Sの作曲家



フランツ・シュレーカー Franz Schreker (1878-1934)

オーストリアの作曲家。5人兄弟の第2子として,1878年3月23日モナコに生まれる。世界各国に移り住んで生活する幼少時代を送り,1882年にベーム校でヨゼフ・ベーム(Josef Boehm)にピアノ,オルガン及び楽典を学ぶ。1892年ウィーン音楽院に入学し,1892年から1984年までエルネスト・バチュリッヒ(Ernest Bachrich)に,次いで1984年から1987年まで,アルノルト・ロゼ(Arnold Rosé)に,それぞれヴァイオリンを師事し,1897年から1900年までロベルト・フックスに作曲法を学んだ。まずオペラ作家として人気を博し,1906年からウィーン人民歌劇場の合唱指揮者,1912年にヴィーン音楽アカデミーで楽典および作曲法の講師に就任。さらに1920年にはベルリン音楽院(Berlin Musikochschule)の総長となり,ドイツへ移住。12年に渡ってその地位を務めた。しかし1930年代に入ると,徐々に人気は衰退する。さらにこの頃,ナチが台頭。ユダヤ人であった彼は,1932年,当時の首相フランツ・ヴォン・パペン(Franz von Papen)によって院長の座を追われ,翌年にはその作品の上演も禁じられた。1934年3月21日,失意の中,心臓発作のためベルリンで他界。残された妻子はアルゼンチンへ亡命した。ワーグナーを始めマックス・レーガーやヨハン・シュトラウスなどを範としつつも,近代フランスの和声法や編曲法を巧みに採り入れて,官能的な作風を展開。(関連ページ: フランツ・シュレーカー財団 独語)


主要作品

独語の訳が面倒くさくてまだです・・ちょっと待ってくだされ。
Hailey, C. 1993. Franz Schreker: a cultural biography. Cambridge Univ.Press.入手。時間出来次第作品表改訂。

オペラ/歌劇
付帯音楽
・炎 flammen (1898-1901/1902) {1act}...1901-1902年に管弦楽版へ編曲
・嬰児はお生まれになった der geburstag der infantin (1908)
・遙かな響き der ferme klang (1903-1910) {3act}
・おもちゃとお姫様 das spielwerk und die Prinzessin (1908/1909-1912) {2act}
・印づけられた者 die gezeichneten (1911/1913-1915) {3act}
・宝探し人 der schatzgraeber (1915-1918) {4act}
・玩具 das spielwerk (1915) {1act}
・ irrelohe (1919-1922) {3act}
・悪魔の歌 der singende Teufel (1924/1927-1928) {4act}
・ christophorus (1925-1927/1929) {2act}
・ staatsoper unter den linden (1928)
・ der schmied von gent (1929-1932) {3act}
・ das weib des intaphernes (1932-1933)
合唱曲 ・詩編 psalm 116 (1900) {choir, org, orch}
管弦楽曲 ・愛の歌 love song (1896) {hrp, orch}
・スケルツォ scherzo (1899)
・交響曲 symphonie (1899)
・詩編第116番 psalm 116 (1900) {org, orch}
・間奏曲 intermezzo (1900) {strings}
・ロマンティックな組曲 romantic suite (1902)
・幻想序曲 phantastische overture (1904)
・ヴァルス・ラント valse lente (1908) {5winds, hrp, celesta, perc, strings}
・室内交響曲 kammersinfonie (1917)
・エッケハルト序曲 ekkehard, overture (1920)
・絨毯織り die teppichweber (-)
・メムノン vorspiel zu einer grossen oper 'memnon' (1933)
・夜曲 nacht stück (-)
・ドラマへの前奏曲 vorspiel zu einem drama (1913)
室内楽・器楽 ・ヴァイオリン・ソナタ sonata for violin and piano (1898) {vln, p}
・風 der wind (1909) {vln, cl, vc, hrn, p}
ピアノ曲 ・歌 melodie (1895)
・アパッショナータ apassionata (1896)
・ヘ調のアダージョ adagio in F (-1900)
・2つの即興ワルツ zwei walzerimpromptus (1901)
歌曲 ・ die rosen und der flieder (1894)...Text: Otto Gruppe
・ des meeres und der liebe wellen (1894)...Text: Richard Weitbrecht
・ allegro - lied der Fiorina (1896)...Textdichter unbekannt
・ waldeinsamkeit (1897)...Text: Jens Peter Jacobsen
・ uberwunden (1897)...Text: Namenlos
・5つの歌 funf lieder aus den mutterliedern (1898-)...Text: Mia Holm
 1. O Glocken, bose Glocken
 2. Kennt Ihr den Sturm
 3. Heute Nacht, als ich so bange
 4. Ich hab' in Sorgen
 5. Durch die Fenster zitternd sacht

