Vの作曲家



レイフ・ヴォーン=ウィリアムス Ralph Vaughan Williams (1872-1958)

イギリスの作曲家。1872年12月12日,グロースターシャー近郊のダウン・アンプニー(Down Ampney)生まれ。1890年に18歳で王立音楽学校へ入学,さらに翌々年にはトリニティ・カレッジへ進む。1895年,王立音楽学校へ再入学(1901年5月修了)。同年に聖バルナバス教会(St.barnabas)のオルガニストとなり,1897年に結婚してドイツへも留学,ベルリンでマックス・ブルッフに師事した。次いで1908年にはパリ,ギリシャへも遊学,パリではモーリス・ラヴェルに師事して研鑽を積む。帰国後,1919年に王立音楽学校の作曲科教授に就任して後進の指導に当たり,近代英国の楽壇に巨大な影響を与え,後年はコーネル大学(米国:1954年)でも教鞭を執るなど,教育者としても活躍。1921年から1928年まではバッハ合唱団の指揮者も務めた。印象主義,後期ロマン派などの折衷的様式をとり,近代イギリス音楽の作風の礎を築くとともに,1903年頃から生涯取り組んだイギリス民謡・宗教音楽の収集活動を下敷きにして,合唱曲・宗教音楽の分野で特に優れた作品を残す。1958年8月26日,就寝中に心臓発作を起こしてロンドンで死去。なお,彼の名前Ralphはラルフとも読め,一般には「ラルフ」と表記されるが,彼自身は生前「ラルフ」と読まれるのを嫌い「レイフ(Rayf)」を用いていたという。


主要作品
※Kennedy, M. 1964. The works of R.V.W.. Oxford. およびKennedy, M. 1980. を入手しました。作品表は時間が出来次第,完全版へ改訂します。

