●ベリエフVVA-14
 ~ 社会主義的豪快さについて ~

博士:今日は珍機中の珍機を紹介しよう。ロシアの誇る飛行艇メーカー、ベリエフが1970年代に試作した、飛行機史上他に例を見ない水陸両用大型VTOL機、VVA-14とそのWIG改造版14M1Pじゃ!
12基のリフトエンジンで上昇発進するという豪快さ、というより無茶加減が素晴らしい。あぁ、たまらん!ワシはこいつら見てると萌え死にそうじゃ!
助手:博士、初登場にして全開バリバリですね。
博士:おうよ! 見よ、この姿を!

【写真01:VVA-14】

他の飛行機にはない独特のフォルム。アニメとかに出てきそう。フロートは収納式だそうです。

 
【写真02:VVA-14のエクラノプラン改造版14M1P】

VVA-14をWIGの試験機として改造されたのが14M1Pです。
固定式のフロート、そして表面効果及び、離水/離陸能力が上げるためでしょう。機首部分にソ連製表面効果翼機の特徴である2基のエンジンが豪快に追加されてます。

 
【写真03:発進! 14M1P】

離水するときの写真だと思います。水しぶきが豪快。


助手:これは何のための試作機なんですか?
博士:70年代にソ連が熱心に開発してた表面効果翼艇、即ちWIG(=「エクラノプラン【ロシア語】)というのの初期のひとつだと聞くがね。
助手:表面効果翼艇、WIG?
博士:君ィ、勉強不足じゃぞ。
表面効果翼艇とは地表面(水表面)のすれすれで発生する揚力を利用して水面を滑走する飛行機と船の中間を行く乗り物のことだ。
昔のソ連が研究に熱心で、軍事に民生に活用しようと、カスピ海でせっせと試験していた。それをスパイ衛星で目撃したアメリカ人は、それらの巨大さと形状の奇異さ故「カスピ海の怪物(カスピアン・シー・モンスター)」と呼んだ。
特に「オリョーノク(ORLYONOK)」「ルン級」などが有名じゃな。


■ VVA-14の子供達。「カスピ海の怪物君」たち ■
【写真04:KM】
表面効果発生のために機首に8つ並んだジェットエンジンが豪快。
 
【写真05:オリョーノク】
この機種は推進をプロペラで得ています。機首部分に離水時に使うジェットエンジン内蔵。でかい鼻の穴が豪快。この3機種のうち一番洗練されているかな?
 
【写真06:オリョーノク】
上陸するオリョーノク、豪快。強襲揚陸艇としても使われていました。
 
【写真07:ルン級】
軍用。背中にとってつけて並んだミサイルランチャーがソ連らしくて豪快。

助手:でかっ!? すげー、なんだコレ!?
博士:最初は小型艇で試験していたのだが、大きい方が安定性も操縦性も優秀なことが分かり、突然でっかいのを試作したらしい。
しかも、なんとこいつらには自力揚陸能力と陸上発進能力もある。
助手:原爆で土木工事をする国らしい豪快さが感じられますね。
さしずめ、カスピ海は怪物ランドといったところでしょうか?
博士:うむ、故に70年代、こいつらの噂が出はじめた頃、西側はそのことを信じようとしなかったんじゃ。ジェーン年鑑に載ったのは80年代に入ってからじゃしの。
助手:それにしてもVVA-14と怪物君達は似ていないような気がします。それに、ベリエフのHPを見ても、「VTOL amphibian=水陸両用 垂直離着陸機」とだけあって「WIG」とは書いてないですね。第一、写真見るとVVA-14はしっかり空飛んでるし。
博士:

うむ、良いところに気づいたな。VVA-14はこれらの先祖にあたる。君の指摘のとおり、もともとVVA-14はWIGではなく水陸両用垂直離着陸機として開発されたようじゃ。

助手:それがなぜWIGに?
博士: リフトエンジンの開発がうまくいかなかったようじゃの。それを抜きにしても他のソ連機とは異彩を放つフォルムだ。私はそこが好きなのじゃ。
助手:確かにVVA-14はデザインがどこかあか抜けていてソ連らしくないですね。
博士:その秘密はVVA-14のチーフ・デザイナーにある。Robert L. Bartini、イタリア人の名前だ。
助手:VVA-14はイタリア人が作ったと?
博士:その通り。イタリア系ロシア人飛行機設計家、バルティーニは1959年、ソ連当局にWIGの発想を持ち込み、ソ連側もこの案に興味を示す。
ソ連の後ろ楯を受け、彼の設計した「Be-1」は1961年に完成、1964年に初飛行している。なぜ初飛行までにそんな時間がかかったのじゃろ。

【写真08: どうやらこれがBe-1】
エンジンや翼の取り付け位置やでかいフロートなどがVVA-14と似ています。滑走離陸が出来るかわかりませんが、一応ランディング・ギアもあるみたいです。しかし、水中翼が付いているところを見ると、素表面効果翼艇としての試験機という意味が強いのではないかと思います。
それにしてもカスピ海よりアドリア海が似合いますね。

助手:おぉ、VVA-14と同じレイアウトながらよりイタリアっぽい!
博士:じゃろ?どうやらこの人物はムッソリーニの手を逃れてソ連に亡命し、WIGの発想をソ連に持ち込んだ人物らしい。
助手:亡命先をソ連にするあたり、きっとインテリのコミュニストだったんでしょうね。
博士:そうじゃな。しかし、スターリンの粛正で逮捕されたこともあるらしい。
助手:夢の国のはずが・・・、その時、どんな気分だったんでしょうね?
博士:

う~ん、どうなんじゃろうな。今となってはわからんな。
それはさておき、バルティーニことはよく分からんが、恐らく14M1Pの完成を見る前の1974年に亡くなっているようだ。

助手:どことなく歴史の悲しい一面が・・・。
博士:エクラノプラン開発の後ろ盾になっていたフルシチョフが失脚したこともあり、その後のソ連におけるWIG開発は終わってしまったのじゃ。そしてWIGはいまだどこの国でも実用化されておらん。そのエピソードのもの悲しさがこの機体のユニークさをさらに強調するのだよ。

【写真09: 朽ちてゆく14M1P】
モスクワ郊外モニノ空軍博物館でほったらかしの14M1P、もの悲しい。
 
【写真10: 朽ちてゆく14M1P】
構造がよく分かる写真。でかいフロートが付いています。14M1Pは地上を滑走して離陸できそうにないですが、VVA-14は滑走して離陸できたのでしょうか?





VVA-14は飛行艇の製造で歴史のあるべりエフ製ですが、後の表面効果翼艇の開発は、アレクセイエフという人物を中心にした中央水中翼船設計局によるものです。

地面効果/表面効果:超低空を飛ぶことによって、翼と地表面の間の空気が圧縮され、これがエアクッションのような効果を発生し、機体の揚力を増加する現象。水面でも同様の効果がある。
Robert Liudvigovich Bartini (1897-1974)はMIG-56という飛行機の開発にも携わっているらしい。ホントかどうかしらないが成層圏を突き抜ける飛行にも興味があって、ロケット飛行機の開発なんかもやってたみたい。
大型垂直離着陸機とかロケット飛行機だとか、ジェリー・アンダーソンの「サンダーバード」の実物版みたいなものばかり・・・。
LAST MODIFIED : 24/FEB/2008
ON SET : 14/SEP/2002