・2つの歌 zwei Lieder auf den tod eines kindes, op. 5 (1898-)...Text: Mia Holm
 1. O Glocken, bose Glocken
 2. Dass er ganz ein Engel werde

・3つの歌 drei lieder von Vincenz Zusner (1899)
 1. Ein Rosenblatt
 2. Noch dasselbe Keimen
 3. Vernichtet ist mein Lebensgluck

・ das hungernde Kind (-1900)...Text: aus "Des Knaben Wunderhorn"
・ auf die Nacht (-1900)...Text: Paul Heyse,管弦楽配置1922年
・ funf gedichte von Paul Heyse, Op. 3 (-1900)
 1. In alten Tagen
 2. Im Lenz
 3. Das Gluck
 4. Es kommen Blatter
 5. Umsonst

・5つの歌 funf lieder, Op. 4 (-1900)
 1. Fruhling (Text: Karl Freiherr von Lemayer)
 2. Unendliche Liebe (Text: Leo Tolstoy)
 3. Wohl fuhl ich wie das Leben rinnt (Text: Theodor Storm)
 4. Die Liebe als Recensentin (Text: Julius Sturm)
 5. Lenzzauber (Text: Ernst Scherenberg)

・8つの歌 acht lieder, Op. 7 (1900)
 1. Wiegenliedchen (Text: Julius Sturm)
 2. Zu spate Reue (Text: Julius Sturm)
 3. Traum (Text: Dora Leen)
 4. Spuk (Text: Dora Leen)
 5. Rosentod (Text: Dora Leen)
 6. Ach, noch so jung (Text: Ernst Scherenberg)
 7. Rosengruss (Text: Ernst Scherenberg)
 8. Lied des Harfenmadchens (Text: Theodor Storm)

・2つの歌 zwei lieder, Op. 2 (1901-)
 1. Sommerfaden (Text: Dora Leen)
 2. Stimmen des Tages (Text: Ferdinand von Saar)

・アヴェ・マリア ave maria (1902)
・アヴェ・マリア ave maria (1909)
・ entfuhrung (1909?)...Text: Stefan George
・ funf gesange (1909/1922) {vo, p (orch}} ...
管弦楽配置1922年
 1. Ich frag nach dir jedwede Morgensonne
 2. Dies aber kann mein Sehnen nimmer fassen (Text: Edith Ronsperger)
 3. Die Dunkelheit sinkt schwer wie Blei (Text: Edith Ronsperger)
 4. Sie sind so schon (Text: Edith Ronsperger)
 5. Eins gibt ein Tag (Text: Edith Ronsperger)

・ das feurige mannlein (1915)...Text: Alfons Petzold
・ und wie mag die Liebe (1919)...Text: Rainer Maria Rilke
・ zwei lyrische gesange (1923)...Text: Walt Whitman...
'vom ewigen leben'の名で1927年に管弦楽配置。
 1. Wurzeln und Halme
 2. Ein Kind sagte


シュレーカーを聴く


★★★★☆
"Kammersinfonie / Vorspiel zu Einem Drama / Valse Lente / Nachtstück" (Koch Schwann : CD 311 078 H1)
Michael Gielen, Karl Anton Rickenbacher (cond) Radio Symphonie-Orchester Berlin
小生は恥ずかしながらそれほどこの作曲家に入れあげたことがなく,あまりCDもないのですが,その中で唯一,印象主義ファンの心を捉えそうな小傑作が『印づけられた者』の前奏曲。マルコ・ポーロ盤のPrelude to 'Die Gezeichneten'(「印づけられた者」の前奏曲)はバレエ音楽から前奏曲だけを抜き出した抜粋もので,一方のVorspiel zu Einem Drama(ドラマへの前奏曲)は,作者自身による改訂再編曲版。こちらには「印づけられた者の前奏曲」の後ろに,長い断章が付帯されており,内容的には別個のアレンジです。他にも,この盤には,これも印象主義の編曲法が用いられた『ヴァルス・ラント』の世界初録音を始め,彼の近代作家の側面に大きく脚光が当たった選曲が施されている。幸運なことに演奏陣も豪華。隠れた名匠ギーレンとベルリン放送交響楽団の演奏は,申すまでもなく安定感抜群。『ドラマへの前奏曲』はややテンポ速めですが,仕上がりも良いです。彼が再評価されるきっかけとなったCDじゃないでしょうか。まず一枚という方は,これを。

