サメとはどのような生きものなのか、ご存知ですか?
ここでは、サメの驚くべき能力の不思議を、紹介しています。





目次;


1.はじめに

2.サメの感覚器官
聴覚/臭覚/視覚/ロレンチーニ瓶/側線/味覚

3.サメの構造
サメの各部名称/サメの軟骨/サメの歯/サメのうろこ
/サメのアゴ/サメの体形/サメのヒレ/サメのエラ/サメの奇網
/シュモクザメの不思議な頭

4.サメの繁殖
サメのセックス/ホホジロザメの場合(食卵性)
/イタチザメの場合(胎盤性)/ネコザメの場合(卵性)

5.さめのふるまい
サメの知能/サメの”狂食活動“
/サメの威嚇行動/サメとの意思疎通

6.いまだ知られざるサメの世界へ



1.はじめに




サメについて、大まかなイメージを持っておられる方は多いでしょう。しかし、本当はサメではない生き物や魚を、サメと勘違いしておられる方もまた、多いのではないでしょうか。

まず最初に、サメはクジラの仲間ではありません。サメは魚の仲間、つまり魚類です。一見似ているサメとクジラは、しっぽを見れば簡単に区別できます。クジラはしっぽをたてにふって泳ぐのに対し、サメは金魚と同じく尾ビレを横にふって泳ぐので、たてについています。

また、チョウザメの仲間、コバンザメ、ギンザメはサメではありません。チョウザメとコバンザメは、サメよりもスズキに近い仲間です。ですから、キャビアはサメの卵ではないのです。またギンザメは、サメの遠い親戚ですが、正式なサメの仲間からは外れた存在です。

現在、魚の仲間は、硬骨魚類(こうこつぎょるい)と軟骨魚類(なんこつぎょるい)に分かれています。硬骨魚類とは、私たちがふだんよく食べる魚で、硬い骨を持っており、軟骨魚類は、骨格が主に柔らかい骨、軟骨から成りたっています。サメは、軟骨魚類の仲間です。

軟骨魚類は、「全頭類」(ぜんとうるい)と、「板鰓類」(ばんさいるい)に分かれ、サメやエイの仲間は「板鰓類」というグループに入ります。サメは一般的に紡錘形、エイは平たい体をしています。しかしサメとエイは、種によって非常に似通っており、ちょっと見では区別できないものがあります。

いちばん簡単な見わけ方として、エラの位置があります。サメの仲間は、エラが体側部(体の横)についており、エイの仲間には、エラは腹面に位置します。サメやエイの仲間の場合、エラは本当は鰓孔(さいこう)と呼ばれます。

サメの仲間は現在、400種以上存在すると考えられていますが、研究者によっては、468種にものぼるという人もあります。板鰓類全体では、900〜1000種存在すると考えられていますが、現在も新種がみつかっており、種の数は年々増加していくと思われています。

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2.サメの感覚器官


それでは、サメがどのようなものを感じとって生活しているかを、紹介していくことにしましょう。

サメは、非常にすぐれた感覚システムの集合体で、獲物や危険を察知するのにこれ以上はない能力をそなえています。サメはまず、獲物が数キロ以内にいることを聴覚で聞きとり、次に臭覚で接近、そして獲物を視認し、至近距離になると獲物のだす弱い電気でより正確な位置を知り、最後に触覚、味覚で相手をエサかどうか確認するといわれます。

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聴覚


サメのもっともすぐれた能力は、聴覚だといわれます。サメには他の魚類と同様、外耳はありませんが、内耳はあります。サメは発達した聴覚によって、非常に遠いところにいる動物を発見できます。サメは40ヘルツ以下の低周波で不規則な音を、約2キロも先から感知します。サメは、魚のもがく時にでる、不規則なパルス状の音によく反応しますが、船のスクリューのような規則的な音には無関心です。

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嗅覚


聴覚と同様、サメは狩りのときに、鼻をよく使います。サメは鼻で呼吸するわけではなく、鼻の中に一方から海水が入って、また別のところから排出され、つまり常に海水で満たされているのです。サメは魚の肉に多く含まれるアミノ酸や、排泄物内にあるアミン、脂肪酸、そして血を嗅ぎつけることができます。

サメは血の匂いにすぐ反応するといいますが、その感覚の鋭さは、100万倍にうすめた1滴の血をも感知してしまうほどなのです(ある実験によれば、何億分の1の濃度でも反応したとのことです)。したがって水中で魚を獲るダイバーは、魚から流れる血でサメを惹きつけるため、自分で意識しているよりもはるかに危険な状態にあるわけです。



