Sの作曲家



デオダ・ド・セヴラック Déodat De Séverac (1872-1921)

フランスの作曲家。本名マリー=ジョセフ=アレクサンドル=デオダ・ド・セヴラック(Marie-Joseph-Alexandre-Déodat de Séverac)。1872年7月20日,南仏オート=ガロンヌ県サン・フェリクス・ドゥ・カラマン(Saint-Félix-de-Caraman : Haute-Garonne)生まれ。画家だった父ジルベールから幼少期に,次いでフェリクス聖堂オルガニストのルイ・アミエル(Louis Amiel)に音楽を学ぶ。その後ソレーズ校でオーボエ,ピアノ,オルガンを学び,1890年に卒業した。父の勧めにより,始めトゥルーズ大学で法学を学んだが,間もなく音楽を志し,1893年からトゥルーズ音楽院へ転学。1896年,シャルル・ボルドに見出されてスコラ・カントールムへ進み,オルガンをピロ(Pirro)とギルマンに,合唱指揮法をボルドに,対位法と作曲法をマニャールとダンディに師事。1907年まで在学し,各分野の芸術家と交流した(当初パリ音楽院に進んだとの資料もあります)。1907年には,「ドイツの音楽的支配からの解放を図るためには,地方に眠る音楽的遺産に注目して脱中心化を図るべきだと主張した卒業論文《音楽における中心主義と各地の党派性(La centralisation et les petites chapelles musicales)》を発表した。その後1910年には故郷へ戻り,1919年まで州議会議員を務める傍ら作曲活動を継続。また,世を去るまで聖ピエール聖堂オルガニストの地位を全うし,吹奏楽団《南風の竪琴(La Lyre du Vent d'Autan)》を創設するなど,精力的に活動。第一次大戦に看護兵を務めたのが祟って1919年には病に倒れ,1921年3月24日,ピレネー地方のセレ(Céret: Pyrénées orientales)にて,47才で死去。フレムやロパルツ,ヴィユマンやラドミローらとともに,出自の土着民謡に根ざした詩的な作風を得意とし,ピアノ作品が知られている。


