■■伝統歌謡を“最高の場所”で■■

シティ・ヌルハリザ インタビュー

早いもので、『チンダイ』の大ヒットからもう5年。気がついたらシティは23歳になっていて、すでに10作以上のアルバムをリリースしていた。今年3月に発売された『サンガル・ムスティカ』(SANGGAR MUSTIKA)は、トラッドをベースにしながらも、よりポップス的なアプローチ。これまでのファンの期待を決して裏切らず、さらに新しいファンを取り込めるような聞きやすい作品だ。リリースの直前、プロモーション準備などの過密スケジュールをこなす中で時間を割いてくれた彼女に話を聞いた。

――調子はどうですか?
●いいですよ。

――まずはニューアルバムについて簡単に説明してくれますか?
●OK。今回のアルバムのコンセプトはトラディショナルで、ザピンやジョゲット、イナン、チャングン、クロンチョン……全部マレーの伝統リズムです。全10曲のうち8曲が新曲で、2曲は古い曲。そのうち1曲は昔P・ラムリーが歌った「ブンガ・ムロール」(Bunga Melor)、もう1曲はラフィア・ブアン(Rafiah Buang=60〜70年代に活躍した女性歌手)の「ビシカン・ハティ」(Bisikan Hati)です。
プロデューサーはパック・ンガ、ラムリ・M・S、S・アタンの3人。わたしも1曲だけ、新曲の「パナス・ブルトゥドゥ・グラップ・ブルスル」(Panas Berteduh Gelap Bersuluh)で詩を書きました。作曲陣には新しい人も何人かいます。収録されている曲は、ほとんどが(道徳的または宗教的な)メッセージソングで、ラブソングのような歌はありません。

――ソロアルバムは1年ぶりですね。
●(前作『サファ』リリース以来の)1年間、どこのレコード会社とも契約していませんでしたが、今回スリア・レコードと再契約したので、アルバムを録音しました。マレーシアはまだ景気が少し不安定ですが、いい反応が返ってくることを願っています。以前のアルバムのように10万コピーくらい売れるといいのですが……。

――メッセージソングというのは、若い人たちへのメッセージ?
●若い人も含めて、すべての年齢層の人たちのためのものです。だから、ロマンチックな恋愛の歌ではなくて、神に対する愛といったメッセージが入っています。

――アルバム・タイトルの意味は?
●「サンガル」というのは場所、「ムスティカ」は美しい、というような意味です。伝統歌謡という芸術をこの最高の場所で提供して、伝統文化を大切に思うような心を皆さんに持ってもらいたい、という意図を込めました。

――これまでに伝統アルバムは2枚出していますが、今回の作品はなにか違いがありますか?
●アレンジの面で新しい点が少しあります。今回初めてラムリ・M・Sをプロデューサーに迎えたことで、現代的なポップスと伝統歌謡を融合したような曲が入っています。それと、最近マレーシアではアラブのポップスが人気ありますよね。わたしも2曲歌っています。

――それは、アラブポップスそのものなんですか? それとも、アラブ起源のマスリみたいな曲とか?
●アラブの曲調に(マレーシアの)ザピンを少し合わせたような曲です。

――今回のアルバムはトラディショナルですが、例えば、ポップス作を何枚か出したら次はトラディショナルとか、なにか決まりごとがあるのですか?
●うーん、特に決まってはいませんが、重要なのは、トラディショナルの次はポップスのアルバムということです。トラディショナル・アルバムを出す前にポップスを1枚、または2枚出さなければいけない、というようなことはありません。今回の場合は、そろそろトラディショナル・アルバムをリリースするのにちょうどいい時期だったと思います。


自分の手でビデオを作りたい

――デビューした時、現在のような人気を獲得できると思っていましたか?
●デビュー当時は、いまのような位置にまで上れるとは思いませんでした。実際にここまで来るのに時間はかかりましたし、一生懸命に仕事してきたつもりですが、幸運だとも感じています。でも、小さいころは、歌手になることは考えてませんでした。警官になるのが夢でしたから……。父が元警察官だったので、馴染みがあったんです。ただ、母は歌手でしたし、祖父も音楽家でしたから、音楽からは離れられない環境にありました。

――歌を始めたのは何歳ごろ?
●真剣に歌い始めたのは12歳の時で、ショーやコンテストによく出ていました。レコードデビューは16歳になってからです。

――いつかは歌をやめるとか、将来のことを考えたことはありますか?
●例えば10年後、引退して自分のビジネスを始めるとか、もし結婚したら引退して家族と一緒に過ごすとか――そんなことは考えたりしています。ただ、結婚してもビジネスは続けたいと思っています。

――結婚の予定は?
●えっ、まだですよ(笑)。仕事がいっぱいありますからね。

――アルバム制作にもっと自分で積極的に参加したいと思いますか?
●これまでにも詩はいくつか書いていますが、いつかは曲も作ってみたいです。それと、ビデオクリップの制作にも興味があります。今回はインドネシアでロケをしたんですが、とてもいい勉強になりました。将来は自分の手でビデオを作ってみたいと思います。

――最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。
●わたしの歌を聞いてくれている日本の方々に感謝しています。もう3年ほど日本へは行っていませんが、近いうちに日本公演が実現して、ファンの皆さんに会えることを願っています。アルバムを買ってくれたり、Eメールでメッセージをくれる方たちがいて、とてもうれしく思っています。いつか日本へ必ず行きます。ありがとう。


2002年3月7日 クアラルンプール市内のホテルにて

聞き手:アサ・ネギシ/深井信 訳:深井信 写真提供:スリア・レコード


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