このすぐれた嗅覚で、普段サメは、犬のようにあっちを嗅ぎこっちを嗅ぎして、獲物を追おうとします。ホホジロザメのような大型捕食動物は、クジラのあとを追って泳ぐとも考えられます。クジラの群れから死体がでた場合、その死体の臭いをいち早く感知するわけです。鯨の死体は分解するのがきわめて遅く、そのまま放置すると環境を汚染しはじめるので、サメはスカベンジャー(腐食動物)としての役割もはたしているのです。ホホジロザメのような大型の肉食動物でないと処理しきれないのです。

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視覚


最後にサメは、獲物を視認します。以前はサメの目は悪いといわれていましたが、最近の研究では優秀であることがわかっています。サメの目は明暗を見わけるのに特に適していて、色も多少認識しているらしいのです。ホホジロザメのような、浅い、明るい水域を泳いでいるサメは、特に色の識別能力が高いそうです。

サメは、暗いところでも良く物が見えます。これは光がほとんど届かない深海にすむサメや、夜間の狩をおこなうサメに特に顕著です。暗いところでもサメがよく見えるのは、目のなかにタペータムという物質を持っているためです。タペータムはネコなどの、夜行性の動物も持っています。




↑サメの目が、フラッシュを受けて
白く光ってますが、これはタペータムの働きによります。


しかし視覚は380〜400種ものサメの種類によって全くさまざまというのが事実です。例えばプランクトンなどをたべているジンベエザメのようなサメの仲間は目がかなり小さくなってしまっています。

また、メジロザメの仲間は目に瞬膜(しゅんまく)とよばれる、白いまぶたのようなものを持っています。瞬膜は、サメが獲物を攻撃する時に、相手の鉤爪などで目をやられないように、閉じて保護する機能をもっています。

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ロレンチーニ瓶(ロレンチーニ氏瓶)



サメだけしか持っていない、この全く特殊な器官は、海の電磁波を感知するためのものです。写真のワクでかこった、サメの尖った鼻先に点々とあいた穴がそれで、この中にはゼリー状の物質がつまっていて、そこは「瓶嚢(びんのう)」といいます。さらにそれは神経につながっています。

これは動物が動く時にだす弱い電力を感知するためのもので、地球上に存在する動物のなかでもっとも優れています。サメはまず臭いで獲物を嗅ぎつけ、次にこのロレンチーニ瓶でさらに細かい方向を割りだします。とはいうものの、専門家たちによれば、この器官はたったの数十センチ先までしか機能しないということです。そのためロレンチーニ瓶は、砂の下に隠れてしまった魚を発見して捕食することに向いていると考えられています。

またサメは、接近した獲物を攻撃するとき、目よりもこの器官を使って相手を探知すると考えられています。なぜならサメは獲物に噛みつく瞬間、瞬膜とよばれるまぶたを閉じるか、目玉を回転させて獲物の攻撃から目を守るため、何も見えないからです。

またこの器官は磁気も感知することができ、これが何の目印もない外洋の中で磁石の役目をはたし、正確な方角を知ることができるといわれています。

また、最近発表された学説によると、サメはロレンチーニ瓶で弱い電流を知覚するだけでなく、水温も知ることができるかもしれないそうです。水温の変化はロレンチーニ瓶に電気的な緊張を起こし、これによってサメは水温の変化を感じとることができるのではないかと考えられています。ロレンチーニ瓶のなかに含まれているゼリー状物質の特殊なところは、イオン周波を介さずに、温度を電気的な情報に直接変換することができるということで、サメは摂氏1000分の1度の差まで感知することが可能であるといいます。

もしロレンチーニ瓶でサメが水温を知ることができれば、水温の変化によって生息する場所や深度を変える獲物の位置を正確につきとめることも可能かもしれません。しかしながら、この学説が本当に正しいのかどうかは、決定的な証拠がないのでまだはっきりと分かっていません。

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側線



この側線と呼ばれる器官もまた、サメの狩に非常に重要な役割を持っています。このアオザメのCGを例にとってみましょう。鼻から尾ビレにかけて、体の側面に沿って線が走っています。これが側線で、なかに液体が詰まっている細管の集合体で、低周波の音や水流の微妙な流れを感知するのに役立っています。

もし傷ついてブルブルともがいている魚がいたりすると、この器官でその乱れた水流をキャッチします。これで水中でモリで魚をしとめるのがどれほど危険なことかお分かりになるでしょう。魚が一匹もがいているとサメが現れる可能性があるからです。側線は他の魚類も持っている器官です。

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味覚


サメは、ちゃんと口のなかに味蕾(みらい)と呼ばれる、獲物の味をたしかめる器官を持っています。これでサメは、本当に口にくわえたものを食べていいのかを判断します。ホホジロザメが起こした多くの事故で、サメが人間に一回噛みついた後、すぐに吐きだしてしまうことがあります。これはサメが味から、アザラシとちがって人間に含まれる脂肪分が少なく、エサとして適しないことに気づくからです(脂肪分は、ホホジロザメにとってもっとも貴重なエネルギー源です)。