主要作品

舞台作品 ・付帯音楽【幻影】 Le mirage (1903) {1act} ...L. Damart台本,未出版
・粉挽きの心 Le coeur du moulin: pièce lyrique (1903-1908) {2act} ...
M. Magre台本
・悲劇【エリオガバール】 Héliogabale: tragedie lyrique (1910) {3act} ...
E. Sicard台本
・付帯音楽【鈴蘭】 Mugueto (1911) {3act} ...
M. Navarre台本,未出版
・スパルタのエレーヌ Hélène de Sparte (1912) ...
E. Verhaeren台本,未出版
・地球の娘 La fille de la terre: tragedie lyrique (1913) {3act} ...
Sicard台本
・オペレッタ【ピナール王】 Le roi Pinard (1919) ...
L. Lointier 《La princesse d'Okifari》をもとに,SéveracとA. Bausil台本,未出版
管弦楽曲 ・交響詩【秋】 L'automne (1900) {vo, orch} ... Séverac詩
・交響詩【冬】 L'hiver (1900) {vo, orch} ...
Séverac詩
・黄昏の妖精 Nymphes au crépuscule (1899/1901-1902) {f-choir, orch /p} ...
未出版
・交響組曲【ディドンとエネー】 Didon et Enée (1903)
・三部作 Triptyque (1903-1904) ...
L. Le Cardonnelの詩に着想
・交響詩【王命を受けた蛙】 Les grenouilles qui demandent un roi (1909-1921)
室内楽 ・ピアノ五重奏曲 Quintette (1899) {p, 2vln, vla, vc}
・森のミューズたち (1908) {2vln, vla, vc, 5winds} ...
原題不詳
・鹿のいる公園 (1909) {p, ob, 2vln, vla, vc} ... 原題不詳
・月の光 Sérénade au clair de lune (1913) {fl, ob, 2cl, bssn, 2hrn, perc, 5strings}
・ミニョネータ Minyoneta: souvenir de Figueras (1919) {vln, p}
・ロマンティックなリート Lied romantique (1929) {vln/vc}
・セレの想い出 Souvenirs de Céret, (1931) {vln, p}
ピアノ曲 ・野原を抜けて À travers champs (1890)
・ピアノ・ソナタ 変ロ短調 Sonate pour piano (1899)
・南風 Vent d'autan (1899)
・大地の歌 Le chant de la terre: poème géorgique (1899-1900)
・ラングドック地方にて En Languedoc: cinq pièces (1903-1904)
・鉛の兵隊 Le soldat de plomb: histoire vraie en trois récits (1904) {2p}
・ワルツ【ピッペルマン=ジェ】 Pippermint-Get (1907)
・ポンパドゥール夫人の大広間 Stances à madame de Pompadour (1907)
・日向で水浴する女たち Baigneuses au soleil: souvenir de Banyuls-sur-mer (1908)
・セルダーニャ Cerdaña: cinq études pittoresques (1908-1911)
・水の精と慎みのない牧神 Les naïades et le faune indiscret (1908-1919)
・休暇 第一集 En vacances I: au chateau et dans le parc, huit pièces romantiques (1911)
・休暇 第二集 En vacances II (1911) ...
3曲しか完成しなかった
・夾竹桃の下で Sous les lauriers roses: Soir de carnaval sur la côte catalane (1919)
オルガン曲 ・昇天祭 Élévation (1890)
・唱句 ト長調 Verset en sol majeur (1890)
・唱句ないしは前奏曲 Verset ou prélude (1892)
・カノン形式の幻想間奏曲 Intermède fantasia en forme de canon (1897)
・下降音階のカノン Canon par diminution (1898)
・4部の前奏曲 Prélude de quatuor (1898)
・組曲 ホ短調 Suite en mi mineur (1897-1899) ...
1898年完成とする資料もある
・晩祷唱句 Versets pour les vêpres d'un confesseur non pontife (1912)
・スコラ派風の小組曲 Petite suite scolastique (1912-1913)
合唱曲 ・アヴェ・ヴェルム・コルプス Ave verum corpus (1898) {2sop (2tnr), org}
・3部のカノン【休暇の歌】 Chants de vacances (1898) ...
J. Combarieu詩,出版1909年(ReM)
・薔薇を見るミニョーヌ Mignonne allons voir si la rose (1901) {4vo m-choir} ...
P. Ronsard詩
・カンタータ【シテ】 La cité (1909) {vo, m-choir} ...
V. Gastilleur詩
・ヴァレスピルの歌 Lo cant del Vallespir (1911) {vo, choir, orch} ...
Catalan, J. Amade詩, 未出版
・カンタータ【ソレーズとラコルデール】 Sorèze et Lacordaire (1911) {vo, choir, orch} ...
F. Tresserre詩
・オーサクルム・コンヴィヴィウム O sacrum convivium (1919) {4vo, org}
・タントゥム・エルゴ Tantum ergo (1920) {choir(4vo), org} ...
オルガンは無しとの記述もある
歌曲 ・復活 Renouveau (1897)
・リトゥルネロ Ritournelle (1897)
・山羊飼い Le chevrier (1897-1898) ...
P. Rey詩
・角笛 Les cors (1897-1898) ... P. Rey詩
・ミミズク Les hiboux (1898) ...
C. Baudelaire詩
・異教徒 L'infidèle (1898) ...
M. Maeterlinck詩
・過越の目覚め L'éveil de pâques (1899) ...
Verhaeren詩
・ブレジーヌの歌 Chanson de blaisine (1900) ...
Magre詩
・沈みゆく太陽 Soleils couchants (1901-1902)
・屋根の上の空 Le ciel est, par-dessus le toit.. (1901) ...
P.Verlaine詩
・夢 Un rêve (1901) ...
原詩はE.A. Poe。訳をS. Mallarmeが担当
・山の夜明け À l'aube dans la montagne (1903) ...
Séverac詩
・雪の頃 Temps de neige (1903) ...
H. Gauthier-Villars詩
・道の歌 Les housards de la garde: chanson de route (1906)
・ピカルディの歌 J'ons eun' joulie maison!: chanson picarde (1906)
・ミュゼット Musette (1905-1906)
・乱れなき世界 Ne derangez pas le monde (1905-1906)
・捧げもの Offrande (1905-1906)
・バ・ベ・ビ・ボ・ブ Ba be bi bo bu (1905-1906)
・薔薇色のコート Le cotillon couleur de rose (1905-1906)
・太鼓を鳴らす王 Le roi a fait battre tambour (1905-1906)
・王侯たちの一日のために Pour le jour des rois (1905-1906)
・フィリ Philis (1907) ...
18世紀の輪舞曲に着想
・ジャックの歌 Chanson de Jacques (1908) ...
Magre詩
・奉献曲 Aubade (1910) ...
M. Navarre詩
・変わらぬ夜の歌 Chanson de la nuit durable (1910) ...
L. Espinasse-Mongenet詩
・子馬の歌 Chanson pour le petit cheval (1910) ...
P.Estieu詩
・降誕祭の歌 Chant de Noël (1910) {tnr, sop, p} ...
Goudouli詩
・ヒポリディアン旋法のカンツォーネ Canzone dans le mode hypolydien, vocalise-étude (1911)
・4つの頌歌 Quatre cantiques (1913) {vo, org (hmn)}
・愛しの人形 Ma poupée chérie (1914) ...Séverac詩
・サルヴェ・レジナ Salve regina (1917) {msp, vln, org}
・ドンツェーラの死 La mort y la Donzella (1918) ...
Catalan詩
・3つの水彩画 Trois aquarelles (1945)
・ナントの監獄 Dans les prisons de Nantes (-)
・フン族 Les huns (-)
・悲しき風景 Paysages tristes (-)
編曲
何れも出版年
・18世紀の民謡集 第一編 Chansons du XVIIIe siècle I (1905)
・フランスのヴィエール風の歌 Les vieilles chansons de France (1905)
・18世紀の民謡集 第二編 Chansons du XVIIIe siècle II (1907)