★★★☆
"Symphonie a-moll / Das Weib des Intaphernes / Psalm 116" (Capriccio : 10 850)
Peter Gülke (dir) Gert Westphal (spk) Peter Dicke (org) Kölner Rundfunkchor : Kölner Rundfunkorchester
今でこそ顧みられる事のない哀れな作家シュレーカーですが,ナチスが台頭する1930年代までは人気を博した作曲家の一人。なぜ,彼は知られざる存在となってしまったのでしょうか?シュトラウスを継承しながらも,印象主義を始めとする新しい音楽を大胆に取りいれ,彼はドイツ音楽に新しい風を吹きこみました。しかし,時代が第二次大戦へと向かい,ドイツを掌握したヒトラーが始めた2つの政策,すなわち進歩的な芸術の迫害(ヒトラーは前衛芸術を嫌い,「頽廃芸術」と呼び迫害したのです)とユダヤ人追放運動。不幸なことに,シュレーカーはその両方に当てはまってしまったのでした。もし彼が,ヒトラーによって不当な迫害を受けなかったら,不遇に陥ったまま程なく亡くなってしまわなければ。ドイツ〜ウィーン近現代音楽は全く違った発展を見る事になったでしょうに・・。上記盤に比してこちらはブラームスの嫡流とも言うべき,彼のドイツ的な傾向を示す初期の保守的な作品集。仏近代の凝った和声を求める向きにはちょっとという感じなのですが,演奏に関しては素晴らしい。ドイツ・ロマン派がお好みの方であれば,充分満足行く演奏。安心してどうぞ。

★★★
"Ekkehard Overture / Fantastic Overture / Interlude from 'Der Schatzgräber' / Prelude to 'Die Gezeichneten' / Prelude to 'Das Spielwerk' " (Marco Polo: 8.220392)
Edgar Seipenbusch (cond) Slovac Philharmonic Orchestra
シュレーカーの作品中でも特に印象主義的傾向が顕著で,見ようによってはドイツ,フランス音楽の巨大な潮流を堂々自分の中で合体させた意欲作とも言える『印づけられた者』の前奏曲を収録したCDです。この曲は,頽廃音楽系の佐曲家の残した作品の中でも,特にフランス寄りのカラフルな和声感が美しい佳品。同曲を含め,彼の歌劇やオペラ作品の抜粋曲を収録したこのCDは,ドイツもの部外者な仏近代愛好家にも手軽にシュレーカーの才能へアプローチできる嬉しい一枚と申せましょう。しかしながら,このCDには致命傷が。演奏するスロヴァク管弦楽団が,ただもうヒドイ。マルコ・ポーロには色々なB級オケが参加していますが,スロヴァク管の駄作率は,おそらく他のオケの追随を許さないでしょうな。そんな悪名高いこのオケの中でも,これは特に最悪の演奏と断言せざるを得ぬ,永遠の迷盤。小学校の吹奏楽団をすら鮮やかにイマージュさせるその演奏を聴けば,もはや居並ぶ父兄ならずとも頭を抱えずにはおれんでしょう。到底及第点はやれません。曲さえ良ければ何でも我慢できるという,寛容過ぎる貴方のみお買いなされ。

★★★
"Vorspiel zu Einer Grossen Oper 'Memnon' / Romantic Suite" (Marco Polo : 8.220469)
Uwe Mund (cond) NOe Tonkünstler Orchestra, Vienna
シュレーカーの作曲家としての性格を一言で表現するとすれば,フランスで発達した近代的なオーケストレーションをいち早く採り入れて,行き詰まりを見せていたワグネリズムの語法を継承発展させようとした人物だったという位置づけになるでしょう。そうしたスタンスが示すとおり,基本的に彼はオペラ作家だったので,遺された作品も多くはオペラもの。知るにつけ,ドイツ傘下のウィーン楽壇は,その後もしばらくはワグネリズムの強固な影響のもと,推移していたんだなあ・・と不思議な心持ちになります。上記盤と並ぶマルコ・ポーロ盤の本盤は,一転してシュレーカーのドイツ音楽的な側面により焦点が当たった内容。フランス近代ファンには,さほど面白みのある作品ではなかったという記憶。現在,シュレーカーのマルコ盤は全て島流し済みのため,詳しいコメントは控えます。しかし,兄弟盤を作るだけにもかかわらず,わざわざ今回違うオケを引っ張り出してくるマルコさん。さすがです。こんなヘンテコな名前のオケ,聞いたこともないですねえ。よくもまあこう知らないオケばかりを見つけてくるものです。申すまでもなく,両者は演奏もどんぐりの背比べ状態。聴くにつけ,わざわざ違う楽団を使うちびマル子嬢のこだわりがどこから来るのか。あっしにゃもう皆目分かりません。ただただ,呆れ感心するばかり。

(2001.3. 26)