
血統評価ランクの判定法
以上が、良血馬になるための8項目のチェックポイントと、その見かたです。ご紹介した通り、これらは便宜的に8つに分類してありますが、互いに不可分に結びついている項目もあり、必ずしも個々に独立して評価しにくい面もあります。また、この順番にしたがって、1から順に評価していかなければならないという性質のものでもありません。
項目によっては、一目でわかりやすく、判断しやすいものもあれば、詳細に検討しないとわからないもの、ある程度知識を深めていかないと判断しにくい項目などもあります。一目見て優劣がわかりやすい項目としては、@主導勢力や、C弱点・欠陥があります。まず、この2つをチェックしてから、つぎにF質・傾向を確認するというのが、オーソドックスな評価の順序といえるでしょう。この@CFは、血統構成の基本構造のようなもの、あるいは良血になるための必要条件といえるかもしれません。
おおまかにいえば、この3項目がすべて□(ふつう)評価になるような判定なら、次章で見る評価ランクの中位になる2B級、よくても3B級レベルの可能性が高いといえるでしょう。またここが△や×になるならば、ほぼ1B級〜C級と見て間違いないはずです。ということは、この項目が、◎や○(少なくとも□)であって初めて、3B級以上の評価になる可能性があり、場合によっては1A級、2A級、さらには最上位の3A級への期待が持てる血統構成ということができます。
したがって、たとえばペーパー・オーナー・ゲームや一口馬主などで、持ち馬・購入馬を決める際には、候補馬の分析表をつくったら、まず、この@CF項目でチェックをして、可能性の高い馬だけを残し、より詳しく血統構成を検討するといった方法をとるとよいでしょう。
F質・傾向や、Gスピード・スタミナなどの項目は、ある程度知識がないと、判断の難しい項目です。この点に関しては、『血統クラシック・ロード』や『I理論で読む スタリオン・ブック』などを参考にして、クロス馬になりやすい馬たちの質や、特徴などを地道に学習していく必要があります。自分なりのメモを作成するなどして、工夫してみてください。また、今後は、こうした方向での、参考書・解説書なども出版していく予定です。
以上のような方法で、血統を分析した上で、その馬が競走馬としてどの程度の能力レベルにあるかを判定し、一定のランク付けをする必要があります。これまで、I理論が評価されてきた大きな要因の一つは、過去5年間にわたって、JRAで勝ち上がってきた馬たち全頭を、分析・評価し、それにランク付けをし、公表してきたということにあるといえるでしょう。血筋を「紹介」したり、血統を「語る」ことは容易でも、個々の馬の競走能力を、血統から判定・評価をし、ランク付けするには、かなりの困難を伴うことも事実です。なぜなら、現実の競馬は、必ずしも血統評価通りの成績に終わらないからです。しかし、そうであっても、個々の馬の本来の血統レベルを見極め、競走能力のランクはこれぐらいの位置にあるということを示すことは、まさに血統分析の仕事の本質といえます。これなしには、いつまでたっても、「結果に対する後追いの理由づけ」しかできないでしょう。ましてや、血統の向上や、競走能力のレベルアップに貢献することなどは、望むべくもありません。
つぎに、I理論における血統評価のランク付けの仕組みを解説してみましょう。I理論による血統評価ランクは、「クロス馬チェック8項目」を個々に評価し、それを総合して出しています。具体的には、前章で見た8項目の評価マーク◎、○、□、△、×を、以下のような数値に換算します。
◎=5、○=4、□=3、△=2、×=1
そして、8項目の数値の総和を3倍にした得点によって、下記のように、ランクを決定します。ただし、同じ得点でも、 7《質・傾向》の項目のよし悪しで、評価が多少変動することはあります。
110点前後=3A級
100点前後=2A級
90点前後=1A級
80点前後=3B級
70点前後=2B級
60点前後=1B級
50点前後=C級
ちなみに、ビワハヤヒデの8項目評価は、以下の通りです。
@=◎
A=◎
B=○
C=○
D=◎
E=○
F=○
G=◎
これを数値に換算して、総計を出すと、
5+5+4+4+5+4+4+5=36
となり、その3倍は108で、110点前後となり、3A級の評価ランクとなります。
それ以外に、
日本適性=□
成長力=○
距離適性=芝8〜15F、ダ8〜12F
といった評価も導き出されてきます。
同様に、ビワビーナスのそれは、
@=○
A=○
B=○
C=△
D=□
E=□
F=□
G=○
4+4+4+2+3+3+3+4=27
27×3=81
となり、兄よりも3段階下の「3B級」という評価ランクになります。その他の評価も以下の通りです。
日本適性=○
成長力=□
距離適性=芝8〜12F、ダ8〜10F
つぎに紹介するのは、JRAの勝ち上がり馬たちの各評価ランク別の分布と、そのランクに該当する代表的な馬たち(3B級以上)、あるいはクラス分けを示したものです。各ランクの分布比率は、過去5年間のデータで比較する限り、毎年ほぼ同じ傾向を示しており、このこともI理論による評価、ランクの妥当性を示しているといえるでしょう。
分布 近年の日本での活躍馬
3A級 0.1% サクラスターオー、タマモクロスなど
2A級 0.5% ナリタブライアン、サイレンススズカなど
1A級 5% ライスシャワー、マヤノトップガンなど
3B級 25% エアグルーヴ、スペシャルウィークなど
2B級 40% 900万クラス
1B級 26% 500万クラス
C 級 3% 未勝利クラス
ただし、これはあくまでも目安であり、必ずしも現実の競走成績とは一致しないケースも出てきます。なぜなら、血統評価は、その馬がもつ血統的な潜在能力が、全開した状態を想定して評価しているからです。その潜在能力がいかにすぐれていても、育成・調教によってそれが開花し、顕在化しなければ、競走成績とは結びつきません。顕在化した場合でも、レース展開や不利、あるいは騎乗技術などによっても、勝敗が左右されることは周知の事実です。
つまり、血統評価とは、あくまでも血統構成から推測される能力であって、それが現実の競走成績につながるためには、その後の人的要因が大きく関与してくるといわざるを得ません。ただし、一つの目安として、大まかにいえば、3B級以上がオープンクラスより上にいけるだけの能力ランクであり、Gレースでも活躍するだけの可能性を秘めた血統構成だといえます。