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3.サメの構造


サメの何よりも重要な道具である歯から、うろこ、ヒレなどについて解説します。

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サメの各部名称


この図には、すべてのサメの外見的特徴を盛りこんでいます。サメの各部にある正式な名称は、次のとおりです。
注:臀ビレは「しりビレ」と呼びます。




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サメの軟骨


サメは軟骨魚類の仲間です。軟骨魚類は、骨格が柔らかい骨からできているためそう呼ばれるのですが、エイもその仲間です。他に硬骨魚類というのがあって、これには私たちが普段から慣れ親しんでいる魚、つまりマグロ、サケ、タイなどの固い骨を持っている仲間です。

もともと軟骨魚類は、硬骨魚類の祖先であって、より原始的であると考えられてきましたが、現在はそのように考えられていません。軟骨魚類と硬骨魚類の進化の関係は、まだまだ分からないことが多いのです。

軟骨は、私たち人間も持っている骨で、鼻も軟骨でできているのです。陸上の動物は大きな重力に耐えなければならないので、硬骨を必要とし、軟骨は補助的にしか使われませんが、海ではより軽い軟骨でできているほうが、すばやく動けるのです。

したがってサメは他の魚よりも優位に立てるのですが、この軟骨が、昔のサメの研究を困難にしてしまっているのです。つまり、軟骨は化石にならないので、どういう姿をしていたのか全く分からないのです。

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サメの歯



サメの歯は、独自の進化をとげたもので、象牙質の核がエナメル質でおおわれていて、それが顎としなやかにつながっています。従ってサメの歯は比較的ぬけやすくなっていますが、サメの歯は一つぬけるとすぐに次のが後からせり出してきてあいた穴をうめます。サメの歯はつぎつぎ再生するので、永久に歯がなくなることはありません。

その形はサメの種類によって千差万別ですが、例えばホホジロザメの歯はほぼ完璧な正三角形で、ノコギリ状のギザギザがついており、これで自分より大きな獲物から肉を食いちぎります。

またイタチザメの歯は、曲がったハート型で、やはりギザギザがついていて、ありとあらゆる獲物を噛み砕く仕組みをもっています。亀の甲羅でさえ噛み砕くことが可能です。

ネコザメは、貝などの固い甲羅を噛みくだくように発達していて、他にも、アオザメシロワニの歯のように、魚をとらえやすい細く鋭い歯、メガマウスザメのようにプランクトンを捕えやすいように鉤状になった歯もあります。




↑アオザメの歯。
ヌメヌメした獲物を捕らえやすくなっています。
しかも奥から次々と、新しい歯がせり出してきます。


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サメのうろこ


サメのうろこは、驚くべきことに、基本的に歯と同じ仕組みを持っています。サメのうろこは正確には盾鱗(じゅんりん)と呼ばれています。現代の科学者は、驚くべきことにサメの歯はこの盾鱗から発達したものだと考えています。

サメの盾鱗は、種類によってやはり様々ざまあり、なかにはネコザメの背ビレの付近にある大きな防衛用のとげにまで発達したものもあります。

サメのうろこはざらざらしたいわゆる「鮫肌」を構成していますが、この鮫肌には秘密があります。盾鱗と盾鱗の間の小さな隙間にに水を含むことで、周りの水と摩擦を起こさないような構成になっているので、つるつるした肌よりもはるかに速く、また安定した泳ぎを可能にするのです。

また盾鱗は「盾」のつく名称どおり、盾の役割を果たします。この機能はとくにネコザメメのような岩にはりついて生活するものにはっきり見られます。岩でこすれて怪我しないようになっているのです。サメの種によっては、人間が肌をなでるだけで血まみれになってしまうほど鋭い盾鱗を持っているものがあります。外洋性のサメはスピード重視のため盾鱗は水流安定のための機能が強く、盾としての機能はあまり果たしていません。

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サメのアゴ


サメのアゴの形は、種類によってまったく違います。例えば、ネコザメの仲間のアゴは、貝や甲殻類を捕食するため、硬い殻を押しつぶすことができるような形になっています。

それに、ダルマザメは、クジラなどの自分より大きな生き物を攻撃するため、獲物の体から、スプーン1杯の大きさの肉をちぎり取ることができるように、アゴが進化しています。ダルマザメは、まず獲物に噛みつくと、まず口のなかを真空状態にします。するとまるで掃除機を押しあてたように、肉が口内に吸いこまれ、それを大きな三角形の歯で切断するのです。

