『すばらしき仲間』

1982年4月18日(日)TBS

出演:ビートたけし(当時35歳)、吉田拓郎(当時36歳)

(当時の拓郎さんの最新シングル“唇をかみしめて”に乗せて番組スタート。対談場所は田舎の民家風の居酒屋で、椅子ではなく座布団にあぐら、というスタイルでの対談でした。拓郎さんはスーツ、たけしさんはイッセイ・ミヤケを着てたかな。たけしさんはギターを抱えて登場)

たけし:どうも!

拓郎:どうも、ふはははは。

たけし:こんばんは、渥美二郎です。

拓郎:ははは、渥美二郎。

たけし:いやどうも、初めまして。

拓郎:初めまして、どうも。

たけし:どうもどうも。色々ね、前から会いたいとは思ってたんですけど、(スケジュールが)合わない。忙しくてね。忙しくてってのは、出ないからね、テレビに。

拓郎:いや、僕はもう、お呼びがなかったんですよね。

たけし:そんなことないでしょ。

拓郎:いやもう、この話があった時は、出たいなと思って。

たけし:ええ。これね、前からほら、話は色々あるんですけどね。ギターをね――バンド作ったんです。それでね、夢にまで見たギターを買ったんです。

拓郎:えへへへへ。

たけし:もう、昔ほら、マイク真木さんの“バラが咲いた”なんて。

拓郎:ありましたね。

たけし:感動しましたねあれ。

拓郎:あ、感動した(笑)。

たけし:今考えると、何て騙されたんだろうと怒ったことがありましたけどね。

拓郎:あっはっはっはっ!

たけし:あれはフォークソングじゃなかったという。

拓郎:うはは!

たけし:で、あの、白いギターとかああいうの欲しくてね。それで、エレキ・ギターってこういう風にやって「ギヨーン!」っていうのあるでしょ。あれが欲しかったんですよ。

拓郎:トレモロのアーム。

たけし:あれが付いてる(のが欲しかったのに)、これ付いてないんですけどね。ずいぶんモメたんですけどね。何で付いてないんだ、って。いや、安い高いじゃない、って言ってたから。

拓郎:それで買ったんですか?

たけし:買ったんですけどね。それで、初めて買った時ずいぶん笑われましてね。

拓郎:ピックがすごいですね、それ。

たけし:三角定規かと思いましたけどね、ピックなんですね。

拓郎:で、たけしさんギター弾けるんですか?

たけし:これ買うまで全然知らないんですから、とにかく。持ったことなくて。楽譜見ると、コードって書いてあるでしょ。

拓郎:ええ。

たけし:それで、CとかAとか書いてある。Cのギター下さい、って言ったら、「いやこれCじゃないんだ、いろんなとこ押さえればいろんなの出るんだ」って。ああそうですか、って。

拓郎:(爆笑)バカなことを言って。

(いつものテーマ曲が流れ、矢吹申彦さんのイラストが映し出されて『すばらしき仲間』スタート。引き続きCMへ)

たけし:僕らも同じ世代なんですよね。

拓郎:そうですね。

たけし:だから、吉田さんの歌聴いて育ったんですよね、学生時代。

拓郎:そうですか?ひとつぐらいしか齢違わないでしょ。

たけし:変わんない。同じなんです。だからレコードもありますよ、結構。『元気です』とか。

拓郎:あー。

たけし:だからその曲をずいぶん、ね――悔しくてね。聴くんですよね、女の奴が。行くと、部屋の中、LP持ってるわけ。で、かけたりなんかするとね、こんなになって聴いたりなんかして、こうやって一生懸命聴いたりなんかすると、俺のこと構ってくれなくなって。

拓郎:(笑)。

たけし:あれが悔しくてね。

拓郎:でもあの頃、ギター弾けるとすごい女の子にモテましたよ。

たけし:大学時代が、夢があったでしょ。

拓郎:うん。

たけし:パンフレット見て、憧れちゃったでしょ。

拓郎:そうそうそう。

たけし:こう、大学ってのがあって、どんなに汚いインチキ学校でも、門があって芝生があって、何かギター弾いてるの。ブックバンド持って寝転んだりなんかして、あァこの大学入らなきゃ、と思って入ったら、そんなこと――。

拓郎:全然ないし、芝生もないっていうね(笑)。

たけし:「豊かな環境」なんて言っちゃって、ただ田舎なだけだったりして。

拓郎:ははははは!

