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 1997年10月15日 羽田付近で捕獲されたシロザケ

 多摩川でサケの放流が行われていることは比較的よく知られていますが、では、放流されたサケがその後どうなったのか、という話は、悲しくなるほど知られていません。実際、しっかりとした調査も行われておらず、回帰の記録も散在している状況でした。
 多摩川にも少数ながらシロザケの回帰は見られます。このままでは、条件の悪い長旅を終えてぼろぼろになりながら帰ってきたサケが”うかばれない”などと少々感情移入しつつ、学術的な興味もあり、多摩川に回帰したシロザケの情報をまとめてみました。
 データは、基本的に1998年2月までのものです(各個体の情報については、適宜更新します)。


1.発見件数と放流数

 多摩川では、シロザケの発見例が毎年数件あります。しかし、それらの発見例のうち、専門家が実際に確かめられる機会は少ないので、すべての発見例がシロザケであったという保証はありません。また、多摩川は非常に広く、実際に遡上してきたサケのうち、果たして何%を発見できているのか、見当もつきません。そうした事情から、多摩川のサケ遡上数を正確に見積もることは不可能と思われるので、ここではあくまで、「発見件数」として扱うことにします。
 発見件数の推移と放流数の関係はグラフのようになっています。放流数が多かった1981年〜1984年あたりのちょうど3〜4年後に発見件数が多くなっています。これは、シロザケが3〜5年後に産まれた川に帰ってくることを考えれば自然なことで、多摩川でも放流数が多ければ発見件数も多く期待できるということを示しています。しかし、多摩川の環境を考えずに、ただたくさんの回帰を期待するためにたくさんの稚魚を放流するということには多くの疑問点が残ります。 




 放流数の数字は多摩川サケの会の他に作者が確認できた範囲で、多摩川でシロザケ放流を行っている他の団体の放流数とを足し合わせたものです。


2.発見場所


二子玉川園付近の発見例がもっとも多く、ついで丸子橋付近となっています。いずれの場所も駅から近く、川を訪れる人が多い場所ですので、発見される確率も高くなっているようです。もっとも上流で見つかったのは本流では是政付近、支流では八王子の北浅川で見つかった例があります。しかし、北浅川で見つかったサケは実はベニザケでした。これは大変めずらしい例で、論文としても発表されています。ちなみに、このベニザケは、多摩川サケの会が放流した稚魚とはおそらく関係ありません。


3.遡上シーズン

 多摩川の場合、1年間で発見されるシロザケの数は数尾程度ですので、遡上のピークというものは考えることができません。しかし、現在(1998年10月15日)までの20年間の発見例を発見時期別にまとめてグラフにすると下のようになります。

 このグラフによれば、12月中旬がもっともシロザケが発見される確率が高い時期と言えます。一般に、シロザケの遡上のピークは北ほど早く、南に行くにつれて遅い傾向があります。北海道では10〜11月、福島で11月後半であることを考えれば、更に南に位置する多摩川の遡上のピークが12月中旬であることは納得できる結果と言えます。


4.回帰した個体の情報

 随時、更新しています。


5.産卵の可能性

 私個人の見解としては、多摩川でシロザケが再生産されることはほとんど不可能であると考えています。
 第一の理由は、多摩川で卵を抱えたまま死んだメスザケが何尾も見つかっていることです(写真:右下の黒い粒が卵。この個体はおそらく1回も産卵していない。)。通常は、シロザケのメスはほとんど全ての卵を産んでから死にます。というのは、普通はオスがメスを取り合う形になるので、オスが精子を出し切らずに死んでゆくことはあっても、メスが卵を出し切らずに死ぬということは滅多にないのです。つまり、多摩川で、卵を抱えたメスのシロザケの死体が多数見つかっているということは、シロザケの個体数が少なすぎて、オスと巡り会えなかったか、または、よほど産卵環境が不十分であったということと思われます。
 第二の理由は、仮にオスザケとメスザケがうまく巡り会って産卵を終えたとしても、産卵の時期が遅いため、海に下るべき時期に十分な発達段階に至らないという点です。毎年、多摩川サケの会で入手しているサケ卵は、12月初旬の段階で、積算温度380〜400℃の発眼卵で、水温12℃前後で飼育して2月中旬にちょうど良い大きさに育ちます。しかし、多摩川における親ザケの遡上のピークは12月中旬で、仮にその時期に産卵が行われたとしても、かなり遅れてしまいます。当然、これらの親ザケも、2月中旬に放流されて帰ってきたサケですから、サイクルが徐々にずれていっているわけです。
 実際、多摩川で捕らえられた複数のシロザケから採卵・受精を行って稚魚を育てた例(1982、1986年)がありますが、当時の関係者によれば、いずれも稚魚は放流の時点で十分な大きさまで育てられなかったということです。


参考文献

馬場錬成 著 「サケ多摩川に帰る」人間選書
長沼 広 「多摩川にそ上したベニザケ」魚類学雑誌 35(1),83-86,1998
「サケ新聞」1号〜16号、多摩川サケの会

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