しかし、私たちにもっともなじみ深いネズミザメ科(アオザメホホジロザメなど)や、メジロザメ科(メジロザメイタチザメなど)をはじめとした、現代の多くのサメには、アゴに共通の構造が存在します。これらのサメは、捕食の時に、より獲物を捕らえやすいように、アゴがやや前方に飛び出すしかけになっています。この構造は、ホホジロザメの捕食行動を連続写真でとらえた時に判明しました。その構造とは、

a:通常姿勢。吻部(鼻先)は持ちあげていない。
b:まず吻部が前上方に持ち上げられる。場合によっては30―40度も上がる。
c:次に、上アゴが前面に飛び出す。この時歯ぐきが特に目立つ。
d:獲物を捕らえると、下アゴが上がって口が閉じられ、吻部が下ろされて、通常姿勢にもどる。



というものです。この一連の動作にかかる時間は、たったの0.75〜1.708秒しかありません。これらの動作は、海面から顔を出してエサに噛みつこうとしているホオジロザメの映像を見た場合、特に印象深いものがあります。興味本位のテレビ番組などで、おもしろ半分にやたらとこうした恐ろしげな捕食シーンばかりが放映されますが、これはサメの生活のごく一部にすぎません。

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サメの体形


体形もまた、種類によって大きく異なりますが、基本的に平べったいか、紡錘形をしています。紡錘形の体躯は、実際イルカやマグロといった高速に泳ぐ生き物たちとそれほどかわりません。おそらくこの型が水中を泳ぐのにもっとも適しているからでしょう。

この涙型と呼ばれる形で、多くの紡錘形のサメに共通しているのは、まず頭部はやや横に平たく、からだの真ん中はやや縦に長い楕円形で、尾びれのつけ根は、また横に平べったくなっている形状です。ホホジロザメもこの型にはいります(下の図はアオザメ)。また全身が平たい体形のサメは、ホンカスザメなどの様に、海底に潜んでじっとしているものが多いです。



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サメのヒレ


サメのヒレは高度な発達によって、サメは飛行機が飛ぶように水中を泳ぐことができます。

まず背ビレは、サメの遊泳に大きな安定をあたえます。第一の背ビレの後にある第二の背ビレは、体がローリングする時に調整する役目をします。

サメは胸ビレと紡錘形の体形によって、水中で必要な浮力を得られます。胸ビレは、まるで飛行機のように、やや後方に傾いた角度で体についています。これにより、胸ビレはその浮力を増大させることができるのです。

さらに尾ビレは、サメに前進力を与えます。普通サメの尾ビレは、上端の方が下端よりも長いのですが、アオザメのような高速の魚は、両方の長さがほぼ一緒です。

またトラフザメのように、上葉が極度に発達して、下葉がほとんど退化してしまったものや、あるいはオナガザメのように、小魚を尾ビレの上葉でひっぱたいて失神させるという、特殊な狩をおこなうために、上葉が非常に発達して、体長の2倍もの長さになったものもあります。

このように、尾ビレ、背ビレ、胸ビレ、体形のすべての調和的な運動によって、サメを優秀な泳ぎ手にしているのです。サメは他の魚と違ってヒレを前後に動かすことはできないので、バックができません。

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サメのエラ


正確には鰓孔(さいこう)といいます。サメはエラによって、呼吸するのですが、まずサメは水を口からとりこむと、エラで酸素を吸収し、エラから水だけを排出します。

サメのエラには2とおりあります。

ひとつは、遊泳性のサメのエラで、つねに泳いでいないと酸素を取りこむことはできません。したがって前進を止めてしまえば呼吸困難になって死んでしまいます。

もうひとつは、停止していても呼吸ができるもので、岩陰に隠れて待ち伏せしたりといった行動をとるサメがこうしたエラを持っています。待ち伏せ型のサメには、もうひとつ噴水孔と呼ばれる大きな穴が発達していて、名前とは逆に、より多くの海水をとりこめるしくみになっています。その位置は、目と鰓孔の間にあります(サメの各部名称参照)。




ネムリブカの仲間は、じっとしていても
呼吸困難になりません。


ほとんどのサメにはエラは両側に5つずつありますが、ラブカやカグラザメなどの原始的特徴を残しているといわれるサメには6〜7対のエラがあります。古代のなかで有名なサメ、クラドセラケには、エラが7対ありました。

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サメの奇網


ネズミザメの仲間など、サメのなかでもっとも活動的な種は、奇網とよばれる器官をもっています。

これは動脈と静脈がからみあっているもので、普通魚は、エラで動脈から酸素を放出すると、いっしょに熱も吐きだしてしまうため体温は低いのですが、いっぽう静脈は熱をたもっています。奇網は、動脈と静脈を近づけることによって、動脈も暖めるのです。するとサメの体内には暖かい血が巡り、常に水温より約5〜6度、極端な場合は10度も体温を高く保つことができます。

