FUJI ROCK FESTIVAL'00

 7月29日土曜日。去年と同じように、早朝東京駅を出発する新幹線に乗り、越後湯沢に向かう。駅からシャトルバスには乗らずに路線バスに乗ってまずは旅館(会場から徒歩15分くらい)へ。荷物を置いて会場まで歩く。さっそく陽射しが照り付け、前日に降ったという雨のせいか地面はぬかるんでいるところもあった。

 10時頃会場に到着。ビニールシートを敷き、いきなり寝転がってみる。なぜだかわからないが「ここに帰ってきた」といった感情に襲われる。とりあえず人は沢山いる。天気もよし。

 でもっていきなり食欲。オアシスと呼ばれる屋台ゾーンで早速牛串(200g、900円)に喰らいつく。ここで根性をみせておかないと、フジロックになめられそうな気がしたのだ。肉汁したたるそのブツを胃に収める。

 前日の夜行で来ていた友人たちがレッドマーキーのテントの中にいた。彼女達の本命のバンドはゆらゆら帝国。一人は持参したペットボトル入りの酒をぐびぐびいってる。やばい。早くも負けてる気がする。とりあえず自分もビール。

 そうこうしてるうちにグリーンステージでライブが始まった。OZOMATLI。メンバー全員がとてつもなく貧相なみなりをしていて、最初はスタッフの音出しかと思った。なんちゅうの?ラテングルーヴってやつ?よく分からなかったけどナイスな演奏で前の方は盛り上がってる。

 その後レッドマーキーテントを偵察に行く。韓国のバンドCRYING NUTが演奏していた。これがとても謎なバンドで、爽やかメロコア風の兄ちゃん4人+デブで黒ずくめで白塗り男という編成なのだ。このでぶちゃんはデスメタル風でもあり、お笑い風でもあったのだが、どうやら本人は大マジのようだった。この写真だとちょっと彼の姿は確認しづらい。

 グリーンステージに戻ってROLLINGS BAND。ヘンリー・ロリンズは当然ロンパン一丁で最初から声を張り上げる、絞り出す、うなる、ほえる。とってもジェントルでかつどう猛なこのおっさん。音は全然好みじゃないのだけど、彼の誠実なパフォーマンスには頭が下がる。このおっさんのことはなぜか昔から好きだ。

 

 真正面からグリーンステージを見渡すとこんな感じ。昨年で学習したのか今年はパラソル持参のグループが多かった。みなさんにお願い。パラソル立てる時はまっすぐ立てよう。斜めに置かれると後ろに座ってる人らがステージを見ることが出来ない。座ってだらだらライブを見られるのがフジロックのいいところなのだから。

 そしてついに始まったYO LA TENGO。初めて見るライブだ。今回のフジロック出演メンツの中で心から好きだと言えるバンドの一つ。あまりにゆるーく始まったその演奏は時折ノイズギターで会場を刺激し、そしてまた弛緩の渦に巻き込んで行く。楽器をせわしなく交換しながらあくまで3人でも演奏を続ける。圧巻はカラオケ状態で3人とも前に出てきて、男2人のダンス(超かわいらしい振り付け)&コーラス付きで演奏された"YOU CAN HAVE IT ALL"だ。そのロックミュージシャンとしては(いや一般人としても)余りにもいけてないルックスを逆手にとった、最高のダンス。

 もっと長く見たかった。なんか来日する予定があるとかないとかぼそぼそしゃべってたから、今度ライブがあったら是非見に行こう。

 レッドマーキーのテント出口付近でJUNKYARDのまささんと待ち合わせ。昨年のこぐまレコード10000ヒット記念プレゼントのこぐまオリジナルTシャツを渡す。待ち合わせのときの僕の目印は、赤いFILAの帽子&FC東京のタオルマフラー。案の定すぐに見つけてもらえた。つうかその前に俺自身がこぐまTシャツ着てたのだった。確かに渡したという証拠の写真を撮る。まささんどうも有難う。

 続いてレッドマーキーでゆらゆら帝国。今や大人気のこのバンド。なんとも言えずカッコよい。スリーピースならではの存在感。「ミーのカー」は最高に気持ち良くて、この流れに身を任せてタバコでも吸おうと思ったら、ライターの火がつかない。そしたら後ろからいきなり肩を叩かれて、火を貸してくれた人がいた。なんかフジロックってそんなふうに、普段シャイそうな人も少しオープンになって、少しピースな気分にひたってたりするんだ。タバコをおいしく吸いながら、思う存分ゆらゆらする。いいぞいいぞ。

 グリーンステージに戻ろうとすると、あの最高のリフが聞こえてきた。そう、TEENAGE RIOT!!!!! ソニックユースのステージが始まったのだ。最初からハイテンションのサーストン・ムーア。キムさんはやっぱり可愛いスカートはいて、腕毛をなびかせながら時に吠える。ソニックユースのライブを最後に見たのはもう7年くらい前かな?今のライブは当時より圧倒的に整合性のない演奏で、とにかくノイズに賭ける執念がハンパじゃない。

