BSE(いわゆる狂牛病)と人にとってのリスクQ&A
 
 
Q&A項目
 
 A プリオン病編
 
 ヒト編
  1.BSE(いわゆる狂牛病)はプリオン病ですか? 
  2.プリオンってどんなものですか? 
  3.プリオン病とされるヒトの病気は? 
  4.新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は
    従来のCJDと異なるのですか? 
  5.BSEと新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は、
    関連がありますか? 
6.新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は、BSE
  7.vCJDの潜伏期間はどれくらいですか? 
  8.英国では、今後、vCJDの患者数が増加するのでしょうか? 
  9.CJDによる年間死亡率はどのくらいですか? 
  10.英国では、CJDとvCJDで年間死亡率が異なるのですか? 
  11.異常なプリオンはどのようにして増えるのですか? 
  12.経口的に侵入した異常プリオン蛋白は、
    どのようにして脳に到達するのですか? 
  13.どのくらいの異常プリオンを食べると伝達(感染)するのですか? 
  14.CJDの治療法はありますか? 
  15.日本でvCJDにかかるリスクはどのくらいですか? 
  16.vCJDにかからないためにはどうすればよいのでしょうか? 
 
 牛編
 
  17.牛以外の動物にもプリオン病はありますか? 
  18.種の壁とは何ですか? 
  19.牛のプリオンってどこの臓器に多く存在するの? 
  20.牛が汚染された飼料などを食べると、どうしてBSEになると
    いわれてるんですか? 
  21.同じ飼料を食べても、発病する牛としない牛がいるんですか? 
  22.どうして英国でBSEが大発生したのですか? 
  23.最近、英国でBSEの発生が減少している理由は? 
  24.どうして英国でvCJD患者が多いのですか? 
  25.最近、EU以外でvCJDが発生した例はありますか? 
  26.日本で今後もBSEの発生が続くのですか? 
  27.BSEはvCJDと関係ないという研究もあるんですか? 
  28.BSEの検査方法ってどういうものですか? 
  29.背割りって何ですか? 
  30.BSEが、豚や鶏に経口伝達することはないのですか? 
  31.牛の臓器のどこが危険なのですか? 
 
 
 
 B BSE編
 
 ○BSE(いわゆる狂牛病)について                    
  1.BSEとはどのような病気で、どれくらいの潜伏期間ですか? 
  2.BSEの病因(病気の原因)は何ですか? 
  3.肉骨粉とは何ですか? 
  4.英国など諸外国でのBSEの発生はどのようになっていますか? 
    ※OIE(国際獣疫事務局)って何ですか?
 
 ○牛肉等の安全性について
  5.牛乳・乳製品、牛肉は食べても大丈夫ですか? 
    ※回腸遠位部ってどこの部位ですか?
  6.輸入停止措置以前に輸入された牛肉及び乳製品などは大丈夫
    ですか? 
  7.牛エキスが入った食品やいわゆる健康食品は大丈夫ですか?
    このうち、既に購入したものを使用しても大丈夫ですか? 
  8.牛由来原材料を使用した食品に係る自主点検の最終結果は
    どうなっていますか? 
  9.異常プリオンの不活化方法はどうなっているのですか? 
  10.医薬品の中には、牛が原料に使われているものがあると
    聞きましたが、BSEに感染する心配はないのですか? 
  11.化粧品からBSEが人に感染する心配はないですか? 
 
 ○BSEの主な対策について                        
  12.輸入牛肉等に対する国の対策はどのようになっていますか? 
  13.10月18日から特定危険部位の取扱いはどうなっていますか? 
  14.国のBSE対策の現状はどうなっていますか? 
 
略語の欧米語表現
 
・プリオン;prion(proteinaceus infectious particle(蛋白性の感染を起こす粒子)からの造語)
・BSE ;Bovine Spongiform Encephalopathy (牛海綿状脳症(いわゆる狂牛病))
・CJD ;Creutzfeldt-Jakob Disease (クロイツフェルト・ヤコブ病)
・FDA ;Food and Drug Administration (米国の政府機関である食品医薬局)
・OIE ;Office International des Epizooties (国際獣疫事務局(仏語))
・SEAC;Spongiform Encehalopathy Advisory Committee
                     (英国の海綿状脳症諮問委員会)
・vCJD;variant Creutzfeldt-Jakob Disease
                     (新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)
 
関係機関等のホームページアドレス
 
・農林水産省ホームページ   http://www.maff.go.jp/
・厚生労働省ホームページ   http://www.mhlw.go.jp/
・OIEホームページ     http://www.oie.int/
・FDAホームページ     http://www.fda.gov/
・英国CJDサーベイランス  http://www.cjd.ed.ac.uk/
A プリオン病編
 
ヒト編
 
Q1:BSE(いわゆる狂牛病)はプリオン病ですか?
 
A:プリオン病とは、ヒトと一部の動物が罹る脳疾患で、脳細胞が脱落し、グリア細胞が増え、そのため脳が海綿状(スポンジ状)になる変化を起こし、また、異常物質が沈着します。生命のない異常蛋白であるプリオンが病因と考えられている病気です。
プリオンは脳に多く含まれていますが、異常プリオンに接すると正常プリオンが異常化し、ドミノ現象的に異常プリオンが増加し、脳病変が加速されてゆきます。
この病気の特徴は、同種間だけでなく、異種間でも伝達できる場合があることです。そのため、ひとまとめにプリオン病と呼ばれ、脳病変の特徴から「伝達性海綿状脳症」とも呼ばれています。
BSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)はプリオン病のひとつです。
海綿状脳症が異常プリオンを介して他の個体に伝わることを「伝達」(transmission)と呼び、病原微生物の「伝染」(infection)と区別します。しかし、家畜伝染病予防法、と畜場法及び食品衛生法では、以前の学説に立って「伝染性海綿状脳症」と表記されていま
す。
 
Q2:プリオンってどんなものですか?
 
A:プリオンとは、重さ(分子量)が、33から35キロ・ダルトン(約6×10-20グラム(1辺が約25kmの升いっぱいの水の中にある1円玉1枚程度))という極めて小さい蛋白であるため、肉眼で見ることは到底できません。ヒトでは第20番染色体に存在するプリオン遺伝子が産生する糖蛋白です。
プリオン遺伝子は、哺乳動物から酵母に至るまで見いだされています。
正常なプリオンの機能はほとんど判っていませんが、運動を支配する神経細胞の維持や睡眠調節に関係しているらしいという研究が発表されています。正常なプリオンは病気を起こすとは考えられていません。
 
Q3:プリオン病とされるヒトの病気は?
 
