Tの作曲家


ジェルメーヌ・タイユフェール Germaine Tailleferre (1892-1983)

1892年4月19日,パリ郊外のサン・モー・デ・フォッセ(Saint Maur des Fosses)生まれ。母マリー・デジレは父アルテュールのため自らの婚約を破棄しての婚姻を強いられ,その結婚生活は不調であった。母は子どもの教育に情熱を注ぎ,ジェルメーヌは幼少期から母を通じてピアノと作曲の基礎を学んだ。父は音楽に無理解であったが,ジェルメーヌは父の反対を押して1904年にパリ音楽院へ進学。エヴァ・ソートロー・メイエにピアノとソルフェージュを学ぶ(のちソルフェージュは一等)。こうした経緯から父とは折り合いが悪く,彼女はのちに,父方の名タイユフェーズ(Taillefesse)を改名している。パリ音楽院ではアンリ・ダイエに和声法,ジョルジュ・カッサードに対位法とフーガ,シャルル・マリー・ウィドールに作曲法を師事。1913年にまず対位法および和声法で一等。次いで1915年にフーガ一等を得る。1912年,パリ音楽院在学中にミヨー,オーリック,オネゲルらと交流を持つに至り,1918年1月15日,『新青年(1920年1月,アンリ・コレにより『コメディア』誌上で六人組と命名される)』の結成に参画。紅一点の女性作曲家として活躍した。1925年にアメリカ人ラルフ・バートンと結婚しニューヨークへ移住。1927年に帰仏し,バレエ・リュスに作品を提供するなどして,舞台音楽の分野で評価を確立した。1970年,スコラ・カントールムの教員に就任。間もなく定員割れのためこの職を辞したが,1976年にはアルザス校(Ecole Alsacienne)の教員となり,最晩年は同校の校長ジョルジュ・アッカル(George Hacquard)と家族ぐるみの交流の中で余生を送った。時代が現代音楽へと進む中にあって,簡素なロマン派様式を基調に軽妙な作風を展開したが,1957年には十二音技法へと進んだ。1983年11月7日,91才でパリにて死去。(関連ページ:Arpeggione 英仏)