交響曲 ・海洋交響曲(交響曲第1番) a sea symphony (1903-1909)
・ロンドン交響曲(交響曲第2番) a London symphony (1912-1913)
・田園交響曲(交響曲第3番) a pastoral symphony (1916-1921)
・交響曲第4番 symphony No. 4 (1931-1934)
・交響曲第5番 symphony No. 5 (1938-1943)
・交響曲第6番 symphony No. 6 (1944-1947)
・南氷洋(交響曲第7番) sinfonia Antartica (1948-1952)
・交響曲第8番 symphony No. 8 (1953-1955)
・交響曲第9番 symphony No. 9 (1956-1957)
管弦楽 ・湖沼地方にて in the fen country (1904)
・ノーフォーク地方の狂詩曲第1番 Norfolk rhapsody No.1 (1906)
・「すずめばち」組曲 'the Wasps' suite (1909)
・トーマス・タリスの主題による幻想曲 fantasia on a theme of Thomas Tallis (1910)
・グリーンスリーヴスの幻想曲 fantasia on 'greensleeves' (1934)
・ダイヴズとラザラスの5つの変奏曲 five variants of Dives and Lazarus (1939)
・弦楽オーケストラのためのパルティータ partita for double string orchestra (1946-1948)
・コンチェルト・グロッソ concerto grosso (1950)
・古いキャロルの旋律による前奏曲 prelude on an old carol tune (1952)
・管弦楽のための変奏曲 variations for orchestra (1957)
・偉大なるジョン・バルビローリへの賛辞 flourish for glorious John (1957)
協奏曲 ・ザ・ラーク・アセンディング the lark ascending (1920)
・フロス・カンピ flos campi (1925)
・ヴァイオリンと弦楽のための協奏曲 concerto in D minor for violin and strings "concerto accademico" (1925)
・ピアノ協奏曲 concerto in C major for piano (1931)
・ヴィオラと管弦楽のための組曲 suite for viola and orchestra (1934)
オーボエと弦楽のための協奏曲 concerto in A minor for oboe and strings (1944)
・2台のピアノのための協奏曲 concerto in C major for two pianos (1946)
・詩編104番の旋律による幻想曲 fantasia (Quasi Variazione) on the "Old 104th" Psalm Tune (1949)
・ロマンス romance in D flat for harmonica (1951)
・バス・テューバのための協奏曲 concerto in F minor for bass tuba (1954)
映画音楽 ・49番目のパラレル 49th parallel (1940)
・コスタル・コマンド coastal command (1942)
・人民の大地 the people's land (1943)
・或るベルギー農場の物語 the story of a Flemish farm (1943)
・蹂躙された半島 stricken peninsular (1944)
・ジョアン・ゴッデンの恋 the loves of Joanna Godden (1946)
・南氷洋のスコット scott of the Antarctic (1948)
・霞む島 dim little island (1949)
・苦渋の春 bitter springs (1950)
・エリザベス女王の王国 the England of Elizabeth (1955)
・ウィリアム・ブレイクの展望 the vision of William Blake (1958)
吹奏楽 ・海の歌 sea songs (1923)
・イギリス民謡の組曲 English folk song suite (1923)
・3つのウェールズ地方の讃歌による前奏曲 prelude on three Welsh hymn tunes (1955)
・吹奏楽のための変奏曲 variations for brass band (1957)
室内楽 ・弦楽四重奏曲 quartet No. 1 (1908) {2vln, vla, vc}
・幻想五重奏曲 phantasy quintet (1912)
・2つの小品 two pieces (-1923) {vln, p}
・6つのイギリス民謡の習作 six studies in English folksong (1926) {vc, p}
・家事の音楽 household music (1940)
・弦楽四重奏曲 quartet in A minor (1944) {2vln, vla, vc}
・ヴァイオリン・ソナタ sonata in A minor (1954) {vln, p}
・ロマンス romance for viola and pianoforte (-) {vla, p}
合唱曲 ・イギリス風の讃歌 the English hymal (1906/1933)
・未知なる地を前に toward the unknown region (1907) {choir, orch}
・ウェンロックの頂にて on Wenlock edge (1909) {choir, orch}
・5つの神秘的な歌 five mystical songs (1911) {choir, orch}
・天にまします主をたたえ o praise the load of heaven (1913)
・さあ手を叩き(詩編47番) o clap your hands (1920) {choir, orch}
・詩編第90番 lord, thou hast been our refuge (1921) {choir, btn, orch}
・ミサ曲 mass (1922)
・サンクタ・シヴィタス sancta civitas (1925) {choir, orch}
・テ・デウム te deum (1928)
・詩編第100番 psalm No. 100 (1929) {choir, orch}
・3つの合唱による讃歌 three choral hymns (1929) {choir, orch}
・ピルグリム・ペイヴメント the pilgrim pavement (1934) {sop, choir, org}
・5つのチューダー朝の肖像 five Tudor portraits (1935) {choir, orch}
・ジョージ5世の死を悼む涙 nothing is here for tears (1936) {choir, orch(p/org)}
・ドナ・ノビス・パセム dona nobis pacem (1936) {choir, orch}
・音楽へのセレナーデ serenade ot music (1938) {choir, orch}
・典礼 services (1939)
・イギリス我が祖国 England, my England (1941) {choir, orch}
・感謝祭の歌 a song for thanksgiving (1944) {choir, orch}
・つむじ風からの声 the voice out of the whirlwind (1947) {choir, org(orch)}
・天の父への祈り prayer to the father of heaven (1948)
・四季の民謡 folk songs of the four seasons (1949) {vo, orch}
・オックスフォード・エレジー an Oxford elegy (1949) {narr, choir, small-orch}
・光の御子たち the sons of light (1950) {choir}
・詩編第23番 psalm No. 23 (1951)
・ピルグリムの旅 Pilgrim's journey (1951/1962) {tnr, btn, choir, orch(org)}
・古い詩編第100番の旋律 the old 100'th psalm tune (1953)
・ホーディ hodie (1954)
・テ・デウムとベネディクトゥス te deum and benedictus (1954)
・エゼキエル書より-航空機のヴィジョン a vision of aeroplanes -from Ezekiel (1956)
・賛美のコラール a choral flourish (1956)
・エピタラミオン epithalamion (1957)
オルガン曲 ・前奏曲とフーガ prelude and fugue
・ウェールズ地方の讃歌による3つの前奏曲 three preludes on Welsh hymn tunes
・2つのオルガンのための前奏曲 two organ preludes
ピアノ曲 ・讃歌的前奏曲 hymn tune prelude on song 13
・序奏とフーガ introduction and fugue {2p}
・山間の湖 the lake in the mountains
・6つの指導用小品 six teaching pieces
・6つの短い小品からなる組曲 suite of six short pieces