A:ヒトのプリオン病には、これまで、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、家族性のゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、食人の風習のあったパプアニューギニアのある種族だけに起きるクールー病などが知られていました。
プリオン病の患者の大部分、日本では約9割がCJDです。CJDの発生率は年間100万人に1人前後です。地域差、男女差はなく、世界各地に孤発的に発生しています。遺伝が関与する遺伝性CJD(GSSなど)がそれに続きます。
  医原性伝達が疑われるものとして、CJD患者由来の角膜の移植を受けた正常人がCJDに罹るなどの実例が知られ、患者由来かどうか不明ですが、脳下垂体製剤、乾燥硬膜(脳膜)移植などで生じたとされる例が報告されています。
  この他に、BSEとの関連性が示唆されている新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)が英国、アイルランド、フランスで確認されました。
 
 
Q4:新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は従来のCJDと異なるのですか?
 
A:1996年3月、英国の海綿状脳症諮問委員会(SEAC)は10名のvCJDの患者を確認し、この病気は、
 (1)若年で発症すること
 (2)発症して死亡するまでの平均期間が13カ月であること
 (3)脳波のPSD(周期性同期性放電)がみられないこと
 (4)脳の病変部に広範に異常物質が沈着したクールー斑や神経細胞が脱落した後の空  胞がみられること
 など、従来の孤発型(古典型)CJDとは異なる特徴を有するとしました。
  詳しいことは、ランセット誌347:921-925,1996、同誌350:903-907,1997に載っています。(1),(2),(3)の相違点によって、患者が生きている間に古典型CJDと区別できますが、死後、解剖によって(4)など、脳が海綿状(スポンジ状)になった病理所見を確認して確定診断が行われます。このような相異はvCJDを古典型CJDと区別する根拠となるだけでなく、パプアニューギニアのクールー病に酷似している点が注目されています。クールー病は男女の子供と中年女性に多く、感覚症状で発症し、CJDよりはやや緩慢で、痴呆と運動失調がつよい点でもvCJDとおなじです。クールー病は食人によっておきるとされ、vCJDが異常プリオンの経口摂取でおきると考えるひとつの傍証となっています。
 
Q5:BSEと新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は、関連がありますか?
 
A:英国の海綿状脳症諮問委員会(SEAC)によると、疫学的研究及び症例研究では、vCJDの症例に共通する危険因子は確認されませんでしたが、英国政府がvCJDが2名発見された段階で公表に踏み切ったのは、国民の健康を守る公衆衛生的配慮によるもので、因果関係はその時点では不明でありました。始めは、患者が少なく、プリオンの性状が分析できただけで、疫学的研究は限られていました。
vCJD患者と正常者とを比較する分析疫学的研究によって、vCJDの既往因子に特別なことはなく、1994年又は95年に発症したvCJDの患者10名のうち9名は過去10年間に牛の臓器を含む牛肉を食べており、残り1名は91年以降、菜食主義者でした。
1996年3月、SEACは、BSEとvCJDの間に因果関係があるとする直接的な科学的根拠はないが、他に確度の高い選択肢もないことから、最も適当な説明として、脳、脊髄などが食用に供されていたことに関連があると示唆しました。特定危険部位とされている脳、脊髄などの臓器は、1989年11月以前は食べられていました。
 
Q6:新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は、BSEから伝達されたものですか?
 
A:もっとも気になる点です。これまでの成果をまとめますと、
まず、vCJDとBSEから抽出された異常プリオンの物性的特徴が一致し、スクレイピーとは異なることが示されました。また、マウスの脳内に異常プリオンを含む材料を接種した場合の潜在期間、臨床症状及び脳病変について、BSE病原体接種群とvCJD病原体接種群を比較すると同じような特徴を示しますが、弧発型CJD病原体接種群や羊のプリオン病であるスクレイピー病原体接種群とは異なる特徴があるという研究報告がありました。
その後、ヒト及び牛の正常なプリオンを産生する遺伝子を組み込んだヒト型マウス、ウシ型マウスへのBSEの伝達試験並びに異常化したプリオンの免疫化学的構造の比較試験により、BSE病原体とvCJD病原体は、同一の伝達因子であることを示唆する報告がありました。
vCJDを確認している国(2001年8月現在)の患者数の累計は、英国99人、アイルランド1人、フランス3人で、その年間死亡率は人口100万人当たりそれぞれ、0.47人、0.27人、0.05人となります(出展:OIE、英国政府など)。一方、BSE牛の頭数は人口1,000人当たりそれぞれ、3.07頭、0.17頭、0.005頭となり、両者は平行して増加しており、人口当たりBSE牛が多い地域程、vCJDの死亡率も高いことが判ります。疫学ではこれを量反応と呼び、因果関係のひとつの証拠と考えます。
一方で、BSEとvCJDは関係がないという研究が2001年9月に英国の医学専門誌に掲載されています。
従って、学問的にはBSEがヒトに伝達する又は伝達しないという判断を、断定的に下すことは誰もできないというのが現状です。しかし、公衆衛生的にみれば、関係があるとして対策を立てるべきであると考えます。
 
Q7:vCJDの潜伏期間はどれくらいですか?
 
A:現在のところ、正確には判っていません。
  英国では、vCJD患者を初めて確認した1996年当時は、ヒトが伝達性のある危険部位を食べてから発症するまでの期間(潜伏期間)は、8年から10年と考えられていました。その後、それより潜伏期間は長く、最短で9年程度であるとか、最長で40年程度であるという研究者がいます。ヒトでの実験は今後もあり得ませんし、英国における初めての発症の確認は1994年2月から95年10月までで、その患者が脳の食用が禁じられた1989年11月以前に異常プリオンを摂取したとすると、最短で数年と考えられます。しかし、正確な潜伏期間は誰も断言できません。
  なお、最長で40年程度と考える人の根拠は、プリオン病と考えられているクールー病にかかったヒトの脳などを食べていたパプアニューギニアのフォレ族での観察事例に基づく調査結果からです。
  また、BSE患者数が最も多い英国の研究では、特定の遺伝子を持つ患者の発症時期が相対的に遅いことから、ヒトでも体質や遺伝の違いによって潜伏期間や感受性がかなり異なるのではないかと考える研究者がいます。
 
Q8:英国では、今後、vCJDの患者数が増加するのでしょうか?
 