たけし:恵まれた教授陣、なんて嘘ばっかり言って。

拓郎:でも、じゃあ高校時代から音楽なんかずっと聴いてたんですか?

たけし:いや、アレですよ、僕らの頃は高校時代とか、そういうの悪いんですから。エレキ・ギターとか、ギターを弾く奴は不良なんですよ。

拓郎:あァ、不良でね。だから、僕んちに昔、友達なんか遊びに来るとね、不良が集まってるっていう噂が流れてましたね。

たけし:音楽やってりゃ不良ですよね。

拓郎:不良、不良。音楽やってるとホントに、いけない奴だ、って。

たけし:東京だとジャズ喫茶とか、悪いイメージばっかりでね。

拓郎:そうそうそうそう。

たけし:もうとにかく、内田裕也さんとかね、みんな悪いと思ってたもんね。学生の時には、誰かああいう風になろう、って人はいたんですか?

拓郎:いや、僕はね、兄貴が大学の頃ジャズのピアノやってて、俺も何か楽器やりたいなと思って、中学三年ぐらいですか、ウクレレを買ってもらって(笑)。ウクレレを最初に弾いて。

たけし:出だしは牧伸二さんと変わんないんですね。

拓郎:そうそう(笑)。♪ハワイ良いとこ一度はおいで〜、ってやってたんですよ。それが音楽始めたきっかけで。でも、プロで飯食うとかそういうのは考えてなかったですね、何にも。

たけし:はァ。でも、あの頃は何でアレなんですか、フォーク・ソングっていうんでしょう?フォーク・ソングなんでしょう?

拓郎:フォーク・ソングだったんですね。でも僕らが一番影響受けたのは、ニール・セダカとかね。

たけし:そうですよね。

拓郎:それから、プレスリーだとかポール・アンカとかあの辺のばっかりだったから、ビートルズはまだだいぶあとなんですよね。

たけし:そうそう。ビートルズはね、高校ぐらいでしょ?

拓郎:そうです、高校。

たけし:高校の時に、すごい不良に見えたね。

拓郎:すごいやかましい音楽だなと思ったんです、最初は。

たけし:この、エレキ・ギターを弾いてること自体がね、アレだったですね。衝撃だったですね。あの音がね。

拓郎:そうそう。それからあの頃はね、歌わなかったんですよ、エレキ・グループって。

たけし:そう、『勝ち抜きエレキ合戦』。チャッチャッチャッ、てね。

拓郎:(笑)。広島にもジャズ喫茶があってね、広島市(の市営)で作ってて(笑)。

たけし:すごいな(笑)、広島市で。

拓郎:そこに出演した時にね、すごい見出しがあってね、「歌えるエレキ・グループ登場」って書いてあったんですよ(笑)。歌えるエレキ・グループ、それだけで客が集まるっていうね。

たけし:歌える、ってのはすごいですね。

拓郎:中学とかさ、高校の頃って、悪かったんですか?やっぱ。

たけし:あのね、悪いことは悪いんだけどね、番長でも何でもない。三番手ぐらい。番長が殴った奴をあとから行って殴るとか、そういう。

拓郎:(爆笑)はっはっはっはっ!

たけし:目ざといんですよオレ。「この野郎!」なんて番長が殴るでしょ、で、相手が謝ってると「だから気をつけろって言ってんだろ!」って最後に殴るのオレなんです。

拓郎:あははははは!

たけし:もう、絶対勝てる、って信じたら殴るけどね、危ないな、どっちが勝つか判んないな、って時は――番長と、ケンカするでしょ。目ざといからね、「こっち負けるな」っていうとこっちの方についちゃって。で、今までの番長が殴られると「バカ野郎!」なんて殴ったりなんかして。

拓郎:三番目ぐらいで見てるって(笑)。

たけし:殴ったあと逆襲されたりなんかして、こっちが勝っちゃうと困っちゃうんだよね。参っちゃうんだよね。

拓郎:逆襲(笑)。

たけし:逆襲しちゃったりなんかすると、オレコロッと寝返るから、寝返りようがなくなっちゃって、最後学校休んだりなんかして。一週間ぐらい行かないの、学校。病気だっつって。

