案件番号 平成15−2
 
「アメリカシロヒトリ及びチャドクガの防除について」
に関するパブリックコメント
 
2003年12月12日
中部地区 K
 
本年は全国的にチャドクガ及びアメリカシロヒトリが大発生した年である。この大発生は昨冬からの気候条件によるものと考えられている。金沢市の樹木管理の変更はこの現象に影響された結果と思われる。先進的で、全国に誇りうる樹木管理を今後とも推進なされることを希望して、本コメントを提出する。
 
 
1.はじめに
 
金沢市が現在求めている意見募集内容は次の通りである。
 
「アメリカシロヒトリ及びチャドクガの防除は、
(1)捕殺防除を基本としますが、
@ 巣網などの群生箇所が高所にある又は作業の足場が悪いなど捕殺防除が困難な場合。
A 幼虫が巣網から拡散し、捕殺防除では駆除効果が得られない場合。
  において、薬剤散布を行います。
  また、作業実施においては、
B 周辺住民の合意を得るよう努める。
C アメリカシロヒトリ又はチャドクガが発生している枝葉に集中させる。
D 農薬安全使用基準を遵守することを条件に必要最小限の薬剤散布に助成する。
(2)民有地のチャドクガ防除を新たに助成制度の対象とする。」
 
以上の案件に対してパブリックコメントをするためには、農薬の影響及び農薬規制に関する以下の科学的・政治的流れを抜きに考慮することはできなので、短く概観をのべる。
 
2.1 国際的な流れ
 
2.1.1 米国の農薬行政の変化
 
米国科学アカデミー報告
 
米国では数次にわたる農薬政策の変更を実施し、発癌物質に関する対応が重視されてきた。1988年米国議会は、食品中農薬が幼児と子供に与える影響について科学アカデミーに諮問した。この要請に応じて作成された科学アカデミー国立研究会議、幼児と子供の食事中の農薬委員会Committee on Pesticides in the Diets of Infants and Children, National Research Council が作成した1993年報告、「 幼児と子供の食事中の農薬 Pesticides in the Diets of Infants and Children 」が答申された。この報告書の重要な点は次のようにまとめることができる。この報告は現在の毒物学及び農薬規制の世界的流れに大きな影響を与えているので、やや詳細に述べる。
 
1)子供の生理的特性と農薬の影響
・ 子供は「小さな大人」ではない。子供と大人との間には重大な差がある。幼児と子供は成長・発達中である。代謝速度は大人より速い。外来化合物を活性化・解毒・排泄する能力に差がある。
・ 上記の差は、幼児と子供で農薬の毒性に影響する。このため農薬の毒性は子供と大人で異なることが多い。子供は大人よりより農薬に敏感あるいは敏感でなかったりする。
・ 子供と大人との間の農薬毒性の定量的・定性的な差を発見した。毒性の差異は、特別に脆弱な窓の間に被ばくすることによる。窓とは毒物に対する被ばくが器官系の構造や機能を永続的に変えることがある発達早期にある短い時期をいう。
 
2)年齢による被ばくの差
農食品中の残留農薬被ばくは、幼児と子供は量と質の両方で大人と異なる。
 
・ 子供は単位体重あたり大人より多くの食品カロリーを摂取する。
・ 幼児と子供は大人よりはるかに少ない種類の食物を摂取する。
・ 幼児と幼い子供はある種の食物、特に加工食品を大人より多く摂取する。
・ 子供の水摂取量は多い。
 
3)子供は共通の有毒影響を持つ多数の農薬に被ばくする。
 
4)幼い時期の農薬被ばくは、長い潜伏期間が経過した後に現れる慢性影響に関して大きなリスクを招くかもしれない。このような影響には、癌や神経発達障害・免疫機能不全がある。
                                     
1)子供の生理的特性と農薬の影響
・ 子供は「小さな大人」ではない。子供と大人との間には重大な差がある。幼児と子供は成長・発達中である。代謝速度は大人より速い。外来化合物を活性化・解毒・排泄する能力に差がある。
・ 上記の差は、幼児と子供で農薬の毒性に影響する。このため農薬の毒性は子供と大人で異なることが多い。子供は大人よりより農薬に敏感であったり、敏感でなかったりする。
・ 子供と大人との間に農薬毒性の定量的・定性的な差を発見した。毒性の差異は、特別に脆弱な窓の間に被ばくすることによる。窓とは毒物に対する被ばくが器官系の構造や機能を永続的に変えることがある発達早期の短い時期をいう。この例はサリドマイド事件で、特定の妊娠時期にサリドマイドを服用することにより、特定の身体部位に先天異常が現れたことでよく説明できる。
 
2)年齢による被ばくの差
農食品中の残留農薬被ばくは、幼児と子供は量と質の両方でと大人から異なる。
 
・ 子供は単位体重あたり大人より多くの食品カロリーを摂取する。
・ 幼児と子供は大人よりはるかに少ない種類の食物を摂取する。
・ 幼児と幼い子供はある種の食物、特に加工食品を大人より多く摂取する。水の摂取は子供と大人では非常に異なる。
・ 子供の水摂取量は多い。
 
3)子供は共通の有毒影響を持つ多数の農薬に被ばくする。
 
4)幼い時期の農薬被ばくは、長い潜伏期間が経過した後に現れる慢性影響に関して大きなリスクを招くかもしれない。このような影響には、癌や神経発達障害・免疫機能不全がある。
                                     
5)科学アカデミーの勧告
 
・ 農薬残留に対し予期される全被ばくの推定に、幼児と子供の食事の独特な特性を反映すべきである。
・ 食品経路以外の全被ばくも考慮に入れるべきである。
・ 食品加工と貯蔵の影響を考えるべきである。
・ 被ばくの推定は、一つの農薬が幼児と子供が消費する一つより多い食品に存在することと、一つの食品に一つより多くの農薬が存在することを認識すべきである。
・ 被ばくの安全レベルの決定は、幼児と子供の生理的要因を考慮に入れるべきである。
・ 幼児や子供を農薬の悪影響から守るために、現在の成人に対する安全係数に、さらに10倍の安全係数をデフォルトとして追加すべきである。
・ 幼児と子供に対する潜在的なリスクを評価する場合、全農薬被ばく(食事と食事以外)を考慮する必要がある。食事以外の環境被ばく源には、空気と屋内表面のほこり・芝生・ペットを含む
 
食品品質保護法 Food Quality Protection Act
 
科学アカデミー報告を受け、米国議会は子供を守るために作った「食品品質保護法」を通過させ、クリントン大統領はこの法律に1996年署名した。た。この法律に従って米国環境保護庁は有機リン殺虫剤をはじめとする農薬の見直しを開始した。見直しの重要な点は次の通りである。
 
・ 先ず、EPAは子供の特殊性(発達神経毒性、急性と亜急性神経毒性)に関する影響を良く知るためために、農薬製造業者に農薬に関する数百の追加研究を要求。
・ EPAは、有機リンのような有毒な農薬に代わるリスクの低い多種類の安全な農薬を登録してきた。
・ EPAは、内分泌系(人間と動物の発達・成長・生殖・行動を導く内分泌腺及びホルモン類)を化学物質がかく乱するかもしれないという懸念に取り組むために、スクリーニングと試験計画に着手。
・ 個別農薬について、全経路(食品・水・皮膚接触・吸入など)からの身体への取り込みを評価
・ 同じ毒性メカニズムを持つ農薬郡の影響を総合的に評価
 
この結果、米国環境保護庁は、特に有機リンの使用を厳しく制限又は禁止している。たとえば、日本では無頓着に使われていることが多いスミチオンは、米国内で多数の用途に登録されていたが、現在はアリとゴキブリの毒餌以外の用途は登録されていない。さらに、クロルピリホスやダイアジノンなどの厳しい規制はよくしられている。また金沢市が1,500倍に希釈して散布すべき所を1,000倍という高い濃度で街路に散布して問題になったトリクロルホン(ディプテレックス)も現在再登録の適格審査中であり、子供や労働者への影響をEPAは懸念している。
 