A:英国を含むEU5カ国では、BSEが集団発生の兆しをみせた直後からCJD類縁疾患の全数発見による登録制度がおかれ、英国の分は「英国CJDサーベイランス」と呼ばれています。それによると、英国の調査では、vCJDの患者数は、下表のとおり推移しています。
今後、どれほど増加するかは予断できませんが、しばらくは発生が続くと思われます。
vCJDの患者数の発生が、BSEの発生頭数と遅れて平行するかどうかについて、疫学を専攻する研究者は注目しています。
 
  英国のCJD患者数の推移                 (単位:人)

          1995年   96   97   98   99  2000  2001

   孤発型CJD   35   40   59   63   61   48   28
 
    vCJD      3   10   10   18   15   28   23

                   (英国の人口は約5,900万人)
   資料:英国CJDサーベイランス
   注1:2001年は9月28日まで
   注2:vCJD患者数には、神経病理学の確定を得ていない例を含む。
      最新のデータの入手先は http://www.cjd.ed.ac.uk/figures.htm
 
Q9:CJDによる年間死亡率はどのくらいですか?
 
A:CJDは100%致命的であり、発症後約1年で死亡することから、死亡者数は1年前の患者発生数とほぼ同じになります。
  1980年代には熱心な調査が行われ、死亡率が報告されました(資料1)。これによると、CJDによる年間死亡率は人口100万人に対して、最も低いイタリアでは0.11人、最も高いイスラエルでは1.07人となっており、日本では0.15人です。また、年齢別及び年代別にみると、@50歳までは死亡率が極めて低く、加齢とともに増加すること、A近年ほど死亡率が増加しているが、主に65歳以上での増加によることという特徴があります。
  同じような特徴が米国、イスラエル、ヨーロッパでみられます。日本でもCJDが増加していますが、これを分析すると、死因として多かった脳卒中などの病気が、栄養改善や医療の進歩等により減少していることから、CJDの長い潜伏期間中におかれていた人が、CJDが発症するまでにこれらの病気で死亡することが減じたことにより、CJDでの死亡が多くなったためであって、CJDの原因が増加しているものではありません。
 
Q10:英国では、CJDとvCJDで年間死亡率が異なるのですか?
 
A:CJDでは、人口100万人に対する年間死亡率は世界中どこでも1人前後です。一方、vCJDの年間死亡率については、英国で1995年以降の平均でみるとおおよそ人口400〜500万人に1人となっています。28人と最大の死亡者が発生した2000年においても200万人に1人の年間死亡率です。この間、英国でも古典型のCJDの年間死亡率はほぼ一定で、BSEの発生の影響を受けていません。
 
Q11:異常なプリオンはどのようにして増えるのですか?
 
A:古典型CJDの脳内で異常化したプリオンがどのような機序(仕組み)で生ずるかは不明ですが、正しく形成された正常なプリオン蛋白の立体構造が変化し、後天性で年齢依存性に起こる(生まれた後に年を重ねるごとにプリオンが異常化する危険性が高まる)と推定されています。CJDの発生率が加齢とともに増加するのはそのためとも考えられています。
異常プリオン蛋白が正常なプリオン蛋白に接すると、機序は不明ですが、それを異常化(正常プリオン蛋白の立体構造が変わり異常プリオン蛋白になる)させ、異常プリオンが連鎖的に増加します。その点で微生物の増殖と似ており、CJDが見かけ上、感染症の特徴をもつといわれる理由です。
人為的に正常なプリオン蛋白を欠損させた動物への異常プリオンの接種試験では、プリオン病の発症とプリオンの増殖が起こらないため、増殖には正常プリオン蛋白の存在が必須であるといわれています。
 
Q12:経口的に侵入した異常プリオン蛋白は、どのようにして脳に到達するのですか?
 
A:BSE、vCJD、クールー病などで、経口摂取された異常プリオンが、どのように腸管から中枢神経系に移行するかは不明です。おそらく、大量に習慣的に食べた牛や人の一部で、腸管のリンパ装置から侵入し、近接した神経繊維を経て脳に侵入するものと推測されています。それには多くの障害があり、スクレイピーで海綿状脳症の抽出物を脳に直接接種したら100%発症する場合であっても、餌として大量に食べさせた場合は1〜3%しか発症しません。この現象は「経口の壁」と呼ばれています。
 
Q13:どのくらい異常プリオンを食べると伝達(感染)するのですか?
 
A:どのくらいの量の異常プリオン(汚染された脳など)を食べると、ヒトに伝達するのかという研究結果はありません。
動物での伝達実験によると、同じ量の異常プリオンを食べさせても、必ず発症するというわけではなく、発症しないことの方が多いと推測されています。英国の牧場で同じ肉骨粉を与えられ続けた牛でも、成牛1,000頭当たり9.5頭しか発症していません。このような結果になる一つの要因はQ12で述べた、いわゆる「経口の壁」があると考えられます。
  BSEプリオンはヒトにとっては異物である異種蛋白です。わずかであれば、そのまま腸管を通過して便として排泄されるでしょうし、人体に侵入しても、人体には、異物を排除しようとする様々な防御機構があります。
  仮に、小腸のリンパ節に入り込んだとしても、白血球の中の食細胞が病原体を飲み込んでしまう機序(仕組み)が働いて、脊髄及び脳に達する機会を大きく減少させる可能性があります。
 
Q14:CJDの治療法はありますか?
 