拓郎:(ひたすらウケてる)。

たけし:あの頃、中学高校って異常な奴いたじゃない。貧乏は異常だしさ、信じられないような貧乏、頭シラクモとかさ。おできなんか平気であったしさ。汚ェの。それで、赤痢になった家があってさ、「お前んち赤痢じゃねェか昨日」なんつうの。頭DDT被ってさ、学校来てる奴いるんだよね。学生服なんか真っ白な奴がいてさ。

拓郎:(ひたすらウケてる)。

たけし:中学生になってもウンコもらす奴はいるしさ。異常に頭がいびつな奴とか。でかい奴で。

拓郎:あはははは、異常に頭がいびつな奴。

たけし:で、あだ名が完全に「いびつ」ってあだ名なの。それ、よく聞くと小学校からずーっと同じあだ名だって。どの学校に行っても「いびつ」ってあだ名にされててさ。

拓郎:ふはははは。中学の時にね、一番悪いクラスでね、オレの入ったクラスは。一年三組だったんだけど、悪いクラスでね、もうとにかく先生をぶん殴ることで有名でね。理由なくぶん殴るわけ。『理由なき反抗』っつうのはアレだったもの。ホントに殴っちゃうわけ、下駄でガボーンと。で、そのクラスの番長がいたわけ。

たけし:うん。

拓郎:で、そのクラスの番長でありながら、学校中の番長なんだよ、一年で。で、すげえ奴だなと思ってたんです。で、そいつがね、「吉田、ちょっと相談があるんだ」って。「何ですか」って――同級生に「何ですか」っていうぐらいの。で、「何ですか」って言ったら、「おまえちょっと金貸せ」。「何に遣うんだよ」とか言ったら、「オレは歌手になろうと思うんだ」って(笑)、番長が急に。それで「お前、何歌うんだ」とか言ったら“天竜しぶき笠”(鶴田浩二)歌ってみせてくれてね、オレに(笑)。悲惨だなと思ってね。五百円貸せ、って(笑)。

たけし:(笑)だけど、今社長でしょ、だって。社長ってのは、「社長、オレやるよ」ってそういう感覚でしょ。何かやろうじゃねェか、ってさ。
(注:当時拓郎さんはフォーライフ・レコードの社長でした)

拓郎:そう。

たけし:レコードを作って自分とこで出した方が儲かるから。それでオレ社長、っつうんで、「泉谷お前専務」とか言ったら、泉谷怒って帰って(笑)。

拓郎:泉谷、ははは。一番最初にね、小室等ってのが社長になったんですよね。

たけし:あの人知ってるんですよオレ、PPMフォロワーズって。好きだったんですよ。

拓郎:あ、ホントに?

たけし:PPMのやつやってね。

拓郎:あ、そうそうそう。でね、あの人が社長になる時のいきさつがね、八人いたんですよ、株主みたいなのがね。フォーライフ・レコード。でね、投票制にしたわけ。で、小室等だけが立候補してて、社長に。で、○×で行こう、無記名で、って。で、小室等を社長としてオーケーな人は○、×だと思う人は×にしろ、って言ったら全員○だったんですよね。小室さんも自分で○した、っていうね(笑)。そういうヒドイ会社で。

たけし:そういうタイプだから社長になる。いるんですよ、そういう。

拓郎:それで陽水とかみんな怒ってね、「そんな人間だとは思わなかった」っていうね。自分で○するとは何ごとだ、っていうね。

たけし:でも、一票、ってのはすごい悩むでしょ。みんな見て。

拓郎:そうそうそうそう(笑)。

たけし:あいつ、自分で入れた一票じゃねェか、って。

拓郎:もう、自分で○するってところからもうね、人間関係が失われて行ってね、で、泉谷は去って行ったしね。悲惨なね、感じは結構強いですよ。

たけし:やっぱりそういうの気にしますかね。

拓郎:大体持ち回りみたいな感じになってるから、次陽水やれ、って今言ってますけどね。

たけし:あ、そうなんですか。儲かるんですか?

拓郎:社長ですか?

