Tの作曲家


シャルル・トゥルヌミール Charles Tournemire (1870-1939)

フランスのオルガン奏者,作曲家。1870年1月22日ボルドー生まれ。本名シャルル・アーノルド・トゥルヌミール。ボルドーで最初の音楽教育を受け,11才で聖ピエール教会のオルガニストに就任。次いで1886年,16才でパリへ出て,パリ国立音楽院へ進学。アントワーヌ・トードーに和声法,シャルル・ド・ベリオにピアノを学ぶ傍ら,セザール・フランク,シャルル・ヴィドールに師事。オルガン科と指揮法科で一等を得て卒業した。1897年にピエルネの後任として聖ニコラス・ドゥ・シャルドネ教会のオルガニストとなり,1898年にはフランクの後を受けて聖クロチルド教会のオルガン奏者に就任。亡くなるまでその地位を全うした。教育者としても活躍。大戦中,リュシアン・カペーの代理としてパリ音楽院室内楽科で教鞭を執り,1919年には教授に就任。作曲家としても,1902年に『シレーヌの血統(Le sang de la sirène)』でパリ市音楽賞に優勝して評価を確立した。唯物論を嫌悪し,神秘主義に傾倒。古典教会音楽や印象主義の影響のもと,旋法性の高い作風を得意とし,多数のオルガン曲を残して,弟子のデュリフレやラングレに多大な影響を与えた。1939年11月4日,アルカション近郊にて死去。


主要作品

歌劇/バレエ音楽 ・シレーヌの歌 le sang de la sirène (1902-1903)
・ニートリス Nittelis (1905-1907)
・死神たち les dieux sont morts (1910-1912)
・三部作 trilogie : Faust, Don Quichotte Saint François d'Assise (1916-1929)
・トリスタンの伝説 la légende de Tristan (1925-1926)
管弦楽 ・交響曲「ロマンティック」 symphonie 'romantique' (1900)
・交響曲第2番 2e symphonie 'Ouessant' (1908-09)
・大オルガンのための詩曲 poème pour grand orgue et orchestre (en 3 parties enchainees) (1909-10)
・モスクワ,1913年 'Moscou, 1913' (1912-13)
・交響的頁 pages symphoniques (1912-13)
・交響曲第5番 5e symphonie (ou 'de la Montagne') (1913-14)
・交響曲第7番「いのちの踊り」 7e symphonie, les danses de la vie (1918-22)
・交響曲第8番 8e symphonie, La Symphonie du triomphe de la mort (1920-24)
協奏曲 ・ピアノと管弦楽のための狂詩曲 rhapsodie pour piano et orchestre(1904) {p, orch}
室内楽/器楽曲 ・2台のヴァイオリンとピアノのためのソナタ sonate pour piano et violon en quatre parties (1892-1893) {2vln, p}
・3つの小品 trois pièces (1894) {ob, p}
・チェロ・ソナタ sonate pour violoncelle et piano (1895) {vc, p}
・半音階ホルンとピアノのためのアンダンテ andante pour cor chromatique et piano (1896)
・3部の組曲 suite en 3 parties (1897) {vla, p}
・ピアノ四重奏曲 quatuor pour piano et cordes (1897-98) {p, vln, vla, vc}
・ピアノ三重奏曲 trio (1901) {p, vln, vc}
・詩曲 poème (1908) {vln, p}
・テオクリートの墓碑銘に寄せて pour une épigramme de Théocrite (1910) {3fl, 2cl, hrp}
・嘆き plaintes (1924) {vln, p}
・祈りの音楽 musique orante (1933) {2vln, vla, vc}
・詩的ソナタ sonate-poème (en 3 parties enchainees) (1934-35) {vln, p}
オルガン曲 ・アンダンティーノ andantino (1894)
・音楽の産物 sortie en sol majeur (1894)
・音楽の産物 sortie en mi mineur (1894)
・捧げもの offertoire (1895)
・交響的小品 pièce symphonique (1900-1901)
・ヴァリエ・プルセ variae preces (1901-1902)
・3つのコラール sancta trinitas (1910)
・2つの編曲作 deux transcriptions pour grand orgue de les dieux sont morts (1927)
・神秘のオルガン l'orgue mystique (1927-1932)
・3つの詩曲 trois poèmes (1932)
・シ・フィオレッティ sei fioretti (1932)
・交響的幻想曲 fantaisie symphonique (1933-1934)
・小さな花 petites fleurs musicales (1932-1934)
・7つのコラール sept chorals-poèmes d'orgue pour les sept paroles du Xrist (1935)
・大いなるワントワーヌのための自由な形式の後奏曲 postludes libres pour des Antiennes de Magnificat (1935)
・交響曲 symphonie-choral d'orgue (1935)
・神聖な交響曲 symphonie sacrée (1936)
・想念組曲 suite évocatrice (1938)
・2連の神聖な大壁画 deux fresques symphoniques sacrées (1938-1939)
ピアノ曲 ・ヴァイオリン弾き le ménétrier (1895)
・セレナーデ sérénade pour piano (1896)
・4手のためのピアノ・ソナタ sonate pour piano en 4 parties (1899) {2p}
・小品 petites pièces (1895-1900)
・サラバンド sarabande (1901)
・小さな小品 petites pièces (1902)
・3つの小品 trois petites pièces (1902)
・シャルトルの大聖堂にて a la cathédrale de chartres (1902)
・コラール choral (1902)
・音楽的思念 pensée musicale (1902)
・祈り prière (1902)
・狂詩曲 rhapsodie (1904)
・神秘的な詩曲 poème mystique (1908)
・小さきダニのために pour le petit 'Dani' (1915) {2p}
・子どもの小品 pièce enfantine (1915)
・12の詩的前奏曲 douze préludes-poèmes (1932)
・シャトーヌフ=ドゥ=ファウの鐘 cloches de Chateauneuf-du-Faou (1933)
・日ごとの練習曲 études de chaque joir (1935-1936)
歌曲 ・誘い viens-tu? (1896)
・3つの歌曲 trois mélodies (1896)
・アナトール・ル・ブラの歌 mélodies, poèmes d'Anatole Le Braz (1901-1902)
・別離 séparation (1902)
・歌曲 mélodie (1903)
・愛ゆえの殉教 douce martyre tant aimée (1903)...
※詳細確認中です
・ソリテュード solitude (1903)
・詩曲 poème (1908)
・叡知の賜物 sagesse (1908) {vo, p}
・三部作 tryptique (1910)
・3つの歌曲 trois lieder (1912)
・交響曲 symphonie (1915-1918) {vo, choir, org, orch}
・神聖なる対話 dialogue sacré (1919)
・聖杯の審問 la queste du Saint Graal (1926-1927) {female-choir, orch}
・ヴォーカリーズ=エチュード vocalise-étude (1930)
宗教曲 ・主祷 pater noster (1894) {vos, org}
・詩篇 psaume LVII (1908-1909) {choir, org, orch}
・詩篇 psaume XLVI (1913) {vo, choir, orch}
・聖ジャンの黙示録 apocalypse de Saint Jean (1932-1936)
・キリストの受難 la douloureuse passion du Xrist (1936) {3vo, choir, org, orch}
・ il poverello di Assisi (1937-1939)


