E 種類・数

弱点や欠陥を生ずるほどクロス馬の数が少ないと問題ですが、かといって、クロス馬は、ただ数が多くなればよいというものではありません。むしろ、種類は少なく、総数は必要にして十分あり、血統全体を過不足なく覆っているというのが理想です。種類が少ないと、シンプルでまとまりやすく、反応も早くなります。さらに、B《結合度》の項目と関連しますが、少ない種類のクロス馬が強固に結合していれば、その効果はさらに増大します。多い場合でも、結合がスムーズであれば、大きなマイナス要因にはなりません。逆に、クロス馬の種類が多い上に結合力が弱いと、マイナス効果も大きく、能力の開花の遅さや仕上がりにくさを伴い、反応の悪さにもつながります。

現代では、種牡馬の数が非常に増えてきていることや、欧米の血が入り交じってきていることから、クロス馬の種類は増加する傾向にあります。そのため、40台なら少ないほうで、平均は60前後、多い場合には80を超えることもあります。
本ソフトでは、クロス馬の種類を自動計算しますが(分析表の右下に表示)、その数だけで単純に多い少ないを判断することはできません。たとえ数が少なくても、それが世代ズレを生じた結果であったり、大きな欠陥に起因するものであったならば、もちろん高い評価を与えることはできません。ビーナスがハヤヒデよりも10種類以上少なくなっているのは、後者のパターンで、父母の傾向が合っておらず、母内に欠陥をかかえたために、少なくなっているのです(□評価)。ハヤヒデは、弱点・欠陥はないかわりに、クロス馬の種類は「63」で、一見平均レベルの数ですが、先述のように血の結合度、集合力にすぐれているため、数の多さがマイナス要因にはなっていません(○評価)。

 

F 質・傾向

クロス馬は、その位置や数、形態などだけではなく、クロスした馬自身の《質》(戦績・血統構成・特徴・適性など)も問題となります。クロス馬となって能力を遺伝させる役割を担う祖先は、当然のことながら質が高いほうが、子孫の能力形成にとってよい影響を与えるわけです。とくに主導勢力や影響度の強い部分は、その質が問われます。血の質が低いと、成長力や底力を欠く配合になる危険性が高くなります。
 I理論では、現代に血を伝える主要な祖先は、St.Simonのような古い馬であっても、一般の評価を鵜呑みにせず、独自にその血統構成を分析しています。それによって、血の《質》という独自の視点からの分析が可能になります。

つぎに血の《傾向》ということですが(血の《流れ》や《統一性》も同義)、ヨーロッパ系とアメリカ系の血が混在しているよりも、父母ともにヨーロッパ系の血で、全体が統一されているというように、血の流れが合っているほうが、望ましい配合形態といえます。
 とはいっても、現代のスピード競馬では、スタミナを重視するヨーロッパ系の血だけで構成された馬では、時流に遅れることになりかねません。やはり、アメリカ系のスピードの血も、不可欠な要素になりつつあるのです。したがって、ヨーロッパ系のスタミナとアメリカ系のスピードが結合を果たし、一体となっている形態こそ、現代の活躍馬の理想のパターンといえるでしょう。

ハヤヒデの血統は、これまで見てきた通り、父母ともにNearco系が主導で、弱点・欠陥もないように、父母の傾向は合っています。質という点でも、主導のNearco、Mahmoudなどは、もちろん自身が優秀な血統構成を持った質の高い血です。さらに、影響の強い母パシフィカスの内包するNorthern Dancer、Damascus、Acropolis(Alycidonの全兄弟)、Mossboroughなども非常に質が高く、それらのキーホースもほぼ押さえられ、それらのよさがハヤヒデの能力形成に十分に役立っています。ただし、父シャルード自身が、それほどすぐれた血統構成ではなかったことが多少のマイナス要因といえるでしょう(○評価)。

一方、ビーナスは、クロスした馬自身の血の質、父母内に並ぶ血の質はすぐれているのですが、父母の傾向が合っていないために、Northern Dancer、Damascus内のアメリカ系の血がクロスになれませんでした。その結果、Northern Dancer、Damascusのスピード・スタミナの再現は十分ではなく、そのよさは半減してしまっているのです(□評価)。

Gスピード・スタミナ

サラブレッドの競走能力の基本は「スタミナに裏付けられたスピード]にあります。したがって、優秀な競走馬となるためには、スピードの血とスタミナの血が、バランスよく配置されていることが重要です。もちろん、それらは質が高くすぐれた血であることが理想です。そして、スピード・スタミナの血の比率によって、後で解説する距離適性などを判断します。
また、しっかりとしたスタミナの核が確保されていないと、底力を欠いたり、成長力が乏しくなるなどの影響をもたらします。逆にスピードの血が不足すると、とくに日本の馬場では勝ち上がるのにも苦労し、結果として、ヨーロッパの深い芝向きのすぐれた血統構成を持つ馬が、未勝利やダートの下級条件に低迷するケースが多く見られます。

スピード・スタミナは、F《質・傾向》とも深く関連しますが、現在日本で活躍しているマイラータイプの外国産馬の血統構成は、アメリカ系のスピードを主体とした形態が主流になっています。これらの馬は、早い時期(3〜4歳前半)には活躍しても、それ以降は案外平凡な成績しか残せないというケースがよくあります。その場合の多くは、上質なスタミナを欠いていることが要因となっています。
逆に、古馬になってから、中長距離路線で本格的な活躍をみせたビワハヤヒデ、ナリタブライアン、マヤノトップガン、サクラローレルなどは、ヨーロッパ系のスタミナを基本に、そこにアメリカ系のスピードを注入した血統構成を持っています。現在、スピード化の波によって消滅しつつある貴重なスタミナの血を、後世に伝えていくという意味では、早熟スピードタイプの馬よりも、これら晩成中長距離タイプの馬たちのほうが、理想的な形態であることはいうまでもありません。

なぜなら、もともと現在の競走馬の血統を構成している血は、とくにヨーロッパでは、クラシック・ディスタンス(12F=2400m)を走り抜くスピード・スタミナを基準に淘汰されてきたものだからです。血の淘汰とは、5年、10年といった短い期間ではなく、数世代にも渡って進行してきたものです。
 現代では、サラブレッドの競走生命が短くなってきていますが、これも、急激な馬場のスピード化(硬化)と、それに伴うスピードの血への偏重傾向がもたらした弊害といえるでしょう。つまり、脚元への負担増大と、スタミナの血の不足によるタフさや成長力の欠如が、一つの大きな要因であることに疑問の余地はありません。

 この項目の評価は、ハヤヒデが◎、ビーナスが○になりますが、その内容については、次章の「日本適性」と「成長力」の中で触れています。

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