主要作品

歌劇/バレエ音楽 ・鳥売りの商人 le marchand d'oiseaux (1923)
・アテナの城塞都市時代 sous les remparts d'Athènes (1926)<*hrp協編曲版あり>
・魅惑のパリ Paris-magie (1949)
・ドローレス Dolorès (1950)
・小さな船乗り il était un petit navire (1951)
・ナッツ氏アテネの城を買う monsieur petit pois Achète un château (1955)
・素晴らしき野心家 le bel ambitieux (1955)
・貧しきウジェーニ la pauvre Eugénie (1955)
・オペラ座の娘 la fille d'opéra (1955)
・パリジャーナ Parisiana (1955)
・小さな妖精 la petite sirène (1957)
・ベルジェールの想い出 mémoires d'une bergère (1959)
・先生 le maître (1959)
管弦楽 ・管弦楽のための序曲 ouverture (1932)
・小組曲 petite suite (1957)
協奏曲 ・ピアノと管弦楽のためのバラード ballade pour piano et orchestre (1922) <p, orch>
・ピアノ協奏曲 concerto pour piano et orchestre (1924) <p, orch>
・ヴァイオリン協奏曲 concerto pour violon et orchestre (1936) <vln, orch>
・3つの練習曲 trois études (1942) <p, orch>
・フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ concertino pour flûte et orchestre (1952) <fl, orch>
・コンチェルティーノ concertino pour flûte, piano et orchestre de chambre (1953) <fl, p, cham-orch>
室内楽/器楽曲 ・即興曲 impromptu (1912) <vln, p>
・子守歌 berceuse (1913) <vln, p>
・弦楽四重奏曲 quatuor à cordes (1917) <2vln, vla, vc>
・パストラール pastorale en ré majeur (1919) <vln, p>
・ドビュッシーを讃えて hommage à Claude Debussy (1920) <vln, p>
・ヴァイオリン・ソナタ第1番 sonate pour violon et piano No.1 (1921) <vln, p>
・アダージョ adagio (1924) <vln, p>
・コンチェルティーノ concertino pour harpe et orchestre (1927) <hrp, p>
・パストラール pastorale en la bémol majeur (1928) <vln, p>
・サクソフォーン四重奏曲 quatuor à saxophones (1934) <4sax>
・ヴァイオリン・ソナタ第2番 sonate pour violon et piano No.2 (1956) <vln, p/fl, p>
・ハープ・ソナタ sonate pour harpe (1957) <hrp>
・クラリネット・ソナタ sonate pour clarinette et piano (1958) <cl>
・ラモーを讃えて hommage à Rameau (1964) <2p, 4perc>
・フォルラーヌ forlane (1972) <fl, p>
・アラベスク arabesque (1973) <cl, p>
・ロンドー rondeau (1973) <ob, p>
・トランペット・ソナタ sonate pour trompette et piano (1973) <tp, p>
・ヴァイオリンとピアノのためのソナチヌ sonatine (1973) <vln, p>
・田舎風のソナタ sonate champêtre (1978?) <3winds, p>
・セレナード sérénade (1978?) <3winds, p>
ピアノ曲 ・ロマンス romance (1912)
・野外遊戯 jeux de plein air (1917)
・緩やかなワルツ valse lente (1928)
・シシリエンヌ sicilienne en fa (1928)
・フランスの花々 fleurs de France (1930)
・コンチェルト・グロッソ concerto grosso (1934) <2p>
・アルザスの一軒家にて au pavillon d'Alsace (1937)
・独りで森に seule dans la forêt (1951)
・空き地にて dans la clairière (1952)
・パルティータ partita (1957)
・トッカータ toccata (1957) <2p>
・スカルラッティーナ scarlatina (1975)
・子どもらしさ enfantines (1978)
・3つのソナチヌ trois sonatine (1978)
歌曲 ・6つのフランスの歌 six chansons Française (1929)
・5つのフランス民謡の歌 cinq chansons populaire Française (1952)
・フランス民謡より chansons du folklore de France (1955)
・コンチェルティーノ concertino pour colorature et orchestre (1957) <vo, orch>
・虚しい言葉の協奏曲 concerto des vaines paroles (1958)
・ノットゥルノ=フォクス notturno-fox (1958)
宗教/合唱曲 ・2台のピアノ,混声合唱,4つのサクソフォンと管弦楽のための協奏曲 concerto (1934) <2p, choir, 4sax, orch>
・ナルシスのカンタータ la cantate du Narcisse (1937)
・忠実さの協奏曲 concerto de la fidelité (1981) <f-vo, orch>


タイユフェールを聴く


★★★★★
"Fleurs de France / Pastorale en la bémol / Pastorale en ut / Petite Suite / Au Pavillon d'Alsace / Enfantines / Deux Pièces / Partita / Sicilienne" (Voice of Lyrics : VOL C 331)
Luba Timofeyeba (piano)
2003年2月時点で入手可能なタイユフェールのCD中,間違いなくこのCDは最も優れた内容です。まず選曲が良い。多調で色彩感に富み,モダンな音が好きなファンにも訴えるところが大な『フランスの花々』や『パストラール』,モーツァルトなどを聴く人でも受け入れられそうなほど古典的な『アルザスの一軒家』や『子どもらしさ』,サティの影響濃い『2つの小品』に,十二音技法をさりげなく採り入れた『パルティータ』まで。ストラヴィンスキーが「誠実な音楽」と評したのも宜なるかな。古典に学び,立脚したうえでのモダニズムを称揚する六人組の基本的な理念が,ここに最も衒いなくその実を結んでいる。さらに素晴らしいのがソリストのティモフェーバ女史。慈しむようなルバート,甘さに流れぬ硬質で明晰な打鍵。それでいて穏やかな丸みを損なわないタッチの美しさ。精妙なペダリング。実に良くコントロールされている。タイユフェールがミヨーを経由してバロックをよく学んだことを,聴き手に余すところなく伝える,説得力溢れた演奏だと思います。それもその筈。美貌のソリストはチャイコフスキー音大を出たのちプラハ国際,ロン=ティボー国際で優勝した才媛。普段はハイドンまで演奏している本格派でした。こういう作風だからこそ古典もよくする「教養のある」ピアノで。甲種お薦めです。(本CDの入手に際しては黒山羊さんから格別のご配慮を頂きました。記して感謝申し上げます。