たけし:どうなんですか大体、レコードで社長やったりなんかすると。株を大半占めちゃう?(笑)ほとんど、こういう感じでしょ(手で抱える「ひとり占め」のジェスチャー)。

拓郎:そうそう。オレだけのもんにするぞ、みたいな。その代わり潰れたら全部自分の責任になるっていうね。そこがすごいキツイんですよね。

たけし:あー、危なくなったら、勝手に「潰れた」って――。

拓郎:そう、危なくなったら替わるっていうね。

たけし:ほとんどのもの名義変更して潰れて逃げちゃう、っていうね。

拓郎:僕の前いたエレック・レコードっていうところがあったんですよね。そこはもうそういう感じでね。危なくなったら見事に倒産してみせてね。みんな路頭に迷って。だから、印税なんていうのを知らなかったんです、僕たちは当時は。だから、給料でね、三万五千円の給料だったんです、最初。で、いくらレコード売れても三万五千円の給料なの。それで、自分で自分のレコードを配送して廻るっていうね、レコード屋さんに。「吉田拓郎の新譜が出ました、よろしく」って。「誰だそりゃ」「エレック・レコードの新人です」「その辺置いとけ」とか言われて、しょうがねェから、有名な、藤圭子の前に置いて来るとかね、こういう感じでやってましたけどね。

たけし:あ、そういう時代もあったんですね。

拓郎:ものすごい不遇なね。

たけし:結構不遇なんですね。じゃ漫才師と大して変わらないですね。オイラと変わらない、安心しちゃうところがある。

拓郎:たけしさんって、話変わるけど、兄弟いるんですか?

たけし:ええ。

拓郎:何人兄弟なんですか?

たけし:オレんとこは四人。上三人。

拓郎:あァ、末っ子?

たけし:末っ子。

拓郎:で、上、何か話聞いたら、東大出てるって。

たけし:うん、出たって言うよりも、一番上はね、いろんな大学に行ったのね。変な奴でね。

拓郎:たけしさんは明治の理工?

たけし:そう、工学部。

拓郎:工学部ってのは、イメージとしてね、要するに数学強くなきゃいけないでしょ。

たけし:数学だけ強かった。

拓郎:数学だけ強かったんですか。

たけし:だから、文科系コンプレックスってすごいんですよ。

拓郎:あァ、逆に。でも、文科系の人間がね、理工系にすごくコンプレックスだってのは判るけどね。

たけし:いや、僕ほら、遊ぶとこが新宿だったんですね、大学乗るのが新宿駅からだったから。そうすると、学校行きたくないもんだから、新宿でね、ジャズ喫茶とか、風月堂とか、今なくなっちゃった、ああいうとこに、みんな本持って、汚い格好してるんですよ。寺山修司さんの頃だから。状況劇場や何か出来たりして、ハプニング、なんて頃だから。こうやっていると、変な難しい哲学書を持ってるわけ。そういうのを見て女の奴が隣にいると「お前の生き方はおかしい」なんつってね。それでヤっちゃうんじゃないかな、と思ってね。

拓郎:あはははは!

たけし:そればっかり、頭の中。だから、それがね、頭にこびりついてて。女にモテるためには文学論のひとつも言わなきゃいけないと思って。もう『次郎物語』から読んだり。

拓郎:あはははは!『次郎物語』!

たけし:間に合わない、今更間に合わない。

拓郎:間に合わないなそりゃ、ははは!

たけし:全然間に合わない。

拓郎:僕もね、広島から出て来た時にね――今でもあんのかな、ピット・インって。新宿の。

たけし:あります、今ちょっと場所がズレたけど。

拓郎:あァホント?で、あそこにね、行かなきゃいけないっていうね、「ねばならない」っていう気分があってね、田舎者としては。あそこに行ってりゃ一応、通なんだと、音楽の。で、あそこで、あの頃のジャズって、今のフュージョンみたいなのないから、ツーチキツーチキ、ってやってるでしょう。で、みんなね、こうやって(と指を鳴らす)やってるんですよ、客がね。

