第1回
猫と花見

 花は四季それぞれに代表的な花が咲くものですが、花見となるとそれは桜と決まっています。
 それは奈良時代から平安時代にかけてのことで、遣唐使の廃止以後、宮廷を中心に渡来文化の象徴である梅から桜となっていったことに象徴されています。『万葉集』より『古今和歌集』になって桜が多く詠まれてきたことからも窺い知ることが出来ます。

 猫はいつ頃から日本で飼われる様になって来たかというとそれよりも200年程古く、仏教の経典を鼠から守る目的で日本に輸入されたのが一般的な説です。
 渡来文化の名残りでもある猫は人と共に生活し、飼い主を真似て桜を見ることも多かったでしょう。

 しかし、猫にとって桜はどのように見えるのでしょうか。猫には感情があるものの、桜に愛着を感じることはありません。それよりも花の蜜を吸いにやって来るメジロやスズメを見てウズウズしているはずです。それは狩りを試みる本能でもあるのです。
 猫の視力は人間でいう0.3とあまり良くありませんが、動体視力に優れています。また可聴周波数帯域が45Hz〜91000Hzと幅広く、人間には聞き取れない高音域まで聞き取れるのです。
 そして強力な爪と飛び掛る瞬発力も優れているため狩りをするのに大変有利です。
 この行動は食べるための本能であるのと同時に猫には癒しの効果もあります。つまり欲求が満たされる事でストレスが発散され、単調に成りがちな猫の生活に刺激が与えられるのです。

 江戸時代になって花見は庶民に愛されるようになり、集団となって飲み食いするようになりました。
 外出しても冷えないこの時期に、外での宴席は楽しいものです。しかし、高揚する気持ちとは裏腹に、猫は単独を好み、花見の喧騒を避ける様にして静まるのを待ちます。そして得意の狩りの本能を刺激して、猫も気持ちを高揚させることでしょう。
 きっと花見の時期になると猫も人も潜在的な活動に喜びを覚えるに違いありません。

「ドギー&キャッツ」 2003年4月号掲載

第2回に続く

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