このためサメはいつも体温が高いため活発に狩りをおこなうことができます。よく彼らは、この機能のために、温血動物(恒温動物)と表現されます。なるほどそれに近い状態にはなりますが、彼らの体温も、やはり水温によって左右されるので、奇網を持ったサメも変温動物です。

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シュモクザメの不思議な頭



まえに『サメの海』で人気投票をおこなったところ、人気の高いサメとしてかなりの得票数を集めたのは、シュモクザメでした。ホホジロザメアオザメに次ぐ人気を誇るこのサメの最大の特徴は、なんといっても頭でしょう。この平べったくて横に張り出したシュモクザメの頭には、「なぜこんな格好をしているのだろう?」とみな首を傾げます。シュモクザメの頭はなぜあのような格好をしているのでしょうか。その疑問については、さまざまな説があります。

広い視界説: シュモクザメは、両目が大きく横に張り出しています。このためにシュモクザメは、ふつうのサメよりも広い視界を見ることができ、エサを探すのに有利だと思われます。

ロレンチーニ瓶&嗅覚説: シュモクザメの目の間が広がったことで、ロレンチーニ瓶(電気を知覚する器官)が発達し、これによって生き物が出すわずかな電気を捕らえることができます。このために、このサメは他のサメよりも効果的にロレンチーニ瓶を使ってエサを探すことができます。シュモクザメが、砂の上を金属探知機のように泳ぎまわり、砂に隠れていたエイを発見した記録があります。さらに、両目の間にある鼻孔も大きく横に広がることで、さらにわずかなエサの匂いをも嗅ぎわけてしまうのです。

機動説: シュモクザメの平べったい頭は、シュモクザメが泳ぐときに、下に沈んでしまわないように浮力を与えることができます。さらに一種の舵の役割も果たしているといわれます。このためシュモクザメは機動力も上がり、他のサメよりも楽に泳いでいることができるのです。

シャベル説: 『サメの海』管理者の考えた、奇々怪々なる説。シュモクザメはいろんなものを食べますが、好物はエイだといわれます。エイの多くは砂の上に住んでいることは皆さんご存知でしょう。そこで思いついたのですが、シュモクザメの頭は、砂の中に隠れたエサを、そのシャベルのような頭を使って掘り出し、あるいは砂の中に首を突っこんで、捕まえてしまうために発達したのではないでしょうか。あの平べったい頭なら、砂の中に頭を突っこむのはラクなことです。もしこの説を研究者の誰かが唱えたことがないとすれば、これを最初に考えだしたのは『サメの海』管理者です(というか誰も考えませんね。2002年12月当時)。

…などなど、シュモクザメの変った形の頭については、諸説紛々ですが、事実はシュモクザメになってみない限り分かりません。いちばん適切と思われるのは、(最後の説はのぞいて)これらの説すべてがあてはまると考えることでしょう。

シュモクザメの頭は、種類によって形がじゃっかん違います。ヒラシュモクザメの場合、頭の先端はほぼまっすぐで、アカシュモクザメはややデコボコしており、ウチワシュモクザメの場合は、頭はウチワのように丸くなっています。しかしその違いはごくわずかで、研究者でさえ、まちがえることもあるそうです。

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4.サメの繁殖


この項目では、種類ごとにちがうユニークなサメの繁殖方法を、紹介しています。

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サメのセックス


ここでは、サメのユニークな生殖方法について解説しています。

サメの交尾の方法は、主に、オスとメスが、互いの体を巻きつけたり(巻きつき型)、腹をくっつける方法(抱き合い型)、平行して泳ぎながらおこなう方法(寄りそい型、あるいは並行型)などがあります。サメのオスには、腹部にクラスパーという交尾器がついていて、これで交尾を行います。このクラスパーがついているかどうかで、サメがオスであるかメスであるか容易に見わけられます。



メジロザメの仲間の多くは、平行して泳ぎながら交尾をします(寄り添い型)。オスはクラスパーを曲げてメスの体に挿しこみ、精子を送りこみますが、そのさいオスがメスの体から離れてしまわないようにメスの体に噛みつきます。そのためメスは、交尾の時に怪我をしないために、オスの3倍もの厚さの皮をもっています。

またサメの人間への襲撃のいくつかは、サメが人間をメスと間違えて交尾をしようとし、それで噛みついて事故になったものだと考えられています。研究者達は、メスの体に傷があるかどうかを確かめて、すでに交尾を行っているかどうかを確認します。