トゥルヌミールを聴く


★★★★☆
"Symphonie No. 7 'Les Danses de la Vie' / Symphonie No. 3 'Moscou' " (Auvidis Valois : V 4794)
Pierre Bartholomée (cond) Orchestre Philharmonique de Liège et de la Communauté Française
余り数の多くないトゥルヌミールの作品集では,目下最も安定感のある内容と思われるのが,バルトロメー指揮リエージュ管弦楽団による連続録音。演奏秀抜です。トゥルヌミールの交響曲はどれも,異常な大曲の上に,ケックランの『ジャングル・ブック』に通じる,やや大味な(良く言えばスケールの大きな)書法が特徴。印象主義的な和声感覚も顕著ですが,もともとはフランキストであり,かなりコラージュされるとはいえ,フランク門下ならではの上品な旋律と気品溢れる書法が持ち味と言えましょう。『交響曲第7番』は印象主義的な和声を基調としながらも,野蛮なリズムを多投するなどバーバルな傾向も示した作品で,ストラヴィンスキーとドビュッシーという2人の全く異なる巨匠の間で揺れたフランキストと形容すればよいでしょうか。中庸だと言えなくもありませんが,前近代とは比較にならないほど派閥間のベクトルが開いてしまった近代以降の音楽で折衷様式をとろうとすれば,そのどれとも中途半端に距離が開いてしまう。これが彼を無名に終わらせてしまった感は拭えません。

★★★★
"Musique de Chambre : Poème Mystique / Sagesse / Sonate-Poème / Musique Orante" (INA : 262006)
Bernard Plantey (tnr) Devy Erlih (vln) Henriette Puig-Roget (p) Quatuor de l'O.R.T.F.
管弦楽作品とオルガン曲以外はほとんどCDをお見かけしない彼の,珍しい器楽ものです。彼はオルガニストでありフランキストでしたが,作風もその経歴が示す通り。良く言えば少ない音数で,ゆったりと時間を使い訥々と淡泊に語り,静かな感動を呼ぶタイプなのですが,悪く言うと大味で地味とも言える。これは多分,彼が一音を持続して鳴らすことのできる楽器=オルガンの演奏家であったことと無縁ではないと個人的には思っています。世代的にはドビュッシーよりも下にあたるだけに,彼の和声感覚はフランキストの中でも近代的で,旋法性も高い。しかし,平均十数分にも及ぶ淡々とした主題の装飾的反復は,オルガンで聴けば荘厳かも知れないながら,よほど時間と気持ちにゆとりのある人間でない限り,その激情性のなさを前に眠くなるかも。そこを「厳かな響き」と聴くかどうかで,彼の評価は二分されるのでは。個人的には,淡泊な『映像』(ドビュッシー)ともいうべき『神秘的な詩曲』など,それなりに面白く聴きました。ケックランの管弦楽作品を好む方には推薦。ケックランは器楽・歌曲に限ると思われる方にはお薦めしないCDです。演奏はトゥルヌミールの直弟子にして重鎮ピュ イグ=ロジェを中心に,抜群に良い。彼の音楽を好む方なら甲種推薦レベルの秀演です。