たけし:そうそう、テーブル叩いたりね。

拓郎:イエー、なんてやってるんですけど、俺こうやって見てると、リズムが合ってない奴ばっかりなんだよ(笑)。これが合ってないの、全然。

たけし:こうやってて本読んでる、何だか判んない奴がいるね。

拓郎:これ見てホントに笑ったんだけど、合ってないの、手足が全然。こうやってやってるんだけどね。面白かったんですよね、でも。インチキが通るから。

たけし:そうなんですよ。

拓郎:インチキがオーケーだからね。

たけし:それで格好もさ、汚いレイン・コートか何か着て、本なんか抱えてさ、こんなモダン・ジャズを聴いてるとね、すごい中身が、いっぱいいろんなこと考えてる人だと思われるのね。で、女もそういうような感じの女の奴でね。

拓郎:そうそうそう。

たけし:それでくっついちゃうのね。それで、オレなんかそれでくっついたんだよ、一回。成功したな、と思って。女のアパートに転がり込んでね。一週間でバレましたね。

拓郎:バレた(笑)。

たけし:バレたって言うより、毎日「千円貸してくれ」って言ったら、どんな文学者でも、それはね、そんなのダメだって(笑)。

拓郎:あはははは!毎日金貸せ、っつったの?

たけし:いくら頭で「生き方は」とかね、サルトルがどうの、カミュの生き方は判るな、なんて。でも「千円貸してくれ」って、そりゃカミュより千円の方が大切だって、そんなもん。そりゃダメだったね。少年マガジン拾って帰って来ちゃうんだもん、すぐバレちゃう。網棚から持って来ちゃうんだもん。

拓郎:(ひたすらウケてる)。

たけし:こうやってゲラゲラ笑ってて、女が来ると隠したりなんかして。それじゃバレちゃうよね。

(CM)

たけし:奥さん、浅田美代子さんでしょ?

拓郎:そうですよ。そうですよってのも変だけど(笑)。
(現在は離婚、のちに別の女優さんと再婚)

たけし:あれ、何ですか、ファンだったんですか?

拓郎:誰が?僕ですか?

たけし:いや、浅田美代子。

拓郎:僕ですか?僕が浅田美代子の?

たけし:いや、逆に。

拓郎:いや、全然そういう。いや、何か、やっぱ大嫌いだったみたいですよ。タイプとしちゃ。汚いな、っていう感じで。あの頃やっぱり、髪は伸ばし放題で、要するに、ジーパン履いてスニーカー履いてね、汚い格好してりゃフォークだ、みたいなことがあったから、そういう格好してたでしょ。汚いなァ、っていうイメージがあったらしいですよ。で、うまく騙した、というような(笑)、ことじゃないですかね。要するに、芸能界ってのは、お前たちみたいなことも芸能界かも知らんけども、オレらのも芸能界だぞ、みたいなことでね。「えっ、そんな世界があったの?」っていう線で持ってく、っていうね。

たけし:あァ、文学少女が参っちゃう、みたいな。

拓郎:そうそうそうそう。

たけし:遊んでますか、女遊びは。

拓郎:遊んでます!

たけし:やってます?カミさんに見っかります?

拓郎:えーとね、こないだ見つかりましたね、一回。

たけし:怒られた?相当。

拓郎:あのねえ、ああいう時ダメなんですよ。とっさの演技が出来ないわけ。

たけし:ダメでしょ。

拓郎:ダメ。

たけし:あの、自分で自分を追い込んじゃうんですよね。バレちゃいけない、っていうことがあって、こう答えるとわざとらしいからこう答える、って色々判んなくなっちゃう。

拓郎:一番ヤバイ返事をしたらしいの、その時カミさんに。で、女の子と飲んでてね、カミさんが来ちゃったの、その店に。運悪く偶然。そんなとこで飲まなきゃ良かったのにね。カミさんがよく来るとこで飲んでてね。カミさんがバーッと入って来て、来た瞬間にオレ、スックと立ち上がってね「お前バカ野郎、男の仕事場に顔出すな」って言ったらしい(笑)。男の仕事場じゃないんだ、そこは全然。

たけし:そう。

拓郎:で、カミさんも納得して帰ったんだけども、何で私が怒られなきゃいけないんだろう、っつうんで、一週間ぐらい怒られましたよ。

たけし:女って目ざといんですよ。オレね、アパート借りてたりなんかするとね――今仕事が忙しくてアパート借りてるわけ。ウチ帰ってる暇ないんで。するとね、よく高校生や何かが掃除しに来るのね、ファンクラブの。するとね、「あっ、昨日女引っ張り込んだでしょ」って言うんだよね、急に。「えっ!?」と驚くとね、「どうして判った?」って言うとね、オレの靴が揃えてあった、って(笑)。