ヴォーン=ウィリアムスを聴く


★★★★☆
"Complete Symphonies / The Wasps / Fantasia on a Theme by Thomas Tallis / Serenade to Music / In the Fen Country / The Lark Ascending / Norfolk Rhapsody No. 1 / English Folk Song Suite / Fantasia on Greensleeves / Piano Concerto / Job" (EMI : 5 73924 2)
Adrian Boult (cond) Norma Burrows, Sheila Armstrong, Susan Longfield, Marie Hayward (sop) Alfreda Hodgson, Gloria Jennings, Shirley Minty, Meriel Dickinson (alto) Ian Partridge, Bernard Dickerson, Wynford Evans, Kenneth Bowen (tnr) Richard Angas, John Carol Case, John Noble, Christopher Keyte (bass) London Philharmonic Orchestra : New Philharmonia Orchestra : London Symphony Orchestra
作品数が多いことも手伝って敬遠気味だった小生もこのCDには吃驚させられました。全8枚組でありながら僅か3700円ほどで,英国近代ものの重鎮ボールトによる全集が聴けるというこのCD,文句なしに決定版と申せましょう。ヴォーン=ウィリアムスが一般に知られているのは民謡の編曲作品で,ここにもそれは入っていますが,印象主義ファンには是非,『田園』や『南氷洋』を聴いていただきたい。かつてラヴェルに師事し,フランス近代の色彩感覚をイギリスへと持ち込んだ張本人にして黒幕ならではの,色彩感が横溢致します。

★★★★★
"Dona Nobis Pacem / Four Hymns / Toward the Unknown Region / O Clap Your hands / Lord, Thou Hast been Our Refuge" (Hyperion : CDA 66655)
Matthew Best (cond) Judith Howarth (sop) John Mark Ainsley (tnr) Thomas Allen (btn) Matthew Souter (vla) Corydon Singers : Corydon Orchestra
ヴォーン=ウィリアムスには民謡の収集・発掘者という顔があり,我が国における彼の認識は,どうもこちらのほうが先行しているようです。向こうでもそうした側面に人気が集まるのか,実家に島流し状態のためここに掲載できないマリナー/アカデミー室内なども録音しており,クラシック関係の雑誌にも運が良ければ挙げられるほど。しかし,正直申してヴォーン=ウィリアムスの編曲ものは凡庸以下。リチャード・クレイダーマンも喜びそうなキッチュさとチープネスしかありません。真っ当なクラシックの作曲家として,正しく彼の真価を知りたいならぜひもう一つの顔,宗教音楽の大家としての彼に注目していただきたい。時にお行儀が良すぎるイギリスものの紳士然としたスノビズムを,静謐な教会旋法が見事にうち消します。ヴォーン=ウィリアムスの合唱曲を連続録音しているマシュー・ベストの録音中でも,これはピークをなす名盤と申せましょう。演奏抜群にして静謐な楽曲と言うことなし。甲種推薦です。

★★★★★
"Five Tudor Portraits / Five Variants of Dives and Lazarus" (Chandos : CHAN 9593)
Richard Hickox (cond) Jean Rigby (msp) John Shirley-Quirk (btn) London Symphony Chorus : London Symphony Orchestra
あまり録音をお見かけしない,合唱曲付帯の管弦楽二編を併録した本盤は,イギリス近代の演奏に掛けては最も安定感のある指揮者のひとりであるリチャード・ヒコックスの指揮で聴けるアリガターイ一枚。『5つのチューダー朝の肖像』は,ヘンリー8世の教師を務めていたジョン・スケルトン(1460-1529)の詩に霊感を得て構想された作品。スケルトンは,当時としては珍しく,権威ある地位にいながら市井の人間生活に根ざした人間味溢れる詩を書いた人。そうした彼のユーモアを音楽的に表そうとしたからでしょうか。ヴォーン=ウィリアムスにしては,かなり生き生きとした躍動的な作品となっている。多彩なリズム配置と民謡起源の明瞭な旋律は,軽口を叩く井戸端のおかみさんの如く気っ風が良く,庶民的な感覚に富んでいます。ちょっと古いですが,どこか『屋根の上のバイオリン弾き』を思わせる親しみやすさがありますねえ。幸運なことに本盤,演奏も大変に良い。記憶が確かなら,のちグラモフォン誌から批評家選定盤に選ばれたんじゃなかったでしょうか。

