
A 位置・配置
クロス馬が正常な遺伝効果を発揮するためには、父と母の血統のなかで、ほぼ同じ世代に存在することが必要です。父と母の中で位置が大きく食い違っている場合は《世代ズレ》を生じて、その血が有効に遺伝効果を発揮しているかどうかの判断を保留します。具体的には、父方と母方で間が2世代以上離れた場合には、()の世代ズレのマークを付け、遺伝効果がないか、あってもきわめて弱いと判断しています(その後の走りを見て判断することもある)。つまり、同じ血が存在しても、父母の中で大きく世代が開いているようなときは、端的にいえば父母の《血の相性》がよくない場合です。
この項目は、先述のように@《主導勢力》の項目と深く関連していて、たとえ世代が揃っていても、主導勢力を不明確にするような場合には、高評価はできません。
ハヤヒデの配合は、Nearcoが非常に明確な主導勢力を形成していることを始め、影響力の強い血の世代がほぼ合っており(Nearcoの6・6・6×4・6を見ても明らか)、5、6代以内にも他に余分なクロスがなく、シンプルな形態を示しています。マイナス点は皆無といっていいほどで、すばらしい血の配置状況といっても過言ではありません(◎評価)。
一方のビーナスは、NearcoとHyperionの位置関係が拮抗していることが問題で、できればNearcoの位置がもう1代引っ込んでいれば(5代目にあれば)、Hyperionの単独主導をより明確に打ち出すことができます。また、父トニービンのかかえる構造的な問題ですが、全体の中で、父の父カンパラの血の世代が新しすぎ、ややバランスを崩しています(6代目のHyperion以外は、すべてクロスが7代以降の位置にあることや、同じNearcoの血がここだけ奥に引っ込んでいることなどが、それを示している)。その点で、血の《位置・配置》という面では、ハヤヒデよりは劣ります。とはいえ、主導のHyperion、Nearcoが祖父母4頭すべてに配置されていることは好材料で、これも一般レベルでいえば上位の内容です(○)。B 結合度
遺伝行為がスムーズに行われるためには、影響力の強いクロス馬同士の間が、共通する祖先によって、数世代以内で直接、あるいは間接につながっていることが必要です。とくに主導勢力とは、緊密な結合関係がにあることが重要です。すなわち、この《結合度》は、@《主導勢力》、E《クロス馬の種類・数》の項目と、深く関連しています。クロス馬の種類は少なく、なおかつそれらが相互に連帯し、さらに主導勢力のもとに結集し、一体化していることが理想だからです(それが、シンプルで力強い血統構成につながる)。
影響力の強いクロス馬同士が、まったく結合することなく孤立することは、結集力が弱まり、力が分散・反目することになるため、マイナス材料になります。また、結合力の弱さは、これまでのレースでの傾向から見ても、仕上がりにくさや、反応の鈍さにもつながります。
クロス馬相互の結合と同時に重要なのが、血の集合力です。いくらクロス馬の結合がよくても、影響の強い部分が数ヶ所に分散しているようでは、これもまた、仕上りにくさの要因になります。
ハヤヒデの血統で、6代以内にある影響の強い血と、主導のNearcoとの間の関係を見ると、Mahmoudは()Canterbury Pilgrimによって、HurryOnはSainfoinによって、SeleneはChaucerによって、それぞれ結合します。Gainsboroughは、({bmc000175.bmp})St.Simon、Hamptonによって結合すると同時に、Mahmoud内にも含まれ、Blenheimも同様にMahmoud内に含まれます。({bmc000732.bmp})War Relicは、直接Nearcoとは結合できませんが、Rock Sandの父
Sainfoinを通じて、間接的に結合を果たしています。こうしてみると、ハヤヒデの血の結合は、主に8〜9代目のかなり遠い世代で行われており、その意味では、完璧とはいえません。 とはいえ、それを補って余りあるのが、BMS(ブルードメアサイア=母の父)内Nearcticへの血の集合力です。Nearctic内には、実に全体の約半数である32種類のクロス馬が存在しており、Swynford、Rock Sandの血によって、主導との結合が強固とはいえなかったMahmoud−Blenheim、Gainsborough、さらに間接的な結合だったWar Relicなども、Nearcticの8代目までに直接集合しています。このような強力な血の集合力が、ハヤヒデの安定した戦績や、3歳〜古馬になるまでのスムーズな能力開花につながったといえるでしょう(○評価)。
ビーナスの場合は、近親交配ということもあり、8代目までにほぼ血の結合は完了し、その面ではハヤヒデよりも、結合力は強固といえます。ただし、問題になるのは血の集合力のほうです。HornbeamとNearcticの相性はよく(Nearco、Hyperionを共有している)、そこへの血の集合力にもすぐれていますが、両者の影響力がほぼ同等になってしまっていることが惜しまれます。ここが、戦績に現われているような、仕上げにくさや安定味の欠如につながっていることが推測できます。とはいっても、一般レベルでいえば、上位の血の結合度、集合力を備えていることは確かです(○評価)。