★★★★★
"Intermezzo / Larghetto / Jeux de Plein Air / Toccata / Suite Burlesque / Deux Valses / Funtango / La Nouvelle Cythère / Image / Sonate" (Élan : CD 82278)
Mark Clinton, Nicle Narboni (pianos)
1986年に結成されたピアノ・デュオ,クリントン=ナルボニ夫妻によるタイユフェール連弾曲集です。初めて聞く名前ですが,技量はといえば驚くほど達者。速いパッセージにも丸く軽やかさを失わないタッチの美しさに溜飲を下げました。1994年にニューヨークのプロピアノ・リサイタル・シリーズで最優秀賞を受賞したほか,1995年にNFMCエリス・ピアノ競技会,1996年にはカルロ=ソリーヴァ国際ピアノ・コンクールでの受賞経験があり,1995年からネブラスカ大学リンカーン校のピアノ科で教鞭を執っているとか。上手いはずです。楽曲はミヨーの影響を色濃く感じさせる多調・新古典様式のものが中心。男性であるミヨーのように仰々しいところのない,典雅な古典趣味と,多調を利した適度な緊張感が相半ばした無垢な曲想に頬が緩みます。独奏曲に比べ,手の数も多いからでしょう。和声へも一層神経が行き届いている。私同様,タイユフェールに対して,「お洒落ではあるけれど,今ひとつ軽音楽の域を出ない」といった印象を持っている方には,ぜひお試しいただきたいと思います。(本CDの入手に際しては黒山羊さんから格別のご配慮を頂きました。記して感謝申し上げます。

★★★★
"Trio / Calme sans Lenteur / Sonate pour Violon et Piano No.1, No.2 / Sonatine / Berceuse / Adagio / Pastorale" (Timpani : 1C1063)
Cristina Ariagno (p) Massimo Martin (vln) Manuel Zigante (vc)
タイユフェールは六人組の紅一点ながら,今なおほとんどロクな演奏盤を残して貰っていないカワイソーな作曲家の一人です。高水準の録音が多いティンパニが満を持して録音した作品集だけに期待は裏切られず,多様な書法に手を染めたタイユフェールの作風をバランスの良い選曲で踏まえつつ,それらを貫く控えめなロマン主義の芯を浮き立たせることで作曲家としての立体像を俯瞰させようとする考え抜かれた選曲であると思います。しかし,残念なのは演奏。衒わぬ自然体な感情表現が好感度大なピアノは良く弾けていると思うのですが,肝心のヴァイオリンがどうにもいただけない。ピッチはマルコもびっくりの不安定さですし,音色もキイキイとカミキリムシのよう。コントロールも雑で滑らかさはなく,小粒かつ粗忽な印象は拭えません。ピアノが好演なだけに,ソリストの醜態で全てがご破算になっているのは勿体ない限りです。それでもタイユフェールの数少ない作品集の中では目下お薦め度No.1レベル。贔屓目に見なければならないこの現状はやはり不幸としかいいようがありませんなあ。ちなみに,この盤の解説を担当しているのは何と,ジョルジュ・アッカルさん。最晩年のタイユフェールと家族ぐるみの付き合いをしていたアルザス校の校長先生です。本盤の解説文で,タイユフェールの死後,彼がタイユフェール財団を創設して理事長になっていることを知りました(遺族関係者から,その後同協会は閉鎖されたとのご連絡をいただきました:2003.8.5)。ちょっと素敵。

★★★☆
"Sonate No.1 et No.2 / Pastorale / Berceuse / Adagio / Sonatine (pour Violon et Piano) Romance / Impromptu / Trois Pastorales / Hommage à Debussy (pour Piano) Rondo pour Haubois et Piano / Choral / Gaillarde (pour Trompette et Piano)" (Cambria : CD-1085)
Marcia Eckert (p) Ruth Ehrlich (vln) Robert Ingliss (ob) Raymond Mase (tp)
1994年に録音された本CDは,フェアフィールド弦楽四重奏団の第一ヴァイオリンとしてカール・クリングラー弦楽四重奏コンペで優勝したのち独立したイギリスのエッケルト女史と,セラフィム・トリオの一員としてニューヨークを拠点に活動しているピアノのエーリッヒ女史を中心に作られたもの。しかし,『子守歌』,『アダージョ』,『ロマンス』,『即興曲』,3つのうち2つの『パストラール』,『ドビュッシー讃』と,ラッパ,オーボエのための全曲が,すべて世界初録音だったという事実一つを取っても,恐らく当時他に選択肢らしい選択肢のなかったこのCDの存在価値は突出していたことでしょう。メインのご両人は,楽団を渡り歩く生活が中心のご様子なことからもお分かりのように,ソリストというよりは楽団員というほうが近く,それは演奏からも一目瞭然。特に,大半を占有するヴァイオリンが弱いのは残念。甘いピッチをゆらゆらしたビブラートで誤魔化しているような演奏は音色も垢抜けず,折角日の目を見たのにこの演奏じゃ誤解を招く結果になったのではないかと心配になります。しかし,楽曲は彼女の美点を良く捉えたいいものが並んでいますし,淡泊ながらソツのないピアノ独奏以降は許し難い破綻は少ないので,現状ではお薦め度の高い選集といえるんじゃないでしょうか。