★★★★★
"Serenade to Music / Five Mystical Songs / Fantasia on Christmas Carols / Flos Campi" (Hyperion : CDA 20420)
Matthew Best (cond) Elizabeth Connell, Anne Dawson, Linda Kitchin, Amanda Roocroft (sop) Diana Montagne, Jean Rigby, Sarah Walker (msp) Catheline Wyn-Rogers (alto) John Mark Ainsley, Arthur Davies, Maldwyn Davies, Martyn Hill (tnr) Thomas Allen,Alan Opie (btn) John Connell (bass) Gwynne Howell (bass) Charles Tunnell (vc) Nobuko Iwai (vla) Maciej Rakowski (vln) Corydon Singers : English Chamber Orchestra
英国近代の合唱作品を録音させると滅法上手なマシュー・ベストとコライドン・シンガーズが進めるハイペリオンへの連続録音中の一枚。英国近代を代表する作曲家で,永遠のライバル会社シャンドスともモロにかち合う。それだけに,威信の掛かったハイペリオンのシリーズは,負けず劣らずどれも演奏が良いですが,このCDもご多分に漏れず,大変に演奏レベルが高い。ハイペリオンにソロ歌手として録音多数の壮々たる顔触れが一堂に会する『音楽へのセレナーデ』は,最近出たヴォーン=ウィリアムス録音では決定版と言っても宜しいのではないでしょうか。海向こうから近代和声の色彩感を取り込みつつも,あくまで英国の朴訥な旋律と懐旧的なロマン派様式を拡張し,穏健な近代音楽を模索した作曲者の,温故知新な作風を象徴するようなCDです。

★★★☆
"Songs of Travel / The House of Life" (Voice of Lyrics : VOL IC 201)
Philippe Fourcade (btn) Enrico de Mori (p)
交響曲集の選択肢は比較的豊富な反面,それ以外のジャンルでは余りCDを見たことがないヴォーン=ウィリアムス。実際の録音を前にして,彼の歌曲を聴いた記憶がない事実に改めて気が付いた次第。1901年の『旅の歌』と,1903年作曲の『命の家』の二編が収録されてます。後者はあのロゼッティに曲を付けたもの。私ならずとも,彼がラヴェルに師事してイギリスの近代化に貢献した史実を思い出さずにはおれません。期待したんですけどねえ・・。まだ後年のモダニストぶりは皆無。地味なフニクリフニクラみたいな曲想はプレモダンで,旋律も和声も教条的ですし,先進国だった仏独の歌曲に聴ける高雅な旋律美も希薄。そう言えば,彼のラヴェル詣では1908年でしたっけ。彼ほどの才人でも,留学するまではお山の大将,過渡期だったんでしょう。せっかくの希少な録音機会に,何でこんな地味なのばっか選んでしまったのか,聴くほどに謎は深まるばかり。連続録音するつもりとか?ナポリ民謡でも歌い出しそうに豪壮なお顔立ちのバリトン歌手は,仏人ながらイギリスへ渡ってギルドホール音大へ進学。のちパリの国立歌劇大学で学んだ人物。渡英を機にヴォーン=ウィリアムスの歌曲を知って傾倒したとかで,本盤も贔屓活動の一環なんだそうです。コントロールはまずまずながら,声質が少し鼻に掛かって棘があり,情感のメリハリも乏しく低域の伸びもやや不足。見た目そのままクラシックというより民謡向きでは。ピアノはヴェローナを拠点に活動する指揮者兼ピアニストで,バリトンとはヴェローナ歌劇場での共演が縁だった様子。案外イタリア風は堂に入ってるのかも知れません(笑)。

★★★★☆
"Mass / Te Deum (V-Williams) Requiem / Take him, Earth, For Cherishing (Howells)" (Hyperion : CDA66076)
Matthew Best (cond) Janet Coxwell (sop) Michael Chance (c-tnr) Philip Salmon (tnr) Jonathan Best (b) Thomas Trotter (org) Corydon Singers
イチロー並みの高精度・高打率で英国近代の歌唱界に君臨するコライドン・シンガーズは,マシュー・ベストが1973年に結成した合唱団。いらい四半世紀,驚くほどに高精度なアンサンブルを利して,数々の名盤を残してきました。本盤は1983年に録音されたもので,知名度においてはかなり分の悪いハウエルズが,英国近代の大ボスを,自らの本分たる無伴奏合唱曲で迎え撃つ体裁になっています。もちろん,ヴォーン=ウィリアムスだって好い曲でしょう。しかし,合唱曲が本分のハウエルズは,軽々と御大を食ってしまう。前年の息子の死を受けて書かれた『レクイエム』は1936年,『イムヌス・パラディシ』の僅か二年前の作品でもある。これ見よがしにグレゴリオ聖歌を引用しつつ,本体に入るとやっぱり俗っぽい御大に比べ,遙かに敬虔な精神性をその透明感溢れる響きに讃えつつ,昇天しそうなほど繊細かつ精妙に和声を調合する。俗世の無駄を削ぎ落とした響きの妙には溜息しか出ません(特に中ほどの人智を超えた移調感覚は失禁もの)。合唱曲に特化したハウエルズが,楽器演奏家とその周辺のファンが大多数を占めるクラシックの世界で辺境に追いやられているのは,仕方ないのかも知れません。しかし,作曲家としての能力は決して御大に引けを取るものではないと思います。再評価されて欲しいですねえ。合唱隊は曲のせいもあるのでしょうが,昨今の録音と比べると遙かに若々しく,きびきびとしたテンポ取りと明瞭な滑舌が印象的。細部に時折細かいアラがちらつくものの,やはり第一級の精度。水準は遙かに超えていると思います。