A:残念ながら、現在のところありません。
  しかし、精神異常を示す初期の段階で診断できる方法を見つけることや異常プリオンを減少させるワクチンのようなものを開発することなどの研究が進行中であり、早期の成果を期待しているところです。
 
Q15:日本でvCJDにかかるリスクはどのくらいですか?
A:国民の関心を呼んだ重大問題ですが、つぎの2段階に分けて考える必要があります。a.10月18日の牛の全頭調査の施行以前
BSE牛の発生規模はまったく違いますが、これは英国で脳などの食用向けが禁止された1989年11月までの状況に準じています。しかし、BSEに罹患した牛が発見されたとしても、以下の点を踏まえれば、日本でvCJDによる死者の発生する可能性は極めて低いものと考えられます。
  第1に、我が国では、脳などの特定危険部位を通常の人が食用にする習慣がなかったことです。英国などでは、脳をメインにした料理がありました。また、脳がハンバーガーなど肉製品のつなぎに用いられていました。
  第2に、英国はBSEの発生確認(1986年11月)から特定危険部位の食用向け禁止措置の導入(1989年11月)まで3年間ありました。1989年末までには、7,228頭のBSEの発症が報告されています。我が国では、2001年9月に1頭のBSEを確認後、9月中に特定危険部位を食用に流通させなくしました。
  第3に、BSEの発生頭数の圧倒的な違いです。英国では累計18万頭もの牛がこれまでBSEで死亡していますが、我が国では10月22日現在、1頭しか確認されていません。
  第4に、英国においてさえも、vCJDの年間死亡率が500万分の1と極めて低いことです。
  疫学的に厳密にリスクを分析するには基礎的データが欠けていますが、日英の人口に倍の差があるのですが、大胆に数値化すれば、上記の第3、第4の要因だけでも1/18万×1/500万×1/2=1/1兆8000億以下になると近藤 喜代太郎氏は試算しています。
  因みに、人口100万人に対する年間死亡者数は、英国ではインフルエンザ感染によるものが200人、米国の喫煙によるものが7,000人、日本のがんによるものが2,352人という調査又は統計があります。
b.全頭調査の施行後
今後は子牛を含め、厳密に全頭調査を受け、陰性であった牛のみが出荷され、その際、脳、脊髄、目、回腸遠位部は除かれます。これは英国はもとより「国際獣疫事務局」の勧告する国際基準より厳重な検査体制です。また、検査前の牛肉をはじめ牛製品は大幅に回収されており、検査を経てこれから出荷される牛製品はまったく安全で、vCJD発症のリスクはゼロといえるでしょう。
 
Q16:vCJDにかからないためにはどうすればよいのでしょうか?
 
A:現在のところ、欧州では、新たに伝達する因子を摂取するヒトを増やさないようにするために、伝達性があると認められる特定の危険部位(牛の脳、脊髄、眼、回腸遠位部)を国民が食べないようにすれば充分とされています。従って、脳ステーキ等、特別なものを食べない限り問題ないと思われます。
  現状の英国で牛肉を食べたとしても新たにvCJD患者になるほどの危険性は極めて小さく、100億回牛肉を食べたうち危険なのは1回ぐらいであろうと、米国の食品医薬局(FDA)のインターネットのホームページ(注)に掲載されています。
  牛由来の物質が化粧品などに含まれていますが、BSEは牛同士の接触では起きず、ヒトのvCJDも英国での疫学的調査によれば、BSEと接触症は否定されています。
 従って、牛製品への接触は何ら危険はないといえます。
  なお、日本では、月齢を問わず、全ての牛の特定危険部位は10月18日以降食用に向けられることがありません。食用に向けられる牛については、全頭、BSEにかかっているかどうかの検査を行う体制が、10月18日から開始されています。検査で陰性の牛肉のみが食用に向けられます。
 
  ※FDA( Food and Drug Administration )
  注:http://www.cfsan.fda.gov/~comm/bsefaq.html
牛編
 
Q17:牛以外の動物にもプリオン病はありますか?
A:BSEと同様に脳の組織が海綿状(スポンジ状)になる病気には次のようなものがあります。古くからめん羊や山羊がかかるスクレイピーが有名です。
その他に、ミンクがかかる伝達性ミンク脳症、ネコ科の動物がかかる猫海綿状脳症、シカやエルク(オオジカ)がかかる慢性消耗性疾患(chronic wasting disease)です。
ミンクやネコ科の動物、シカのプリオン病は、羊のスクレイピーのプリオンが病因ではないかと考える研究者がいます。
BSEはヒトに伝達するとの考えが有力ですが、BSE以外の動物プリオン病は、2001年10月までの知見では、ヒトには伝達しないと考えられています。
野生のシカの慢性消耗性疾患が本年確認された米国では、予防的措置として、これらのシカを食用にしたり、肥飼料原料用に向けたりすること(レンダリング工場に搬入すること)のないよう指導しています。
 
Q18:種の壁とは何ですか?
 
A:ヒトが牛の異常プリオンを食べたとしても、牛が牛の異常プリオンを食べることに比べ、伝達する危険性は少なくとも100分の1以下(10万分の1以下という研究者もいる。)である、牛由来のプリオンがヒトに伝達するには障害がある、つまり、種の壁が存在するという研究はありますが、伝達リスクはゼロでないことを前提としています。
 
Q19:牛のプリオンってどこの臓器に多く存在するの?
 
A:牛の臓器、組織には様々なものがありますが、プリオンは脳に最も多く存在すると言われています。
BSE牛の組織をマウスの脳内に接種した場合、脳、脊髄、眼が伝達性を示しました。また、BSE牛の脳組織を食べさせた(実験的に伝達させた)子牛の組織をマウスに接種した実験では、回腸遠位部(小腸40mのうち最後の1m程度)も伝達性を示しました。これらの研究から、脳、脊髄、眼、回腸遠位部には他の組織より多くのプリオンが存在すると考えられます。BSE牛の伝達させる力(力価)は、1頭分のうち、脳が約65%、脊髄が約25%で、この2つで約9割を占めているという研究があります。体重が約547kgの牛で、脳は約500g、脊髄は300g弱です。牛の重量の500分の1以下の脳及び脊髄で約9割の危険性があることになります。従って、他の部位の伝達性がかなり低いことをうかがわせます。
このような研究結果から、国際機関による危険部位の指定が行われているのです。
ミルク、骨格筋、乳房、胎盤、リンパ節など他の組織による接種試験では伝達性は検出されていません。検出限界以下のプリオンが存在していることはあり得ますが、脳内接種に比べ経口接種では、少なくとも1000倍以上の量が伝達には必要との研究があること(経口の壁)や、種の壁があることから、食品として食べる場合のヒトへの危険性の評価では問題ないと研究者や国際機関は判断しています。
 
Q20:牛が汚染された飼料などを食べると、どうしてBSEになるといわれてるのですか?
 