 
2,1,2 カナダ国の有害生物駆除製品法の改正
 
米国の農薬規制の状況に影響を受け、カナダ国内の環境保護を求める自治体及び環境保護団体・市民の要求を受け、カナダ国会下院の「環境と持続可能な発展に関する常任委員会Standing Committee on Environment and Sustainable Development 」は「農薬:健康と環境のために正しい選択をするPESTICIDES :MAKING THE RIGHT CHOICE FOR THE PROTECTION OF HEALTH AND THE ENVIRONMENT 」という題の報告所を出し、2002年12月に新「有害生物駆除製品法 Pest Control Products Act 」を成立させた。
 
1)環境と持続可能な発展に関する常任委員会報告
 
この報告は米国の米国科学アカデミー報告及び食品品質保護法を踏襲しているが、さらに発展させている面がある。主な内容を次に要約する。
 
影響を受けやすい人
 
委員会報告では幼児と子供、及びそれ以外の農薬影響を受けやすい集団を突き止め、これらの全集団を農薬から保護することを求めた。その影響を受けやすい人として次の集団を突き止めた。
 
・ 胎児にも、幼児と子供に加えて焦点をあてた。
・ 女性:農場周囲で生活している女性は高率の閉経前の乳癌を発症するなどの事例を取り上げ、体脂肪率が多い傾向にある女性が、影響を受けやすい。
・ 喘息又はアレルギーを患っている人々
・ 多剤(種)化学物質過敏症(MCS)の人
・ 老人は、影響を受けやすい集団である。
・ 農薬に関連する労働者
・ 地域的に影響を受けやすい人
 
予防原則の適用
 
委員会は、農薬は有毒なように設計されており、農薬と農薬の子供に対する影響、特に長期的な影響は解明されていないめ、予防原則を採用すべきであるとしている。基本的には、科学的に完全に確実でない場合、一層の研究をすること及び製品の登録拒否などの予防行動をとるべきであるとしている。
 
2)カナダの新有害生物駆除製品法 
 
常任委員会報告を受け、2002年12月にカナダは新「有害生物駆除製品法」を成立させた。この法律は2000年「常任委員会報告」に沿ったものであるがやや後退している。制度的には農薬の安全性管理担当を農業を担当する省から分離した。
 
カナダの環境省報道発表によると、次のことによって健康と環境の保護を強化する。
 
・ 幼児と子供のために特別な保護を求めること。
・ 食品及び水を含むあらゆる被ばく源からの農薬被ばくを考慮に入れること。
・ 同じ機構で作用する農薬の累積的影響を考慮に入れること。
・ 有害生物駆除に有効な貢献をする農薬のみを登録することによって、農薬の危険を減少させること。
・ 危険の少ない製品の登録を迅速化すること
 
農薬の登録制度を透明にする。農薬評価の根拠となっている試験データを一般人が見ることができるようにする。登録後には、農薬会社に悪影響の報告を求め、登録15年後の古い農薬の再評価を求めること。求めたデータが満たされない場合、市場から農薬を除去する権限を大臣に与えることなどの登録前及び登録後の農薬を規制する権限を強めた。
 
3)カナダの地方自治体の動き
 
カナダ国レベルの農薬規制の動きの背後には、カナダの自治体の取り組み及び市民の運動があった。
 
2001年6月28日のカナダ最高裁判所は、ケベック州のハドソン町の農薬条例訴訟を支持する決定をした 。ハドソン町はカナダで農薬使用を制限する条例を制定した最初の自治体であった。この判決は、自治体に自治体内で農薬使用を制限する権限を認めたものである。ハドソンの条例は1985年から住民が繰り返し表明した農薬に対する懸念に応じて1991年に制定された。条例が制定された次の年に、造園芝生管理会社2社が条例に違反して告発されたが、会社は国が認めた農薬を使い、州が発効した免許も持っており、ハドソン町には農薬を制限する権限はないと主張してきた。このカナダ最高裁判所の判決は、カナダの農薬使用制限を検討している自治体の動きを促進した。現在、カナダで農薬使用禁止又は制限する条例を制定した自治体は把握しているだけでも60以上にのぼっている[下記リスト参照]。カナダの委員会報告あるいは新有害生物駆除製品法の背後には、このような自治体レベル・市民レベルの農薬の悪影響を認識し、排除しようとする大きな流れがある。
 

カナダで居住地での農薬使用を禁止又は制限する条例を持っている自治体
(フランス系自治体名の発音は正確でない可能性があります)

ブリテッシュコロンビア州 British Columbia
1. ポートムーディ Port Moody
 
ケベック州 Quebec
1. シェルブルック Sherbrooke
2. プレブォ Prévost
3. ローズメア Rosemère
4. サン・テュスタッシュ Saint-Eustache
5. ベルイユ Beloeil
6. ブーシュビル Boucherville
7. チャンブリー Chambly
8. グリーンフィールドパーク Greenfield park
9. ハドソン Hudson
10. オッターバーンパーク Otterburn Park
11. ピンコート Pincourt
12. セイントブーノデモンタービル Saint-Bruno-de-Montarville
13. セイントマーチン Sainte-Martine
14. セイントランバート Saint-Lambert
15. セイントラザレ Saint-Lazare
16. アンジョー Anjou
17. ベイデウルフェ Baie-d’Urfé
18. ビーコンスフィールド Beaconsfield
19. コーテセイントラックCôte-Saint-Luc
20. ドラードデオーメー Dollard-des-Ormeaux
21. ドーバル Dorval
22. ハンプステッド Hampstead
23. キルクランド Kirkland
24. ビザード島 L’Ile Bizard
25. モントリオール−クエスト Montréal-Ouest
26. モンロイアル Mont-Royal
27. ポインテ−クレア Pointe-Claire
28. ロックスボロ Roxboro
29. サンテアンデベレブ Sainte-Anne-de-Bellevue
30. センネビル Senneville
31. バーダン Verdun
32. ウェストモント Westmount
33. チェルシー Chelsea
34. ラックブロム Lac-brome
35. バルベレイア Val-Bélair
36. バンdリユイルサレラック村 Village de Vaudreuil-sur-le-lac
37. アイルクリフ Ayer’s Cliff
38. イーストマン Eastman
39. ノースハットレイ North Hatley
40. セントマークサーリッヘリー Saint-Marc-sur-Richelieu
41. モンセイントヒライレ Mont-Saint-Hilaire
42. サンテパールSainte-Paule
43. レントレラックス Entrelacs
44. バウドレイルドノン Vaudreuil Dorion
45. セインテテレセ Sainte Thérese
46. ボイスブランド Bois Briand
47. ボイスデフィロン Bois des Filion
48. セインテアンデプラレンズ Sainte Anne des Plaines
49. ブラインビル Blainville
50. ローレイン Lorraine
51. ノートルダムでレペロット Notre Dame de l’Île Perrot
52. セイントアンデラックス Sainte Anne des Lacs
53. ニコレット Nicollet
54. セインテSainte Geneviève
55. ピアフォンズ Pierrefonds
56. ロンギューイル Longueuil
57. モントリオール市
 
オンタリオ州 Ontario
1. コベルト Cobalt
2. パース Perth
3. カレドン Caledon
4. トロント Toronto
 
ニューッブルンスウィック州 New Brunswick
1. シデアック Shediac
2. カラケット Caraquet
 
ノバスコチア州 Nova Scotia
1. ファリファックス地域自治体 Halifax Regional Municipality

 
 