★★★★
"Tuba Concerto (Gregson) Tuba Concerto (Steptoe) Tuba Concerto in F Minor (Vaughan-Williams) Tuba Concerto, op.46 (Golland)" (Naxos : 8.557754)
James Gourlay (tba) Gavin Sutherland (cond) Royal Ballet Sinfonia
部外者には一枚岩に見えるクラシックの世界も蓋を開けてみると結構派閥があり,特に吹奏楽なるサブカテゴリのある管楽器界はなかなか複雑です。ジョン・ゴランドなる,恐らく吹奏楽やってる人以外はまず名前を聞かない作家を含め,ヴォーン=ウィリアムス以外は全て金管マニア御用達な近代英国作家をずらり。しかもチューバ協奏曲ばっかで集めた本盤は,それを象徴する企画といえるかも知れません。私事ながらお目当ては申すまでもなく,オネゲリアンな重厚さをちらつかせつつ絢爛和声を展開する金管パッパカパー男グレグソン。「ソロ楽器の制約を補うべく,きっと和声ごってりお腹いっぱいだぞ?」との読みはまさしくビンゴ。スーパーマンのテーマをさらに飾り立てたような分厚い和声と,いかにもブラスバンドが好きそうな,かっちりした形式感はまさに本盤の白眉。この時点で充分元は取れました。ステプトーは無調ちらつく気難しめのポスト・ロマン主義。本家と違いワグナー的な大仰さはないものの,和声や対位法のセンスはアイスラーに良く似ていますか。大河ドラマの主題歌風の第一楽章こそゲンナリするものの,モランやフィンジそこのけの憂い漂う二楽章の情緒に「さすが凡人やないわ・・」と瞠目しきりのVW御大も悪くない。やや構成力に難があり,素人臭さが落胆を誘うゴランドも,甘美な二楽章で本領を発揮して頬を緩め,充分に好事家趣味を満たします。この選曲で1000円しないナクソス。これで採算とってるんだから,ホント怖ろしいレーベルですねえ。演奏する王立バレエ小響は,サドラーズのそれとは関係なく,バーミンガム王立バレエ管の別称。初めて聴くオケですけど,演奏は優秀。注意して聴くと細部に粗が残るものの,高名なおにゃんこ室内管(渡辺マリナー・・失礼)よりはずっと聴き映えします。ナクソスの英国ものには駄作が目立って少ないとの印象を,今回も裏切りませんでした。

★★★
"English Tone Poems :
A Somerset Rhapsody (Holst) Concerto Grosso / The Wasps (Vaughan Williams) Air and Dance (Delius) Serenade (Warlock)" (EMI : TOCE 6415)

Norman Del Mar (cond) Bournemouth Sinfonietta ; Bournemouth Symphony Orchestra
イギリス近代の交響詩ばかりを集めた作品集,こちらは『惑星』だけが有名なホルスト他の作品が収録されています。ヴォーン=ウィリアムス絡みの作曲家が殆どを占めるイギリス楽壇,ふと考えてみますと,ドイツもコイツもヴォーン=ウィリアムスもどき。ブラインド・テストをされてイギリスものだとは分かっても,誰の作品だとすぐに分かるほど個性を出すことに成功した作曲家は少なかったな〜,と思わずには聴けない「もどき」な作品満載で,眉間に皺を寄せずには聴けません。ヴォーン=ウィリアムスの2作品も,『グリーンスリーブス』を編曲したときのような軟派な表情が覗く軽音楽風の凡作。気のせいか周りの作品も軽めの作品ばかりでちょっとがっかりしました。そんな中ではビーチャム/ハレ管の連続録音で知られるようになったディーリアスの作品が色彩感豊か。「トーン・ポエム」さながらの瀟洒なロマンティシズムを備えた佳品で,なかなか良く書けており驚きました。彼の作品は通俗的というか甘さに流れているという印象しかなかったのですが,CD買ってちゃんともう一度聴いてみようかなあ。