もかさんに3編の未採録曲を(邦語文献を典拠に)ご教示いただきました(2006. 4. 13)


セヴラックを聴く


★★★★☆
"Baigneuses au Soleil / Cerdana / Les naiades et le faune indiscret (Séverac) : Jeunes Filles (Ropartz) : Quelques Danses (Chausson)" (Erato : B18D-39029)
Jean Doyen (piano)
セヴラックはほとんどピアノ曲で知られているくらいで,それも,『セルダーニャ』だけという,余りに可哀相すぎる無名作家です。その理由は間違いなく,彼が故郷の民謡に魅せられ,楽壇を離れて南仏に戻ってしまったことと,生来病弱であったため,中央で精力的な活動が出来なかったことの両方があるでしょう。それだけに,どこか武骨で飾らない農耕部族的作風はショパンに通じるものがありますが,彼の書法は南仏らしく明るく屈託がなく,土臭い香りに満ちており,素朴な魅力に溢れています。それでいて印象主義の手法が随所に光るのがこの人の持ち味といえましょう。エラートに近代物の秀演を数多く残しているドワイヨンのこの盤はまさに水を得たような演奏。代表曲『セルダーニャ』から2曲の抜粋を含め,書法の上では最も円熟の極みにある傑作『水の精・・』まで,質感を綺麗に捉えた素晴らしい演奏内容です。

★★★★☆
"Cerdaña / Baigneuses au Soleil / Vers le Mas en Fête / Coin de Cimetière au Printemps" (Accord : 200322)
Jean-Joël Barbier (piano)
チッコリーニのピアノによる3枚組の選集が出たのを機に,徐々にピアノ曲集の録音も増え,ピアノ曲のジャンルだけは再評価されてきたセヴラック。体系的に聴けるという意味ではお薦めなのですが,演奏内容は上記ドワイアン盤や,このバルビエ盤に比べるとかなり落ちます。既にセヴラックの曲を知っていて,全部揃えたいという方以外には,ドワイヨン盤か,こちらの盤が宜しいのではと思います。教育者として高名なドワイヨンに比べ知名度の上では一歩譲るものの,ドビュッシーの録音もある隠れ名手バルビエの演奏するこのアコール盤は甲乙付けがたい秀演。ドワイヨン同様,飾り気のない武骨な,しかし質感豊かな演奏です。この盤の魅力は『セルダーニャ』が全曲,素晴らしい演奏で楽しめることです。加えてドワイヨン盤にはない2曲が聴きもの。和声面では,紛れもなくドビュッシーやラヴェルの洒落た書法に基づいていながら,開放的で土臭い,セヴラック一流の素朴な主旋律が独自の輝きを放つ。そうした美学を巧みに捉えた演奏態度が素晴らしいと思います。