2.1.3 欧州連合の化学物質規制特に農薬に対する規制
 
欧州連合は農薬をはじめとする域内ハーモニゼーションをはかり、同時に農薬の安全性を確保するために、欧州委員会が農薬及び化学物質の再評価を始めた。
 
農薬に関しては、安全性データの再提出を求め、提出できない場合は登録をさせないことにしている。その結果、本年(2003) 7月には有効成分320種類を含む農薬が販売禁止となり、本年12月には使用も禁止される。これらの農薬有効成分のリストは下に添付する。さらに短期間に500種類と推定される有効成分の禁止に進むと考えられている。
 

欧州連合が禁止する農薬有効成分リスト

DNOC
アジノホス エチル
キントーゼ
クロゾリネ ート
ジネブ
ジノターブ
シハロトリ
テクナゼン
パラチオン
エチル
ピラゾホス
ファーバム
フェンバレレート
プロファム
ペルメトリン
モノリニュウロン
リンデン
1,2-ジクロ ロプロパン
1,3-ジフェ
ニル尿素
2,3,6-TBA
2,4,5-T
2-アミノブ タン
2-ジチオシアノメチルチオベンゾチアゾール
2-ベンジル-4-クロロフェノール
4-t-ペンチルフェノール
4-クロロ-3-メチルフェノール
4-クロロフェノキシ酢酸
DADZ
EPTC
MSMA(メチルアルソン酸)
o-ベンジル-p-クロルフェノキシドナトリウム
p-t-アミルフェネートナトリウム
p-t-アミルフェノキシドナトリウム
p-クロロニトロベンゼン
TCA
TCMTB
アザコナゾール
アザメチホス
アシフルオルフェン
アジプロトリン
亜ひ酸ナトリウム
アメトリン
アモプロピルホス
アリラジン
アリルアルコール
アルキル
ジメチルエチルベンジル塩化アンモニウム
アルキルジメチルベンジル塩化アンモニウム
アルキルトリメチル塩化アンモニウム
アルキルトリメチルベンジル塩化アンモニウム
アルジモルフ
アレトリン
アロキシジム
アンシミドール
アントラセン油
イサザホス
イソカルバミド
イソフェンホス
イソプロチオラン
イソプロパリン
イソラン
イマザピル
イマゼサベンツ
イミノクタジン
エタセラシル
エチオフェンカルブ
エチオン
エチヂムロン
エチリモール
エトエートメチル
エトリムホス
塩化オクタデシルジメチルアンモニウム
塩化クロルホニウム
塩化ジオクチルジメチルアンモニウム
塩化ジデシル-ジメチルアンモニウム
塩化ベンザルコニウム
塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム
エンドタール
オーベンカルブ
オキサジキシル
オキシカルボキシン
オキシテトラサイクリン
オキシン銅
オクチリノン
オフレースオメトエート
カルシウムシアナミド
カルタップ
カルブチレート
カルボヘンチオン
キザロホップ
キナルホス
キノプレン
クフラネブ
グルタルアルデヒド
クロメトキシフェン
クロラール-セミ-アセ
タール
クロラール
-ビス-アシ
ルアール
クロルアンベン
クロルエタゼート
クロルチアミド
クロルチオホス
クロルフェンソン
クロルフェンビンホス
クロルフェンプロップ
クロルブファム
クロルフルアズロン
クロルブロムロン
クロルメホス
クロロックスウロン
クロロプロピレート
クロロベンジレート
ゲンチアナバイオレット
酸化トリブチルスズ
ジ-l-p-メン テン
次亜塩素酸ナトリウム
ジアセトンケトグロネートナトリウム
ジアフェンチウロン
ジアリホス
ジアレート
ジエタチル(-エチル)
ジエノクロル
ジオクサチオン
ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム
シクルロン
シクロエー
ジクロトポス
ジクロフェンチオン
ジクロブトラゾール
ジクロフルアニド
ジクロプロップ
ジクロロフェネートナトリウム
ジクロン
ジケグラック
ジシクロペンタジエン
ジスルホトン
ジタリムホス
シデュロン
ジニトラミン
ジノキシカルブ
ジノブトン
ジフェナミ
ジフェノク
スウロン
ジフェンゾコート
シプロフラム(=BRP)
ジメクサノ
ジメチリモール
ジメチルジチオカーバメートナトリウム
ジメトン-S-メチル
ジメトン-S-メチルスルホン
ジメピペレート
ジメフォックス
ジメフロン
臭化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム
硝酸銀
スルプロホス
スルホテップ
セコナール
セックブメトン
セトキシジム
セトリミド
ターバシル
ターバトリン
ターブホス
ターブメトン
タール油
タール酸
ダラポン
チアザフルロン
チアゾピル
チオカルバジル
チオシアン
酸ナトリウム
チオシクラム
チオナジン
チオファネート
チオファノックス
チオメトン
チオ硫酸銀ナトリウム
チノメチオナート
テトラサル
デスメトリン
テトラクロルビンホス
テトラチオカーバメートナトリウム
テトラメトリン
テブタム
テブチウロン
テメホ
ドラゾクソロン
トラロメトリン
トリアズブチル
トリアゾホス
トリアペンテノール
トリエタジン
トリオキシメチレン
トリクロロナート
トリジファン
トリフェンモルフ
トリフォリン
トリブホス
トリルフタラム
ナーバム
ナトリウム-p-トルエン-スルホンクロラミ
ナプタラム
ナフチル酢酸ヒドラジ
ニトラリン
ニトロタル
二硫化炭素
ネブロン
ノニルフェノールエーテルポリオキシエチレングリコール
ノニルフェノールエトキシレート
ノルウロン
ノルフルラゾン
バーガンデイ混合物
バーノレート
バーバン
ハーフェンプロックス
パーフルイドン
バイオアレスリン
バイオレスメトリン
ハイドラメチルノン
ハイドロキシ-MCPA
ハイドロキシフェニル-サリチルアミド
バチルス チューリン ギエンシスのδ-トキシン
バミドチオン
パラホルムアルデヒド
バリダマイシン
ハロキシホップ
ピラクロホス
ピラゾキシフェン
ピリダフェンチオン
ピリフェノックス
ピリミホスメチル
ピロキロン
フェナザフロール
フェナミノスルフ
フェニュロン
フェノール類
フェノキサプロップ
フェノチオカルブ
フェノトリン
フェノプロップ
フェノホス
フェンソン
フェンチオスルフ
フェントエート
フェンピクロニル
フェンフラム
フェンプロパトリン
フェンリダゾン
ブタクロル
ブチレート
フッ化珪酸ナトリウム
フッ化ケイ酸バリウム
ブトカルボキシム
ブトキシカルボキシム
フラチオカルブ
フラムプロップ
フララキシル
ブランドール
フルアジフォップ
フルオログリコフェン
フルオロジフェン
フルコナゾール
フルシクロクスロン
フルシトリネート
フルフラール
プルペタンホス
フルベンジミン
フルポキサム
フルメキン
フルメシクロックス
フルメトラリン
ブルモホスエチル
フルリドン
プロチオカルブ
プロチオホス
プロトエート
ブロノポルプロパジン
プロピル-3-t-ブチル
フェノキシ酢酸
プロフェンホス
プロポキスル
ブロマシル
プロメカルブ
プロメトリン
ブロモシクレン
ブロモフェノキシム
ブロモプロピレート
ブロモホス
ヘキサクロロヘン
ヘキサジノン
ベナゾリン
ヘプテノホス
ペブレート
ベンジオカルブ
ベンスライド
ベンスルタップ
ベンゾイルプロップ
ベンゾキシメート
ペンタクロロフェノール
ベンダニル
ペンタノクロル
ペンタホウ酸ナトリウム
ベンタルロン
ベンツチアズロン
ベンフレセート
ホキシムホサミン
ホサメチン
ホスチエタン
ホメサフェン
ポリイミノイミドビグアニジンのクロルハイドレート
ポリスルフィドバリウム
ホルモチオン
マンコッパー
メカルバム
メタクリホス
メタゾール
メチルイソ
チオシアネート
メチルナフチルアセトアミド
メチルナフチル酢酸メチレンビシチオシナネート
メトキシウロン
メトキシクロルメトスルフォバックス
メトプレン
メトフロキサム
メトプロトリン
メトブロムロン
メトラクロル
メフェナセット
メプロニル
メホスホラン
メルホス
モナライド
モニュロン
モノクロロ酢酸ナトリウム
ヨードフェノホス
ラウリル硫酸ナトリウム
燐酸二アンモニウム
レスメトリン