拓郎:あはははははは!そりゃマズイな。

たけし:出口に向かって。オレが揃えるわけないんで、自分で履いて来て。朝寝てる時にオレの靴が外に揃えてあったってことはね、誰かが来て揃えて出て行った、ってすぐ判っちゃう。

拓郎:マネージャーが、って言うわけにも行かない、ははは。

たけし:すごいねえ、だから。あの、女の奴の感覚って。

拓郎:オレもこないだの晩に、帰ったら目がやたら痛いんだよ。目が痛いの。もう酔っ払って、ベロベロでね、バーッと寝たわけ。寝るぞ!とか言って。そしたら目が痛いの。そしたらね、カミさんが紙にね――僕、癖なんですけど、すぐ電話番号聞く癖があるんですよ。「おい、電話番号書いとけよ、困ったことあったら――」って。で、書くでしょ。で、ここに入れといたけ。そしたらね、ウチに帰ってバーッと脱いだ時にね、これが落っこったらしいの、パカッて。で、カミさんがね、それをチャッと見てね、〜子、〜番って書いてあるそれをね、目にこすりつけてんの(笑)。オレ寝てるのに、痛いんだ目が。「目が痛い晩だな」と思いながらね。「おかしいな、目が痛い晩ってあるかな、目、何か病気かな」って思いながら目が覚めたら、「この野郎、この野郎」ってここに電話番号こすりつけて(笑)。「これは何だ!?」って言われても、見えない。見えないここじゃ。「これは何だお前!?」とか言われても見えない、近すぎて。そういうのありましたよ。

たけし:オレ、番号って、間違えて自分ちかけちゃった時あるんだよね。女の家と間違えて。あれで完全にバレた、っていうのがあったよね。

拓郎:(爆笑)。

たけし:こうやってかけてね、ガチャ、ってカミさん出たわけ。で、オレはその女だと思うから「あ、もしもしヨシコさん、オレ、オレオレ」「何?ウチ北野です」って「あっいけね、オレんちだ」と思って「どうも失礼しました」「ちょっと待って、その声あんたじゃないの?」「いや、えっ?」「あんたじゃないの?」「いや、オレはたけしじゃない」だって(笑)。

拓郎:あははははは!

たけし:自分で言って、自分でバレちゃってるの。引っくり返っちゃったな、あん時は。とにかく失敗するね。これからはどうなんですか?音楽は変わってるんですか?

拓郎:変わってません。

たけし:変わってない?

拓郎:ええ、ものすごく、自信持って変わってません。何にも。

たけし:やっぱり、拓郎さんのってのは、日本的なんでしょうね。

拓郎:そうですよ。僕はやっぱり、自分ですごい「日本人だなァ」って思うもん。

たけし:日本人ですよね。

拓郎:だから、ホントに日本人的な歌しか作ってないなと思うんですよね。で、今やっぱりほら、いろんな曲が売れたりとかね、そういうの見てるとね、「あ、売れないな」と思いますよ、自分で。何かはっきりね、「あ、こりゃ売れないな」って思うんですよ、自分で作ってて。

たけし:自分の歌。でもそれが好きでしょ、やっぱり。

拓郎:もう僕抜け切れないですね、病気だから。だから「あァ、こういう歌を作れば売れるんだろうな」とかね、いう気はするんだけどね。あんまりね、器用じゃないんですよ。で、結構ね、イメージ的にはあいつは世渡りうまいって言われてるんですよ、僕は。やっぱり、うまい時に社長になったりしてね、うまい時に会社作ったりね。うまくやってるなあいつは、みたいな感じなんだけど。でもね、結構苦手な方でね。だから、不器用なんですよね。苦手と言うよりは。器用にこなせればね、この才能を以ってしてやればね(笑)、出来るんじゃないかと思ったりすることもあるわけ。寝る前だけど、大体。寝る前にね、「オレもオフコースの歌作れるな」みたいな気になってね、次の日目が覚めると「出来ないや」っていう気になるんですよ、やっぱ。

