新譜評 by Paul Fayers

トム・ジョーンズ:リロード Tom Jones : Reload

1999年9月15日受稿
さあ、これだ。このとてつもなく強力なアルバムには、誰が聴いても何かがある。


Tom Jones' new album "Reload"
Released on Sept. 27,1999

Track Listing

1. Burning Down The House
with The Cardigans
(Originally recorded by Talking Heads)

2. Mama Told Me Not To Come
Kelly Jones from Stereophonics
(Three Dog Night)

3. Are You Gonna Go My Way
Robbie Williams
(Lenny Kravitz)

4. All Mine
The Divine Comedy
(Portishead)

5. Sunny Afternoon
Space
(The Kinks)

6. I'm Left, You're Right She's Gone
James Dean Bradfield
of Manic Street Preachers
(Elvis Presley)

7. Sexbomb
Mousse T
(Mousse T)

8. You Need Love Like I Do
Heather Small of M People
(Gladys Knight And The Pips)

9. Looking Out My Window
The James Taylor Quartet
(Tom Jones)

10. Sometimes We Cry
Van Morrison
(Van Morrison)

11. Lust For Life
Chrissie Hynde of The Pretenders
(Iggy Pop)

12. Little Green Bag
Barenaked Ladies
(The George Baker Selection)

13. Ain't That A Lot Of Love
Simply Red
(Sam & Dave)

14. She Drives Me Crazy
Zucchero
(Fine Young Cannibals)

15. Never Tear Us Apart
Natalie Imbruglia
(INXS)

16. Baby It's Cold Outside
Cerys Matthews of Catatonia
(Ray Charles and Betty Carter)

17. Motherless Child
Portishead
(Peggy Lee)

つこと5年、インタースコープ(訳者註:トムの前のレコード会社)との決別の末、ついにトム・ジョーンズの新ものが現れた。カバー曲や共演者について様々なうわさがあったが、もうおしゃべりはやめだ。新アルバムは今ここに、僕の手の中にある。

で、このアルバムはどんなかって?多種多様な共演者のリストを見て予想がつくとおり、あまり系統だってはいない、ちょっと変わった感じのアルバムだ。一貫しているのはトムの圧倒的なヴォーカル。実際、「ヒット曲」アルバムの様相を呈しているが、僕が聴いても間違いなく「ヒット曲」がいくつもあると思う。

このアルバムの曲は明らかに3つのカテゴリーに分けられると思う。「いいもの」、「よくないもの」、そして「最高にすばらしいもの」!

まず「よくないもの」からいこう。正直に言ってこのアルバムにはカスはひとつもない。だが有名なオリジナル・バージョンに比べるとちょっと苦しいものがいくつかある。思い浮かぶのはどちらかというとひらめきのないアレンジであるエルヴィス・プレスリーの 'I'm Left, You're Right She's Gone'、イギー・ポップの 'Lust For Life'、それに キンクスの 'Sunny Afternoon' だ。なかでも 'Sunny Afternoon' は、キンクスの傑作をスペースが心得た風にひねりを加えすぎたため、かえってやや凡庸なものになってしまったし,リード・ボーカルのトミーの声がトムの声にうち負かされてしまっていて、ことに良くない。あと特に場違いなのはヴァン・モリソンとの共演の 'Sometimes We Cry' だ。もちろん、これも絶対的によくないというわけではないのだが 'Carrying A Torch' プロジェクトの置きみやげ、という感じで、新しい「ヤング・ダイナミック・トム・ジョーンズ」プロジェクトの曲、という感じはしない。

「若々しく、ダイナミックでいいもの」に移ろう。このカテゴリーに入るのは当アルバムの40%に当たり、前のカテゴリーと同じように主に有名な曲のありふれたアレンジなのではあるが、ここでは曲と声の共演が本当にトムに合っていて、真の違いはトムが自分自身楽しんでいるように聞こえることだ。ステレオフォニックスのケリーとランディー・ニューマンの古典 'Mama Told Me Not To Come' を歌うトムの声には喜びがある。ロビー・ウィリアムズとの 'Are You Gonna Go My Way' ではイントロの親しげなやりとりからしてトムが楽しんでいるのがわかるし、 'Never Tear Us Apart' ではトムの声の中の「悲嘆」に触れることができるだろう。 'Little Green Bag' ではギターのイントロを聞いたとたん、気分が浮き立つし、ヘザー・スモールとシンプリー・レッドとのソウルフルな古典 'You Need Love Like I Do''Ain't That A Lot Of Love' ではトムが歌いながら一瞬一瞬をいとしんでいるのがわかる。

さあ、このアルバムのハイライト、「最高に素敵な」カテゴリーについてだ。トムはこれに到達するのに待たせたりはしない。実際、第1曲目、最初のシングルとなった 'Burning Down The House' はこのカテゴリーに入る。トムとカーディガンズはこのトーキングヘッズの先進的作品を取り上げ、世界中 を魅了するためにファンキーでポップな珠玉の名作に作り替えてしまい、世界のトム化が間近に迫っていることを予感させてくれる仕上がりとなった。 次なる決定的傑作は 'All Mine' だ。ディバインコメディは、ポーティスヘッドのジョン・バリーへの傾倒をふまえた上で、彼らの巧みな演奏を披露し、永遠の傑作を作り上げている。これは「サンダーボール」のようなトムのベストの時のものに匹敵するであろう。 次に来るのがズッケロの再演 'She Drives Me Crazy' で、これまた世界的大ヒットになりそうだ。アルバムの中ではトムの80年代のヒット 'Kiss' に感触が一番近い。そしてクリスマス・シングルになるに違いない、カタトニアのケリスとの 'Baby, It's Cold Outside' が来る。アレンジはオリジナルに近いが、ここでは非常にうまくいっている。この手のトムを聞くのは本当に久しぶりだし、この2人のシンガーの間で明かな化学変化がおこっている。

そして残された3曲も「最高にすばらしい」カテゴリーに入るのだが、すべてトムがソロで歌っているものであるということは決して偶然ではない。まずは 'Sexbomb'。主題は昔からのトムの題材だが、トム一人で歌っているため、うめき声やアドリブを存分に堪能できる。ここでもトムの楽しんでやっている感じ と、この歌の面白い今風な演出とが相まって、非常に素晴らしいものとなっている。次に来るのが自らのペンによる 'Looking Out My Window'。これはずっと僕のお気に入りなのだが、60年代のオリジナル録音のパワーにはちょっと達していないものの、JTQがおもしろいひねりを入れてファンキーな作品に仕上げている。

このアルバムをしめくくる曲 'Motherless Child' は真に心を惹きつける。ポーティスヘッドはこの古いスタンダードに非常に現代的で雰囲気のある、やや不吉な感じの伴奏をつけており、一方トムは悲痛な詞に彼のハートを本当にそそぎ込んでいる。曲とアルバムが終わりに近づくにつれ、どんな硬い心の人でも浮かんだ涙をぬぐうことになるだろう。 さあ、これだ。このとてつもない強力なアルバムには誰が聴いても何かがある。「いいもの」、「よくないもの」、「最高にすばらしいもの」を取り上げてきたが、この比類なきウェールズ人がその連隊と共に地平線のかなたに消えていくとき、僕たちがすることはひとつだ。プレイ・ボタンを押してこの体験をよみがえらすこと。もう一度。そして、もう一度。

- Paul Fayers, Norwich, England -
(訳:Mari & Hiroko) 


©Paul Fayers, 1999, Uploaded on September 19, 1999 by Mari

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