 
2.1.4 全般
このような農薬、特に有機リン農薬に対する世界の流れを朝日新聞記事では次のように紹介している。
 
有機リン殺虫剤 使用規制・代替の動き
農業・園芸・住宅など広く使用 欧米では販売縮小も
 
有機リン系殺虫剤と殺菌剤の空中散布。水稲を病害虫から守るためだ。住宅混在地域ではラジコン操作のヘリコプターが使われることが多い=今夏、栃木県内で
 
 有機リン化合物(リン酸エステル類)の多様で複雑な神経毒性が明らかになってきたことで、農業や園芸、防疫、住宅用などに広く使われている有機リン系の殺虫剤について、影響を受けやすい子どもを念頭に規制を求める声が強まりそうだ。欧米の農薬メーカーの一部は有機リン系殺虫剤の販売を縮小しつつあり、代替商品に切り替える動きが加速しそうだ。(辻陽明)
=3面参照
 
 殺虫剤の中で有機リン系は安さもあって主流だ。農業用では、農薬要覧03年版の有効成分の原体量(国内生産と輸出入、土壌内殺虫用を除く)をもとに計算すると、ざっと半分を占める。日本防疫殺虫剤協会によると、防疫用でも最も多い。
 
 有機リン系殺虫剤は屋外の水田や畑、果樹園、公園、街路の樹木、趣味の家庭園芸、下水の害虫駆除用のほか、屋内でもゴキブリを嫌う小売店や飲食店、感染症を警戒する病院や保育所、学校、交通機関などの防疫用として散布される。畳の防虫シートなどの住宅用もある。シロアリ駆除には80年代後半から90年代後半に多用された。
 
 いずれも揮発性があるので、子どもが吸い込む危険性が小さくない。
 
 一般に、食物から摂取すると肝臓である程度解毒されるのに対して、吸い込むと肺を経て直接血液に入り、危険度が高くなるといわれる。
 
 農林水産省は今秋、殺虫剤をはじめとする農薬を住宅地や周辺で極力使わないよう自治体などに求める局長通知を初めて出した。厚生労働省は今年4月、ピル衛生管理法の政省令を改正、不特定多数の集まる大型ビルではゴキブリなどの進入経路をまず調査し、むやみに殺虫剤をまかないというルールに改めた。
 
 ただ、有機リン系殺虫剤に対する農薬取締法や薬事法上の規制が強化されたわけではない。
 
 米英では91年の湾岸戦争後、帰還兵の中に有機リン系殺虫剤などによるとみられる神経障害が多発、原因究明の研究が政府主導で進み、それも踏まえて規制強化された。
 
 米国ではフェエニトロチオン(MEP)などの使用が厳しく制限されたほか、ダイアジノンも04年に使用禁止の予定だ。英国ではこれらが使用禁止のほか、ジクロルポス(DDVP)の安全性の見直しも進められている。
 
 世界で首位を争う農薬メーカーのシンジェンタ(スイス)は有機リン系殺虫剤を世界的に減らすと表明、除虫菊成分の合成ピレスロイド系やたばこ成分類似のネオニコチノイド系などの代替品に切り替えつつあるが、日本メーカーの動きは鈍い。
 
 一方、リン酸エステル類の一部は、壁材や家電の材料になるプラスチックの可塑剤や難燃剤、ジェットエンジンの潤滑油などとしても使われている。有機リン系殺虫剤と似た分子構造を持つが、化合物の安全性や揮発性をめぐり議論が続いている。
 
朝日新聞 2003年(平成15年)10月30日
 
 
 
2.2 国内の流れ
 
昨年発覚した無登録農薬使用問題と、それに関連する農薬取締法改正
 
昨年から本年にかけて、無登録農薬が多数の業者によって販売され、把握されただけでも無登録農薬の販売業者は約269(内農協関係50)業者で、無登録農薬購入農家は約4600戸にのぼった。これは農協を含む販売業者及び使用者(農家など)の農薬に対する安全意識・遵法意識の低さを明らかにしただけではなく、使用者が罰しられないという法律の欠陥を指摘したものであった。
 
石川県内でも無登録農薬が販売され、金沢市内では市内の業者が市内のナシ農家にプリクトランを販売した問題では約87トンのナシが処分され、3,100万円の損失を被ったと推定されている。このほかに県内では無登録農薬ペンタクロロニトロベンゼン(PCNB)も販売されゴボウ農家に約50万円の損害が、農協が販売したダイホルタンによってイチジク農家に約400万円の損害を出したとされている「読売新聞 2002年10月22日」。この他に、花卉業者がアバメクチンやリドミルなどを使用していたことも判明している。
 
無登録農薬使用が大規模に行われ、さらには農協も無登録農薬を販売していたという大きな問題となった。このため、本来農薬取締法は粗悪な農薬を流通させないことを目的としていたが、農林水産省は農薬取締法の改正に動かざるを得なくなり、販売業者に対する罰則を強化した。また、農薬の使用者(主に農家)も違法な農薬使用をした場合に罰則を科されることになった。
 
農林水産省通知「住宅地等における農薬使用について」
 
農薬取締法改正にともなう省令「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」に関するパブリックコメントを農林水産省及び環境省は求めた。住環境中の農薬使用に苦しんでいる人や、懸念を持っている人など多くの人からコメントが提出された。
 
その結果、省令には画期的な条項が加えられた。
 
 (住宅地等における農薬の使用)
第六条 農薬使用者は、住宅の用に供する土地及びこれに近接する土地において農薬を使用するときは、農薬が飛散することを防止するために必要な措置を講じるよう努めなければならない。
 
なお、パブリックコメントは省令を出す前に、回答することになっている。ところが、パブリックコメントに対する回答は、省令が出た後に出された。このことはパブリックコメントをないがしにするもので、農林水産省及び環境省は総務省からこのことについて異例の注意を受けている[下記参照]。遅れた理由は、先にふれた住宅地での農薬使用を危惧する多くのコメントが両省に寄せられたためと考えられている。
 
「規制の設定又は改廃に係わる意見提出手続き」の運用について(通知)
 
  農林水産省大臣官房文書課パブリックコメント手続担当官殿
  環境省大臣官房総務課パブリックコメント手続担当官殿
 
総務省行政管理局企画調整課行政手続室
 
  この度、当行政管理局行政相談課から、別添のとおり、改善要望があった旨連絡を受けました。
   当室において、要望内容を精査した結果、貴省において実施した標記手続の一部については、下記のとおり同手続に係わる閣議決定等に照らして問題と考えられる点が認められますので、今後の手続の実施に当たっては、閣議決定等の趣旨を踏まえ、適切な運用に遺漏なきを期されるようお願いします。
   また、貴省関係各課に対し、本件についての周知方併せてお取り計らい願います。
                  記
  (閣議決定等に照らして問題と考えられる点)
   閣議決定では、規制の設定又は改廃に係る「案等を公表した行政機関は、提出された意見・情報を考慮して意志決定を行うとともに、これに対する当該行政機関の考え方を取りまとめ、提出された意見・情報と併せて公表する」こととされ、また、閣議決定の「考え方」(各省庁了解)では、「公表は、原則として意思表示の時点までに行う」こととされている。
   今回、別添の要望内容を見ると、提出された意見に対する「回答」(平成15年3月18日)が、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」(平成15年農林水産省令・環境省令第5号)の公布(平成15年3月7日)後となっている。
 