 若さはどこか難解さを求める。彼らは歳をくったけど、やはり若さが命じる難解さに挑戦し続けてる。途中モグワイを見るべく前列から下がろうとしたら、ポカンと口を開けて尋常じゃないノイズ天国に見入ってる人たちの姿が見えた。分からない人には一生分からないソニックユース。彼等はその意味で文字通りのスノッブなのだと思う。

 そして期待度NO.1のモグワイ。真ん中でギターをひく男(スチュアートだっけ?)が日本代表のレプリカを着て登場する。丸坊主のその姿はあたかも小野ちんかサミアコーチか。ギターにはスコットランドの国旗。一曲目でいきなり持っていかれた。どこにって、あっちの世界へ。マイブラディバレンタインの気持ちいいサウンドの圧力を、ピークの部分だけ抽出して延々続けるような感じ。気持ちいいに決まってる。途中でぼうーっとしてしまい立ってるのもダルくなった。こんなに気持ちいいのに、このまま寝てしまいたいくらいだ。

 モグワイは確かに知名度はないけど、グリーンとかホワイトステージでやっても良かったと思った。あの音が作り出す世界は、絶対に多くの人に届くはずだ。テントではやや収まりきらないくらいの音の力がある。後ろの方ではモニタを眺める人もたくさんいた。本当に良かった。すげえぞモグワイ。

 晩御飯。とても美味しかった。ワインは一杯だけ。あんまり飲んじゃうとトイレに行きたくなって困るからね。

しばらく休憩したあと、ジョニー・マーのステージなどをぼんやり眺めていた。なんだか頑張ってるなあ。偉大なボーカリストと一緒にやってたギタリストが、必死で歌う姿というのは無条件で応援したくなる。なんか琴線に触れる。さあそろそろフィールドオブヘヴンに向かおう。ホワイトステージに向かう道には星がかかっていた。

 ホワイトステージからフィールドオブヘヴンに向かう途中にあるアヴァロンフィールドで「もち豚ステーキ」を喰う。もぐもぐ喰ってたら、その近くで出展してるJAVA(動物実験の廃止を求める会)の人からビラを貰った。なんだかとても申し訳ない気持ちになる。

 でもすげえ美味いの、もち豚。セックスとドラッグの代わりにEAT,SLEEP&ROCK'N'ROLLという感じだ。

 フィールドオブヘヴンから大量に人が歩いてくる。この前にやってた奥田民生が満員だったらしい。聞けば途中から入場制限されたらしい。野外なのに入場制限ってなあ。民生みたさにやってきた人もいただろうに、可哀想。

 そして辿り着いた天国の入口には、ミラーボールが闇の中で回っていた。サーチライトが夜空に突き刺さっていた。

 そして今日の最後はソウルフラワーユニオン。最後に見たのはニューエストモデルの末期だったから一体何年ぶりだったろうか?僕はソウルフラワーには意図的に距離を置いていた。高校生の時あんなに影響を受けていたのに、ソウルフラワーになってからの彼らにはシンパシーを全く感じなかったのだ。

 そんな僕の複雑な思いは、一曲目で完全に敗北した。もうただただ涙が溢れてきて仕方がなかった。踊り狂う周りを気にしながら、僕はしばらくそうやってずっと泣いてたように思う。本当に心から素晴らしい音楽だった。

 「最近オレの好きな人が次々死ぬんや。」と中川が言って、カーティス・メイフィールドの「PEOPLE GET READY」のカバーが演奏された。詞は日本語になっていた。その後、どんと、イアン・デューリー、青江美奈、黒田清、鬼籍に入った人々の名前をあげて、彼らに捧げる新曲が演奏された。「生き残ったものたちの宴 サバイバーズ・バンケット」と紹介されたその曲は最高にカッコよくて、僕はまた泣いた。ちょっと泣きすぎだよアンタ。

 ソウルフラワーは本物だった。彼らは所謂「ロック村」とか音楽業界と無縁のところで勝負出来る数少ないバンドなのだ。彼らだったら(彼ら自身がそう行動してきたように)、ロック村の住人以外にも十分届く音楽を産み出せるだろう。僕が感じてた違和感(アイヌ、沖縄への接近。あまりに現場主義的な音楽活動)とは、そのまま僕自身の曖昧さの裏返しでしかなかったのだ。中川敬は10年前から何も変わっていなかった。それどころか、より強力なスキルと意志を自分たちのものにしていた。その間僕はずっとロック村の中に逃げていたように思う。そこにいれば、自分は安心していられるし、次々と自分の空気にマッチした音楽をセレクトしていくことが出来る。でも結局そこから永久に抜け出せないのだ。

 そんなふうに衝撃を受けたライブが終わり、一日目のフジロックが終わった。疲れ切って宿に向かう。温泉に入って寝た。

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