たけし:歌って不思議ですよね、だけど。感性みんな違うからね。嫌いな歌はもう、いくら売れても嫌なのね。しょうがないんですよね。

拓郎:嫌な歌って多いでしょう。

たけし:多いですね。で、今ほら、レコーディングしてるのね。で、いろんな人に作曲してもらったんだけど、嫌な歌は徹底的に嫌ですね。「せっかく作ってもらったんだから」とか言うけど、歌いたくないんだよね。みんな結局ひとつのパターンになっちゃって、十曲出すと十曲とも全部同じような感じね。

拓郎:あのね、日本ってね、ものすごく残念だったなと思うの。えーと、六十年(代)の末頃から僕は始めたんだけども、七十年代に入って、あの頃はフォークとロックって言ってたでしょ。それが、何か急にニュー・ミュージックっていうコトバになってね。まァニュー・ミュージックってのは、アメリカじゃそんなコトバはないしね。僕らはコピーから始まってるわけだから、どうせコピーでしょ、演歌以外はとにかく。で、コピー文化なんだけども、改革がなかったのね、音楽の。それで、欧米はロックの革命がいつもあってね、ロックがどんどんどんどん変わって来て、その人が出現することによって次のロックがどんどん変わって行く、っていうのがあったんだけどね、日本にはね、「あの人が出て来たおかげで歌の作りの流れが変わった」とか、ないんですよね。フォーク、ロックって言うか、ニュー・ミュージックの世界なんかね。で、そういう中では桑田がね、桑田佳祐ってのがね、あの男の詞だけ読んでるとね、何でもないわけ。何だこりゃ?って。あれ、メロディついちゃうとね、えらくいい詞になって来る感じがあるでしょう?

たけし:うん。

拓郎:それから、桑田みたいな曲作りする人が増えて来てね。それは一個、流れが変わってんかなと思うんだけども、でも大幅には変わってないでしょ。だから、向こうだったら、ビートルズが出て来たらみんなビートルズみたいになっちゃうとかね。クリームが出て来たらクリームみたいになっちゃうとかね、そういうのがね、ないのが残念。例えばギタリストなんかでもね、あるギタリストが出て来るとみんな弾き方が変わって来るとかね。そういうのが日本にはね、もう十何年、定着してるって言ってるんだけども、変わってないんですよね。そこだけすごい残念なんですね。だからホントにね、こうやって辿って行くとね、最近いろんな人の歌をこうやって手繰って行くと、最後にいつも井上陽水が出て来そうな気がするんですよ、いっつも。もうホントに革命、そういう意味じゃあったんじゃないですか、漫才っていうのは。

たけし:漫才はあった。

拓郎:ねえ。

たけし:漫才はそれで、何組も出たから、パターンの違うやつが。

拓郎:そうね、たくさんいっぱい出たもんね。

たけし:だから、落語がどうのこうのって言っても、落語は小朝しか出なかった。小朝、円丈さんぐらいのもんだから。今、小遊三ってのが出て来たけど。もっと、六、七人グッと出りゃ、落語もブーム来ると思う。

拓郎:あァ。だから、漫才は革命があったんですね。

たけし:漫才はあったですよ。もうね、生活状態が変わったもん。だからね、宝くじ当たった、って言うのね。ホントに当たっちゃったの。お金が変わっちゃったしね。

拓郎:たけしさんは、例えばそういう漫才ブームみたいなのが来ちゃったんだけども、予感ってあったんですか?

たけし:予感はね、あの、あったって言えばあったね。絶対若い奴はこのお笑いについて来る、っていうのが。若い奴はウケるから。例えば、偶然来た若い人たちなんだけど、やたら引っくり返って笑うわけ。こういう若い子がこれだけ引っくり返って笑うんだから、他の奴だって笑うんだろうな、って思うと、みんなが笑えば絶対ブーム来る、と思った。で、そういう場所がなかっただけでね。テレビで放映しなかっただけで。放映したらすぐついて来たね。だから、どうってこたねェなァ、と思って。楽なもんだなァ、と思って。運が良かった、って言うかね、ホント宝くじ当たったなと。