 
また、この省令の徹底をはかるために、本年9月16日に農林水産省は通知「住宅地等における農薬使用について」を出している。金沢市の樹木管理担当者にも届いていると推定できるが、ここに引用する。
 
15農安第1714号
平成15年9月16日
[宛先]
消費・安全局長
住宅地等における農薬使用について
 
 農薬は、飛散することで人畜に危害を及ぼすおそれがあり、近年、学校、保育所、病院、公園、街路樹、住宅地周辺の農作物栽培地等において使用された農薬の飛散を原因とする住民、子ども等の健康被害の訴えの事例が多く聞かれるようになっている。
 このような状況を踏まえ、今般、農薬取締法(昭和23年法律第82号)第12条第1項の規定に基づく農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)第6条において、農薬使用者は、住宅の用に供する土地及びこれに近接する土地において農薬を使用するときは、農薬が飛散することを防止するために必要な措置を講じるよう努めなければならない旨規定したところである。
 ついては、下記の土地・施設等の管理者(市民農園の開設者を含む。)、殺虫、殺菌、除草等の病害虫防除の責任者、農薬使用委託者、農薬使用者等に対する下記事項の遵守の指導につき、*1貴局管下都府県に対する協力の要請をお願いする。
 *2なお、貴局管内の地方農政事務所長に対しても貴職から周知をお願いする。
 
 
1 学校、保育所、病院、住宅地に近接する公園等の公共施設内の植物、街路樹及び住宅地に近接する森林等における病害虫防除については、病害虫の発生や被害の有無に関わらず定期的に農薬を散布することを廃し、被害が発生した場合に被害を受けた部分のせん定や捕殺等により病害虫防除を行うよう最大限努めることとする。このため、日頃から病害虫被害の早期発見に努めることとする。
 また、病害虫の発生状況を踏まえやむを得ず農薬を使用する場合(森林病害虫等防除法(昭和25年法律第53号)に基づき周辺の被害状況から見て松くい虫等の防除のための予防散布を行わざるを得ない場合を含む。)は、次の事項の遵守に努め、農薬の飛散が住民、子ども等に健康被害を及ぼすことがないよう最大限配慮することとする。
(1)農薬の使用に際しては、誘殺、塗布、樹幹注入等散布以外の方法を検討し、やむを得ず散布する場合であっても、最小限の区域における農薬散布に留めること。
(2)非食用農作物等に対し農薬を使用する場合であっても、農薬取締法に基づいて登録された、当該防除対象の農作物等に適用のある農薬を、ラベルに記載されている使用方法(使用回数、使用量、使用濃度等)及び使用上の注意事項を守って使用すること。
(3)農薬散布は、無風又は風が弱いときに行うなど、近隣に影響が少ない天候の日や時間帯を選ぶとともに、風向き、ノズルの向き等に注意すること。
(4)農薬使用者及び農薬使用委託者は、周囲住民に対して、事前に、農薬使用の目的、散布日時、使用農薬の種類等について、十分周知するとともに、散布作業時には、立て看板の表示等により、散布区域内に農薬使用者及び農薬使用委託者以外の者が入らないよう最大限の配慮を行うこと。特に、農薬散布区域の近隣に学校や通学路等があり、農薬の散布時に子どもの通行が予想される場合には、当該学校や子どもの保護者等に対する周知及び子どもの健康被害防止について徹底すること。
(5)農薬使用者は、農薬を使用した年月日、場所及び対象植物等、使用した農薬の種類又は名称並びに使用した農薬の単位面積当たりの使用量又は希釈倍数について記帳し、一定期間保管すること。
 
 
2 住宅地内及び住宅地に近接した農地(市民農園や家庭菜園を含む。)において栽培される農作物等(1の対象となる植物等を除く。)の病害虫防除に当たっては、次の事項の遵守に努め、農薬の飛散が住民、子ども等に健康被害を及ぼすことがないよう最大限配慮することとする。
(1)病害虫に強い作物や品種の栽培、病害虫の発生しにくい適切な土づくりや施肥の実施、人手による害虫の捕殺、防虫網等物理的防除手段の活用等により、農薬使用の回数及び量を削減すること。
(2)非食用農作物等に対し農薬を使用する場合であっても、農薬取締法に基づいて登録された、当該防除対象の農作物等に適用のある農薬を、ラベルに記載されている使用方法(使用回数、使用量、使用濃度等)及び使用上の注意事項を守って使用すること。
(3)粒剤、DL(ドリフトレス)粉剤等の飛散が少ない形状の農薬及び農薬の飛散を抑制するノズルを使用すること。
(4)農薬散布は、無風又は風が弱いときに行うなど、近隣に影響が少ない天候の日や時間帯を選ぶとともに、風向き、ノズルの向き等に注意すること。
(5)農薬使用者及び農薬使用委託者は、農薬を散布する場合は、事前に近隣の住民への周知に努めること。特に、農薬散布区域の近隣に学校、通学路等があり、農薬の散布時に子どもの通行が予想される場合には、当該学校や子どもの保護者等に対する周知及び子どもの健康被害防止について徹底すること。
(6)農薬使用者は、農薬を使用した年月日、場所及び対象植物、使用した農薬の種類又は名称並びに使用した農薬の単位面積当たりの使用量又は希釈倍数について記帳し、一定期間保管すること。
 
3 農薬の使用が原因と考えられる健康被害の相談が住民から地方公共団体にあった場合は、地方公共団体の農林部局をはじめとする関係部局(例えば、学校にあっては教育担当部局、街路樹にあっては道路管理担当部局)は連携し、必要に応じて対応窓口を設置する等適切に対処すること。
 
(施行注意)
 
*1:北海道農政事務所長あては「北海道」、関東農政局長あては「貴局管下都県」、近畿農政局長あては「貴局管下府県」、他の地方農政局長あては「貴局管下の県」、沖縄総合事務局長あてには「沖縄県」とする。
*2:地方農政局長あて文書のみ記入して施行する。
 
このように、通知は近隣に被害を及ぼさないことのみでなく、農薬使用を極力しないで済むように管理することを行政に求めている。
 
今回の金沢市のパブリックコメント資料は、今までの金沢市の誇りうる農薬使用制限から、農林水産省通知に背く内容となっており、時代に逆行するものとなる。また、この農林水産省通知を軽んじるような発言があると聞いているが、この通知を農林水産省が出した意味を十分認識すべきである。軽視するような発言をした人は、農林水産省に問い合わせて、自分の話した内容が、農水省が意図したものかどうか確認すべきである。
 
 
3 最近の科学的知見
 
農薬が急性中毒や皮膚・粘膜障害などの短期的影響を与えることは良く知られている。最近では農薬中毒とうつ病など精神・神経障害も良く知られている。農薬はそれ以外にも発癌や遺伝障害、催奇形性などとの関連も良く報告されている。
 
今まで安全であるとされていた農薬であっても、研究が進むにつれ、あるいは新たな研究の切り口によって、今まで認識することがなかった危険性が判明している。その例として、最近報告された有機リンと神経系の発達障害及びパーキンソン病と農薬に関する新しい実験的研究、遅発性神経障害と多動性障害に関連する報告を紹介する。
 
有機リン農薬と神経系の発達障害
 
動物実験では幼児期投与により、成熟しても影響が残り、現れることが知られている。有機リン剤であるクロルピリホスを、産まれて間もなく又はやや遅くラットに投与した実験では、どちらもアセチルコリンエステラーゼ作動系に影響を与え、成熟しても影響が残り、その影響は脳の部位によって異なり、性や投与時期によっても影響が異なることが報告されている 。
 
