
C 弱点・欠陥
分析表の5代目の位置には、計32頭の馬がいます。その32頭それぞれの祖先を、6〜9代までたどっていき、その中に1頭のクロス馬も存在しない場合には、そこは遺伝行為を阻害する《欠陥》と見なします。また、6〜8代にはないが、9代にのみクロス馬が存在する場合は、欠陥よりマイナス効果は小さいものの、やはり《弱点》箇所になります。
これらの弱点や欠陥は、影響度数字の大きい部分に発生したり、複数箇所できたりすると、大きなマイナス要因となります。また、異系交配の場合よりも、近親交配における場合のほうがダメージは大きくなります。このような要素によっても《弱点・欠陥》の程度を計ります。
後の影響度バランスの項で触れるGrundy型(父方か母方の一方の影響が強調されているタイプ)の場合、影響の強いほうに欠陥が生じると大きなマイナスになります。また、直接的な弱点や欠陥ではありませんが、父(母)自身が持っていたスピードもしくはスタミナのキーホースだった血が欠落している(クロスできなかった)場合も、減点材料になります。
血統中に弱点・欠陥が生じる要因としては、父母の血の傾向が合っていないケースが多く見られます。例えば、ビワビーナスの場合、父トニービンはヨーロッパ系の血が主体であるのに対し、母パシフィカスはNative Dancer、Damascusなど、アメリカ系の血を多く含んでいます。そのため、母内のMan o'War、Fair Playといったアメリカ系の血がクロスになれず、Geishaの部分のように弱点になってしまいます(9代目にRoi Herodoのクロスが1つあるだけなので、ほとんど欠陥に近い)。そして、それが比較的影響の強いBMS=Northern Dancer内に生じていることから、マイナス効果は非常に大きく、ビーナスの能力の限界につながっています。ただし、影響度数字のもっとも大きい父の母内には、弱点・欠陥を生じていないことは救いになっています。このように、ビワビーナスの配合は、父母の傾向が合っていないために、マイナス面を生じています(△評価)。その意味で、この項目はF《質・傾向》との関連性が高いといえます。
ビワハヤヒデの配合における母パシフィカス内の血の生かしかたは、ビーナスの場合と比較してみれば、そのきめ細かさは一目瞭然でしょう(Geishaの部分も、弱点・欠陥になっていない)。しいてマイナス点をあげれば、DamascusのスピードのキーホースであるSickle(=Pharamond)を押さえられなかった(クロスさせることができなかった)ことぐらいです(○印)。
D 影響度バランス
2代目に位置する祖父母4頭を基準にして、それぞれからどのような強さとバランスで遺伝の影響力を受けているかを、簡潔に表現したものが《影響度バランス》です。
この数字は、6代以内のクロス馬に、各世代ごとに一定の数値を与えて計算します。6代目に位置するクロスには1つにつき1点、5代は2点、4代は3点、3代は4点、そして2代は5点という数値を設定し、それを父の父、父の母、母の父、母の母という4頭の祖父母について、それぞれ集計します。そして、その合計値を、ビワハヤヒデの血統表の1・2代目の位置に表示してあるCAMAのように、4つの丸囲みの数字で表示します。
ここで間違ってはならないのは、数字の大小が能力の高低を表すものではないということです。どのようなバランスを保っているのかということが問題で、それがこの項目を評価する基準になります。五十嵐氏は、世界の名馬の血統構成を分析した結果、影響度バランスの形態を、次の8つの型に分類しています(括弧内は日本の活躍馬の例)。ちなみに、2)、5)、8)のパターンが、活躍馬に多く見られる代表的な形態といえます。
1) Tantieme−Caracalla型
影響度の数字がすべて低い簡素な異系交配の型。
(タマモクロスBADF、メジロマックイーンCBDD)
2) Ribot−Sea Bird型
祖父母4頭のうち1頭だけの影響がとくに強く、他の3頭の影響力がほぼ均衡している形態。同じパターンでも、Sassafras型が近親交配なのに対し、この型は異系交配の場合。
(テンポイントDDDG、トウカイテイオーJEDE)
3) Match V型
祖父母4頭の影響度がすべて極端に少ない型。
(日本には活躍馬がほとんどいないパターン)
4) Gurandy型
父方、あるいは母方のどちらかの影響が支配的な型。
(シンザンGJCC、マヤノトップガンFELI)
5) Sassafras型
祖父母4頭のうち1頭の影響がとくに強く、他の3頭の影響力がほぼ均衡している近親交配。
(タケホープHACA、マックスビューティOEGE)
6) Nijinsky型
父方の祖父母のどちらか一方と、母方の祖父母のどちらか一方の影響力が強い型。
(マルゼンスキーALQA、サクラスターオーCGJE)
7) Three Troikas型
祖父母4頭のうち1頭だけの影響がとくに低く、他の3頭の影響力がほぼ均衡している型。(シンボリルドルフGF@G、マーベラスクラウンFGHB)
8) Vaguely Noble−Alleged型
父方の祖父母と、母方の祖父母の影響力がほぼ均衡しているパターン。
(タニノムーティエCEGA、オグリキャップCHGD)
影響度数字が、これらいずれかのパターンにあてはまっていれば、それだけでよいというものではありません。名馬になるためには、他の項目をクリアーした上で、影響度バランスがすぐれているというのが理想で、全体的な配合内容、特にA《位置・配置》、C《弱点・欠陥》の項目をクリアーしていることが必要です。つまり、数字上8つのパターンのいずれかに該当するだけでは、この条件を高評価することはできないのです。ちなみに、ハヤヒデの影響度数字CAMAは、みごとな2)のRibot−Sea Bird型を示しています(◎評価)。それに対し、ビーナスの@OKBのほうは、ややバランスは悪いものの、6)のNijinsky型に分類することができます(□評価)。
影響度バランスのもたらす影響として、バランスがとれていると、好不調の波が小さく、逆にバランスがくずれていると、調子の維持が難しく、立ち直りに時間がかかる、といった傾向がみられます。