A:BSE牛の脳などの特定危険部位には、異常プリオンがたくさん含まれています。
BSEに汚染された牛の脳などの危険部位が、飼料用原料として利用される肉骨粉などに混入され、これを牛が飼料として食べることが、原因ではないかと考えられています。
牛の異常プリオンは、危険部位を飼料用原料とする蒸煮や加熱の工程だけでは、簡単には伝達性を失わないためです。
牛の口から入って以降については、詳しいことは判っていませんが、次のように考えられています。
牛が、異常プリオンを大量に口から摂取した場合、そのうちの一部の牛では、回腸遠位末端にあるリンパ節、その近くにある末端の細い神経から脊髄を経て、脳に移行すると推定されています。異常プリオンは、脳に最も多く存在する正常プリオンを異常化させ、次から次へと増加してゆくのです。その結果、脳に特徴的な病変が起こります。
 
Q21:同じ飼料を食べても、発病する牛としない牛がいるんですか?
 
A:BSEが大発生した英国では、BSEが発生した同じ農場で、同じような飼料を食べていた牛であっても、農場内の牛のうちBSEが確認されたのは2〜3%であったことから、牛の体質や遺伝の違いによってBSEに対する感受性や潜伏期間が個体によりかなり異なるのではないかと考える研究者がいます。
  全てのプリオン病で、個体差が大きいのが特徴とされています。
 
Q22:どうして英国でBSEが大発生したのですか?
 
A:今もって、英国で、どうして世界で初めてBSEが確認されたのかが明らかではありません。
研究者により全く異なる主張がありますが、欧州の中では英国で最も多く飼養されていた羊のスクレイピーの病原体(プリオン)が伝達源であるとする説、偶然に1986年よりずいぶん前に英国で牛に発生した病原体(プリオン)が伝達源であるとする説があります。現在では、前者より後者の考え方が有力です。
1986年以前にもBSEの伝達・発病があったのを見逃しているうちに、BSE牛の特定危険部位が牛の飼料の成分として給与されることを繰り返したために大発生につながったとする説が多くの研究者に支持されています。
 
Q23:最近、英国でBSEの発生が減少している理由は?
 
A:英国では、1992年に年間37,280頭のBSEの発症を確認後、年ごとに発症頭数が減少し、2000年には1,537頭となっています。
この要因としては、牛、羊などの反芻動物由来のタンパク質(肉骨粉など)を飼料としての牛に給与することを1988年に禁止したり、全ての家畜への給与を1990年に禁止したりした効果とみている研究者が多いです。
 
Q24:どうして英国でvCJD患者が多いのですか?
 
A:英国でvCJD患者数が多い理由は次のように考えられています。
  英国では、1986年11月にBSEを確認しましたが、牛の危険部位を食用に向けるのを禁止したのは1989年11月でした。その3年の間にBSEの発症が確認された牛は7千頭を超えており、実際にはもっと多かったのではないかとも言われています。
また、脳、脊髄などの部位を料理して食べる習慣をもつ人が多かったこと、危険部位を肉と混ぜた安いハンバーガーやソーセージが供給されていたことも原因のひとつと考える英国の研究者もいます。
  患者の数はBSE牛の発生頭数と比例しており、今後、しばらくの間増加すると考えている研究者の方が英国では多いです。
  また、英国以外で確認されたフランス及びアイルランドの患者も英国由来の食品摂取と関係があり、vCJDは英国特有の病気だという欧州の研究者もいます。
  しかし、BSEとvCJDは関係ないとする異説もあります。
 
Q25:最近、EU以外でvCJDが発生した例はありますか?
 
A:2001年6月に、香港のある病院で、34歳の中国人女性がvCJDと香港で初めて確認され、その女性が1985年から92年まで英国に滞在しており、ある神経学者は英国産の食品を食していたことで伝達したのではないか、との報道がありました。
  しかし、詳細については、学会で発表されたり、国際機関に正式に通報されたりしていないことから、現状では不明です。
 
Q26:日本で今後もBSEの発生が続くのですか?
 
A:正確にはわかりません。
1996年4月以降、反すう動物由来の肉骨粉の牛への給与禁止が行政指導で行われてきましたが、一部の農家で不適切な使用が認められたため、2001年9月18日以降は法律に基づいて禁止されています。
肉骨粉を含む飼料の製造・販売・出荷についても、2001年10月4日から当分の間停止するよう指導が行われており、全ての国からの肉骨粉の輸入も停止しました。法律に基づき、2001年10月15日からは牛用資料への肉骨粉の利用が禁止されているため、今後、飼料の摂取を通じて牛が新たにBSEにかかる機会はなくなりました。
  ただし、これらの措置以前に伝達した牛がいるかもしれませんので、今後もBSE牛に関する詳細な調査・研究が必要です。
 
Q27:BSEはvCJDと関係ないという研究もあるんですか?
 
A:BSEがヒトに伝達することを証明した研究は、2001年9月現在、ありません。
  ただ、間接的な証明として、動物を使った実験で、BSEとvCJDは同じ伝達因子(病原体)であることを示唆する研究成果が1996年に発表されて以来、異なる実験方法でも同じような結果が得られるとの研究成果が積み重なってきており、研究者の間では有力な考え方になっています。
  一方で、BSEとvCJDは関係がないという研究が2001年9月に英国の医学専門誌に掲載されています。
  このような状況ですので、BSEがヒトに伝達する可能性が高いといわれるものの、はっきりとした断定ができないというのが現状です。
 
Q28:BSEの検査方法ってどういうものですか?
 