拓郎:それで、よく言うでしょ、漫才ブームって、続くとか続かないとか。

たけし:うん。

拓郎:ああいうのってのも、あるんですかやっぱり?続かねェなァ、とか、まだ続くな、とか。

たけし:もうダメね。

拓郎:もうダメ!?(笑)

たけし:もう、飽きちゃったね。みんなが飽きちゃった。オイラも、やってる奴がもっと先に飽きてるし、客だって面白くないと思うね。だから、どうやって残るかって言うと、あれでしょ、ほとんどやっぱ萩本さんみたいに。

拓郎:あー。

たけし:司会とか、三波伸介さんみたいな生き方をする奴もいるし、全然違う、役者の方に行く奴もいるし。だから、漫才ブーム終わった、ってのは終わったけど、実際漫才をやってたタレントは、残ってることは残ってるよね。でも漫才自体は、潰れちゃってるんじゃないかな、もう。大阪の芸人は、大阪に帰れば寄席があるから、寄席で細々と食える、ってのはあるけど、オレ東京にいるから、東京だと何もないですもんね。ウチじゃ怒られる仕事はダメだ、しょうがない(苦笑)。

拓郎:あはは。

たけし:立ち直れなくなっちゃう(笑)。

拓郎:あはははは。

たけし:明日から仕事なくなっちゃったらオレどうしようかと。何せ、ミュージシャンの食い潰れと色物の食い潰れって、やること何もないもんねェ。

拓郎:何もない。

たけし:飯田久彦さんみたいにディレクターとかなってさ、一応音楽関係でこうやってる、頭のいい人もいるけどね。

拓郎:あれは稀に見る成功者でしょう。

たけし:稀に見ますよね。ひどい時になるとマネージャーになっちゃう奴いるもんね。嫌だよね。

拓郎:(笑)元歌手の、マネージャーの方が歌がうまいっていうね。

たけし:そうそう。仮歌歌っちゃって、音合わせの時に歌っちゃうのね。

拓郎:そっちの方がうまい、っていう。

たけし:それ生き甲斐にしてる奴がいるしね。こんなになって歌っちゃう奴がいるんだよね、本人の前で。しょうがない。ホントにね、だから食い潰しちゃったらどうしようかと思う。不安でしょうがない。

拓郎:お酒強いんですか?

たけし:いや、もうお酒は人柄出るでしょ?

拓郎:出る。

たけし:お酒は面白いですね、いろんな奴がいてね。

拓郎:マズイこと多いけどもね、すごく(笑)。お酒、よく飲む?

たけし:飲むんですよ。

拓郎:飲み始めるとどうなるんですか?

たけし:いや、あのね、やたら喋るんです、やっぱり。喋っちゃって喋っちゃってね、ひとりで喋っちゃって、聞いてくれる奴ばっかし探すようになっちゃってね。

拓郎:ははは、話を?

たけし:裏で相当嫌がられてるんじゃないかと思うね、ふと我に戻ると。

拓郎:あの、ひとりでね――よくドラマなんかであるでしょ、カウンターにひとりでスカして。ああいうのはやらないんですか?

たけし:あれはダメだ。あんな惨めなもんないんじゃないかと。もうカウンターか何かでこうやって飲んでてさ、目当てのママがいて飲んでて、「どうも」って話してて、そのママが向こうに行くと斜目で見てたりして。

拓郎:あはははは!

たけし:「見に来ねェな」なんて、最後寝ちゃったりなんかしてね。あれがツライんですよね。カウンターでひとりで考えるぐらいなら、自分ちで考えりゃいいんだもんね。あそこに来るってのは、誰か前の女が目当てなんだよね。

拓郎:そうそうそう。

たけし:それで、何故か目線で追ってるの。みっともないんだ、あれ。

拓郎:ワーッと飲む方なんだ。

たけし:ワーッと飲むんですよ。

拓郎:それで、長ーい酒なんですか、短い酒なんですか?

たけし:長いですね。一ヶ所で長いんですよ。違う店に行こう、って言わない。

拓郎:あ、じゃああちこちにハシゴはしないの?

たけし:せいぜい二軒ぐらい。一軒に三時間か四時間ぐらい。

拓郎:うわーっ!?

たけし:ひたすら飲む。それが好きなんですよね。

拓郎:お酒がね。

(再び“唇をかみしめて”が流れ、番組終了)

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