vc)
日本画を模したと思しき,趣味の悪いジャケットが印象的な,ラッブラの珍しいハープ歌曲集。近代ハープの開発により,アルカイックな音色を持ちつつ凝った奏法も可能になったハープは,近代フランスの作曲家が頻繁に作品を書くようになって新しい響きを獲得しました。旋法好きのラッブラがこれに目を付けないはずはありません。フランスものよりは保守的で擬古典的ですが,後年のものを中心に,深い内省をたたえた充実の作品が並び,なかなかの聴きもの。日本民謡にも関心を向けた彼の意外な側面を示す『フカガワ』は,なんと『深い川』のことでした(笑)ところで,この盤で歌っているチャドウェル女史は元BBCシンガーズにも在籍された方。本ラッブラは,これからソロとしてキャリアを積み上げようとしていた矢先の録音でした。しかし,その夢はもはや叶いません。本録音から僅か10ヶ月後,彼女は急性白血病のため亡くなられました。ご冥福を。

★★★☆
"English Cello Sonatas :
'Sonata in G Minor' (Edmund Rubbra) / 'Sonata in A Minor' (E.J. Moeran) / 'Sonata in G Minor' (John Ireland)" (Marco Polo : 8.223718)

Raphael Wallfisch (cello) John York (p)
マルコ・ポーロはナクソスの通常価格版にあたるレーベルで,同じ系列の経営ですが,ドイツに本拠のあるマルコ・ポーロは勢い,演奏家のほとんどはドイツ系に。そのため,オケなら作曲家が誰であってもラインランド・プファルツ管やレニッシュ管などのドイツ系か,スロヴァキア,旧ソ連のオケを持ってきます。そのせいか通常価格盤でありながら廉価盤より演奏が酷い。困ったものです。しかし,それでもなお皆がこのレーベルに手を伸ばす理由。それはこのレーベルの見上げた発掘精神。ラッブラのこのチェロ作品も,このレーベルがなければまず日の目を見なかったでしょう。ラッブラとしてはあまり目立つ作品ではないものの,3人の無名作家が一度に愉しめる好企画です。

(Amendment of works list: started from 2005. 2. 5 US west standard time)