@ 主導勢力

 クロス馬が「競走能力を伝える遺伝因子である」ことはすでに述べました。そして、1頭の馬の血統の中には、数十種類のクロス馬が発生しますが、その中に全体の遺伝行為をリードする《主導勢力》が存在する必要があります。主導勢力は、クロス馬のある位置(世代)や存在する数、あるいは《系列ぐるみ》か、《中間断絶》、《単一》かといったクロスの種類などによって、どれがいちばん影響力が強いかで判断します。競走能力を伝える上では、主導勢力は、その存在が明確で、他の血とのつながりがよく、シンプルな構造であることが好ましいといえます。

すなわち、主導勢力のもとに、他のクロス馬たちが結集し、一つに統合された勢力を形成することが理想です。したがって、他の項目との関係では、A《位置・配置》、B《結合度》の項目と深く関連しています。
 まずは、主導が一目見てはっきりそれと識別できるほど明確な存在であるかどうかが重要です。明確である上に、その血が全体の中で多数派に属し、さらに血の集合力がそなわっていれば満点です(評価としては◎)。明確ではあっても、その血が少数派であったり、自身が質の低い血であったり、父母間で位置に問題があるなどの減点材料が生じた場合には、その程度によって順次○、□などになります。

5代以内の近い世代に、種類の異なる複数のクロスが存在し、一見してどれが主導なのかがわからない場合も少なくありません。その中で、前述したようにクロスの位置や数、種類の違いなどによって、もっとも影響力の強い血を判別して、主導勢力とします。主導勢力が複数あると判定することもあります。
 そういう場合が、主導が明確ではないケースです。明確ではない主導は、明確なそれよりもマイナスポイントになることは否めませんが、それが全体の中で多数派に属す血であれば、それほど大きな減点にはなりません。もちろん、異種の主導が、協力関係になく、それぞれ自己主張している(両者に血の結合関係がない)ような場合は、大きな割り引き材料になります。

 ビワハヤヒデの分析表を見ると、主導勢力はNearcoの系列ぐるみのクロスであることが、一目瞭然でしょう。別ないいかたをすれば、ビワハヤヒデは、Nearcoという「明確な主導勢力」を持っているということになります。
 父方の6・6・6代、母方も4・6代と、祖父母4頭すべての中に配置されいることからもわかるように(この形態をNearcoの6・6・6×4・6のクロスと表現します)、父母ともにNearco系の血を主体とした血統構成を持っていました。また、この血が多数派に属することも明白であり、A《位置・配置》も理想的です。そして、そのことが、産駒のビワハヤヒデをして、このような明確な主導を生み出したのです。その意味で、父シャルードと母パシフィカスは、《血の相性》がよいということになります。

さらに見ると、後に触れるD影響度バランスと関係することですが、とくに影響力が強くなっているBMSのNorthern 
Dancer(影響度数字がMで最大)の中に、主要なクロス馬がほとんど含まれている、すなわち血の集合力も備えているので、◎の評価になります。

 一方、ここで初めて、ビワビーナスの分析表に目を移してみましょう。この血統は、父方ではHyperion、母方では
Nearco(ともに系列ぐるみのクロス)が、同じ4代目の位置にあって、強い影響を示しています。すなわち複数の主導勢力を持つ形態です。一般的にいえば、こういう関係は、両者の影響力が拮抗するため、少なくとも、「明確でシンプルな主導勢力」とはいえません。両者に結合関係がなく、まったく異なる性質の血であった場合には、相互に反発しあい、マイナスに作用することもあります。

 ただ、ビワビーナス内のHyperionとNearcoの場合は、ともに共通の祖先Chaucerを近い位置でもっており(Hyperionは3代前、Nearcoは4代前の位置)、それによって両者が結合するので、2つの血の相性はいいといえます。しかも、影響の強いHornbeam、Nearcticの双方に両者が含まれているため、大きなマイナス要因とはなりません。したがって、一般レベルでいえば、HyperionとNearcoが主導(この場合は連合勢力)として十分な役割を果たしているといえます(○印評価)。とはいえ、やはりハヤヒデの場合ほどのシンプルさがないために、迫力に欠けることは否めません。

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