ヨシキリザメやドタブカなどのメスは、体内になんと数年間も、オスから受け取った精子を保存することができます。ですからこのあいだメスは、交尾をおこなわなくとも子供を出産し続けることができます。これは広い海ではなかなか同種のサメに出くわすことがないということにも関連しているようです。

もっとも、これはすべての種に当てはまることではありません。ネズミザメ目のサメでは、精子を保存しないことが知られています。

日本の有名なサメ研究者の矢野和成氏によると、最近東京湾などの汚い海で漁獲されるサメのなかに、オスとメスの両方の交尾器官を持つものがいたり、あるいは大人であるのにまったく未発達の交尾器を持つものもいるそうです。これは恐らくゴミや産業廃棄物から出る有害物質が原因になる奇形だと考えられています。このようなサメは生殖機能を失ってしまっており、繁殖していくことができません。それのみならず、これらのサメを食べているのは私たちだということも考慮しなければならないと思います…

サメの多くの種類は、魚には珍しく、卵胎生(体の中で卵をかえす。一般にこういわれていますが、研究者達は、これはすでに胎生であると考えています。したがって、ここでも胎生としておきます)のものが多いのです。胎生とはいっても、タイプはサメによりさまざまで、ネズミザメの仲間のように、母親の体内で別の卵を食べて成長するもの、あるいは体内でかえっても、母親から栄養を受けとらずに、腹に抱えた卵黄で成長するものなどがあります。

サメのなかには、生まれたばかりの子供をやさしく保護するものもあります。しかしまた、ネコザメのように固い殻でおおわれた卵を産み付けるものもいます。ここでは、いくつかの種を例にとって解説していきます。

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ホホジロザメの場合(卵胎生)


ホホジロザメをはじめとした、ネズミザメ目の代表的なサメ(シロワニアオザメウバザメなど)の多くは、基本的に胎生ですが、胎盤で子供を育てるわけではなく、卵を腹のなかで育てるため、一般に卵胎生といわれます。

ホホジロザメの仲間であるシロワニも、卵胎生です。

シロワニは体内に多くの卵を持っていますが、子供は生まれたときにすでに鋭い歯を持っており、一番最初に孵化した子供が、親の腹の中で他の卵を食べて成長します(この現象を食卵といいます)。9ヶ月の妊娠期間のあと出産される子供はすでに1メートルにも成長しており、従って海での生存競争を生きていきやすくなっているのです。

こうした極端に低い出産率は、いわば少数精鋭であるわけで、もともと食物連鎖のトップに位置する事を意味します。死亡率の少ない生き物は、多くの卵を生む必要がないのです。しかしこれはその個体数が少ないことを意味し、乱獲によって簡単に減少してしまう危険性があるといわれます。



上の写真は、ホホジロザメのメスの体内から取り出された胎仔(胎児のこと)の非常に貴重な標本です。ごらんのとおり、胎仔とはいっても大人とまったく変らない体つきをしています。

同じネズミザメ目のサメであるミズワニも卵胎生で、科学者がこのサメの腹を解剖していたときに、なかから出てきた子供に噛みつかれたことがあるそうです。

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イタチザメの場合(胎盤性)


イタチザメをはじめとしたメジロザメ目の多くは、ネズミザメの仲間より多くの胎児を出産します。妊娠期間は9〜12ヶ月と長く、多くて80尾、少なくても10尾の子供を出産します。

この数はかなり多いように見えますが、実は自然界ではきわめて少ないほうです。またこれらの種は、胎盤すら持っており、これで母親から胎仔に直接栄養を供給できます。つまり彼らは本当の胎生なのです。イタチザメの子供ははっきりしたストライプが入っており、これによって水中に差しこむ日光に完全に溶けこんでしまいます。



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ネコザメの場合(卵生)



ネコザメは卵生で、つまり卵を産みつけます。卵は頑丈ならせん形をしたカラにおおわれていて、このカラは、小さな穴から酸素を取りこむことができるようになっています。メスは産んだ卵をくわえて、安全な、潮の流れによって流されない岩の間を見つけて挟み込んでおきます。

このカラのなかで、幼児はしっかりと守られながら卵の中の養分を吸収して、一人前の体格になって出てきます。ネコザメは一度に1〜2個卵を産みます。




↑は、ネコザメと同じく卵生の
イヌザメのタマゴです。硬い殻でおおわれた卵のなかに、
ときどき動くサメの赤ちゃんがいます。


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5.サメのふるまい


サメは年がら年中水のなかにいて、海面から行動を観察することができないため、そのふるまいは、まだまだ謎が多く、私達はほんの一部を知っているだけです。しかしここでは、知られている限りの情報を掲載して順次アップグレードしていくつもりです。