★★★☆
"The Music of Germaine Tailleferre :
Images / Quatuor / Forlane / Chansons Populaires Françaises / Sonate pour harpe / Deux Valses / Galliarde"
(Hericon : HE 1008)
Nicole Paiement (cond) Porter String Quartet : Karen Andrie (vc) Elizabeth Bodine (ob) Jill Cohen (vla) Andy Connell (cl) John Fairweather (vln) et al.

サンフランシスコ界隈で活動中らしい教育者ニコル・ペイエマン率いるアメリカ勢により録音されたこのCDは,多分タイユフェール再評価のきっかけになったCDの一つじゃないかと思います。詳しいことは分かりませんが,いずれもペイエマンが教鞭を執る学科の奨学生や学部生などから構成されたメンバーの様子。そんな事情を反映してか,歌手も含めて演奏はそれほどパッとしません。ジャケットからもご推察の通り,このCDは彼女の瀟洒でパリジャン的な側面に光を当てたもの。ところどころに印象主義的な和声も顔を覗かせますが,どこか通俗的で垢抜けしなかったという印象です。尤もこのCDは島流しにしてしまったきり久しく耳にしていないので,詳しいコメントは再聴の上,後日に。

★★★★
"Music of Germaine Taileferre vol.2 :
Deux Pièces / Valse Lente / Concerto pour Piano / Pastorale / Partita / Pastorale pour Violon et Piano / Concerto pour Flûte et Piano / Impromptu" (Helicon : HE1048)

Nicole Paiement (cond) California Parallèle Ensemble and The University of California-Santa Cruz Orchestra
ニコル・ペイエマン女史が1995年に結成した「カリフォルニア・パラレル・アンサンブル」は,西海岸一帯で活動する地元演奏家の集合体。近現代のマイナー作家を掘り起こそうとの意図で結成されたんだそうです。このCDは彼女が監修したタイユフェール作品集の第2弾。新古典主義に則り,ミヨーやイベールの影響顕著な『ピアノ協奏曲』や『フルート協奏曲』,十二音技法を採用し,プロヴァンス地方にスコールが訪れたかのような『パルティータ』など,選曲は第1集以上にバラエティに富み,相変わらず演奏陣は皆やや垢抜けないながら,共感溢れる好演奏を展開。入門にも好適なのではないかと思います。個人的には出突っ張りのピアノ奏者,ジョセフィーヌ・ガンドルフィ女史が印象に残りました。ボストン出身で,サンフランシスコ響とも共演を持つ現代音楽のスペシャリストだそうです。少し表情は硬いんですが,メリハリの良い演奏技量はなかなか。新古典的な作風に,折り目正しい彼女のピアノは合っているんでしょう。欲を言えば,もう少し録音がいいと好かったですねえ。ステレオ初期のものみたいなくぐもった音場はいただけません(本CDの入手に際しては黒山羊さんから格別のご配慮を頂きました。記して感謝申し上げます)。

★★★☆
"Concertino pour Harpe et Piano / Impromptu / Romance / Pastorale en re, en la b / Valse Lente / Sicilienne / Six Chansons Francaises / Vocalise pour Voix élevée / Fleurs de France / Sonate pour Harpe / La Rue Chagrin / Partita" (Nuova Era : 7341)
Cristina Ariagno (p) Gabriella Bosio (hrp) Claire Gouton (vo)