近年、有機リンが阻害するコリンエステラーゼが、脳を含む神経系の発達に重要であるという証拠が増えている。胎児や子供の正常な発達を保護するために、有機リン剤に対する被ばくを減らす必要がある。
 
有機リン剤が発達中の神経系に与える影響を懸念したことも、米国環境保護庁やカナダの常任委員会が農薬規制を強化した理由である。
 
 
パーキンソン病と農薬に関する新知見
 
農薬とパーキンソン病との関連は疫学研究で良く報告されているが、実験的にはロテノン投与によってパーキンソン病とほぼ同様の影響が現れることが証明されている。ロテノンはあまり使われていない農薬である。
 
エモリ大学のシーラーのグループは、ロテノンと同じような作用機構を持つ殺ダニ剤ピリダベンなどの作用を培養した神経芽腫細胞で調べた結果を報告した。調べた農薬中でピリダベンが最も強い細胞毒性を示した。このことはロテノンのような特殊な殺虫剤でなくても、パーキンソン病を誘発する可能性に留意しなければならないことを示している。なお石川県でもピリダベンは年間 40 kgほど使用され、特に金沢市では15.8 kgを使用されている。
 
このことは、農薬毒性に関する研究が新しい方向から進められた場合、安全であると考えられた農薬でも新しい毒性が発見される可能性があることを示している。国の農薬の管理も時代と共に変化していることを考える必要がある。
 
 
遅発性神経障害の標的酵素と多動性障害との関連
 
遅発性神経障害とは、遅発性神経障害は、有機リン急性中毒の1-2週間後に現れる四肢の脱力や運動失調、その後の麻痺が特徴である。病理学的には脊髄及び末梢神経中の長い軸索の変性がある。また脳の特定部位の変性も明らかになっている。
 
米国のサーク研究所のウィンローらは、遺伝子工学的方法を用いて、活性を持たない神経毒エステラーゼをコードする遺伝子を持つマウスを作った。活性のある(正常な)神経毒エステラーゼの遺伝子を全く持たないマウスは妊娠8日目までしか生存できず、この酵素は胎児の生存に必須であることが明らかになった。正常な神経毒エステラーゼ遺伝子と不活性な神経毒エステラーゼ遺伝子を持つマウス(以下ヘテロのマウス)は、生存・繁殖が可能であった。ヘテロのマウスのアセチルコリンエステラーゼ活性は正常なマウスと同じであったが、神経毒エステラーゼ活性のレベルは低かった。
 
神経毒エステラーゼ活性が低いヘテロのマウスは、正常なマウスと比較して、神経毒エステラーゼを阻害する有機リンに敏感であることが分かった。このことは神経毒エステラーゼの老化による毒性獲得が神経障害の原因であるという今までの説と異なり、神経毒エステラーゼの阻害そのものが神経毒性の原因であることを示している。
 
さらに重要なこととして現在社会的に問題になっている多動性傷害と神経毒エステラーゼとの結びつきを示す結果を得た。マウスの行動を調べた結果、ヘテロのマウスは正常のマウスより、多動性の指標である活発な行動を示した。逆に神経毒エステラーゼ阻害剤を投与すると、正常なマウスの行動は増加した(多動性を示す)。
 
多動性障害を示す子供や大人が増加していると言われている。このような人たちは、神経毒エステラーゼ阻害剤に敏感な可能性があるので、有機リン剤のような化学物質は避けた方が賢明であり、同様に健康である人も避けた方が良い。人間では神経毒エステラーゼ活性に大きな差があることが知られている。神経毒エステラーゼ活性を阻害する有機リン剤に対する感受性に差がある可能性がある。人間における神経毒エステラーゼ活性の個人差は6倍ほどあることが知られている。これらのことで、湾岸戦争に従軍した一部の人が湾岸戦争症候群に苦しんでいる理由を説明できるかもしれなことが指摘されている。
 
最近の朝日新聞の記事では次のように伝えている。
 
有機リン化合物の毒性、仕組み解明 マウスに多動障害も
 殺虫剤や難燃剤などに幅広く使われている有機リン化合物(リン酸エステル類)が引き起こすとされる遅発性神経障害や行動に落ち着きがなくなる多動障害など、神経毒性の仕組みが米国の研究チームによる動物実験で次第に明らかになり、日本の関係当局の間でも注目され始めている。有機リン系殺虫剤の利用は、米欧では子どもの脳・神経の発達に与える影響も考慮して規制が強められている。これに対し、日本ではその毒性があまり重視されず、規制面で立ち遅れており、欧米並みの規制実施に向けて議論を呼びそうだ。
 
 相次いで研究成果を発表しているのは米国カリフォルニア大バークリー校とソーク生物学研究所の合同チーム。有機リンは、けいれんなど急性の神経障害が起きない場合でも、後になって手足のまひなどの遅発性神経障害が出ることが知られ、その仕組みを遺伝子操作したマウスを使って解明した。
 
 その結果、遅発性神経毒性のカギを握る酵素を突き止めた。米科学アカデミー紀要6月号の論文によると、酵素は脳内などにあるリソフォスフォリパーゼといわれる酵素のひとつで、情報伝達などで重要な役割を演じる物質、リソレシチンを代謝する。有機リンがこの酵素の代謝機能を阻害し、神経に障害を与えることを証明した。
 
 リソレシチンが代謝されずに蓄積すると、神経を覆う鞘(さや)が壊れる「脱髄」が起き、多様な神経障害のほか、手足のまひなど深刻な機能障害が出る。これは有機リンの遅発性神経障害として知られる症状と一致する。
 
 また、米科学誌ネイチャージェネティクス3月号の論文によると、遅発性神経障害を起こす有機リンを投与したところ、その遅発性障害が現れない程度の少量でもマウスに多動障害が起こることを確認した。
 
 現在、多動障害の原因は明確になっておらず、遺伝的要因や家庭環境のほか、最近はポリ塩化ビフェニール(PCB)などの化学物質も一因ではないかと指摘されているが、有機リンも原因物質として注目されそうだ。
 
 バークリー校のカシーダ教授、クイスタッド博士らの合同チームは論文で「哺乳(ほにゅう)類共通のメカニズム」とし、「ほかにも有機リンで阻害される酵素がある可能性が大きく、さらなる研究が治療法の開発につながる」と指摘している。
 
 実際、このチームを含めた米国内の研究で、脳内の重要な機能を担う酵素群が有機リンによって阻害されることが明らかになりつつある。
朝日新聞 (10/30 03:01)
 
このように科学の進展にともなって一見無関係と思われる有機リンと行動障害のような疾患との関連が発見される可能性が十分存在する。
 
 
 
4 農薬使用と人権問題
 
健全な環境で生活する、あるいは西ナイルウイルス対策の蚊駆除で農薬に曝されない権利があることが、いくつかの公的機関から求められている。そのうち国連環境計画事務局長の演説及びカナダ国オンタリオ州人権委員会の書簡を紹介する。
 
2001年4月27日、国連環境計画のティプファー氏は国連人権委員会で、健全な環境と基本的人権との関係について次のように演説している。
 
「世界人権宣言の中に秘められた多くの基本的人権には重要な環境的次元がある」。
「環境条件は、人々が生命と健康・適切な食物と住居・伝統的な暮らしと文化に対し、基本的権利を享受する程度を決定するのに明らかに役立つ。自然環境を汚染あるいは破壊する者は、自然に対する罪を犯すのみでなく、同様に人権を侵していることを認識する時期である」。
 
「人権を劣化したあるいは汚染された環境中で守ることはできない」。
 
「生命に対する基本的権利は土壌の劣化と森林伐採によって、及び有毒化学物質と危険な廃棄物・汚染された飲料水によって脅かされている」。
 
「この理由で、生物多様性と気候変動・森林伐採・化学物質に関する環境条約を成功裏に実施することは、人権を守るために重要な貢献をすることができることを、私たちは信じている。この委員会が、実施と承諾を含め、人権の環境的次元に関して仕事を続けることを、私たちは歓迎する」。
 