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サメの知能



多くの人々は、サメは捕食する機械であり、本能によって行動し、あらゆる物を攻撃すると考えていますが、こうした概念はもう時代おくれです。いっぱんに、自然界の大型捕食動物は、獲物の弱点をさぐったり、絶好のチャンスをうかがったりしなければならないことから、知能が発達しているといわれています。

380〜400種にも上るサメの多様さのせいで一様にこうと決め付けることはできませんが、やはりハンターとしての知能は高いでしょう。後に述べられるように、一部のサメは、自分の縄張りの侵入者に対し、明らかな警告を発します。サメがジェスチャーを行うということは、サメにも社会行動を形成するものがあるということを示唆します。シュモクザメの仲間の場合も、群れのなかでは大きさと性別によって秩序がつくられています。

知能というものは、人間にとってもっとも重要なものなので、私たちはついつい自分たちの知能と他の動物の知能を比べてしまいがちですが、生存競争のために、動物が何も微分法をとく必要はないのです。

一般に動物の知能を計算する場合、脳の大きさと体の大きさを比べてみますが、これはあくまでも漠然とした方法にすぎません。もちろんこうした概念をサメに適応してみれば、サメの知能はすでに多くの魚類、鳥類、哺乳類よりも上まわっていることが分かるでしょう。

例えばイタチザメは、頭のいいサメのひとつで、ものごとを筋道だてて考えることが可能であることが知られています。

あるイタチザメはウミガメが産卵のために、いったん砂浜にはいあがり、産卵がすむと疲れて海へもどってくるのを知っていて、待ちぶせをおこなっていました。はじめはこの行動はごくふつうのサメの補食活動だと思われていましたが、この行動を行っていたのはこの一尾だけで、しかも彼は毎年この行動をおこなっていたようです。

さらに同じ観察期間中に、このサメはむしろ卵から出てきたばかりの子供を襲うほうがはるかに簡単であることを学んだのです。さらに、この海域にやってきた別の新参者が、この最初のサメを”猿真似”して同じ行動をとり始めました。

こうした行動は、彼らに学習能力があるということを意味します。またある実験では、イタチザメは、どのように行動すれば、人間が彼にエサをくれるのかということを、見ているだけで覚えてしまったといいます。

また別の有名なサメの学習パターンとして、ダイバーのサメへの餌づけがあります。この時サメ達は、ダイバーの持っている魚の肉片を、ちょっとくわえたり、あるいは脅かしたりするだけでもらえるということを学んでいます。

人間がサメの知能を解明することが非常に難しいことは確かです。恐らくサメはまだまだ私達の知らない能力を持っているのでしょう。

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サメの”狂食活動”


正確には、サメの「狂乱索餌(きょうらんさくじ)」といいます。サメは獲物をはるか離れた所からでも探知できるように非常に敏感な感覚器官をそなえているのですが、かえって「敏感すぎる」とも言えます。あまりに多くの獲物の臭い、音、水流が存在するところでは、サメはもはやどれがどれだか分からなくなって、ありとあらゆるものに手当たりしだいに噛みつこうとします。これが有名なサメの狂乱索餌です。

これが起ると、サメは獲物はおろか近くのサメにすら噛みついたりするので、人間にとっては非常に危険な事態です。

たとえば、人間が海のなかでモリを使って魚を捕ることがありますが、大量の魚がもがいたままにしておくと、サメが近よってきます。このようなとき、狂乱索餌に巻き込まれる可能性があります。

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サメの威嚇行動



サメの仲間には、自分の縄張りに人間が侵入すると、明らかな威嚇行動をおこない、警告を発してくるものがいます。この時に人間が気づいて退散しないと、サメは猛烈な攻撃をしかけてきて、場合によっては惨事を引きおこします。

特に有名なのが、オグロメジロザメクロトガリザメという、メジロザメの仲間ですが、彼らは威嚇行動のとき、背を曲げ、頭を上げ、胸ビレを下に突き出して、8の字を描くようにして泳ぎまわります。なぜこうした行動をとるのかははっきりとは分かっていませんが、クロトガリザメの住む海域には、オオメジロザメやガラパゴスザメといった大型の捕食者が存在するということに関連づけて考えられています。

つまり彼らは、こうした大型の捕食者に食べられないように先んじて攻撃をしかけようとしますが、その前にまず威嚇行動をとって敵を追いはらおうとしているということです。

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サメとの意思疎通


シャーク・プロジェクト http://www.sharkproject.com/ヨルク・M・ブルンシュヴァイラー氏の報告≪Die Korpersprache der Haie: Juerg M. Brunnschweiler≫より