A:牛がBSEに罹っていたかどうかの検査方法には、免疫反応を用いるものと顕微鏡で脳病変を観察するものがあります。
前者にはエライザ法とウェスタンブロット法があります。
まず、中枢神経系の一部(延髄)を生のままで取り出して、正常プリオンを蛋白分解酵素で処理し、分解されないで残った異常プリオンを抽出、濃縮します。
次に、プリオンに反応する試薬を添加して免疫反応で発色させ、色の濃さで判定するのがエライザ法です。感受性が高く、検査に慣れますと4〜5時間で終了できるため、スクリーニング検査(ふるい分けのための一次検査)は、エライザ法により行います。現在の科学水準では、BSEを最も迅速に発見しやすい、感度のよい方法といわれています。
しかし、BSEでない場合でも陽性として検出しやすい欠点があります。
従って、確認検査(二次検査)には、より精度の高いウェスタンブロット法を用います。
これは、濃縮したプリオンを電気的に移動させ、それを膜に転写して、免疫反応を行い、発色の有無と移動した位置、バンドの形状で判定します。このため、発色の程度のみによるエライザ法より精度が高いのです。
しかし、検査所要時間が迅速法でも6〜8時間、通常法(品川法)では少なくとも12時間かかります。
 
後者には、延髄をホルマリンで固定して組織切片を作成し、顕微鏡で、脳病変である空胞などを確認する病理組織学的検査、BSEの異常プリオンに反応する試薬を加えて染色して確認する免疫組織化学的検査があります。これらの方法での所要日数は、少なくとも2日以上とされています。診断をより確実にするために、二次検査でウェスタンブロット法とともに用いられることになっています。これらは、EUでは通常行いません。
これらの他に、マウスやハムスターなどの実験動物の脳内などに材料の脳を接種する方法もあり、研究所で使用されていますが、所要日数の面から、日常的な検査としては適当ではありません。
 
Q29:背割りって何ですか?
 
A:我が国の全てのと畜場において、頭部や四肢端、尾を取り外し、牛の皮を剥ぎ、内臓を取り出した後に、背骨の中心(正中線)になるべく沿いながら、金属製の鋸を使用してと体を2つに分けています。これを、と畜場法施行規則では、背割り(枝肉を脊柱に沿って左右に切断する処理をいう。)と言います。
背割りには、脊髄が飛び散るかのイメージがあります。しかし、脊髄は緻密な厚い膜である硬膜やクモ膜、軟膜の3層の被膜で包まれている上、体重500kgを超える牛でも300g弱であることから、鋸に付着するのはわずかであり、背割りの工程で派生するくずとしては、肉の切れ端がほとんどです。
脊髄周辺の液が漏れていることを心配する人もいますが、プリオンは神経細胞膜に付着して存在しているものがほとんどであり、液中に浮遊しているものはわずかと考えられます。英国では、胸部より下位の脊髄には異常プリオンは少ないとする研究もあります。また、牛の脊髄液では、BSEの伝達性を否定した実験があります。
英国での疫学調査では、と畜作業員に患者が多いという報告もなく、プリオンとの接触による牛からヒトへの伝達は否定されています。
フランスでは、背割り前にバキューム方式による脊髄の吸引を2001年7月から試験的に実施(2002年1月から吸引が義務づけられる予定)されていますが、吸引のみでは、脊柱内に残留する脊髄がみられ、改善すべき点もあるとされています。
EU規則でも背割りは、2001年10月現在、法令で義務づけられています。
我が国では、脊髄が枝肉に付着していないか、脊柱内に残留しないかどうかをと畜検査員が検査した後に枝肉が出荷されます。
なお、厚生労働省では、現行の方式を改善すべく、専門家の意見を聴く機会を設けて、検討を進めています。
Q30:BSEが、豚や鶏に経口伝達することはないのですか?
A:BSEの伝達性のある危険部位を食べさせて行う動物実験では、豚及び鶏への伝達が認められていません。従って、異常プリオンを含んだ飼料を食べても豚及び鶏には伝達しない、経口伝達しないといえます。豚や鶏がBSEに自然にかかった事例も報告されていません。
 
Q31:牛の臓器のどこが危険なのですか?
A:BSEの伝達性の程度は臓器によって異なります。主として英国で行われた複数の実験で、BSE牛からのミルクでは、牛及び他の種の実験動物に対して伝達を引き起こしませんでした。通常の肉として販売されている骨格筋を用いた伝達実験でも同様でした。
こうした実験結果をもとにして、国際機関であるOIEやEU医薬品審査庁では、牛乳・乳製品及び牛肉は検出可能な伝達性がない、つまり食べても大丈夫だと判断しています。
OIEの基準では、英国のような高発生国以外でBSEが否定されていない国について、脳、脊髄、眼、回腸遠位部が危険部位として指定されています。
         
B BSE編
 
Q1:BSE(いわゆる狂牛病)とはどのような病気で、どれくらいの潜伏期間ですか?
A:BSEは1986年に英国で初めて報告された牛の病気です。BSEにかかった牛の脳の組織が海綿状(スポンジ状)になることから、正式には、牛海綿状脳症と名付けられました。この病気は、感染してもすぐには発症しないで、2年から8年の潜伏期間を経て発症し(病気の症状が現れる)、牛が異常な行動を示したり、立っていることが困難な症状を示したりするようになり、発症後2週間から6カ月で死亡します。
 
Q2:BSEの病因(病気の原因)は何ですか?
A:BSEの病因は、完全に解明されていませんが、プリオンという正常な蛋白が異常化したものを病因とする考え方が最も有力です。
  BSEに感染した牛の脳、脊髄などを含む肉骨粉などの飼料を牛に与えることにより経口感染するといわれています。牛同士が接触したり、空気を介して移ることはありません。
  従って、細菌やウィルスという微生物による伝染病に比べ、流行しにくいのです。
  また、BSEの牛に接触してヒトが感染したという調査もありません。
 
Q3:肉骨粉とは何ですか?
A:肉骨粉は、牛や豚などをと畜解体する時に出る食用にならない部分などを加熱、蒸煮などした後、乾燥させて作った、褐色の粉末状のものです。肉骨粉はこれまで飼料や肥料に利用されてきました。牛には以前は成長を速めるため、動物性蛋白質の供給源として与えられていました。
牛へのBSE感染は、感染した牛のプリオンが含まれる飼料(肉骨粉など)を経口摂取することによって起こると考えられています。そのため、牛などの反すう動物を原料に作られる肉骨粉は、農場で反すう動物の飼料として使わないよう1996年4月から指導が行われてきました。更に、2001年9月18日からは法律に基づいて禁止されています。
肉骨粉を反すう動物以外の家畜(豚・鶏)などに給与することは、科学的に問題ありません。
しかし、一部の農家において不適切な使用事例が見られたことなどから、2001年10月4日から肉骨粉を含む飼料の製造・販売・出荷についても、当分の間停止するよう指導が行われており、また、全ての国からの肉骨粉の輸入も停止しました。2001年10月15日からは法律に基づき、肉骨粉の牛用飼料への使用は禁止され、牛用飼料に肉骨粉成分は含んではならないことになっています。
 