オンタリオ州人権委員会がオンタリオ州自治体協議会事務局長にあてた文書の中で、化学物質過敏症患者と西ナイルウイルス対策農薬散布との関係について次のように述べている。
 
「西ナイルウイルスの伝播を止めることが重要な目的であり、全オンタリオ人にとって重要なことの一つである。しかし、この問題を取り扱うための戦略の一部として、化学物質、特に殺成虫剤使用に関する省の提案した戦略に関する懸念が、私に示されている。一般人が住む地域で「噴霧」といわれている化学物質散布の未知の影響に関して、一般人が持っているかもしれない不安を別にして、このような物質の使用は障害のある人や幼い子供の親・妊婦のような、人権規範に合致する人にとって特に心配がある。特に、これらの化学物質の使用は環境に過敏な人で悪影響があるだろう。
 
環境過敏性(多剤化学物質過敏性や大脳アレルギー・化学物質誘導免疫機能不全などと言われる)は、一般人に影響を与えるより低レベルで、一般的な環境化学物質に曝されることによって誘発される。
 
この規範は、全ての人は障害のために差別を受けることなく、サービスに関して平等な取り扱いを受ける権利があることを規定している。人権委員会の政治的立場は、障害者及び便宜提供義務に関する政策とガイドラインに概略されているように、環境過敏性は障害であり、そのため人権規範の下で保護される。そのようなものとして、省及び化学殺虫剤使用を実施することに責任を持つあらゆる自治体は、環境過敏性のある人に便宜を図る義務がある。それを怠ることは、人権規範に違反するだろう。
 
蚊駆除技術として化学剤使用を考慮する場合、私は人権に関する義務に気づくこと及び、人権規範によって保護されている人々に対する影響を考慮することを、自治体にお願いしたい。オンタリオ自治体協会事務局長として、このメッセージを所属自治体に直ちに伝えて頂ければ幸いです 」。
 
このように、化学物質によって人間の健康に影響を与えることは人権侵害であることを、金沢市を含む公的機関は強く認識すべきである。
 
 
5. 害虫(又は有害生物駆除)について
 
「街路樹等害虫駆除の安全性に関する研究会」は2001年に 金沢市は健全な環境に生活するという市民の要望を反映した「委員会」報告を出している。この報告書には基本方針として、「都市樹木害虫の防除は、発生の早期発見と捕殺による初期防除を原則とする。薬剤の使用は景観を大きく害する異常発生の場合に限り、別に定める厳密な使用規定によって実施することもある」と述べられている。最後に「...今後の見通しについては、不十分な現状把握の上に立って推測せざるを得なかったところがある。したがって新しい方針の実施には、思いがけない困難を生じる可能性もあり、当初は試行錯誤を繰り返すかもしれない。金沢市としては、その中で確かな方策を探りながら、小さな失敗にとらわれずに着実に新しい環境都市の建設に進むことを期待したい」と述べている。
 
この提言は、今年のチャドクガやアメリカシロヒトリの異常発生などの事態でも、試行錯誤を続けながら、市民教育を含めた着実な都市環境建設に進むことを求めている。
 
現在、世界の趨勢は「持続可能な発展」を目指しており、その一部として「持続可能な農業」が注目され、方法としての総合防除に向かっている。またカナダの例で示したように、都市・居住環境中の農薬使用を禁止あるいは制限する流れにある。
 
金沢市はこの「報告」をもとに全国でも誇りうる防除を実施してきた。残念ながら今回の「意見募集内容」には「報告」を骨抜きにしかねない、いくつかの問題点がある。それは明確な防除方針が示されていないこと、及び環境中の農薬などの化学物質に影響を受けやすい集団への配慮が十分でないことである。
 
総合防除はその骨子が「報告書」中でも具体的に指摘されているような常識にかなった方法である。総合防除の概念は次の通りである。
 
・ 有害生物となる生物を防ぐための都市樹木の計画と管理:耕種的防除体系が含まれ得る。
・ 潜在的な有害生物の同定:この意見募集ではアメリカシロヒトリとチャドクガ。
・ 有害生物及び有益生物、その他の関連する全ての環境因子のモニタリング
・ 被害閾値及び行動閾値の設定:どの程度の被害があれば駆除活動を実施するか、事前に決定する。駆除活動を始める基準を事前に明確にしなければ、恣意的で過剰な防除活動を招く。
・ 耕種的・物理的・生物学的な防除を基本として有害生物を閾値以下に管理する。
・ 化学的駆除法を採用するには、毒性の最も少ない駆除剤(例えばフェロモン剤やBT剤[これは生物学的駆除方法でもある」)を採用する。
・ 使用した有害生物駆除法の影響と効果の評価:このことはされていないことが多い。以後の防除のために重要な資料となることを留意すべきである。
 
その主な実務的な点は、米国環境保護庁によると次の通りである。
 
・ 有害生物管理のために公的方針作成:すでに「報告書」中で記述されている。
・ 有害生物管理責任者の任命
・ 学校の建物や他の場所の有害生物管理目標設定
・ 詳しく調べること、確認、モニタリング
・ 活動閾値の設定
・ IPM戦略の適用
・ 結果の評価と記録保管
 
 
6.駆除対策費の使い方を改善するための提言
 
持続可能な害虫駆除方針として総合防除を採用すべきだと提案したい。総合防除の実際は幅が広く、すぐに化学農薬に依存するような極端な場合さえある。
 
持続可能な防除体制を確保するには、殺虫剤を散布した作業量に支払うのではなく、環境又は樹木管理費用として支出すべきである。殺虫剤散布作業の対価を支払う制度を採用すると、害虫駆除業者は業績を上げるために殺虫剤の多用で対処しがちになる。
 
一定地域あるいは一定の樹木を年間を通じて総合防除を用いて管理する費用として、対価を支払うように改善すべきである。また、駆除業者に総合防除に対する意識を高めるために、最も毒性の少ない方法によって樹木を維持管理する能力を駆除業者が実証した場合には、次年度の契約の場合に有利になるように配慮する必要がある。駆除業者は世界の流れ及び農林水産省通知が示すように、化学農薬に過重な依存をすることから脱することが、駆除業者の信用と地位を高めることであり、市民から信頼される道でもあることを認識する必要がある。
 
 
7.薬剤の選択について
 
このコメント要請には防除薬剤の選択基準が明示されていない。フェロモンなどを使用してきたことはすばらしいことであるが、それから飛び越えていきなり有機リン剤使用というのは危険なことである。
 
その対策として、通常時のフェロモンなどによる防除、次には生物製剤の使用というように、事前に使用薬剤を考慮しておくべきである。また、生物製剤であっても防腐剤などの不活性成分の毒性に留意する必要があり、また害虫に抵抗性を与えないような使用法の検討も必要である。
 
アメリカシロヒトリの駆除は景観上の問題が多少あるが、木を枯らしたり、人に危害を与えることはないので、化学薬剤による処理は必要がない。
 
 
8. 個別事項について
 
(1)@Aについて
 
捕殺防除を基本とするとしているが、「足場が悪い」とか「捕殺防除が困難」という判断基準が明確でない。このため、安易に「足場が悪い」又は「捕殺防除が困難」と判断する可能性が大きい。「幼虫が巣網から拡散」するのは、監視及び調査が不十分なことを意味する。総合防除の基本は監視・調査である。
 
Bについて
 
「合意を得るように努める」とは努力規定でしかなく、単に連絡をすれば努力したことになる。また、口頭の連絡あるいは合意は、問題が生じた場合水掛け論になる可能性がある。このような場合、公的な「承認確認制度」を考慮する必要がある。
 