注:ここで紹介されているサメのジェスチャーは、最新の学説によるものですが、これが世界的に認められているかどうかは別問題であることを、あらかじめご了承ください。

一般に高度の発展をとげた生き物は、ジェスチャーを使って相手との意思疎通をはかります。

人間でも、言葉の通じない地域では、手や足、そして顔などを使って相手に自分の気持ちを伝えようとします。また、イヌやネコなど、家庭で飼っている生き物は、人間の想像以上に主人である人間のささいな身振りを観察して反応をしめします。イヌやネコ自身、それぞれの行動に意味を持たせていることは、飼っている人ならご存知でしょう。彼らは、喜びや怒り、怯えなどを顔や尻尾、背中を使って表現できます。

サメもまた、非常に高度に発達した生き物であり、たがいに身振りで意思疎通をはかっている可能性があります。

けれども、これまでこの領域はほとんど研究されてきませんでした。なぜなら、サメの多くの種は普通人間が容易に近づくことのできない海域や深度にいるからであり、また、サメは動きが速くて人間ではなかなかうまく観察できないからです。しかし、ドイツのサメプロジェクトが資金援助を受けるようになってから、しだいにサメの肉体言語が明らかにされつつあります。



サメの行うジェスチャーもしくは肉体言語を研究することは、いろいろな意味で重要なことです。現在多くのサメの種が絶滅の縁にいると考えられており、そのため研究者は民間人に出来るだけ早く正確なサメの姿を描いて見せる必要があります。

サメが非常に賢い生き物であることが証明できれば、以前ほど人間はやすやすとフカヒレを口にする気にはなれないかもしれません。サメに触れることはごくわずかな例、あるいは事故をのぞいてはまず不可能です。

しかし、サメのジェスチャーを学ぶことにより、人間とサメとの意思疎通が可能になり、これによってさらに未知のサメの領域が明らかになることも考えられます。これからのサメの研究でも特に重要なことは、サメをできるだけ多く観察し、彼らの生活様式やふるまいを研究することだと言えるでしょう。

サメのジェスチャーを学ぶには、全く未知の言語を学ぶようにかなりの忍耐と時間が要求されます。サメのジェスチャーを学ぶ第1段階は、サメを数時間に渡って観察し、あらゆる状態、環境でサメと顔を合わせて詳細を調べることです。そこから得られた結果をまとめあげるのです。

オグロメジロザメはダイバーが近づくと一種の警告を発することがあります。これはサメの肉体言語の一つであることはまずまちがいなく、またこの「言葉」が他の種のサメにも通じることは想像がつきます。

というのは、日常ではオグロメジロザメは人間ではなく、大型のサメに対してこのジェスチャーをおこなっているに違いないからです。

オグロメジロザメは、相手に警告を発するさい、胸ビレを下に突きだします。この点から、サメはヒレを使ってジェスチャーをとると考えることができます。つまりサメの意思疎通手段の一つは「ヒレ言語」であることになります。

サメの「ヒレ言語」を学ぶことができれば、私たちはサメの行動や意思に関してうっとりとするような認識と理解を与えてくれるかもしれません。これには、さまざまなサメの写真でも研究をおこなうことはできるでしょう。

しかしながら、サメのヒレの動きを理解しても、結局、どのように、いつ、どこへサメが方向転換するのかという程度しか分からないでしょう。残念ながらヒレ言語はサメのジェスチャーの一部分にすぎないのです。サメはヒレ以外にも、泳ぎ方や体全体を使って気持ちを表現しているようにも見えます。

日本語にも方言があるように、サメも種や地方によって別の言葉を持っている可能性があります。例えば、南アフリカのカマストガリザメ(メジロザメ科)は、カリブ海の同じカマストガリザメよりも細かい点で異なったジェスチャーを行うことが報告されています。ホホジロザメは、さまざまな観点からコモリザメとは根本的に違った意思疎通手段を持っていると考えられています。

現在400種とも460種以上ともいわれているサメのふるまいや意思疎通手段の研究は、まだ表面をひっかいた程度で、人間がサメの言語を使えることができるまでには、まだまだほど遠い道のりでしょう。現在やっとごくわずかな種で、サメの言葉の意味が分かりつつあります。学者達は、サメの出す言語が少しでも分かれば分かるほど、サメがよりいっそう素晴らしい生き物であると感じると語っています。

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6.いまだ知られざるサメの世界へ



このように、サメには驚くべき能力がそなわっています。人間の目から見ると超能力としかいいようのない感性まで、サメは持っています。これからの研究によって、サメの知られざる姿がさらに判明していくことでしょう。

しかし、ひとことにサメといっても、種や住んでいる地域によって、その行動様式はまったく違ってきます。サメの生態は、今になってやっとわずかな部分が判明しているに過ぎません。サメの海では、これからもサメの新事実が発見されれば、紹介していく予定です。

サメの種別の生態や捕食行動については、当サイトの『サメ図鑑』でより詳しくみることができます。

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