Q4:英国など諸外国でのBSEの発生はどのようになっていますか?
A:BSEは、OIE(国際獣疫事務局)(※)の統計(2001年10月15日現在)によると、本疾病が1986年に英国で報告されて以来、英国のほか、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、オランダ、ポルトガル、スペイン、スイス、ギリシャ、チェコ、スロヴァキア及び日本の計17カ国で産まれた牛の発生例が報告されています。
これまでの発生頭数の合計は約184千頭で、このうち英国が181千頭(約99%)、我が国では2001年9月に初めて1頭の発生が確認されました(資料3参照)。
なお、オマーン、フォークランド諸島、カナダでは、英国から輸入された牛でのBSE発生が報告されています。
 ※ Q:OIE(国際獣疫事務局)って何ですか?
   A:OIE:Office International des Epizooties
 
Q5:牛乳・乳製品、牛肉は食べても大丈夫ですか?
A:牛乳・乳製品や牛肉はOIEの基準においては、食品として国際貿易上、流通の禁止などの規制措置は講じていません。このことから、人間が食べても安全と考えられています。
OIEの基準では、英国のような高発生国以外でBSEが否定できない国について、脳、脊髄、眼、回腸遠位部(※)を危険部位として指定しています。この指定は、BSE牛の脳などのいろいろな部位(臓器)をマウスの脳内へ接種した実験で感染性を示したかどうかなどの研究に基づいて行われています。
OIEは、国際動物衛生規約において、BSEの清浄国、低発生国及び高発生国の定義を定めるとともに、低発生国及び高発生国において、取り除くべき部位(臓器)について定めています。牛乳と乳製品については、BSEの発生の程度にかかわらず、輸入規制の対象としないこともOIEで決められています。
 
 
 
(BSE発生状況に基づいた取り除くべき部位)

BSE

発生状況


取り除くべき部位(臓器)
 

低発生国

(注)


脳、眼、脊髄、回腸遠位部
 


高発生国

 

脳、眼、脊髄、扁桃、胸腺、脾臓、腸、背根神経節、三叉神経節、

脊椎、頭蓋骨
 
 ※ Q:回腸遠位部ってどこの部位ですか?
   A:牛の小腸は40メートルほどの長さがありますが、回腸遠位部はこの小腸の最    後の1メートル程度の部分といわれています。回腸から先は、盲腸、結腸、直腸    と続きます。我が国では、と畜場で肉眼で判別のつく盲腸を目印に、盲腸から回    腸部分にかかる2メートル以上を切除して、廃棄・焼却処分しています。
 
 注:低発生国のひとつの基準は、年間発生率が2歳以上の牛100万頭当たり100頭  以下の国。
   日本は、乳用牛及び子取り用めす牛で2歳以上の飼養頭数が175万頭。
                              (2001年8月現在)
 
Q6:輸入停止措置以前に輸入された牛肉及び乳製品などは大丈夫ですか?
A:牛肉や牛乳・乳製品はOIEの基準においては、食品として国際貿易上、流通の禁止などの規制措置は講じていません。このことから、人間が食べても安全と考えられています。
2000年12月以前において、英国以外のEUは、健康牛の特定危険部位を除いたもののみを日本向けに輸出しており、輸入停止前の牛肉については問題がないと考えられます。
なお、英国からは1996年3月以降、牛肉は輸入されていません。
輸入牛肉は、輸入量の多くを米国やオーストラリアが占めていますが、これらの国はBSEの未発生国です。
また、BSEの発生のあるEU等からの牛肉輸入を、日本は2001年1月より予防的措置として、停止しています。
米国は、BSE発生国からの牛肉を輸入禁止していますが、牛乳・乳製品は今でも発生国から輸入しています。日本も、乳製品は発生国から輸入しています。
 
Q7:牛エキスが入った食品やいわゆる健康食品は大丈夫ですか?このうち、既に購入したものを使用しても大丈夫ですか?
 
A:牛エキスは、「ビーフエキス」、「肉エキス」、「ビーフブイヨン」などの名前でも使われていますが、厳密な区別はなく、牛を原料とした調味料をこうした様々な名称で呼んでいます。これらのエキスは、主として肉、骨、皮などを原料につくられており、脳、脊髄、眼、回腸遠位部の危険部位が使われたり、混入したりすることは通常ありません。
また、健康食品としては、コラーゲンや骨のカルシウムなどが使われていますが、これらも牛エキスと同様の原料で作られています。
特に、平成13年9月末からは、危険部位はと畜段階ですべて除去されており、それ以降に作られたものはこれらの部位が使われることはありません。
現在、牛由来の原料を使用している食品についての安全確認が進められています。
 
Q8:牛由来原材料を使用した食品に係る自主点検の最終結果はどうなっていますか?
 
A:厚生労働省は、11月2日、特定危険部位を含むおそれのある牛由来原材料を使用して製造又は加工された食品の安全性確保に係る自主点検の結果についての最終報告の取りまとめを公表しました。
10月24日までに食品の製造者又は加工者より保健所に報告のあった概要は次のとおりです。
    ・製造者及び加工者の総数は8,890
    ・加工食品の総数は132,645
 
    ・特定危険部位を使用・混入した加工食品の総数   51
    ・特定危険部位の使用・混入の有無が不明の総数  373
                         計  424
     このうち、
     ・BSE非発生国原料やプリオンの
       不活化などを行っていた食品の総数     402
     ・製品回収・販売中止等の措置を行った食品の総数 22
 
厚生労働省は、今後とも都道府県等の協力を得ながら、製造者及び加工者等について立ち入り調査を行い、特定危険部位の混入・使用の有無について確認するとともに、問題があれば適切に指導を行っていくこととしております。
 
Q9:異常プリオンの不活化方法はどうなっているのですか?
 