★★★★☆
"Etudes de Chaque Jour / Douze Préludes-Poèmes" (Accord : 201312)
Marie-Catherine Girod (piano)
例によって例の如く,近代のジャンヌ・ダルクことマリー・カトリーヌ・ジロ女史が1990年に吹き込んだこの珍盤は,オルガン作品にばかり光が当たっているトゥルヌミールが,晩年に書き残した2編のピアノ作品を収録。特に『練習曲』は,作曲者にとって生涯最後のピアノ曲になりました。トゥルヌミールは極端な観念論者であったため,特に管弦楽やオルガン作品には,あっちの世界へトランス中としか思えない,延々と同じ和音を鳴らしたままの大味なものも多いのですが,否応なく音が減衰するピアノ曲では,輪郭線も明瞭になり,具象性が高くなります。パーカッシブな打鍵,躁鬱的に変化するリズムの野趣,凝った旋法表現をベースに全体を満たす異教徒趣味の神秘性は,晩年のドビュッシーに端を発し,シュミットやドコー,スクリャービンのピアノ曲を経由して,デュティーユのピアノ・ソナタの手前まで蕩々と流れる,低体温高流動型ピアノ曲の流れにしっかり同調。もしブラインド・テストされたなら,シュミットやデュティーユ初期の作だと誤答する人も多いのではないでしょうか。ただし,基本が教会オルガン奏者だっただけに,彼の書法はシュミットほどおどろおどろしくはありませんし,デュティーユよりずっと簡素。その意味では,同じくオルガン作家だったアランの流儀を,より現代的に引き継いだ作曲流儀だったといえるでしょう。当時まだまだ気を吐いていたジロの演奏はここでも秀抜。あどけない幼児の笑みと,デモーニッシュな精神錯乱を交互に使い分けるデュナーミクで,聴き手に向かって凄みます。

★★★★★
"Suite Gothique: Toccata (Boellmann) Scherzo (Gigout) Impromptu / Toccata (Vierne) Communion sur un Noël (Huré) Paraphrase-Carillon (Tournemire) Toccata (Barié) La Vallée de Béhorléguy (Bonnal) Callion Orléanais (Nibelle) Suite pour Orgue / Variations sur un Thème de Janequin / Litanies (Alain)" (Calliope : CAL 9924)
André Isoir (organ)
ソリストは1935年フランスのサン・デジェ生まれ。フランク校を経てパリ高等音楽院へ進み,1960年にオルガン科,即興演奏科で一等。1970年代には黄金期を迎え,7年間続けて仏ディスク大賞を貰ったこともあるそうです。本盤はそんな彼が1976年に吹き込んだフランス近代オルガン秘曲選。フランク傍系の懐旧的なボエルマンとジグに始まり,フランクをベースにしつつも装飾音が絢爛豪華なヴィエルヌを緩衝帯として一気にドビュッシー世代へ。神秘主義的で晦渋なアランを除く全員が,フランク,ヴィエルヌらの直弟子世代。ドビュッシアン語法を参照しつつも,デュプレ以降の変態系オルガニストとは一線を画す楽曲は,いずれも繊細な和声とかっちりした形式感で,ポスト・フランキズムかくあるべしと主張する。近代フランス音楽史を,教会演奏家の系譜で概観させる構成には拍手喝采の一語しかございません。個人的には,他の作家が穏健なモード趣味に止まるところ,一人場違いに感性を炸裂させるトゥルヌミール『パラフレーズ=カリヨン』のオーラに脱帽。シュミット的な呪術性と躍動感を,教会音楽の神秘性と融合。即興演奏の如く自由な拍節上へ,煌びやかな和声の塊が天恵の如く降り注ぐ。10分近いにも拘わらず一切間延びしない構成美。これほどのオルガン曲を書く人だとは,正直思っていませんでした。なにぶん即興性の濃い曲。血肉の如く作品を理解しているのが明らかなシンコペーションで,曲の持つ野趣と妖気を生き生き再現前する演奏ゆえに良く聞こえるところは少なからずあるでしょう。たぶん別人で聴いたら,呆気にとられるほど散漫になるのでは。その意味でも,本盤最大の成功要因は,慧眼に裏打ちされたイゾワールの演奏。ユレやボナールら,日頃お天道様がまず気にも掛けない彼らが珍しく脚光を浴びたこの機会。演奏者が彼のような人物だったのは,まさしく幸運と言わねばなりますまい。

(2001. 12. 28)