イタリア出身,現在フランスとイタリアを拠点に活動中のアリアーニョ女史はアール・ヌーヴォ・アンサンブルなる団体を率いて活動中。19世紀末に華咲き,今では忘れられてしまった彼の地のマイナー作家を掘り起こそうという姿勢には頭が下がります。今後さらに仏近代ものを精力的に発掘してくださるとか。特定の作家に注目する人はいても,近代もの全体を守備範囲としてくれる演奏家は,他にはギロー女史くらいしかいないでしょう。貴重な存在といわなくてはなりますまい。タイユフェールのカタログは,そんな彼女のお陰で随分充実しました。このCDはハープとの協奏,ピアノ独奏,歌曲を加えた作品集。ときに新古典的,時にロマン派的でありながらも,ジャケットのパリジャンそのままに瀟洒で朴訥な佇まいを崩さないタイユフェールの慎ましい美意識が溢れる佳作揃い。ミヨーの多調性と,サティの最小の美学が,軽やかに融合したような作風に頬緩みます。ヴァイオリンがミソを付けたTimpani盤に比して,演奏陣の技量も小粒にバランスが取れています(Acknowledgement : The site owner is indepted to Ms. Ariagno for kindly providing the disc.)。

★★★☆
Le Groupe des Six "Sonate (Poulenc) : Imaginees / Aria (Auric) : Forlane (Tailleferre) : Romance / Danse de la Chevre (Honegger) : Deux Dialogues / Sonatine 1 / Sonatine 2 / Sonatine 3 (Durey) : Album des Six : Sonatne (Milhaud)"(Adda : 581176)
Loïc Poulain (fl) Daria Hovora (p)
ゴベールのフルート曲集も好内容だったプーレンによる「六人組」作品集。下とは編集方針酷似でライバル盤といえましょう。堅実な仕上がりのウィルソン盤に比して,欧州勢によるこちらの演奏はより軽やかで洒脱。トリッキーなタンギングに終始するプーランクのソナタ第3楽章などで,主役の粗さと技巧不足が見え隠れするのが難点ですが,そのぶん羽根のように軽い音色と滑らかな歌い回しが好ましいです。タイユフェールの作品はひとつだけですが,初期のロマン派音楽を思わせる洒落た旋律と,それを退屈させない程度に近代的な和声で肉付けした佳品。六人組は一面ではシニカルなピカソでもありましたが,一面では仰々しい現代オンガクの理論から一歩距離を置き,虚飾を廃して,ストレートに心へ届く素朴なロマンティシズムの中に,音楽ほんらいの感動を再発見しようともしました。この曲はミヨーの『協奏的二重奏曲』と並んで後者の典型例といえるかも知れません。小品ながら親しみやすいですし,メロディックで日本人受けしそうです。この盤はさらに,録音僅少な隠れ印象主義者デュレの,器楽曲における代表傑作が5曲も聴けてしまうおまけもつきます。

★★★★
"Saudades de Brazil (Milhaud) Sonate No.2 (Tailleferre) La Nativite (Auric) / Sonate (Poulenc) / Romance et Danse de la Chevre (Honegger) Sonatine (Milhaud) Les Chemins de l'Amour (Poulenc) Moulin Rouge (Auric)" (Etcetera : KTC 1073)
Ransom Wilson (fl) Christopher O'Riley (p)

ジュリアード出身のフルート奏者はバーンスタインに見いだされ,ニューヨーク・ソロイスツの音楽監督を務めた経歴を持つ人物。ソロでも活動しているクリストファー・オライリーとは長年コンビを組んで活動しており,1989年にはこのコンビで全米公共放送賞を受賞した経験もあります。アメリカを拠点にする彼のフルートはフランス人とは楽器や奏法が違うんでしょうか。音色は本場の演奏家に比べ湿って重いので,フランスものを好きなフルートを嗜む方には少々違和感があるかも知れませんけれど,この盤の魅力は技術的水準の高さ。瑞々しい運指のピアノ共々,上記プーレン盤に比べて遙かに充実しており,技巧的なプーランクのプレストなどではその差歴然。最近では六人組のCDはかなり出るようになりましたが,この盤あたりは,かなり上位の一角に食い込む出来映えではないでしょうか。タイユフェルの瀟洒なソナタはもともとはヴァイオリン用。弦なら割に易しいであろうこの曲,しかしフルートにしたとたん急速かつ整然としたタンギングが要求される難曲に。にも拘わらず軽やかかつ遊びたっぷりに吹くウィルソンまさしく絶品。曲はミヨーの『協奏的二重奏』やプーランクのソナタを思わせる,洒落た近代版ロマン派の佳品で,タイユフェルを過小評価してたなあ・・と反省させられる優れた出来映えです。
(2002. 11. 25)