A:異常化したプリオンは、通常の加熱調理では不活化されませんが、世界保健機関(WHO)によると、134℃、18分間の高圧蒸気滅菌という十分な加熱処理又はこれと同等以上と考えられる方法で処理すると不活化するなどの基準があります。
OIEでは、133℃、20分、3気圧による加熱処理が不活化の基準として、1997年に設定されました。
Q10:医薬品の中には、牛が原料に使われているものがあると聞きましたが、BSEに感染する心配はないのですか?
A:医薬品の中には、牛から得た原料が使用されているものがありますが、脳、脊髄、眼、腸、扁桃、リンパ節、脾臓、胎盤、胸腺など、医薬品としてのリスクの高い部位は使用が禁止されています。ヒツジ、ヤギ、水牛、シカ等の反すう動物についてもウシと同様な規制がされています。
また、これまで、こうした医薬品等(医薬部外品、医療用具、化粧品を含む。)が原因で、BSEが人に感染したという報告は国際的にもありません。
しかし、より一層の安全性を確保するため、BSEの発生国やリスクの高い国等の原料や、危険性の高い部位の使用を禁止し、安全な原料への切り替えなどを進めています。
 
Q11:化粧品からBSEが人に感染する心配はないですか?
 
A:これまで、化粧品からヒトにBSEが感染する(vCJD患者になる)という報告は国際的にもありません。
  平成8年9月に当時の厚生省は、念のため、次のような措置をしています。
  @ (1)英国産のウシ等由来原料(羊毛及びラノリン等羊毛由来物を除く。)の化粧品への使用の禁止
    (2)英国産以外のウシ等由来原料を化粧品に使用する場合は、BSE発生群と関係のないウシ等に由来するものに限ること
    (3)上記(2)の条件で原料として使用した場合には、当該ウシ等由来原料の製造者、当該ウシ等の原産国、使用部位等を記録し、保管すること
  更に、2000年12月には、更なる安全性を確保するなどのために、製造業者等に対し、以下の事項を指示しました。
  A (1)BSE発生国又はBSE発生リスクの高い国を原産国とする原料の使用を禁止すること
    (2)上記(1)の国に限らず、BSE伝播のリスクの高いウシ等の部位の使用を禁止すること
    (3)製品毎にウシ等由来原料の原産国、製造元、と殺所、処理方法、使用部位等の記録について、1ヶ月以内を目途に、製造業者等の責任で自主点検を行い、これに基づき、3ヶ月以内に承認書等の整備等を行うこと
 
詳細については現在の厚生労働省のホームページ(http://mhlw.go.jp)を参照してください。
 
Q12:輸入牛肉等に対する国の対策はどのようになっていますか?
 
A:1996年3月、農林水産省はBSEの侵入防止を図るため、高発生国である英国に対して、牛肉等(牛肉、牛内臓及びこれらの加工品)の日本向け輸出の停止を通告しました。
さらに、2000年12月には、農林水産省が、一層の予防措置として、EU諸国等(注1)からの牛肉等の輸入の停止措置(2001年1月1日実施)を決定しました。
新たに、BSEの発生が確認された場合は、当該国も輸入停止の対象とします。
このことを受け、厚生労働省も、この措置の周知を図るとともに、この措置に含まれない骨を原材料とする食品について、緊急措置としてEU諸国等からの輸入自粛を指導してきました。
欧州において、BSE発生が継続している上、発生国数が増加しているため、国民の食生活への不安が高まっている中で、BSEの我が国への侵入防止策をより確実なものとすることが必要と判断し、農林水産省の家畜等に係る法的措置と並んで食品衛生法に基づく法的措置(注2)を行い、2001年2月15日、牛肉、牛臓器及びこれらを原材料とする食肉製品について、EU諸国等からの輸入禁止措置をとりました。
注1)EU諸国等とは、ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、デンマーク、アイルランド、英国、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、フィンランド、オーストリア、スウェーデンのEU諸国及びスイス、リヒテンシュタイン。
注2)食品衛生法に基づく法的措置とは、法第5条で特定疾病にかかった獣畜の肉等の販売等を禁止していることから、厚生労働省令を改正し、特定疾病に「伝染性海綿状脳症」を追加。
 
Q13:10月18日から特定危険部位の取扱いはどうなっていますか?
 
A:牛乳・乳製品や牛肉はOIEの基準においては、食品として国際貿易上、流通の禁止などの規制措置は講じていません。このことから、人間が食べても安全と考えられています。
我が国においても2001年9月27日以降、と畜・解体時に、生後12カ月齢以上の牛の頭部(舌、頬肉を除きますが、脳及び眼は含まれます。)及び脊髄並びにすべての牛の回腸遠位部(盲腸の接続部分から2メートル以上)を除去し焼却することとしました。脳及び両眼の合計重量は約600kgの牛1頭では、1kg前後でしょうが、両部位とも頭部にあり、頬肉及び舌を除いた頭部、脊髄、回腸遠位部に加え、と畜・解体時に特定危険部位と接触した可能性のあるところを総合して、焼却処分することとされています。従って、牛の体重にもよりますが、1頭当たり合計で5kgぐらい出るとされています。
10月18日からは、月齢に関係なく、全ての牛の特定危険部位を除去し、焼却することとしており、食用として流通することはありません。
なお、と畜場において、10月18日から全ての牛について、BSE検査が実施されています。陰性の牛の肉のみ、食用として流通されます。
 
Q14:国のBSE対策の現状はどうなっていますか?
 
A:今回の事態を踏まえ、農林水産省と厚生労働省が協力して、
@と畜場において、食肉処理を行う全ての牛について、BSE迅速検査を実施
Aと畜場においてBSE感染性がある特定危険部位である脳、脊髄、眼、回腸遠位部については、除去・焼却
B農場において、BSEが疑われる牛、その他中枢神経症状を呈する牛等について、BSE検査を含む病性鑑定を実施し、検査結果にかかわらず、その牛はすべて焼却することとしました。
これにより、今後は、BSE牛でない牛からのものだけが、と畜場から市場に出回り、それ以外のものは食用としても飼料原料としても一切出回ることのないシステムが10月18日から確立されました。
さらに、現在流通している加工食品について、製造者に対して自主点検を求めるとともに、特定危険部位の使用・混入が認められた食品の製造・販売の自粛や自主回収を指導しています。
また、BSEの感染源と考えられている肉骨粉については、当分の間、すべての国からの輸入を停止し、法律に基づき、国内における牛用飼料への使用を10月15日から禁止しました。これにより、BSEの感染経路が遮断されることになりました。
 
 

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