★★★★
"En Languedoc / Cerdana / Le Chant de la Terre / Baigneuses au Soleil / Les Naiades et le Faune Indiscret / Le Soldat de Plomb / Pipperment-get / Stances à Madame de Pompadour / Deux Recueils / Valse Romantique / Sous les Lauriers Roses" (EMI : 7243 5 72372 2 2)
Aldo Ciccolini (piano)
今も昔も?セヴラックといえばこのチッコリーニ盤は最右翼作品。ピアノのチッコリーニはドビュッシーの全集もある近代好きなピアノ弾きですが,些か抑揚に乏しいところの多い人で,情感に乏しく散漫な演奏もします。しかしこの選集では,急速調の曲でこそ欠点である抑揚のなさが顔を出すものの,緩やかなテンポの曲ではなかなかに巧みな演奏を披露。スペイン(グラナドス,ファリャ)とフランス(ドビュッシー)の中間点に位置するセヴラックの開けっぴろげで朴訥,しかも適度に洒脱さも兼ね備えた作風を巧く弾き分けます。3枚にべったりと録音され,目下セヴラックのピアノ作品が最も多く聴ける盤としてはお薦めです。

★★★☆
"Tu es Petra / Carillon-Sortie (H.Mulet) L'oeuvre Intégrale pour Orgue (De Séverac) Prélude et Petit Canon / Prélude en mi bémol mineur (D'indy) Trois Antiennes / Vêpres des Vierges (Chausson)" (Aeolus : AE-10141)
Michelle Leclerc (orgue)
日本人ピアノ弾きもCDを出して再評価著しいセヴラックですが,その再評価はほとんどピアノ曲だけに集中しています。そんな中密かに登場したこのCDは大変珍しいセヴラックのオルガン作品全集。オルガンを弾くルクレルク女史はスコラ・カントールムでラングレの弟子だった人物で,オルガン好きには名前の知れたピエール・コシュローにも師事しており,現在スコラ・カントールムの教授職にある人物だそうです。で,肝心のセブラック・・なんですが・・正直ピアノ曲や歌曲に見られる進歩性はほとんど感じられないフランクの亜流といった印象。これはダンディのオルガン作品も同様で,期せずして大フランク門下の皆々様が軍門に下りました大会といった印象を拭えません。そんな曲のせいなのか,演奏もやや扁平な印象でもうひとつメリハリがないこの盤の魅力は僅か2曲だけが併録されたミュレなるオルガン好き以外にはおよそ無名の作曲家。1878年モンマルトルに生まれ,ウィドールに師事してオルガンを学び,サン・ピエール・ド・モントルージュ聖堂のオルガニストとなったのち,一時はニデルメイエール校の教員にもなったにも拘わらず,1937年にパリを離れて隠棲してしまったとか。しかも,その引っ越しのどさくさに紛れ,知人に僅かな自作曲を上げたのち,残り全部を破棄!これじゃ無名になっても文句いえないだろ〜・・ドビュシーより後輩らしく,作風はジョンゲンを素朴にしたような感じで,正直なところ古色蒼然なセブラックよりも面白く聴きました。

★★★★
"Songs by Deodat De Sevérac :
Ritournelle / Renouveau / Le Chevrier / Soleils couchants (Paysages tristes) / Musette / Les Hiboux / Ne derangez pas le monde / Le ciel est, par-dessus le toit ... / Le roi a fait battre tambour / Un Rêve / Les Cors / Temps de Neige / Pour le jour des rois / Chanson pour le petit cheval / L'Infidèle / Philis / Chanson de la nuit durable / Le cotillon couleur de rose / Chanson de Blaisine / L'éveil de Pâques / Ba Be Bi Bo Bu! / Chanson de Jacques / Offrande / Ma Poupée chérie / Chant de Noël* / Aubade / A l'aube dans la montagne" (Hyperion : CDA66983)

François Le Roux (btn) Graham Johnson (p) Patricia Rozario (sop)*
甘い声で迫るフランスの若手実力派,フランソワ・ルルーの歌で演唱には問題皆無の珍しい歌曲集。目下,ピアノ曲以外がまとまった形で聴ける唯一の企画であり,それだけでも価値ある作品と申せましょう。セヴラックの歌曲は,初期のものはマスネーからアーンへと通じる,ロマン派的で甘い,やや没個性的な作風なものの,やがて印象主義の影響のもと,熟達した書法がいかんなく発揮された,充実した作風となります。殊にバラード曲におけるピアノ伴奏の書法は素晴らしく,ドビュッシーの歌曲を思わせる神秘主義的響音と,ドイツ・リートの流れを汲む正統な主旋律とが好ましく絡む優れた作品も少なからずあります。セヴラックはちょっと田舎臭くて,という方にはぜひ本盤を。

(2001.02.21 uploaded: Amendment 2006. 4. 13)