また、農薬を近隣で散布する場合、影響を受けやすい人の有無を確認するために、市がそのような人を把握するか、過敏な人が登録できる制度を作ることが必要である。米国では蚊が媒介する西ナイルウイルス対策に、効果がないさらに人間の健康と環境に有害であるとして農薬使用をしない自治体や、農薬使用を制限する自治体が多くなってきている。その一方で農薬散布を積極的に推進している自治体もある。積極的に推進しているニューヨーク州サフォーク郡は、「危機的公衆衛生状況」の中で農薬散布を望まない人の周辺には散布しない方針をとっている。
 
 
Cについて
 
対象を枝葉に集中させることは技術的に困難であり、薬剤の飛散及び数日にわたる蒸発を考慮する必要がある。ごく少量の農薬で影響を受ける可能性がある集団の保護を考慮すると、早期発見及び早期の対策を徹底する必要がある。また、アメリカシロヒトリは樹木を枯らすことがないので、駆除をする必要はない。公衆衛生的な危機状況でやむを得ずに実施する場合は、影響を受けやすい人が避難できるように、事前通知の徹底及び避難費用の提供が必要である。
 
 
Dについて
 
農薬安全使用基準遵守は当然のことであり、農薬使用は必要最小限であることも当然のことである。しかし、健康に最も影響が少ない防除方法や薬剤の選択など、助成以前に考慮することが明記されていない。また、今回の法改正で農薬取締法に違反するような防除方法は個人であっても罰則を科せられるようになった。金沢市はディプテレックス剤を使用していた時期に、希釈倍数を誤り、高濃度で使用していたことを再認識すべきである。
 
 
 
(2)民有地のチャドクガ対策を助成対象にすることについて
 
ここには2つの問題がある。チャドクガを農薬で殺すことの意味及び民有地樹木保護に公的資金を提供することである。
 
チャドクガ防除−総合防除が基本である。
 
・ チャドクガは農薬で殺すことができるが、死んだ幼虫の刺毛が残っていると、風にとばされた刺毛によって被害が出る。このため、農薬散布は本質的解決にならない。
・ チャドクガの防除はまだ幼虫が密集している間に早期発見をし、物理的に駆除することが重要である。早期駆除を怠ると、幼虫が分散して駆除が困難になる。
・ 対策は寄生バチなどのチャドクガの天敵を保護することが重要で、農薬散布は逆効果となる。
 
「大阪市立自然史博物館の金沢至学芸員は「都市化や薬剤散布によって寄生バエや寄生バチなどの天敵が少なくなったことで、チャドクガは年々増加傾向にある。今年は特に、25度前後の気温で蒸し暑く、湿気も高いという昆虫が好きな気象が長く続いたことも原因と考えられる」と分析している」、毎日新聞2003年9月4日。
 
・ また、樹種転換や枝の切り込みなども必要である。9月16日の農水省通知によって学校等で散布をすることが困難になった岡山県の中学校では、サザンカの枝を切り落とすことによって対応するという。
 
「 チャドクガ大量発生 生徒ら50人かゆみ、発しん 総社東中=岡山
◆校長謝罪「対応手間取り被害拡大」
総社市井手の総社東中学校(古家野勇校長、八百四人)で、体毛に触れるだけで激しいかゆみと発しんが生じるガの一種、チャドクガの幼虫が、校内のサザンカなどに大量発生し、触れた生徒ら約五十人が症状を訴えていることが二十二日わかった。九人が病院で治療を受けており、同校はサザンカなどの枝をすべて切り落とす方針。公共施設で散布される農薬は全国的に問題となり、同校が今年の農薬散布を一部にとどめたことが影響した可能性もあるが、総社市教委は「害虫のつかない品種に替えるのが一番。でも、予算の関係でそうもいかない」と頭を悩ませている。
総社東中によると、今月八日、一年生の女子生徒が保健室に駆け込み、かゆみと発しんを訴えた。その後もかゆくなった生徒が相次ぎ、この日までに保健室に来た生徒は四十三人、症状が出た教職員は八人。症状が重い人には病院に行くよう勧め、生徒六人、教職員三人が皮膚科などで治療を受けた。三年の女生徒は点滴を受けた。
チャドクガの幼虫は毒を持つ毛で覆われ、四、九月の年二回、好物のサザンカやツバキの葉裏について葉を食べる。毒は強力なうえ、毛が脱落しやすく、飛ばされた毛に触れても発症する。
同校には自転車駐輪場の横に約六十本、校舎横に約二十本のサザンカ、中庭に四本のツバキがあり、大量の幼虫が確認された。最初に訴えた女子生徒は自転車についた毛虫を手で払ったことがあったという。同校では、自転車についた幼虫に触ったり、風に飛ばされた毒毛に触れたりしたのが原因とみている。
チャドクガの被害がこれほど出たことはなく、校内で対応を検討した結果、サザンカの枝を切り落とし、ほとんど幹だけにすることを決定。伐採は祝日の二十三日に行われる。
最近、学校などの公共施設で散布される農薬が、健康に悪いと問題視されており、農林水産省は今月十六日、各地方農政局に、公共施設では農薬の散布を極力避け、被害を受けた枝の刈り込みなどに努めるよう求める通達を出した。
総社市議会でも昨年六月、この問題が取り上げられ、市教委は「今後、散布の曜日や時間を配慮したい」と答弁。今年五月、各学校の校長や園長あてに▽病害虫の発生の有無に応じて散布▽散布は児童、生徒がいないときに行う――などを注意した。
これを受け、毎年六月、ほとんどの樹木に農薬散布していた総社東中でも、今年は害虫が確認された桜二十本とケヤキ一本だけに限定していた。
古家野校長は「対応に手間取り、生徒たちに被害が広がって申し訳ない」と謝罪。市教委庶務課の平田充宏参事は「農薬は使いたくないが、害虫の駆除も必要。何かいい方法がないものか」と話している」。[読売新聞 2003年9月23日]
 
 
民有地のチャドクガ防除について
 
民有地の防除は所有者の責任であり、周囲に迷惑をかけないように樹木を維持管理する義務がある。そのためにはチャドクガが好むツバキやサザンカを植えることを避けることが必要であり、その上でどうしても植えるのであれば、早期発見早期駆除によって樹木の被害を避け、同時に近隣に迷惑をかけないことが必要である。さらに、その駆除で近隣を不必要な農薬に曝すことは慎まなければならない。また捕殺防除で対応できないような高木はアメリカシロヒトリやチャドクガの食害によって枯れることはない。また、自分の責任で管理できないような高木は、可能な限りなくすべきである。このことは、総合防除に重要な教育で対処すべきである。
 
補助を出すと不必要であっても農薬を散布する可能性が増える。個人の庭は自己責任で防除すべきである。地方自治体が庭木の防除に補助金を与えるのは個人財産の過剰保護である。
 
また、一斉防除をしなければチャドクガやアメリカシロヒトリを駆除できないという声があるとされているが、今まで大規模な農薬散布をしてきても駆除できていなかったのに、今後も半強制的な薬剤散布によって駆除できるとは思えない。全てのチャドクガを殺すことは不可能であり、全てを殺すような散布を実施すれば人間の健康に対する保証は得られない。
 
ようやくクモなどの益虫が増えてきたのを嫌うような風潮は、市民に対する啓発によって是正すべきである。
 
 
9. 最後に
 
私は数度にわたって金沢市を訪れました。近江町市場の活気を楽しみ、近くの浅野川の散策で心身を休めたことを思い出しています。しかし、街路樹や民家の樹木への過剰な農薬散布や、市の管理下にないことは承知しておりますが、兼六園での異常とも言える農薬散布を知ったことで幻滅しました。その後、「研究会」の努力によって、市の樹木管理はすばらしいものになったと喜んでいました。今後も是非すばらしい、全国の範ともなりうる樹木管理を継続して頂きたくお願い申し上げます。